ガッツなマッサージ師
「お客さん、こってますねえ。この肩、ぱんぱんですよ」
「そうでしょ。もう、きょうも忙しくてさ。朝から働きっぱなし。お姉さん、お疲れよ」
「そんなら働かなきゃいいのに」
「あんた、そんなわけいかないでしょ。おまんま、食えなくなっちゃうよ。ところで、あんたの声、鼻声だけど?
風邪引いた? 」
「ええ、朝起きたら、鼻水が出ちゃって、頭がんがん痛いし、熱は39度超えてるし、ばっちし、風邪ですねえ。こう、今もお客さんの身体につかまってないと倒れそうです。立ってるの、やっとって感じかな」
「ねえ、それって、やばくない? あたしに鼻水垂らさないでよ」
「もちろん、それは大丈夫です。垂れそうになったら、上向きますから」
「あたりまえじゃん。それよか、あたしに風邪、
うつさないでよ」
「はい、もちろん、うつさないように、頑張りますから。あら、今、くらくら、ってきました。すいません、ちょっと、しゃがみます」
「ねえ、あんた、そんな状態で仕事するの、問題なんじゃないの?」
「申し訳ないです。少しこのまま、しゃがんでれば、復活できそうですから」
「だからさ、あんた、そんなんで、働くなって、言ってるの」
「はい、十分、承知しております。お気遣いありがとうございます」
「だからさ、そう言うこと言ってるんじゃないのよ、あたしはさ」
「はい、鈴木さん、終了」
「って、あんた、マッサージしてないじゃないの」
「すみません、やはり、店閉めます」
「あら、そう、そうね、そのほうがいいわ」
「きょうの料金はいりませんから、また、明日いらしてください」
「あんた、きょう一日で直せるの? 」
「はい、ガッツで直します」
「あ、そう。めげないやつね、あんたってさ」
(了)
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