19.定外の出来事





「ねぇーねぇ!!ねぇってば、ひゅーちゃん!!」
俺を呼ぶふんわりとした声。

「ねぇ!!ね゛ぇ〜!!」

…うるさ。ふんわりとした声が突如金切り声になる。
「今日はディズニーランドいくんでしょっ!?」
今度は俺をゆらゆらと揺らす。
まだ俺の腹の中には無論何も入っていない。
…キモち悪くなってきた。
「なんだよ…今何時だよ…。」
時計に目をやるとまだ朝の五時。
「…っんでよりによって今日なんだよ。今日木曜日じゃん。」
怪訝そうな顔を作り、わざと睨み付ける。
「う…。そんな顔しても駄目だよっだ!!」


「ひゅーちゃんひの前言ったもん!!『わかった。じゃた来週の木曜日に
な。』って」


…言ったっけ?
「『ちづの行きたい所についてくから』って!!」
…思い出した。
あの時…か。
今になって後悔の波が俺を襲う。
「ね!?だから早く用意するっ!!」
降参しておこう。
俺は素直に反論するのを諦めた。
昔一度だけちづを本気で怒らせてしまって、俺の靴の中に苺ジャムを入れ
られてから俺はちづに逆らわないと決めた。
それも俺も今日はどちらにしろちづに用事があったからよかったけど。





とりあえずはむくっと起き上がり寝ぼけた頭で何を最初にすべきか考える。
シャワーを浴びよう。
そう思い付いた俺は風呂向かう。
それを知ってか知らずかちづは後ろをちょこちょこついてくる。
…カワ。ついからかいたくなってしまう。

「何ちづ。もしかして俺と一緒に風呂に入りたいの?」

するとやはりちづの顔は真っ赤に染まる。
「ひ…ひゅーちゃんのエロ魔人!!」
「んだとコラ!?」
キャーと言ってちづは逃げ出した。
…何故朝からこんなに疲れなくちゃならんのだ。






「うわ…。」
案の定チケット売り場は長蛇の列。
それでも嬉しいのかちづはぴょんぴょん飛び跳ねる。
「ひゅーちゃん!!はやくはやく!!」
童顔な顔にキラキラと光る目が便乗してさらに幼く見える。
「おいチビ。そんなに急ぐと転ぶぞ?」
「うっしゃいこのデカ!!へーっだもう一人て行くからいーもんだ!!」
そう言ってタタターッと走っていくちづ。
俺は知っている。

あと十分後ぐらいに携帯が鳴りはじめる事を。




ピリリリリ。
…やっぱり鳴り出した。
「はい?」
「ひゅーちゃ…。ここ何処かわからないよぉ…。」
今にも泣き出しそうな声。
本当に馬鹿だ。
学習能力というものがないのか。
「本当にお前馬鹿だよなぁ?」
「…」
「今どこら辺だよ?」
「びっぐさんだぁまうんてん。」
「りょーかい。」
ピッと携帯を切る。

…さて迎えに行きますか。








「ひゅーちゃ!!」
「はいはい。なんでしょう?」
頭を撫でながら言う。
真っ黒な髪。
ちょっとくせ毛気味でちづは気に入らないみたいだが俺はこの髪がスキだ。
「あのね!今度はあれ乗ろ!?」
そう言って勝手に進んでいく。
「…疲れた。」
ぽそりとちづに聞こえないように配慮して言う。
無論あいつは気付かなかった。




その後も散々だった。
たくさんの乗り物のために並ぶ。
喜ぶちづを押さえ込む。
…ものすごい重労働だ。
「今日は楽しかったねぇ!!」
帰り道でさすがに疲れ気味のちづは言う。
「ご満足頂けて光栄ですお姫さま。」
「くるしゅーない。」
おっほんとちづはせき払いをして笑った。

…さて、もうそろそろか。

「ちづ」
「なぁに?」
「ちょっと目つぶれ。」
「ちゅーでもしたいの?」
ニヤニヤしているちづ。
「いーから。」
「はーい。」
ちづが目をつぶったのを確認して俺は隠していたものを取り出す。
そしてちづの手をとり指輪をはめた。
「え…?」
戸惑い気味のちづ。
「私今日誕生日じゃないよ?」
…つくづく鈍い奴だ。
まぁ惚れた奴の負けか。

「お前のさ、ボケについていける奴は俺だけなわけよ。だからまぁ、結婚し
ない?」

「うん。いいよ!!」
…即答か。
なんかそれもとせうかと思うけどまぁ、いいか。








「ねぇ〜いつ親に言おうか?」
考えてなかったし。
「明日あたりいこっか。」
「ひゅーちゃんいい加減!!」
ケラケラとちづは笑う。

「千鶴。これからもよろしくな?」

「…うん日向。」




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うーん…。リク内容の「ほんわかコメディ」のなり損ないです(泣
きっと「ほんわか」ですが、「コメディ」かどうかはちょっと…。
もしこんなもので虎丸様に喜んで頂ければ幸いなのですが…。
ちなみに二人の本名は
「水無瀬千鶴(みなせちづる)」と「園田日向(そのだひゅうが)」です。
もうちづは園田になってる訳ですが(笑