|                
        
       
 
      積み重ね
    「999、1000」  少女はそう言って縄跳びを止めた。 「ねえ、きみ、2回しか飛んでなかったよ」 
       公園のベンチに座っていた白髪の老人が、縄跳びを止めた少女に近づきながら言った。 「いいのよ、これで」 
      「良くはないと思うよ。だって、イチ、ニ、と言って止めるならいざ知らず、おかしくはないかい? 」 
      「ぜんぜん、だって、きのうは、991から始めたし、その前の日は、981から始めたのよ」 
      「そうかい。きみは、なかなか、偉いね。毎日、こつこつ、着実に回数を増やしているんだね。若いが大したものだ」 「そうでもないわ」 
      「え、おじいさんはおまえさんをほめてるんだよ。素直に喜ぶといいね」 
      「素直に喜べないわ。だって、この縄跳び、3年前から始めてるのよ」       |