鉄砲玉日記

 

2000年8月19日
サマーオブどんと2000(東京:日比谷野外音楽堂)
 

この日は朝から涙も汗もダラダラ出るよっていうくらい野外ライブにぴったりの晴天。私の場合、野外だと結構雨が降ることが多いから、これもどんとの遺徳の賜物だなぁなんて思いつつ、初めての日比谷野外音楽堂へ向かった。日比谷公園の中にある野音は大きな木々に囲まれていて、強い日差しのせいもあってか、なんとなくジャングルっていう雰囲気。会場の周りにはどんとがやってたローザ・ルクセンブルクやボ・ガンボス(こっちの方が断然ファンが多いのだろうけど)のいかにもファンとおぼしき、ラスタ風やヒッピー風帽子を被った兄ちゃん(みんな色黒)やら、インド風やサイケな布巻き付けっぽい衣装のねーちゃん(こちらは色白)やらが長〜い行列を作っている。最近のライブ会場ではめったに見ない懐かしい雰囲気に心が妙にワクワクする。やっぱりね、お客さんが作り出す雰囲気って大事よねーと思いつつ会場を待ちました。

ご存じの方も多いと思うけど、ちょっとこのイベントの主人公であるどんとの説明をすると、1986年2月にローザ・ルクセンブルクというバンドでメジャーデビューをして、翌87年に同バンド解散後、ボ・ガンボスを結成。折からのバンドブームの中で独自の音楽性を存分に発揮し、独自の存在感を大いに放った後、95年にこれまた解散。その後は住まいを沖縄に移し、主にソロ活動を中心として、またもやすごーく独自な活動を行っていた矢先、今年2000年の1月27日、バカンス先のハワイでなんとぽっくりと死んでしまった。享年37歳。あまりにも突然の、あまりにも惜し過ぎる死に、大小様々の追悼ライブやイベントがいくつも行われ、このサマーオブどんとはその集大成という感のあるイベントでした。

ようやく開場になって、どんとが一番好きな会場だったという野音の中に入ると、色んなビデオで見ていてイメージしていたのよりずっと小さく、妙にアットホームな感じがした。今日は立見席なので、スタジアム状に作られている客席のその後ろ、舞台に向かって右側に場所を取った。その時には当然、玉城宏志(ローザ・ルクセンブルク時代のギター)さんがよく見えるところと思って、右側に行ったんだけど、よく考えてみたら、色んなミュージシャンが多数(30組近く)登場するイベントなのに玉城さんがローザの頃のように右側にいるなんていう保証はない訳で。すっかり気分と習性はローザファンの頃に戻っていた私(笑)。取った場所はくぬぎの木の下で、日差しよけには丁度よかったけれど、セミの鳴声がものすごーく大きく響いていた。

上にも書いたけど、この日出演したミュージシャンは20組以上(詳しいセットリストは こちら をご覧ください)。ほぼ一組1曲のペースでドンドン出演者が入れ代わり、立ち代わり、どんとの曲や自分の持ち歌を披露していった。それを可能にしたのが、ボ・ガンボ・ローザの存在。どんとを除く、ローザ・ルクセンブルクとボ・ガンボスのメンバーが合体して、出演ミュージシャン達のバックを務めた。メンバーはギターがローザの玉城宏志、キーボード&ギターがボ・ガンボスのKYON、ドラムはローザの三原重夫とボ・ガンボスの岡地曙裕の二人体制。そして、ベースはもちろんローザ、ボ・ガンボスとずーっと一緒だった永井利充。あーーー、書いているだけで、鼻血が出るっ。永井くんの衣装は、白のシルクハットに白のスラックス&上半身裸に白のサスペンダーでやっぱりとんでもなかった。玉城さんは、赤のチェックのパンツに白と赤チェックのTシャツの重ね着。頭は茶髪がフワフワとしていて、遠目に見るとロンドンパンク小僧って感じで、若作り(ホントは42歳)だった。他の三人は覚えておらず、ごめんなさい(笑)。

