☆★☆ たこやきめぐり 第34回 ☆★☆

再現不可能な思い出の味を追求して
− たこ八 その2 −

熊谷真菜
 現在全国に19の直営店、タカシマヤを中心にデパートの地下にもテイクアウト、 イートインのコーナーをもつ。
社員150人、フランチャイズチェーンが凌ぎを削るときに、 直営によって味を守ろうとする姿勢は見上げたもの。
角山さんが師としてあおぐ、オーナーに会う価値は十分ある。
ただいま焼きあげ中
たこ焼き6個とつゆ
 通された社長室は千日前にある自社ビルの最上階。 開店に向けて約一年、粉の配合から味つけまで、 たこ八の味を決めたオーナーの曾根光庸さんだが、一瞬ドキッとしてしまった。
まずでかい。そして凄味がある。 存在感があるというか、一度会ったら二度と忘れられないタイプ。 開口一番「これとちゃいまっせ」と頬をなぞるから、土地柄もあって余計にホンモノぽくみえる。

 それは冗談として、この地で生まれ育った 曾根さんは、小さいときから、ホンモノのう まいたこ焼を食べていた。おやつに相合橋の たもとに買いに走った新井のたこ焼、麻雀店 をしていた母親が朝ごはんの代わりに置いと いてくれた新井のたこ焼。豆タンの微妙な火 加減、タコは大きくなかったけれど、さめて もうまい、曾根さんにとっては、まさにそれ がおふくろの味だった。法善寺のおじいちゃ んのたこ焼も思い出の味だと語る。

焼きあがり6個

 たこ八が直営店にこだわり、味に責任を持 ち続けようとする思いの原点がここにあるこ とを痛感する。  歩く速度が身を守る。いろんな商売を手掛 け、若い頃は苦い経験もある曾根さんが、う まいものを探究する食通として、たどりつい たのが、たこ八だったのである。  「ホンマにうまいたこ焼き屋はない。」あのとき体験した たこ焼はたこ八でも再現は不可能だという。 そのひとことの重さが、曾根さんの存在感に通じているような気がした。

 戻る |★| 続く...


好っきゃねん大阪  月刊たこやきめぐり  真菜のホームページ