空港へ向かう人の流れ。
 みなそこからそれぞれの目的地へ分かれていく。

 夜を越えて太陽を追いかけて辿り着いたその先には、何があるんだろう?
 ちょっとだけ不安だけど、何十倍もワクワクしてドキドキして。
 そんな色んな想いを胸に旅に出るのかな。
 ある人は独りで。またある人は私たちと同じく好きな人と供に。


 そう、私たち――衛宮士郎と遠坂凛は今、とうとうその時を迎えている。





 「あー、今日まで何かあっという間だったな」

 頻繁に話すようになった頃に比べて随分伸びた身長、逞しくなった体。
 中身はまあちょっとは成長したかもしれないけどやっぱり士郎のままの彼が隣を歩く。
 抱えた大きな手荷物の大半は、2桁には届かなかったけどパンパンに太ったアルバムの束。

 「そうねー、人生の中でも結構上位に残りそうな馬鹿な毎日だったと思うわ」

 そして私は。髪は大体あの頃と同じくらいの長さだけど。
 胸とかはちゃんと…うう、なんか変わってない気がするなあ…。
 背もあんまり伸びてないし…。


 ま、そんな事は置いておいて。
 今日はとても大切な記念日。

 そんな日だから、目を閉じると浮かんでくるのはこの1年余りの間の事ばかり。
 一言でいうとそれは目茶苦茶だった。


 聖杯戦争。傷付けて傷ついて血を流して、ひたすら走った濃密な日々。
 何か良く解らないけどお邪魔な敵のはずの大馬鹿が放っておけなくなって。それどころか多分その頃から好きになってしまって。
 まあその大馬鹿も足りない頭なりに大忙しだったんだけど。

 全てが終わってからも夢を見ていた彼。踏み出せなかった私。
 背中を押してくれたのは小さなレディ。
 泣きそうなほど愛情に溢れた彼の家族。友人達。

 そして、彼の中の永遠。


 全部ひっつかまえて飲み込んで。私、遠坂凛は彼と往きます――





――私たちの、空へ――





 広い空港内だけど、彼らを探すのにはそれ程手間がかからない。
 イリヤを感じ取ればいいし、そうしなくても目立つから。良くも悪くも。悪い方は無論虎。
 照明の無駄に明るい辺りをぶらぶらするとやっぱり簡単に見つかった。

「ん、はっけーん。士郎こっちよ」

 いい方の目立ち方をしているふたりが先ず見える。


「ああ、やっと来たな。遅いぞふたりとも。今日くらい待ち合わせ時間通りに来る気概は無かったのかねえ」

 男物のYシャツに…私と同じくらいの長さのスカートから覗く細すぎない、かつ締まった長い足。
 中身を知らなきゃ幾らでも男がついてくる美人。
 特にこの3ヵ月程の間にダッシュで表面上にも女らしさが現れたと思う。

「うるさいわね。色々やる事があったのよ」

 アルバムから写真を選抜してたら何か楽しくなっちゃってついつい時間が。
 結局全部持っていく事にしたわ。運ぶのは士郎だけど。

「まあ変わらぬ事は変わる事よりむしろ困難だ。こやつらはこれでいいのかも知れぬぞ」

 こちらも幾らでも女がついてくるだろう整った顔。因みに士郎とセットだとさらに一部の女子がついてくる。
 そんなセット販売は全力で阻止致しますが。
 作務衣…ではなくYシャツにジーンズ。
 以前の彼では在り得ないファッション。これは綾子の見立てでふたりのシャツは同じもので――。

 うーん。柳洞君たら案外感化されやすかったみたい。
 相手が綾子だから、なんだろうけど。結局お似合いではあるしね。

 で、その向こうにしゃがんでる黄色と黒を基調とした物体。

「もう遅いよー。お腹減っちゃったよー、ご飯はまだかー」

 恥ずかしいからしゃがみ込んでのの字を書かないで下さい。

「うふふ。藤村先生さっき食べたばかりじゃないですか」

 ひょっとして虎と桜のこれはコントなのかしら?