オープニングでの、どんとの奥さんである小嶋さちほさん(元ゼルダ)がやってるバンドのアマナの演奏後、永井くんが登場。永井くんは不思議の国からやってきて不思議を食べて暮らしているらしい(この後、なんどもネタにして笑いを取っていたけど)。で、どんとがお祭好きだったこと、みんなもどんどん盛り上がって楽しんで言って欲しいなんていうMCを、永井くん独特のゆーっくりとしてて、妙に明るいあの口ぶりで話してくれる。なんだか、こっちも心がフワフワってしてくる感じだ。で、最初に出てきたのが、UA。歌うのは「トンネル抜けて」。おぉーー、最初っからこれかよ〜っていう人と歌。玉城さんとKYONのギター2本で、巻き上げるようにでも、どっか軽々と歌い上げるUA。これから夕方っていう空の青さのようなとても気持ちのいい歌い方。とてもおしゃれな感じの「トンネル抜けて」になっておりました。

で、この後、ボ・ガンボ・ローザの全員が登場。本当に久々の三原さんに、「三原さーん」コールが止められない私でしたが、泉谷しげるが出てきたのを見て、ううっ、おっさんだーーとすぐに泉谷コールに変更(笑)。いつもどおり、ワシワシという感じで登場し、フォークギターを掻き乱すように弾きながら、どんとのことを一席歌いしゃべる泉谷。引き続いて「春夏秋冬」にやっぱりコレかよとズッコケつつも嬉しかったりして。バックは岡地さんと三原さんが二人でドラムやってたんだけど、三原さんのシンバルの音がとても素敵でじーっと三原さんの手首ばっかり途中から見てしまった。

で、泉谷退場の後、玉城さんが「ロシアから呼びました。トモフスキー!」とよくわからないMCをして、トモフ登場。めっちゃ、跳ねてます。登場した途端に「どんとさーん、見てますか〜」とビデオで聞いてたあの甲高い声で叫んで、始まる曲は「さいあいあい」。バックもローザメンバーだけになってるようで、まったく違和感なく聞けました。でも、あんまりにも違和感なさすぎで、トモフスキー見たって感じがあんまりなかったのが残念だったかも。次に登場したのが元たまの柳原陽一郎さん、歌はソロ時代の「昨日までは男風呂、今日からは女風呂」という知らなかったけど、すごおおくどんとらしい歌。柳原さんの歌はお化けが出そうなうにょうにょっとした声なんだけど、とっても歌詞が聞き取りやすくって、しっかり耳に残る歌でした。

で、ここで一旦、ボ・ガンボ・ローザは退場。玉城さんが率いるマチルダ・ロドリゲスが変わって登場。で、このバンド、先日、肝心要のボーカル君が抜けてしまったので、代わりに歌ったのはシアターブルックの佐藤タイジさん。シアターブルックのファンらしき女の子達がそこかしこで声援をしておりました。で、曲はローザの「毬絵」。真珠玉のような玉城さんのスライドギターの音色は健在でした。もう、この音だけで浸ってしまいそうだったけど、上にのっかる佐藤タイジのボーカルの凄いことっていったら。まず声が大きい。とんでもなく大きい。で、かなり彼特有のクセをつけて歌っていて、すっかり怪しげな自分の世界に引き込んでおりました。うむー、テレビとで面白い兄ちゃんとか、シアターブルックっておしゃれな感じ?って思ってたのが覆されましたわ。もっと聞きたいと思いつつも、あっさりマチルダロドリゲスは退場して、永井くんが登場して、どんとが沖縄に行ったきっかけともなったミュージシャンの紹介をして登場したのが喜納昌吉さん。歌は「花」。泉谷といい、オジ様たち、惜し気もなく得意技を披露するのが凄いです。初めて聞く生「花」はやっぱり凄かった。三糸の音も喜納さんの声もぴーんと野音の空中に張り詰めて、耳が釘付けに。混じりっけなしの音と声は凄く強いものでした。

