妖怪・かっぱらい

 

 

 昔、何でも盗む妖怪がいた。その犠牲者は数知れず。どんな物をかっぱらったかと、例を挙げよう。

のっぺらぼうは、この妖怪に顔を盗まれた。故に、顔がない。

傘小僧(かさこぞう)という奴がおる。傘から出た足は1本である。昔、2本あったという。やはり、片足を盗まれてから、1本で飛び跳ねて不自由しておった。

この妖怪の盗みは天下一品であった。逃げる速度も半端ではなかった。江戸時代、鼠小僧とも呼ばれておった。こんな、何でも盗む妖怪もついに、2020年の現代で捕まった。

 妖怪に裁判官が訪ねた。

「ついに捕まったな。今までの悪行からして死刑だな」

「何を仰います、裁判官様。一体、私目が何をしたと、」

「裁判官が罪状を申し渡そうとすると言葉に詰まった」

 そう、今度は今までの自分の罪状を盗んでしまったのである。

 

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