「まあ士郎とリンは何も食べてないでしょうから、ちょっと何処かで落ち着きましょ?」

 …イリヤが1番大人に思えるのはやはり実際の年長者があんなんだからに違いない。




 空港内のカフェで軽く食事を済ませた。約1名メニュー片手に大暴れしましたが。
 おかげでかなり時間を潰したので、そろそろゲート前へ向かう。




「ロンドン行き…並んでるわね」

「いいさ。1番最後に入っても変わらないだろ。列が消えるまでここで話でもして待ってよう」

 それには賛成。渡しておきたい物もあるし。

 私のトレードマークともいえる髪型。
 それを形作っていたリボンを外して、それを。

「桜、イリヤ。これ貰ってくれないかな」

 2人の手に握らせた。

「え――いいんですか?」

「ええ。それなりに大事なものだけど、だからこそ貴方達にね。まあもし要らなかったら後で捨てちゃって」

「そんなことしませんっ。ずっと…大事にします」

 受け取った手を胸に抱く桜。

「ええ。リンがプレゼントくれるなんて一生に何度あるかわからないしね。記念に取っておくわよ」

 うん。そう言ってくれると嬉しい。
 遊んでいたリボンをぴーんと伸ばしてイリヤは何か思いついたみたい。

「そうだサクラ。これ、貴女と同じみたいに付けてくれない?」

「え?――うん、わかった」

 桜がポケットから出した櫛で軽く銀髪を梳いて、片方の耳の上を纏めてリボンで止めた。

「はい、出来ました」

「ありがとう。どう?似合うかしら」

 くるっとその場で1回転。急ぎ足の人すら軽々止める威力。

「ああ。可愛いよイリヤ」

「うふふ、元がいいと何をしても似合うわね〜」

 そう?えへん。とイリヤが得意満面の笑顔で、桜の手を取る。
 桜の方も凄く嬉しそうに、繋いだ手を軽く前後に揺らして見せてくれた。
 なるほど。彼女なりの意思表示かな。ちゃんと桜たちと仲良くしてるからねって。

「藤村先生と綾子、それに柳洞君には何も無くて悪いわね」

「ふん。リボンなど貰った所で何とも処理出来ぬ、気にするな」

 素敵な苦笑い、といった表情の柳洞君。

「美綴さんと私も髪短いからちょっと使えないでしょうしねぇ」

「そうですね。ところが一応こっちからはプレゼントがあるんですよね、ふたりに」

 そう言って綾子がバッグから取り出したのは、ラップされた小さな箱。

「藤村先生とあたしで懸命に考えて、先生が死ぬ思いで買ってきたものだ」

「そうよぅ。もう大変だったんだから。さすがに美綴さんに買わせる訳にはいかなかったからねー」

 顔を見合わせてクスクスと笑う2人。うーん、何か気になる。

「じゃ、これは…衛宮に渡すのが筋かな。ほら」

 再びぷー、っと吹き出した藤村先生。箱が綾子から士郎の手へ。

「ありがとう。美綴、藤ねえ」

「何が入ってるの?」

「そんな事は秘密。是非機内に入ってから開けてくれ」

「わかった」


 それから搭乗までの時間、あまり内容は無いけどきっと忘れない、下らないけど楽しい会話をした。


「む、もうこんな時間か。ふたりともそろそろだぞ」

「ホントだ。じゃあ行くか、凛」

「うん」

「まあ待て。切り替えが早過ぎるのではないか貴様ら」

 そういって手を差し出してくる柳洞君。
 ふふん。少しは名残惜しいのかしら?まあ今日くらいは停戦してあげていいかな。
 その手を握った。うん。貴方みたいな人が士郎の親友で嬉しいわ。これは本当よ。

「…まあなんだ。生水にはせいぜい気を付ける事だ」

 ぷっ。いつの時代よもう。実は士郎と同じくらい不器用なんじゃないの?

