8:ト−ン貼り

 

(上図右)ベタ、ホワイトの次はトーン貼り。完成は目の前だ!
通常スクリーントーンと呼ばれる、シ−ル状の透明シートに柄が印刷されてる物を、ナイフで切って原稿に貼ります。


マンガは基本的に、白と黒だけの印刷。よほど良いオフセット印刷だと、薄墨でハーフトーンを表現できる事もあるけど、まああまり考えない方が無難ですね。
新聞の写真のハーフトーンのように、細かい均一の点々が並んでると、パッと見にはグレーに見える。この細かい点の並ぶ物をアミトーンと呼びます。
トーンにはそれぞれ番号が付いていて、アミトーンの場合、二桁の数字の左が点の目の荒さ(数字が大きい程細かい)、右が濃さ(数字が大きい程濃い)を表すので、分かり易いです。

私はだいたい、アミはI-Cトーンで言うと63.51.52.40.41.31番あたりを使います。
あまり目の細かいのはノッペリして好きじゃないし、印刷が悪いと出ない。
(かすれて白っぽくなるのを「とぶ」、黒くベタみたいになっちゃうのを「潰れる」と言います)
掲載誌によって、トーンの仕上がりも様々なので、難しいです。
20番以上になると、かなりパッと見で点々が目に入るので、ハーフトーンと言うよりは点々の柄模様扱いで使ってます。

トーンにはアミの他に、アミトーンの濃さが変えてあるグラデーションや、様々な柄、近頃ではCGによるハーフトーンを色々使った空、海、渦巻き、なんてのもどんどん出てる。色んな会社が出していて、それぞれ番号が違うし、集め出したらキリがないけど重宝します。

上図右で言うと、1.3.4コマの主人公のジャケットは52番、2コマ目の太め女性の髪が63番、1コマ目の手前の人物は11番。男性のチェックのシャツはI-C267番、太めちゃんの上着の荒めの砂目トーンはI-C234番
PC画面では、ちょっと見にくいかな?

トーンを切るのは、普通文具屋さんで売っているカッターナイフを使います。
デザインカッターと言って、普通のカッターのように刃を折るのではなく、一つずつ刃を差し換えて使うタイプもあり、より本格的なんですが、私は慣れないせいか使い辛い。
普通のカッターの、すごく握り手が薄くて軽い物を見つけて、気に入って使ってます<道具18>(今はもう売ってないみたい…)。
やはり手の疲労を考えると、重い物は疲れるし、握り手が太すぎると小回りがきかない。

小回りと言えば、カッターは普通でも、刃は角度30度<道具19>というちょっと特殊なのを使います。
一般的な刃な45度。30度の方が刃先が鋭く、細かい動きに対応し易い。
反対に、トーンを削る(トーンは上から刃で擦ると、印刷された模様だけが削り取れます)時は、普通の45度の方が安定して削り易いので、私は2本カッターを用意して持ち変えて使ってます。<道具17>
(4コマ目の男性の腰にフラッシュがかかっている部分が、トーンを削ってあります)

また、夜景や服の生地にキラキラを入れたり、というように、トーンの上からホワイトを乗せる事もあり、だいたい貼りながら平行してやっていきます。
この作業も、修正液<道具22>だとトーンの上から乗せ易くてよろしい。
ポスターカラー<道具21>を使う時は、そのままだとはじきやすいので、貼ったトーンの上から消しゴムをかけて、濃い目に溶いて使うとキレイにできます。

ところで、各人物の服を各シーン描き分けるのって、結構大変だったりします。
昔のアニメみたいに、一年中着たきりスズメなら楽と言えば楽なんだけど、いくらなんでも現実感が無いし、読み手にとってはシーンが変わっても分かりにくくてよろしくない。
私はどちらかと言うとシーン数も登場人物も多い方みたいで、しかもページ順に描かないので、もう頭ゴチャゴチャになっちゃう。

それで、必ずではないけど、こういう表を作りながら原稿を進めてます(左図・モデルの原稿とは別作品の物です)。
左にページ数、上が人物名で、主人公、副主人公(複数の場合もアリ)、あとはワキ役をひとつ欄にまとめて名前を入れておく。

おおまかなデザイン、襟刳りや袖の長さとか、メモしながら面線を入れていって、後からバランスを見ながらベタ、トーン(数字も)、ガラ等の覚え書きを入れながら仕上げていきます。

私はとっても便利だと思うんだけど、以前アシスタントに来た人に、笑われた事があったな。
覚えられない私が特別バカなのかも………。

トーンを貼り終わったら、めでたく完成!
もう一度ページを数えて順番を確認し、ミスが無いかチェックしましょう。
(いつも時間ギリギリで、確認もソコソコ、印刷になってからトーンの貼り忘れを発見!なんて事はザラですが…)

 

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