時の記念日

 

「6月10日は時の記念日なんだよ。太郎君は知ってた? 」

「うん、もちろん。ねえ、僕、かっこいい時計を持ってるんだ。詩織ちゃんにさ、見せてあげようか」

「うん、見せて、見せて」

 太郎君は上着のシャツをめくりました。

「ほら、腹時計! 」

「…… あんたねえ」

 詩織ちゃんは手に持っていた家の鍵を、太郎君のへその穴に差し込みました。

「ギャー! 」

 太郎君は一目散に逃げていきました。詩織ちゃんは頭をかしげてつぶやきました。

「せっかく、ねじ巻いてやろうとしたのにね」

 

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