そして次に登場したのがZELDA。小嶋さちほさんがやっていた女の子ばっかりのバンドの元祖ともいえるバンド。最近、ローザが「伝説の」なんていう言葉を付けられて紹介されたりするけれど、そんなローザがメジャーデビューした頃に既に「伝説」だったのがゼルダ。そのゼルダが生で見られるなんてーーーーーーーーっ!。すでに正気を失っている私(笑)。本当に久々の再結成。そのためか、ボーカルのサヨコが「どんとさんのお祭ですが、私達は自分達の曲をやります。」と言ってやったのは「アシュラ」。ちょっとアラブのメロディが混じったような怪しげなメロディに、太くて強いリズム隊の音。女の子バンドの音とは思えない力強さ。ボーカルのサヨコは両手にマラカスを持って、それを振り回すようにこれまた怪しげな踊りをしていて、本当に独特の雰囲気がありました。これこそニューウエイブって感じ。凄いよーー、ゼルダぁ、もしまたやるんだったら、絶対行くぞーっ!。

サヨコの「どんとは晴れ男でしたが、次は嵐を呼ぶ男と言われている・・・・」という紹介を聞いて、うん?えっ?もしかしてあの人ですかっ?私をすっかり野外ライブ雨女にしたあの人っ??(1999年のMEET THE WORLD BEAT参照)と思ってたら、その通り、登場したのがTHE BOOM宮沢和史さん。今日は一人でギター一本で弾き語りのよう。衣装は水色のTシャツにジーンズで、いかにもカジュアルな雰囲気。どうもふちなしのメガネをかけていたようです。「ローザ・ルクセンブルクの曲をやります」と言って始めたのは「ひなたぼっこ」。この曲はローザの最後期の曲で、どんとのソロと言ってもいいくらいの曲なんですが、MIYAくんが歌うとすっかりまじりっけなしのMIYA節になっていました。最初は柔らかーく入って、そして、どんどん唸る唸る、粘る粘るっって感じです。すっかり歌いなこなしているようでしたが、ちょっとだけ歌詞を忘れたのが惜しかったかも(笑)。

で、休みなくTHE PRIVATES。ノブちゃんはやっぱりふにゃふにゃなハイテンションで妙に面白い。でも、やった曲は、凄くロックンロールやぜぇという感じでカッコいい。キーボードはめっちゃ迫力あるし、メンバーが思い思いにステージ上で動きまわって、「わっ、バンドだーっ」って感じ。あんまりしっくりといかにもプライベイツっぽいR&Rだったんで、自分達の曲なのかなとすっかり思い込んでいたんですが、後で確かめたら、「Candy Candy Blues」というボ・ガンボスの曲だったようです。その次が、Soul Flower Union中川敬さんと伊丹英子さんにKYONと永井くんなどを交えての「トンネル抜けて」。そして、この日は嬉しいことに内海洋子さんもご一緒ーーーっ!!。中川さんは「別れても好きな人です〜」なんて言っておりましたが。大分とアコースティックなアレンジで、中川さんと伊丹さんの声が野音の夕暮れ近い空気にさーっと広がっていくのがとっても気持ちいい。やっぱり上手いし、元曲の感じも結構残した感じになっていて、とてもよかった。洋子ファンとしては、もうちょっと洋子さんの声が聞きたかったけど。

そして、THE GROOVERSの登場。今は3人で活動してる彼らですが、今日は4人でやるっていう噂を耳にしてたんですが、最初に登場したのは、今の3人。高橋ボブさんはやっぱり小さい〜(笑)。いつもはヘビーなロックをやってるバンドだから、何をやるんだろうとワクワクしていたら、始まったのは「さかなごっこ」!!。凄いヘビーな音の上に乗るあのさかなごっこのメロディ。もちろん、みんな大喜びで、ここでみんな一斉に立ち上がって、踊りまくり。ヘビーな3ピースの音を聞きながらやる「うーっ、ポリポリポリッ」の手振り身振り(笑)。すっごい面白かったです。10年前の不思議なミクスチャーと、今のガレージっぽい音の異種格闘技っていうか、時空がねじ曲がるような不思議な感覚がありました。その後で、元メンバーの西村茂樹さんが登場して、ローザの「さわるだけのおっぱい」。こっちはどっぷりと昔な感じ。やる曲、やるメンバーで、どんどん時間の居所が変わっていくのかなぁとちょっと感傷にふける私。