「ふん…」

 すっと放した彼の手がスライド。

「では衛宮。お前の番だ」

「ああ」

 がしっっとそれこそ音がするほど固く、握手をする士郎と柳洞君。
 心から、とても美しいと感じる光景。
 辺りの騒がしい靴音や話し声の中にあっても、2人の間の空気は動揺を止めるしかない。

「お前に言っておく事はただひとつのみ。何があろうと決して遠坂凛の手を放すな」

「わかってる。一生そのつもりだ。もっとも凛が放してくれないだろうけどな」

 くぅ。凄い恥ずかしくなる。ええ、当然よ。泣いてもわめいても放してあげないんだから。

「ふっ。ならば良い。万が一野放しにしては霧の都が瓦礫の廃都となりかねぬからな」

 おいコラ。
 なに笑ってますか。士郎もよっ。

「あはは。まあ私も一度くらい青臭い青春を体験しておこうかな」

 ふいに、かつ問答無用で綾子が私に抱きついてきた。な、何よっ。

「あー、私も青春にまぜて〜」

 むぎゅ。背中から藤村先生まで。
 冬木の誇る女傑によるサンドイッチ攻撃。
 あの、とても女子の力とは思えないんですが…。
 隣で友情してる男どもが、

「大人気だな」
「ああ、正しく大人気だ」

 なんて言いながら呆けている。アンタたち助けなさいよッ。

「も、もう、苦しいってばふたりともっ」

「まあそう言うな遠坂。本来なら衛宮にこうしたい所を我慢して、アンタで妥協してるんだからさ」
「うんうん、そうだよ遠坂さ〜ん」

 ステレオで性質が悪い事この上ないし。ああもう今日だけ大サービスよ好きにして頂戴っ。
 やたらめったら色んなトコ触られてる。あうう。でもすぐジッとしたと思ったら、

「なあ遠坂」
「ねえ遠坂さん」

 ステレオのボリュームが下がった。


「…はい?」

「あたし、遠坂も衛宮も、愛してるぜ」
「わたし、遠坂さんも士郎も、大好きだからね」

 うっ。
 目の奥の方が熱いものでノックされる。危うく決壊しかけたがどうにか水際で耐えた。

「遠坂はどう思ってくれてるんだ?」

 馬鹿――。そんなの決まってるじゃない。

「…私だって、藤村先生の事も綾子の事も大好きよ。とても大切に思ってるわ。これからもずっとね」

「うん、いい答え」
「遠坂さんありがと〜」

 満足したように、体を離す。雑でストレートなスキンシップね、もう。
 あ、綾子も先生も目が真赤よ?多分私もそうだろうけど。

「あの…私からもお願い、いえ約束して欲しい事が」

 ん、なに桜…うぁっ。ダメ、そんな顔しちゃ。今凄い頑張ってるんだから。

「言って御覧なさい」

 平静を装い、出来るだけ優しく。

「――はい。ええと、まず1つ目。たまにはおうちへ帰って来て下さい。何時でも綺麗にお掃除して待ってますから」

 私も玄関くらいならピカピカにしといてあげるわ、とイリヤが相槌。

「2つ目は――うーん、早くおふたりの赤ちゃんが見たいかな」

 彼女らしい桜色の頬で微笑む。
 桜の後ろで虎と綾子が遂に顔まで真っ赤にして涙を…じゃなくて笑いを堪えている。


「そして最後、3つ目です。先輩、遠坂先輩。必ず世界中の誰よりも、幸せに――なって下さい」

 ふわり、シャンプーの、桜の香り。抱き付かれた。

「うう…っ、ご、ごめんなさいっ…泣かないって決めてたのに…ぐすっ、ふえええ」

 愛しくて愛しくて。私も思いっきり抱きしめ返す。――うん。いいよ泣いても。
 染み込んでくる貴女の涙は、きっと私の力になるから。

「約束、するわ。出来るだけ時間を見つけて、お土産いっぱい持って帰ってくるわ」

「はい…絶対ですよ、うぅ…」

「赤ちゃんは…そうね、もし増えるのがひとりだけじゃなくてもビックリしちゃダメよ?」

「…くすっ、もう遠坂先輩ったら」

「でも3つ目の約束はあんまり意味が無いかな。だって、もう私たちは世界中の誰より幸せなんだもの」

 ね、士郎。こんな素敵な人たちに想われて。
 もちろん私に想われてね。
 文句ある?

