08.境界


あなたと私の境界線。超えられるようで超えられない。
それが何故かは誰にも分からない。理解したいけど理解
したくない。
好奇心より恐怖心の方が私の心には勝ってしまう。
ただ私が恐がりなだけ。弱いだけ。



誰にだって踏み込んでほしくないギリギリの所ってある
よね?
私には踏み込んで欲しくないところは溢れるほどにある。
なのにあいつ稲田隼人(いなだはやと)は平気で踏み込んで
くる。
最初は鬱陶しくてたまらなかった。…なのに段々と私の中
に居場所を作ってしまった。
あいつがいるのが心地いいだけど私の中の境界を超えて来
てしまうのは困る。
ようはイヤだけど拒めない。稲田はそんな奴なのだ。



今日も私、井上遥(いのうえはるか)は学校へ行くまでの心臓
破りの坂をのぼっていた。
いくら歩いても歩いても道は険しく感じてしまう。
最悪だった。しかもここを歩いていると大体の割合で稲田に
あってしまうのだ。
運がいいのか悪いのか?これは…いったいなんなのだろうか?
「っはぁ…。」
学校に行く前のこの坂ですでに疲れてしまう。
しかも今日は一限目から体育だ。イヤになってしまう。
しかもは今日月曜日は朝礼もあるわで憂鬱だ。


「あ!!井上ぢゃーん。奇遇だねぇ☆」


…来た。あいつ稲田が。やはり今日も私の運は最悪だ。
「オハヨウゴザイマス稲田君。」
片言のエセ中国人のような日本語が出てしまった。
「あはは!!日本語おかしいよー。ほらこのままだと学校遅れ
るから。」
と言って私の体をヒョイと持ち上げてバイクに乗せられた。
「あ…。な!!!!///////」
「ハイハイ。照れなーい。ほら危ないからこれして俺の腰に
手を回して。」
取りあえず死ぬのはイヤなので言われた通りにしてみる。
いつも稲田にはこんな感じで流されてしまう。




いつもこの瞬間に友達と言う境界に悩まされる。




「それはね?稲田に遥は恋をしてるんだよ。」
私の友達の相原美代(あいはらみよ)は言った。
「…恋?」
「そう恋。遥は恋をつた事がないから分からなかったかもしれ
ないけどね。」
美代は苦笑いをつながら言った。
「でも恋ってこんなに苦しい物なの?」
「今例えばどんな感じがする?」
「えっと…。稲田が居ると嬉しいんだけど胸が苦しくて、それ
で悲しくなるの…。」
「遥正直すぎ。それはもう完璧恋だね。」
「………」
出すべき言葉が分からなくて、ただ「すごいなぁ」と思いぽか
んと口を開けて見ていたら


「あんれー?井上と相原ぢゃん???何々どしたの?」


悩ませているのはお前だっちゅーに。少し恨めしげな顔をして
稲田を見ていた。
そうしていたら美代はいきなり言った。
「ねぇ。稲田って好きな人いるの?」
美代サン…。ストレートすぎです。恥ずかしいです。
多分私の顔は真っ赤だと思ったから俯いていた。
すると稲田は、


「うん。居るよー。でもそいつすごい鈍くて中々気付いてくれ
ないの。すんごい可愛くて好みvv」


ショックだった。そっか…稲田には好きな人が居たんだ…。
じゃた私の出る幕はないかな…。泣きそうになりながらまた俯
いた。
「遥?ちょっと稲田と話があるから待ってて?」
どうしたのだろうか…?
「え…?あ、う…ん…。」
少しでも涙声を気付かれないようにゆっくりと喋る。



それから昼休みが終わるまでに美代は帰って来たけど何につい
て話したのかは教えてくれなかった。



「ねぇねぇ井上ー。この問題わからない…。ちょいと教えてvv」
あぁ…。またこいつは…。
「そこの問題は…」
「うぉう!!ありがとvv分かりやすくて助かっちゃった☆」
「いえいえお安い御用デス。」
なんか…。もうやだ。この境界で悩むのは・・・・・。
「それとさ、今日の日直日誌書くの待っててくれない?」
「…?分かったけど何で?別に私書いて提出しておくよ?」
「…うーんとさ、この問題教えてもらったからせめて俺に書かせ
て?」
「…まぁいいけど。」
「サンキュ!!」
駄目だ。またいい具合に流されてる…。これがもしや惚れた弱み
とか言うやつ?