で、久々に永井くんのMCコーナー。永井くんがしっかり説明する時には誰か大物が登場するみたい。この時にはどんとのルーツミュージックにはフォークソングがあるっていう話の後で登場したのが、友部正人さん。最初にどんとと一緒に作ったという「かわりにおれは目を閉じてるよ」。前に阿佐ヶ谷のライブで聞いた時より高い声で歌う友部さんの声がどんとの声に聞こえてくるようだった。そして、サビの「どんとがここにいない代わりにおれはどうすればいい」のフレーズに胸がまたもやジーンとする。で、もう一曲、「朝は詩人」。ボ・ガンボ・ローザのメンバーも登場して、一緒に演奏する三拍子のギター、ベース、ドラム、キーボード、タンバリンがたまらない。特に三原さんのタンバリン、いい感じ。友部さんもこの曲は歌い慣れているという風で、独特の喉を絞った声が心に染みる。これもすっごくいい演奏。KYONのキーボードソロも玉城さんのギターソロもとてもよくって、ちゃんと一体感もあって、ホントにここにどんとがいないのが惜しまれるような演奏だった。

そしてーーーっ、チッチキチッチキと三原さんのドラムが刻みを入れ始め、永井くんのベースがデデデ・デデデデデンと鳴りだしたっ。おぉぉぉぉぉぉぉーっ、思わず「ニカラグアだーっ」と大きく叫ぶ私。そう、ローザの「ニカラグアの星」ですよっ。あぁぁぁ、13年ぶりーーーーーーーーっ。KYONのキーボードの音が重なって、音に分厚さが増して、ものすごくカッコいいっ。もうすでに頭真っ白で、三原さんと永井くんのリズムに身を任せて、踊りまくり。この日は玉城さんがボーカルを取る。くーっ、やーっぱぁ、ちょっと迫力不足かもぉと思いつつも、音中心のパートに移ると、グルーヴ感がぐあーって出てきて、音もどんどん濃くなっていって、本当によかったぁ。この楽器のセッション感ってのがローザだったんだよねぇとシミジミと思う一瞬でありました。で、次がKYONの「ほんとに」。ピアノにニューオリンズから来たA.J.Loriaさんとブルースハープにプライベーツのノブちゃんを交えて。さすがKYONの持ち歌だけあって、いい感じでまとまっていて、ほんわかと楽しく踊れる感じ。場内もボ・ガンボスの歌の時にはやっぱり盛り上がりが違うし、明る〜い雰囲気が場内に満ちてくるようだった。このニカラグアとほんとにの違いってローザとボ・ガンボスの違いをよく表しているようで興味深かったなぁ。

