「チェックメイト」
「あ〜〜やっぱり負けちゃいましたか…」
「…っ」
さてこの会話に至るまでのお話をしましょう。
本日は久しぶりの休暇――とはいっても外出許可は出ていないので艦内での休暇。
アスランは自室で作りかけのハロを完成させようと机に向かっていた。
ただ、部屋は一人ではなく同僚のニコルと一緒、本を借りに来たというのは建前でただ単に暇を持て余していた。
ハロを作っているのをベッドの上(それでも、きちっと正座をして)に座ってその様子を伺ってると急に部屋のドアが開く。
彼が口を開く前にアスランからため息混じりに
「また、勝負か?」
先にセリフをもっていかれた、“彼”=イザーク・ジュール
「悪いか?」
「ディアッカはどうしたんですか?いつも、一緒でしょう?」
と、二コルがちょっと厭味も含めて言うと、一瞬真っ赤になり
「…まだ、寝てる。」
「こんな時間までですか?」
当に昼は回っている。イザークが起きているなら確実起きているだろう人物が、
そして、一瞬真っ赤になったイザークの反応に“あぁ”と言葉を漏らす。
アスランは全く分からないらしく、二コルが納得したのに首を傾げる。
「昨夜は、遅くまで起きてたんでしょう。あぁ、もしくは朝までかもしれませんけど…。」
「そんなにやることあったか?」
「彼らにはあったんでしょう?」
天然のはいってるアスランは普通の疑問をイザークではなく二コルに聞く
「うるさい!!いいから勝負だ」
仕方がないと、チェスの用意をする(もちろん、イザークは手伝わない)
さて、勝負というところで二コルからスットプがかかる
「何なんだ!」
「せっかく、勝負事ですしなんか罰ゲームとかしません?お互いの言うことひとつ聞くとか…」
「なぜ、そんな事しなっくちゃならない」
「あれ、イザーク自信ないんですか?」
「…っ!!い、いいだろう、こっちが勝ったらアスランじゃなくて貴様にやってもらうぞ」
先程の厭味のしかえしも込めて、あえて二コルに罰ゲームをさせることにした。
「いいですよ、ね。アスラン」
「オレは、どっちでも…」
と、言う訳で先程の会話へ
「さて、何してもらいましょうかね。簡単に出来てもらってもこちらとしても面白くないですし、
あなたのことですから大抵の事やってのけちゃうでしょうし…」
さてどうしたものかと、天井を見つめながら考えてると、何か思いついたのかにんまりと笑うとイザークを見る。
その笑顔が、企んでるようで思わず身構える。
「では……」
「―――の馬鹿どこいったんだ!!」
てっきり、部屋にいると思っていたディアッカはどうやら目を覚まして部屋を出たようで、
「食堂にいると思ったんですが、本当に探してると見つからないものですよね。」
イザークの後をてふてふとニコルとアスランが付いて歩く。
「どこか、他に思い当たるところないんですか?付き合い長いんでしょう」
「それと、これとは話が別だ!」
ちゃんと見つけて、罰ゲームを実行してもらわないと、せっかくの休みアスランとのんびりと思っていたのを邪魔されたのだ。
「……あっ」
ひとつ思い出した所、「そこ」は、ディアッカがたまに行くところでイザークはあまり好きではない場所
そこに居るときのディアッカは自分の知らない顔をしてるようで…
くるっと向きを変えて二コルとアスランの間を通り抜けてその場所に向かう。
その場所は戦艦の見晴らしのいい場所にある大きな窓からは雄大な宇宙が眼下に広がる、
ディアッカはそこからの景色…と言っても宇宙が見えるだけだが、好きだった。
何も考えずにただ“ぼっー”としてるのが
逆にイザークがここが好きではない理由、ディアッカが唯一イザークを考えない場所。
以前に見つけた時声を掛けても気づかなかった。ただ、“あぁ、いたのか”のごとくの反応をした。
それ以来好きではない。
「――ったっく探したんだぞ!!」
と、ディアッカの目の前に立つ
「あぁ、ごめん。なんか用?」
気のない返事が返ってくる、ここにいるだけでも腹が立つというのに、この言い方ますますイライラしてくる
「用があるから探してたんだろうが!」
「で、どうしたの?」
「――っ、あの」
「?」
怒りに任せて思わずディアッカの前に出てしまったが、考えたらこれは、罰ゲーム実行のためだった。
さっきの勢いはどこへやらで、俯いてしまう。
――なんだ?いつもと様子が…
「イザ?」
と前に立つイザークの腰を引き寄せて顔を覗き込む。
二コルからの罰ゲーム――ディアッカに“好き”ということ
たぶんその性格から面と向かって、好きなんて言ったこと無いであろうイザークへの罰ゲーム…。