「ごめん井上!!ちょっと用事が長引いた…。怒ってる?」
子犬がしゅんと項垂れたような感覚がした(笑)
「…怒ってると言いたいけど、そんなに怒ってないよ。」
「うぉ!!…よかったぁぁぁぁぁ。さっそく仕事をしませう!!」
それからは黙々と日直の仕事を終わらせて行った。すると突然


「ねぇ。井上って好きな人居るの?」


何言ってんのかな?冗談だよね…。と思い稲田を見たらかなり真剣
な顔をしていた。
「な…んで?」
「まぁちょいと聞いてと頼まれてね。それに俺も気になるし。」
あぁ…。そうか友達に頼まれて聞いてるのか。
「…………居るよ。」
「誰々!?」
「第一ヒント、同じクラス。」
「ふんふん」
「第二ヒント、そいつはいつもめちゃくちゃ。語尾にハートつけた
り…」
「…うん。」
「最終ヒント、私はそいつが好きで好きで頼まれたら断れなくなっ
てしまう。」
「ふーん」
「稲田は?」
「昼休みの時に言ったでしょ?」
「あ…。そっか。」
「鈍感で可愛いって。ちなみに同じクラスだよー。」
誰だろう?
「当ててみるからちょっと待ってて。」
「おぅ。すんごいヒントで俺と今席が近い。」
「わざわざありがとう。」
今の席だと美代と市原さんだよね…?
「もしかして…市原さん?」
「ぶっぶー」
「それじゃぁ美代?」
「ぶっぶー。この鈍チンが!!お前だよお前。」
はぃぃぃぃぃぃ?これはもしや…


「罰ゲーム?あんた負けたの?運悪いねー。」


ドス!!
「い…いにゃいよぅぅぅぅぅ。」
「この鈍感!!」
とりあえず本当に痛かったので涙が出て来た。
「ふぇ…。えぇ…。」
いにゃい…。
「うぞ!!何で泣いてるの!?本当に痛かった!!!???ゴメン。」
と言いながら稲田は頭を撫でてくれた。
普通泣きつかれて寝ちゃうよね?イヤ、絶対に寝るよ。
「ま…マジで…?無防備すぎ…。」


しばらく夢の世界に入っていた私は頬をぺちぺちと叩かれている感
触に気がついた。そして顔をあげた先には稲田の微笑んでいる顔。
一気に体温が上昇していく。
そしてその後言われた言葉。


「好きです。遥さん。」


その言葉に私は顔が沸騰するかと思うぐらい真っ赤になってしまっ
た。












その次の日。私は友達と言う境界を脱出しました。
「遥!!おはようvvはい。ヘルメット危ないから付けてねー。」
「ありがとう稲田。」
「あのさぁ。俺ら付き合ってんだから稲田じゃなくて隼人って呼ん
で?」
「な/////!?…呼ばないと駄目?」
「だーめ。呼ばないとキスしちゃうよー。」
「うぇ///////!?…はや…と。」
「はい。もっとちゃんと発音しましょー!!!!」
有無を言わせないような顔でにっこり見られた。
「・・・・・・隼人。」
「よく出来ましたー!!はい。ご褒美vv」
グイっと顎をあげられた。唇に何かがあたったような感覚。






私がそれがキスだったと言うのに気付いたのは約37秒後でした。





どうでしたか?今回の私の文vv
これねーかなりお気に入りのものになっちゃった…。(笑)
稲田君が誰かに似ているような…。ってか手出すの早すぎ!!!!
遥が困ってるでしょ!!