次に永井くんがティアドロップスの中島カズさんを呼ぶ。で、中島さんはそのままベースの位置へ。とすると今度は永井くんが歌う番らしい。「何を歌うんだろう?やっぱ、デリックさん物語?だったらちょっとヤかもー(笑)。」などと思ってると、永井くんのMCが。「今度はMCではありません〜。一曲オレも歌わしてもらわんとこかと。その前に『永井くんには歌って欲しない』と言いよるかもしれへんから、ちょっとどうしよかな。電話してみるわー」ここで大きな歓声。永井くんの得意MCらしい。KYONがギターで、プッシュホンの擬音を鳴らす。うわー、そっくりやん。特に呼び出し音なんてホンモノそっくり。と思ったら、ちゃらららーんとあの「お客様のご都合により現在・・・・」のチャイムの音に変化(爆)。永井くん「払っとらへんやん、アイツー(爆)」で、もう一回。「そうや、そうや、今度は沖縄かハワイの局番でいってみましょ。」今度はさっきより長めのプッシュ音。KYONも芸が細かい(笑)。「ガチャーーッ!。もしもーし。いやぁ、久しぶりーー。なにしてんのぉ?。やっぱり、お祭か。オレもやってるよぉ。そおやなぁ。ほんならさぁ、オレ、もうちょっとこっちでしばらくはお祭三昧やってるからさぁ。じゃ、久しぶりにどっかでさ、デートでもしようぜ、デート。どこがええ?どこやろ?アムステルダムのカフェでしょうか〜?。違うねん、今日は違うぞぉ。今日は夢の中でデートしようぜ。」客席大歓声。すかさず、ギターアルぺジオが入って「夢の中」。イントロの玉城さんのギターソロの適度に歪んだ音が胸にじーんときて、めっちゃカッコいい。うわー、なんで玉城さん、ボ・ガンボスの曲なのにこんなにぴったりに弾けるんだぁと涙が出そう。永井くんの歌もすごーく上手い。ほんと、永井くん、歌上手になったわ。永井くんのあんまりの立派さぶりにやっぱり13年という時間が経ってしまっているんだなぁと実感したのでした。この曲がやっぱ、いっちばんだったかな、ほんと、よかった。

次に登場したのが、ブルースハープの石川二三夫さん。そして、私のお目当てのもう一人でもある下山淳の登場ーーーーっ。あぁ、生きて、私のギター師匠の第1号である下山淳と第2号である玉城宏志さんの共演が拝めるとはっ(とはいえ、ローザ解散直後に色々一緒にやってたみたいだけど)。あぁ、ありがたや、ありがたやと思わず地面に土下座してしまいそうになる私。いや、長く生きてみるもんだよなぁ(笑)。やっぱり願望はいっぱいある方がいい。かないっこないと思っていることでも、こんな風に実現しちゃうこともある。という訳で、いつかこのお二人と私のギター師匠第3号であらせられる杉本恭一さんの共演を心密か(じゃ、ねえか)に祈っておこうっと。曲は「ミステリートレイン〜夜のドライブ」。最初、骨っぽくってでもサイケな下山のギターが唸る。そして、ド迫力の石川さんのブルースハープ。うわー、カッコええっ。あー、こんなに凄い人がいたなんて〜っていうくらい一度で惹きつけられちゃった。あー、ブルース。あぁ、ロックンロールって感じ。石川さんは歌も上手い。声がよく通って、情感たっぷり。下山の掠れたコーラスもいい感じ。KYONのピアノソロもよく音が跳ねててよかった。あー、そして、久々の下山のギターソロ。ほんと、この人のギターのウネらせ方って大好き。そして、ギターを横に引くようなアクション。カッコええ。この変態っぽい派手さのあるステージングは下山ならではだな。で、ボーカルのヘタレな感じもやっぱり下山だったし(笑)。この後、なぜか、なぜか、柴山俊之まで登場して、サンハウスの「スケコマシ」をやる。やっぱりオッサンは傍若無人である。自分の得意ワザだけ発揮して帰っていく(笑)。一体、柴山はいくつになったんだろう?86年に仙台のロックンロールオリンピックでその日だけ復活したサンハウスを見て以来だけど、その時と外見は変わっていない。茶髪の長髪。上半身は裸で、幅の広い白いパンツ。あ、そういえば、この時にもローザと下山淳は一緒だったんだ。下山はルースターズとミチロウのゲットザヘルプと両方出てたっけ。で、最後の全体セッションでお定まりのツイストアンドシャウトをやって、その時のどんとの本当に嬉しげで大きな通る声に妙に惹かれるものがあって、ローザ・ルクセンブルクを聞き始めたんだよなぁ。

