観光オンドル大車輪

2005/1/29〜31

E 東大門市場

鳥鍋
東大門は市場といっても南大門に比べ、デカいファッションビルなんかが林立していて、若者にへつらったイメージの強いところである。
ほんで、2日目は日曜日だったんで、本来の市場的なところはけっこうお休みなところが多く、これまたつまらぬ限りでございました。

うちらはまず、朝飯。
チャンプがガイドブックで見つけた鳥鍋を食わせる店を探した。
だいぶ、裏通り感満載のヤクザの死体でも転がってそうな細い路地の先に、鳥鍋を食わす店が数件合った。

さあ、どこに入るかだが、ある店のドアには
「元祖 ニワトリ館」
と、でかでかと日本語で書かれていたりする。

うちら3人の間では
「日本語が書いてあるところはうまくない」
という、共通認識があり(実際には日本語が書いてないところを探すのは不可能に近い)、そこは避けて、さらに奥に進むと、日本人が、店の前で記念撮影しているのに遭遇した。

日本語は信じないくせに、日本人はあっさり信じてしまううちらは
「ここが、ガイドに書いてあった店に違いない!」
と、強く確信し、店に突入した。

店に入ってみると、けっこう広いのだが、客は、うちらと、韓国人の家族だけだった。
なんとなく失敗的な雰囲気が漂う。

でも、韓国人の家族が入っているのだ。おばさんもわかったもので、「チキン?」と聞いてきた。
まさか、

「お前は根性なしのチキン野郎か?」


なんて聞いてきているわけはないので、まあ、間違いなく鳥鍋のことだろう。

ほどなくしてでかい「たらい」のようなものがごん!と、火にかけられた。中には、スープと、ねぎを大雑把に切ったものが浮かんでいる。
もうこれだけで、かなり美味そうだ。


隣の韓国人のテーブルにも同じものが出された。
「彼らのやり方をみてりゃあ、食べ方が分かるんじゃないか?」
チャンプが、韓国人を盗み見ながらいった。
それはいい考えだ。

すぐに鳥が用意され、どばどばと、これまた大雑把に鍋に投入された。

さあ、あとは韓国人どもが食うタイミングを見計らって、うちらも食うばかりだ。
と、とりあえず出されたキムチをぱくつきながら思った。韓国人家族も、キムチを一心不乱に食っていた。

5分が過ぎ、10分が過ぎる。韓国人は鍋に手を着けない。
おばちゃんが来て、はさみで鶏肉を小さく切ってくれる。

もういいのか?食っていいんじゃないのか?
うちら3人に緊張感が漂ってきた。韓国人は、いまだに鍋に箸をつけようとしない。

ちらちらと、隣の様子を伺っていると、チャンプが小声で、
「あっちも、こっちを伺っている」
と言った。

ほんとだ。

親父があからさまに、こっちが食うタイミングを伺っているのだ。

両方して伺い続けていたのでは埒が明かない。
チャンプが思い切ったように
「食うぞー!」
と言って、鍋に突撃した。
すると、韓国人家族も、ほっとしたように鍋にハシをつけ出した。

ああ、彼らも知らなかったのだろうね・・・・この鍋の食い方。

鳥鍋は美味かった。
韓国人たちもそれは幸せそうに食っておりました。

ちなみに後から知ったのだけど、さっきの
「元祖 ニワトリ館」
の店、あそこがガイドに載ってたところで、ここらの一番人気だったらしい。
帰りに覗いたら、客であふれかえっていた。

美味けりゃ、いいんだい!