あっさり出来ないことの考えの結果。
プライドが高くて恋愛に対して極度の恥ずかしがり屋なお姫様にとってこれほどの罰ゲームはないだろう。
ただ、ディアッカにして見れば“好き”って自分に対してだけに許された言葉を罰ゲームに使われてしまうのも悲しいものだが。
たかが、“す・き”って二文字だけじゃないか!!なんでこんなに簡単な事なのに出来ないんだ
俯きながらブツブツと言っている。同じことを何度も繰り返し考えていても言葉に出ない。
「イザ、大丈夫か?何かあった?」
と顔を覗き込まれるとますます言いにくくなり、真っ赤になる。
と、ガラス越しに見えた緑と青の頭。
――あぁ、二コルの奴なんかやったな…
アスランはわざわざ自分からイザークにちょっかい出すようなことはしない。
とばっちりも受けたくないだろうから、これは二コルが何かしらイザークにしかけたとしか思えない。
と、一方のイザークはまだこの罰ゲームを実行すべく模索している。
ふと、なんでこいつはあんなに簡単に“好き”って言えるんだろう。
そういえば、前に聞いたことがあった。
別に簡単に言ってるわけじゃないよ。本当に好きって思うから自然にだよ、
それに“好き”って言った後のお前の顔も“好き”なんだよなvv
自分じゃ気づかないかもしれないけどさ、すっごくいい顔するんだよ。
それ見れるのも俺だけってのもね。
普段見れない自分だけの特別な顔――。
そんなの見たことがない、だって面と向かってディアッカに“好き”なんて伝えたことがなかったから
でも、その自分だけの特権があるのなら見てみたい、性格が邪魔をして言葉にはなかなか出来なかったけど、
確かなのはこの目の前にいる男は唯一自分のすべてを見せられる人物。
ほんのちょっと、勇気を出して自分だけの特別な顔が見たい――
深く息を吸い込んで自分を落ち着けてから、しっかりとディアッカの目を見る
「ディアッカ」
「ん?」
「―――好きだ。」
急な告白に驚いて一瞬固まってしまう――がその後今までに見せたことのない優しい笑みを見せ
イザークを引き寄せてしっかりと抱きしめる。
「うん、俺も…」
「ディアッカ」
顔を見たくて名前を呼ぶと抱きしめたまま身体は離さず顔だけ上げる。
「好きだよ、イザーク大好き…」
「なんだ、意外にあっさり出来ちゃいましたね。もうちょっと楽しめると思ったのに
ねぇ、アスラン」
「――――。」
「アスラン?」
「いや、二人の関係は聞いたことがあったけど…ディアッカってイザークにはあんな顔するんだなって」
「いっつも、あんな感じですよ。あの二人は気づかなかったんですか?」
さて、これで二コルからの罰ゲームは実行できたがやっぱり負けたという事実に腹が立ってきた。
しかも、こんな罰ゲームさせるなんて。
今度は別のことで考え始めたイザークを「?」文字全開で見つめていると、ふっとイザークの目とあう
すると意地の悪そうに笑う
「…イザ?」
――なんか絶対、こいつ企んでる
と、ちょっと逃げ腰になる。
すると逆に抱きしめられて、顔をディアッカの耳元に寄せる
「―――――。」
二コルたちには絶対聞こえないような小さな声で“好き”の最上級の言葉を囁く。
今度はさすがのディアッカも真っ赤になる、が普段聞けない言葉をもらって幸せになる
ゆっくり抱きしめ返すとすぐ側にあるイザークの唇に触れるだけのキスをする。
「――ってイザーク!何言ったんですか?」
二コルがイザークに詰め寄る
「そこまでは、罰ゲームじゃないだろう」
と、さらりと答える。
「…罰ゲームだったのかよ」
何か企んでいるのは分かっていたががっくりと肩を落とす。
「えぇ、“好き”まではね。で、なんて言ったんです!!」
今度はディアッカに詰め寄る。
チラリとイザークを見るとちょっと赤くなって目をそらす
そんな行動を見ると確かに“好き”は罰ゲームだったかもしれないが、その後の言葉は多分ニコルへの仕返しも
含まれてはいただろうが全く心にないことは言わないだろうことは分かっていたし。
からかいなら照れなんてないだろうし
「んーーー、内緒。これは、俺だけの特権だからねvv」
と、傍にあるイザークの手をギュッと握ると逆に握り返してくる
「何て言ったのか教えてくれるまで付いてきますからね!!アスラン」
出来ればもう関わりたくないと言うのが本音。
だって、どうせ当て付けのように仲の良いトコ見せられても…何が悲しくて他人のしかもラヴラヴな関係を見たいと思う?
「アスラン!行きますよ」
と呼ばれてはぁとため息をつく
「…キラ…助けて(>_<)」
アスランの呟きが空しく響いた。