《 頼朝の苦悩 〜其ノ壱〜 》



通された一室。頼朝が姿を現すまでの間、望美はそわそわしていた。

「(頼朝さん、一体何の話なんだろう?緊張するなぁ・・)」
「(やっぱり、頼朝さんの隣には政子さんもいるのかな?・・・)」
「(大丈夫・・きっと大丈夫だよ・・・・・)」
などと心の中で呟いていれば聞こえる足音。
望美は背筋を伸ばして座り直し、頭を下げた。

「白龍の神子か・・・」
「はい」
「顔を上げよ」
「はい」

顔を上げた望美は絶対に一緒にいるだろうと思っていた政子の姿もなく、
頼朝だけしかいない事に驚いた。
そして、恐ろしいと思っていた頼朝の雰囲気が違う事に気付き、思わずきょとん・・としてしまった。

「如何した、白龍の神子」
「えっ・・あ・・・何でもありません!」

きっと怖いと思うくらい威厳たっぷりの顔をして、何か厳しい事を言うのだろうと思っていた望美。
だが、そう思っていた頼朝の表情はどこか苦しげだ。

「そうか・・ならば良い・・・ 早速だが、白龍の神子、お前に頼みがある・・」
「頼み・・ですか・・・?」
「そうだ・・」
「はい、何でしょうか・・?」
「我が弟、九郎を頼む・・・」
「九郎さんを・・?それは、どういう・・・?」
「おそらく私は九郎と敵対する事となるだろう」
「ちょっと待って下さい!どうしてですか?九郎さんは、お兄さんの・・頼朝さんの為に
 一生懸命平家と戦っているのに・・・そんな九郎さんと戦うんですか?
 九郎さんは・・九郎さんは、絶対にそんな事を望まないはずですっ!」
「白龍の神子・・話は最後まで聞け・・・」
「ぁ・・すみません・・・」
「・・もはや敵対する事は避けられぬのだ。私と九郎が直接太刀を交わらせなくともな・・・」
「・・・・・」
「妻の政子の中には『荼吉尼天』が存在する」
「荼吉尼天・・・」
「もはや私の手では止められぬ・・荼吉尼天は九郎を始め、
 お前達の行く手を阻む存在になるであろう・・・」
「・・・・・」
「荼吉尼天がお前達の敵となるならば、自然と私も敵となるという事だ」
「そんな・・」
「仕方あるまい・・これが真実だ・・・」
「・・・・・」
「再びお前に告げる・・九郎を頼む」
「はい、分かりました」
「話は以上だ・・」
と告げると頼朝は室内から出て行った。


望美は頼朝の話の内容を思い返していた。

「頼朝さん・・辛いんだろうな・・・あんなに苦しそうな顔をしてたもん・・・」

ぽつりと呟けば御所に入る前、九郎が叫んでいる言葉を思い出した。

「!!いっけない、九郎さんずっと待っててくれてるんだった!」
と、立ち上がろうとした途端よろけてしまった。
長時間、正座をしていた望美は足が痺れてしまったのだった。

「あいたたた・・もぅ・・早く九郎さんの所に行かなきゃいけないのに・・・」

よろよろと立ち上がり、ふらふらとした足取りで九郎の待つ場所へと望美は戻って行った。



「!!どうしたんだ、望美っ!!まさか、兄上に何かされたのではないだろうなっ!」

ふらふらとしている望美の様子を見て、悪い予感が先走り、焦る九郎。

「違いますよぉ。ずっと正座してたから足が痺れちゃって・・・えへへ(苦笑)」
「えへへじゃないっ!心配しただろう?」
「ごめんなさい・・って、えっ?(/////)」

突然ふわりと宙に浮く身体。何がどうなったのか、気付くまでにたっぷり10秒。
そう、望美は九郎に抱き上げられていたのだ。『お姫様抱っこ』というやつである(笑)

「こんな状態じゃ歩けないだろう?」
「だ・・大丈夫ですよっ。 ゆっくりなら歩けますからっ(////)」
「お前のこの状態に合わせていたら日が暮れる」
「あぅぅ・・」
「何か文句があるのか?」
「ない・・です・・・だけど・・恥ずかしい・・です・・・(/////)」
「恥ずかしい?何故だ?」
「だ・・だって・・・顔が・・近い・・から・・・(/////)」
「ばっ!そんな事、気にするなっ!!(////)」

望美の今の一言を聞くまでは特に意識していなっかった九郎も
流石に意識してしまったらしい。顔を真っ赤にしながら物凄い速さで歩みを進めてゆく。
恥ずかしいと思いながらも、ちょっぴり嬉しい望美。
身体の力を抜いて、そっと九郎に寄りかかり、九郎に告げる。

「九郎さんのお兄さん、優しい方でしたよ」
「兄上が?」
と、九郎の足がピタリと止まる。

「はい。九郎さん思いの素敵なお兄さんですね」

にっこりと望美は微笑みかける。

「望美、お前・・兄上と何を話してきたんだ?」
「それは・・・・・」
「ん・・?」
「それは、みんなの前で話しますね?とても、大切な事だから・・・」
「そうか・・分かった・・・」

九郎は何かを感じ取ったのか、それ以上は追及しなかった。
望美も何も言わない。 九郎の温もりと、九郎の歩調の揺れの心地良さを感じていた。



皆の待つ梶原邸に着いた二人。
望美の無事な姿に安心した九郎を除く八葉・白龍・朔。
だが、それ以上に九郎が望美を抱き上げて帰って来たという事が
からかいの対象となってしまったのはいうまでもない。
もちろん、二人は暫く赤面したままだった。




* * * * * * * * * * * 


BLUE BLUE MOON の華霞紫苑さまからの強奪品・第2弾!←をい(汗)
此方 《其ノ壱》はシリアスVer.でございます。
ゲーム中では冷徹さが印象的だった鎌倉殿でしたけど
こういうやり取りがあった、というお話も
人情味(?!)があっていいのではないかと。
そして、お姫様抱っこですよv嗚呼、萌え〜v
真っ赤になったお二人さんがこれまた可愛いv
いいなぁ、若いモノはv ←オッサン臭い発言
因みに展開の異なる 《其の弐》も必読です!ゼヒに!

紫苑さま、素敵なお話をどうもありがとうございましたー!(礼)

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