「うふふ、そうですね。では、もうこの先も誰もかなわないくらいに、何処までも幸せになり続けて下さい」

「OK。それなら約束しましょう」

 そう言って撫でると、桜が頭を預けてきたので。
 この温もりと香りを絶対忘れぬよう、私もまた強く抱きしめた。
 士郎と、みんなの暖かい眼差しの中で。





「ん…そろそろ行かないとまずいですよね…」

 落ち着いた桜から切り出される、出発の合図。

「そうね、今度こそ行くわ」

 彼女の乾きかけている涙をハンカチで拭いてあげると、すっきりと笑顔が現れる。
 ついでにそのハンカチは、むぎゅっと彼女のポケットへ。そのうち洗って返しなさいね?

「じゃ、みんなまたな」

 バッグを肩に掛けながら軽い挨拶の士郎。

「もう。士郎ったらこういう時の挨拶は違うでしょ?」

 そうよねイリヤ。普段よりちょっと長く出かけてくるだけだものね。ちゃんと帰るよ、って言わなきゃ。

「行ってきます。イリヤ、みんな」

「うん貴女は合格よリン。いってらっしゃい。士郎もね」
「いってらっしゃ〜い」
「ま、いってらっしゃいな」
「うむ、いってくるが良い」
「いってらっしゃいませ、おふたりとも」

 さ、士郎もしっかり挨拶よ。うん。私ももう一度一緒に言うから。
 手、繋いで。
 いい?いくわよ、いっせーのッ



   「「いってきます!!」」








 ジャンケンして負けたけど、私が窓側の席。
 …そんな顔しないでよ。いいじゃない。
 そっちからだと、外を見ようとする時に絶対私の顔も見えるでしょ?いい絵だと思わない?

 むーそれじゃ嫌って言えないじゃないか、と諦める彼。
 いったんしまった荷物の中から出したのか、手にはプレゼントを大事そうにさすっている。

「ね。それ開けて見ましょ」

「ああ、そうだな。何が入ってるんだかすげえ気になってた」

 士郎が包み紙すら破らぬよう丁寧に開けていくと。
 ん?字が書いてあるわね。なになに…LLさいず超うすうすたい…ぷ?――ってこれコンド…

 思わず2人で見合って数瞬固まった。そして。

「「ぷ、ぷくッ、ぷあーはははははっ!!」」

 笑った。周りにはお客さんがいるというのに。綾子に虎めぇ。
 あ、アテンダントのお姉さんがこっち来る。でも止められないってばっ。

「あはは…藤ねえが死ぬ思いで、ってなるほどなぁ、一成に頼んだとしても絶対断るだろうしな、あはははっ」

「ぷっ。確かにこれは士郎に渡すのが正解だわ、ぷくくくっ」

「あー全く、あいつらこんな時まで――最…こう…だ」

「うん、ホントさいこう、よ…ね…」


 ホント馬鹿で、強くて優しくて楽しい、大切な人たち――

 うぅ、ああ駄目。乗るまではずっと何とか我慢してたけどもういいかな、士郎。
 いっそロンドンに着く前に、一生分全部出し切っちゃいましょ?
 向こうではずっと笑顔でいられるように、ね。
 とうとう2人とも耐え切れなくなって。それこそ、うあんうあん声が出るくらいに。

 近くまで来たアテンダントのお姉さんが困った顔。ごめんなさい。ちょっとだけ迷惑、掛けさせて。
 周りの乗客たちも何事だ、と見ている。お姉さんは何故かすぐ笑顔になって急ぎ足で前の方へ。
 そして私は士郎の胸で、士郎は私の頭を抱いて溢れ出す感情に身をまかせた。