で、長い〜長いセッションの後に登場したロッキンタイムの今野英明さんの「スリーピン」桑名晴子さんの「カーニバル」が物凄かった。ほんと、二人とも声がいい。ホントのボーカリストの声って感じの張りと存在感のある歌いっぷりで客席を魅了。いやー、なんか日本だけでも凄いミュージシャンが山ほどいるなぁと認識がしゃきっと改まった感じがしたかも(笑)。そして、ひょこひょこって感じでくるりの岸田繁くんが登場。ちょっと緊張してるのか、他の人達とは違った雰囲気だ。この日、数少ない今旬のミュージシャンに場内の視線も集中している感じ。岸田くんはアコギを持っている。そして、ドラムが岡地さんから三原さんにチェンジ。とすれば、やるのはやっぱり「橋の下」。玉城さんのアルぺジオがちょっと速めな感じがする。で、岸田くんのボーカルがちょっと遅れ気味な感じで入る。なんていうか、バックはローザ・ルクセンブルクという『バンド』の橋の下をやろうとしているんだけど、岸田くんはレコードやどんとが一人でやってる橋の下をやってるのかなとふと思う。妙に噛み合わない感じで1番が終わる。KYONの音源どおりの奇麗なアコーディオンが入り、三原さんのドラムがブレイクして、リズミカルなスネアの音が入りだすと、急に曲全体が生き生きとしてきて、玉城さんのギターソロもウネリが出始めたように聞こえた。そして、私の頭の中にも昔のローザの音が蘇ってくる。そうそう、このドラム。このベース。これがローザの音だよーっ。岸田くんもようやく後ろをふり返って、玉城さんの方を見て、蘇ってきたローザのグルーヴに乗っかって歌い始めたような気がした。そう、橋の下はバンドの曲なんだ、いっちばん大切なのはこの渦を巻くようなグルーヴ感なのだと改めて思いを深くしたのだった。しかし、岸田くんは歌詞の「おはな」とか「あした」関西アクセントだったのが面白かった〜。

いよいよ、ステージもクライマックスを近いのか、小嶋さちほさんのバンドAMANA「坊さんごっこ」海の幸「よいよい」と続く。このへんはすっかり私の知らないどんとの世界。しみじみ聞かせるように見えて、でも、あちこちに何事にも徹底しなきゃ気が済まないというか、エネルギーを次ぎ込まなきゃいられないというどんとの感じがそこかしこに伝わってくる。スタイルや音の色合いは違っても、それに向かう視線の強さは同じように感じる。あー、私も食わず嫌いしないで、どんとの曲、もっと聴かなきゃいけないなぁと思いながら、あっかるいカチャーシー風のよいよいで踊りまくってたのでした。で、本当にフィナーレ。今までの出演者がわんさかとステージに集結。ステージに溢ればかりの人を見て、今日のお祭の凄さをもう一度実感する。まずは今野さんの歌で「あこがれの地へ」。そして、最後の最後が何故かノブちゃんが音頭を取っての「どんとマンボ」。ホントにステージにも客席にもどんとに対する愛情と、今日の楽しさがいっぱいいっぱい満ち満ちているっていう感じだった。ほんとみんな嬉しそうな顔をして、どんとの名前を呼んで、思い切り、踊って、跳ねて、歌って。ホントに、ホントにどんとのお祭をみんなで祝いあっているという感じがした。ホントにこのフェスティバルに参加できてよかったと思う。

お客さんの送り出しなのか、それともまだまだお祭は続くのか、ステージ上にブラスバンドが登場して、どんとの曲を色々とやっている。お客さんたちもステージ前に集まって、それに合わせて歌っているようだった。まだまだ残っていたかったけど、急がなきゃいけない用事もあったので、開場を早々に後にした。夜の日比谷のビル街にどんとの曲が響いていた。ふり返ると、金色に光るスタジアムからどんとの声が聞こえてきた。ローザが1987年に解散してから13年。色んなことがあって、色んな風に時間が流れていって、昔のあの時と、今のこの時は全然違っちゃっているのかもしれないけど、一つの歌が、ほんのちょっとの声がそれらを全部つないで、明日に放り投げ出してくれたっていう気分だ。うー、よくわからない感想でゴメン(笑)。