現在全国に19の直営店、タカシマヤを中心にデパートの地下にもテイクアウト、
イートインのコーナーをもつ。
社員150人、フランチャイズチェーンが凌ぎを削るときに、
直営によって味を守ろうとする姿勢は見上げたもの。
角山さんが師としてあおぐ、オーナーに会う価値は十分ある。
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通された社長室は千日前にある自社ビルの最上階。
開店に向けて約一年、粉の配合から味つけまで、
たこ八の味を決めたオーナーの曾根光庸さんだが、一瞬ドキッとしてしまった。
まずでかい。そして凄味がある。
存在感があるというか、一度会ったら二度と忘れられないタイプ。
開口一番「これとちゃいまっせ」と頬をなぞるから、土地柄もあって余計にホンモノぽくみえる。
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それは冗談として、この地で生まれ育った
曾根さんは、小さいときから、ホンモノのう
まいたこ焼を食べていた。おやつに相合橋の
たもとに買いに走った新井のたこ焼、麻雀店
をしていた母親が朝ごはんの代わりに置いと
いてくれた新井のたこ焼。豆タンの微妙な火
加減、タコは大きくなかったけれど、さめて
もうまい、曾根さんにとっては、まさにそれ
がおふくろの味だった。法善寺のおじいちゃ
んのたこ焼も思い出の味だと語る。
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たこ八が直営店にこだわり、味に責任を持
ち続けようとする思いの原点がここにあるこ
とを痛感する。
歩く速度が身を守る。いろんな商売を手掛
け、若い頃は苦い経験もある曾根さんが、う
まいものを探究する食通として、たどりつい
たのが、たこ八だったのである。
「ホンマにうまいたこ焼き屋はない。」あのとき体験した
たこ焼はたこ八でも再現は不可能だという。
そのひとことの重さが、曾根さんの存在感に通じているような気がした。
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