 しばらくして落ち着くころには、私の手にはお姉さんや乗客からハンカチのプレゼントが7枚と暖かいコーヒー。
 …この機内には結構お節介焼きのお人よしが多いみたい。
 何か癪だからハンカチは返さない事にしよう。乙女の泣き顔を見てくれちゃったお代よ。

 思いがけない暖かさのなか、何を見るでも無く2人とも視線は窓の外。
 お互いその手をしっかり握り合って。と――


   Attention please.本日は当国際線をご利用いただきまして…


 あ、さっきのお姉さんがアナウンスしてる。ふー、いよいよ出発かぁ。
 ねえ士郎。楽しみね。
 私たちにどんな事が待ってるのか。


   …サインが消えるまで、ベルトをお外しにならないよう、お願い致しま…


 もちろん、どんな事でも楽しくなるに決まってるけどね。
 貴方には私が隣にいるんだから。
 え?何?自信満々だなって?


   …それではロンドンまで、快適な空の旅をお楽しみ下さいませ…


 当たり前じゃない。
 貴方の事を、誰よりも愛してるんだもの。
 って…アンタなに自分で振っといてソッポ向いてんのよ。
 こっち見てるって?誰がよ。


   また、少々個人的なメッセージになりますが…


 あ。


   当機をお降りになられた先でも、おふたりがどうか忘れえぬ素敵な思い出を出来るだけ多く作られますよう、心よりお祈り申し上げます――


 ――。
 もう完全に私たちだけを見て、ウインクしてくれたわね。
 何もカムをそんなに引っ張って前に出てこなくてもいいのに。
 私も無意識で少し頭を下げてるし。
 なんで見ず知らずのただの人に微妙な敗北感を感じなきゃならないのよ。
 うあっ、周りの乗客までこっち見てるッ。何よ揃いも揃ってそのイイ笑顔はっ。

 むー…不思議と腹は立ってないし騒いだ借りもあるから特別に許してあげるわ、感謝なさいっ。


 そして遂に。



 ごうん…


 低く響く音と供に、窓から覗く景色がゆっくりと流れ始める。
 少しずつ、像が曖昧になっていく――
 その残像の向きがついっと傾くのを見てから、隣の肩に頭を預けた。

 リボンをあげたおかげで自由になった髪が頬をくすぐる。
 向こうに着いたら新しいのを士郎に買って貰っちゃおうかな。
 それはきっと、新しい私たちのスタートフラッグになるわ。








「そういえば、彼女にも行って来ますってちゃんと言ったんでしょうね?」

「ああ、ついさっき。雲を抜けるまで待ってから伝えたよ」


 私たちを見ていて、みんな。セイバー。

 笑い合ったり喧嘩したり。
 そしていっぱい愛し合いながら進み続けるつもりよ。ま、私が引っ張って行くんだけど。
 いつか心だけになって空に融ける日まで。

 そしたら真っ先にセイバーに会いに行かなくちゃね。
 貴女もしっかり、彼の中の貴女のままで待ってなきゃ駄目よ?
 もしおばあさんになってたりしたら大笑いしてあげちゃう。



 強く握り合った暖かな手の中の、小さな輝きに込めるたくさんの想いと誓い。


 ふたつの想いは遥か雲の上。
 その下から素敵な人たちがくれる追い風に乗りながら。ひたすら高くへ、スピードをあげて。
 ひどくぎらつく太陽を支える色は馬鹿みたいな青。
 あの頃彼だけが想いを馳せていたそこへ、今は私も目を向ける。

 瞳を凝らしても何も無いけど。
 確かなものは全て創り出せるわ。羽ばたく大きな翼がもうあるから。


 ね、だから一緒に飛んで行きましょう。



 何処までも何時までも変わらず見守って抱き留めてくれる、


 私たちの、空へ。









 
END