※登場人物他、設定条件は、すべてフィクションです。    

         ZIGZAGに向かう路地で (1)

 自宅から山手通りに出る手前に目黒川が流れている。その橋を渡ったところにフィットネス倶楽部「ZIGZAG」がある。真悠子は勤め先の仕事が終わった後、一旦家に帰ってから、自転車でZIGZAGへむかった。いつものように 川を渡ろうとした時、何か黒い影が近寄ってきた。急ブレーキをかけて自転車を止めたので、危うくつんのめりそうになった。

 「すみません、急いでいたものですから」息を切らしながら話しかけてきたのは、どこかで見たことのある男性だった。 ただその男性がどんなにスポーツマンタイプで、ソフトな雰囲気を持っていたとしても、本能的に恐怖を感じるのはやむを得ない。瞬間的にコンバットスタイルをとるところだった。格闘技系エアロビクス「ボディコンバット」は今彼女が一番気に入っているプログラムエクササイズである
 
 朝倉真悠子のエアロビクス経験は5年になる。恵比寿の自宅から自転車で10分のところに大手フィットネス倶楽部「ZIGZAG」ができて、そこへ移ったのは3年前のことである。

 ZIGZAGでは今までのエアロビクスに加えて、ニュージーランドの「ミルズインターナショナル」から発信されるグループエクササイズプログラムが取り入れられていた。ボディ・トレーニング・システムと呼ばれるそのエクササイズは、ZIGZAGの人気プログラムであり、好奇心の強い真悠子は当然の事ながら夢中になった。

 特にパンチやキックなど多彩なアクションを取り入れた「ボディコンバット」 は彼女のハートをしっかりととらえた。加えて、音楽に合わせて専用バーベルを使用するエアロビックな筋力トレーニングプログラム「ボディパンプ」は、女性らしさを保ちながら、筋力をつける絶好のプログラムとなった。

 そして何より男性が増えてきたのが楽しかった。 今までの男性エアロビクス参加者は少数で、ウエイトトレーニング目当ての筋肉派が主流だった。ところが最近は、ごく普通の男性がエアロビックレッスンを受けるようになっていた  

 
 










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