《 頼朝の苦悩 〜其ノ弐〜 》



通された一室。頼朝が姿を現すまでの間、望美はそわそわしていた。

「(頼朝さん、一体何の話なんだろう?緊張するなぁ・・)」
「(やっぱり、頼朝さんの隣には政子さんもいるのかな?・・・)」
「(大丈夫・・きっと大丈夫だよ・・・・・)」
などと心の中で呟いていれば聞こえる足音。
望美は背筋を伸ばして座り直し、頭を下げた。

「白龍の神子か・・・」
「はい」
「顔を上げよ」
「はい」

顔を上げた望美は絶対に一緒にいるだろうと思っていた政子の姿もなく、
頼朝だけしかいない事に驚いた。
そして、恐ろしいと思っていた頼朝の雰囲気が違う事に気付き、思わずきょとん・・としてしまった。

「如何した、白龍の神子」
「えっ・・あ・・・何でもありません!」

きっと怖いと思うくらい威厳たっぷりの顔をして、何か厳しい事を言うのだろうと思っていた望美。
だが、そう思っていた頼朝の表情はどこか困っている様にも見える。

「そうか・・ならば良い・・・ 早速だが、白龍の神子、お前に頼みがある・・」
「頼み・・ですか・・・?」
「そうだ・・」
「はい、何でしょうか・・?」
「我が弟、九郎を頼む・・・」
「九郎さんを・・?それは、どういう・・・?」
「九郎は私に文をよこすのだ・・」
「はぁ・・・」
「これを見よ・・」

そう言って頼朝は望美の前に文の束を置く。

「こ・・これ、全部九郎さんが・・・?」
「そうだ・・全くまめな事だな・・・」
「(へぇ・・九郎さんって筆まめなんだ。お兄さんともこうして手紙でやりとりなんかして、
  結構仲良しなんじゃない。しかし、こんなに沢山よく書いたなぁ・・・)」
「内容は全て白龍の神子、お前の事ばかりだ・・・」
と、大きく溜息を吐く頼朝。

「そうなんですかぁ。・・・・えっ?わ・・私の?」
「・・・・・(無言で頷き)」
「あの、私・・何か悪い事をしてしまったんでしょうか?」
「いや・・その逆だ・・・」
「えっ?」
「お前を褒める事ばかりが綴られている」
「九郎さんが私を・・・?」
「信じられぬのならば、その文に目を通してみるが良い」
「はい・・・」

望美は九郎から頼朝宛に綴られた文を手に取った。

 『―前文省略―
  兄上、望美の神子としての働きは素晴らしいものです。それだけでなく、
  舞い手としても見事なもので・・・・・ ―以下略―』

文を読み、みるみる内に顔が真っ赤になる望美。
確認の為、あと2〜3通目を通してみると、内容は違えどやはり望美を褒める事が綴られていた。

「どうだ・・分かったであろう?」
「は・・はい・・・・(////)」
「お前は九郎の許婚であったな?」
「えっと、それは・・あの・・・(////)」
「改めて・・九郎を頼む」
「頼むって言われても・・・」
「夫婦(めおと)となり、九郎を支えてやってくれ・・・」
「(やだ・・これって花嫁の父みたいな状況じゃないっ!!
 私、「分かりました、お父さん。彼女を一生大切にします」
 とかって言わなきゃいけなかったりする?
 ウェディングドレスを着た美しい花嫁姿の九郎さんの隣には花婿姿の私が・・って、
 逆じゃないっ!かっこいい花婿姿の九郎さんの隣に花嫁姿の私がいるのv
 あっ・・だけど、ここは私の世界じゃないんだから和装だよね。
 ってことは、九郎さんが十二単姿で私が束帯姿?って何でまた逆になってるのっ!
 これは頼朝父親ビームの所為だわっ!)」

と、物凄い勢いで妄想の世界へと旅立ってしまっている望美。(笑)

「子・・の神子・・・」
「ぇ?あっ、はいっ!!」
「何度声を掛けたと思っているのだ・・」

何度も声を掛けられたにもかかわらず、素晴らしい妄想の世界に浸っていた望美に
頼朝が眉を顰めている。

「すみません・・・」
「続けるぞ・・」
「はい・・」
「内容が内容なだけに、この様な文が頻繁に届くのは迷惑だ・・」
「・・・・・」
「そこでだ・・白龍の神子、九郎をお前の世界へと連れて行け」
「・・・えぇっ?」
「さすれば、もうこの様な文も届く事はあるまい」
「そ・・それはそうですけど・・・」
「良いな」
「ぇ・・ぁ・・はい・・・」

有無を言わせない頼朝の威厳に望美は素直に頷くしかなかった。

「話は以上だ・・」
と告げると頼朝は室内から出て行った。


望美は頼朝の話の内容を思い返していた。

「っていうか、呼び出した内容ってこんな事なの?いや、ある意味凄い内容だけどさ・・・
 あんなに不安で緊張してたのがバカみたいじゃないっ!!!
 う〜・・・これを本当に九郎さんに伝えなきゃいけないのかなぁ?
 だけど、この内容を伝えるのってかなり恥ずかしい気がする・・・
 っていうか、こんな内容なら九郎さんに直接言え〜〜〜〜っ!(>_<)
 この花嫁の父、頼朝めっ!
 だけど・・おかげで素晴らしく楽しい想像ができたから、
 ちょっとだけ頼朝さんに感謝してあげようかな・・」

誰もいない室内で言いたい事を一通り言った望美は、
待っている九郎の存在を思い出し、慌てて立ち上がった。



九郎のウェディングドレス姿を実際に望美が見る事など叶うはずもなく・・・
だが、その代わりに素敵な新郎姿を見る事ができたそうな。
二人は仲睦まじく、幸せに暮らしている。
お互いの左手の薬指には永遠の愛を誓い合った証の指輪が輝いていた。




* * * * * * * * * * * 


私が妄想して描きなぐったブツ(汗)に対して、またまた
BLUE BLUE MOON の華霞紫苑さまから
強奪・・・もとい、頂戴してしまいました!
>わーいv棚ボタだ〜〜♪←こら・・・
コチラはギャグVer. の方でございます。
其ノ壱(シリアスVer.)と読み比べてみるとより一層面白さがっ・・vv
一つのお題から全く雰囲気の異なるお話が書けるだなんて
凄いですよね〜。二度美味しい、ってヤツです♪
望美ちゃんと一緒になって、
あれやこれや九郎っちのコスプレ姿(違う)を妄想出来、
楽しかったです♪ ←何か色々オカシイ・・・
因みに、壁紙にもしたギャグ絵のカラーVer.はコチラ

紫苑さま、素敵なお話をどうもありがとうございましたー!(礼)

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