善良な人々〜ポリバケツ〜

 



   
善良な人々〜ポリバケツ〜

 

 

善良な人々に心より花をたむける。

 

 少年が朝早く体の倍はあるポリバケツを引きずりながら運んでいた。その日は燃えるゴミを出す日だった。少年の母は病気で寝ていたので、彼が代わりに集積所へ運んでいるのである。それにしても重い。彼は冬にもかかわらず汗をかきながら運んでいた。近所の人が声を掛ける。

「お手伝いかい? 偉いな」

 少年はにこりともしないで、バケツを引っ張っていた。母から教えてもらった集積所へやって来た。他にゴミは置いていなかった。

 呆然と立ちつくしている少年に、通りがかりの男が言った。

「坊や、今清掃車が行っちゃったよ」

 

超短編小説の目次に戻る