F 夫婦喧嘩
夫婦喧嘩は犬も食わない

というが、犬も食わないものをこういうところに載せてどうか、と。
それは考えました。

でも、すでにこのことはチャンプがホームページに書いているし、まあ、ある意味、今回の旅行のクライマックスでもあったかも知れないので、敢然と書く、ことにした。

事は、東大門の帰り、仁寺洞(インサドン)に行く為、乗換えで降りた地下鉄で起きた。

乗り換えるために、新たな切符を買わなくてはならない。

今までは、窓口に行き先を言って、金を渡し、直接切符を受け取る(正確には投げて寄こされる切符を受け取る)、という方法をとってきた。

なのに、何故か、今回に限って嫁のチャレンジ精神がむくむくと芽生え、窓口の隣に敷設されている自動券売機に500ウォンを突っ込んだのだ。

うんともすんとも言わない券売機。

今までは返却スイッチを押すと、返却されたのだが、今回は全く反応しない。

仕方なく、券売所のおっさんに
「500ウォンがでてこない!」
と、間違いなく理解できないのは分かっていても英語で言った。

しばらく押し問答の末、めんどくさそうにおっさんは、400ウォンよこせ、と言った。
それで、900ウォンのチケットを売ってやるからそれでチャラにしろ、と言うのだ。

おっさんは明らかに不機嫌そうだった。
大体において韓国の窓口の人間は態度が悪い。日本の中年オヤジの客と同じくらい態度が悪い。でも、今回は、こっちが客なのである。

この辺が、やっぱり韓国人は中国人に近い、と思わせるのだ。

その態度を見て、嫁は切れたらしく、
ぶつぶつぶつぶつと、文句を言っていた。

それを聞いていて、
「おかしくねえか?」

と思った。

@ 韓国人は何はともあれ金を返してくれた。
A 金が返してもらえるよう、ダダをこねたのはオレだ。
B いままで、韓国人ですら、券売機を使ったのは見たことがなかった。たぶん、よっぽど信用が置けないのだろう。それを何故か突然使ったのは嫁だ。
C 券売所にいた韓国人はたぶん何も悪い事をしていない(態度は悪い ) 。

以上のことが急速に頭の中を45回転し、

「りえがわるい」

と言ったのだ。

「りえがわるい」

・・・・・ああ、こんな一言が、この旅行をぶち壊す寸前まで行こうとは・・・。っていうか、言った瞬間、オレも
「あっ!やべっ!」
って思いましたよ。今までの(数限りない)経験から言って、うちの嫁は自分の非のないところで自分のせいにされるのが一番キレるっていうのは分かっていましたから。

ブチッ!

って音が聞こえたね。ホント。

りえは怒ってどんどん行ってしまう。とりあえず追いついて、同じ電車に乗ったものの、次の、なんだかよく分からん駅で降りた嫁は、そのまま走ってどこかにいってしまった。

外国のどこかよく分からん駅で、だ。

最初は大して追う気もなかった。
オレもちょっと怒ってたんだろうな。

でも、駅構内をチャンプとくまなく探してやっぱいない、となった時

コレハヤバインジャナイノカ

と、真剣に思い始めた。

まず、第一に嫁が心配だ。
@ いくら1年の旅をしてきたとはいえ、ここはガイコクである。
A 従って、嫁がブジに宿まで帰りつけるという保障はどこもない。
B しかも悪い事に、唯一のガイドブックはチャンプが持っている。

さらに、よく考えなくても、チャンプにしてみたらいい迷惑だよな。
C 何しろ、3日間しかない旅行の、今日は中日であり、ある意味、一番大切な日だ。
D 今日が無駄に終わる=旅行が無駄に終わる。
E この喧嘩がチャンプにもたらすのは、せいぜいホームページのネタを提供した事くらいだ。

なんてことが頭の中を125回転した。

コレハヤバインジャナイノカ!!

チャンプが、あからさまな苦笑いをしつつ、
「とりあえず、行ったと思われる方向に歩いてみようぜ」
と言った。

今までの(数限りない)経験から言って、こういうとき、嫁は大抵どこか近くにいて、しばらくしてから同じところに戻ってくるものだった。
だから、本来は、この駅で待つのが一番良かったのかもしれない。

だが、じっとしてもいられず、結局チャンプとミョンドンまで歩いて戻るハメになった。

今、地図を見てみると、忠武路と言う駅から明洞までは500メートルある。たかが、500メートルだけど、やけに長く感じたものだ。余りに焦っていたせいか、今までの嫁との喧嘩の話などをチャンプに取り留めなく話し続ける自分がいたりした。

だけど、結局見つからなかった。さすがに、もうこれ以上チャンプにつき合わせるのはやばい。
チャンプに、チャンプはチャンプで、悪いけれど、一人で観光していて欲しい。そんで、気が向いた頃に、一度旅館に帰ってきて欲しい、と言った。

携帯電話がない以上、そうするしかない。

でも、そうしてしまったら、正にもう今日はおしまいになってしまうようで、なかなか切り出せなかったのだ。

どこかに急に理絵が見つかり、逆転満塁ホームランがあるんじゃないかと期待したが無駄だった。

明洞でチャンプと別れ、一路、さっきの駅へと向かった。

実は、オレの考えは正しかったのである。
走って消えた後、嫁はすぐ近くの寺に行って、のんきに写真を撮り、すぐ駅に戻ってきて、地下鉄で宿まで帰ったらしいのだ。

でも、もうすでにその時には駅にはいなかった。
駅で、宿に帰る地下鉄を待ちながら、

「帰って、店の連中に『韓国、どうでした?』なんて聞かれたら、『いやあ、よめとけんかしてさんざんでした、ははははは!』なんて言うのかな?」

なんて縁起でもない事を考えていた。

で、嫁は宿に帰り着いていたのだ。程なくしてチャンプも戻ってきた。

勤めて無視しようと、普段読みもしないガイドブックを読み続けるチャンプを尻目に
謝って、謝って、謝り倒し、
たまに独り言まで混じるチャンプを尻目に
宥めて、宥めて、宥めすかし、
嫁は急速に機嫌を直し、3人で仁寺洞へと向かう事になったのでした。

たぶん、お腹が空いたんだと思われます。

めでたし、めでたし・・・・・か?ほんとに・・・?


G 仁寺洞〜伝統喫茶
仁寺洞に来て、なんだかこの旅行で初めて
外国人旅行者
を見た気がした。

ここは、完全に観光客しかいない場所だった。
日本で言ったら浅草?だろうか?
伝統的な小物を扱う店がずらりと並び、そこに白人だの日本人だのがぶわわーっと群れている。

嫁はけっこうこういうところが嫌いではなく、色々と店を冷やかしてまわるのが楽しそうで、確かに、青磁のいい店があったりもした。

逆にチャンプはつまらなそうで、サウナにいる時の10分の一ほどの興味で流し見をしていた。

もう3時だったので、随分遅くなったが、昼飯を食うことにした。

そこは、オレがガイドブックで、唯一ここは行こう!と決めていた店で、韓定食を食わす店だった。
なまえを「サランチェ」という。

韓定食は、各種のナムルとキムチ、プルコギ、テンジャンチゲ、チヂミ、木の実の炊き込みご飯が付いて10000ウォン。日本の定食って考えるとちょっと高いけど、ご飯やナムルはもちろんお代わりし放題で、かなり食べでがある。

メシは美味かったのだが、そこに先客としていた親父がうるさいの何の・・・

自称絵描きなのだが、英語もろくろく離せないくせに、やたらと話しかけてくる。

店の人と知り合いのようなのだが、店の人もあからさまに持て余しているのが分かり、

「出来る事なら、そっちの客とずっと話していてくれないか」
という雰囲気さえ感じられる。

終いに、依然会った日本人に書いてもらった住所をみせて、チャンプにも書け、と、言ってきた。

うちら夫婦なら断ってしまうところだがチャンプは快く引き受け
「キヅキ チャンプロー」
とか何とか変な名前を書いていたが、

「キヅク・・・チャン・・・ロー?」
とか言って、オヤジは満足そうだった。

さて、その後で、耕仁美術館にある伝統喫茶に言った。

伝統茶とは菊花だの、棗だの、薄荷だのを煎じたノミモノで、なんとも言葉にするのは難しい、フクザツな味なのです。
その極めつけが「薬膳茶」というもので、正に漢方薬漬けになったようなお茶なのだ。

初日はちょっとびびって、スジョングァというシナモンのノミモノ(と言うか、シナモンの原液に、朝鮮人参をぶち込んだ味と考えてください)と、五味子茶(これも、漢方薬の絞り汁って感じ)と、柚子茶(これはいける。柚子ジュース)を飲んだ。

翌日も訪れ、オンドルに座れたので気分が良くなったか、チャンプは薬膳茶を頼んだ。

薬膳茶は考えうるすべての漢方薬を煎じてみました!と言う感じで、なんか、森の奥で魔法使いのババアが煎じていそうなノミモノである。

チャンプは満足だったのだろう。きっとそうだ。

その後も喫茶店で伝統茶を飲み、

@菊花茶A棗茶B五味子茶C柚子茶DスジョングァE薬膳茶2種類F杏茶を飲んだけど、まあ、飲めるのは@CF位で、後はまあ、
すごいものだった。

でもチャンプは満足だったのだろう。だって、また飲みたいって言ったんだから。

伝統茶。深いなあー。