《 三万回の・・・・ 》



  
「・・・友雅さん」
 
それはささやくような小さな声。  
眠りを妨げることにためらいつつ、  
けれど訪れた朝を告げるために  
あかねは声をかける。
  
「友雅さん・・・」
 
目をつぶっているからこそ、  
じっくりと見れる秀麗な顔に、  
視線を落とせば、  
その寝顔はかわることがない。
 
それを少し残念に、けれどあかねは  
少し楽しくなって、  
あかねはそっと手を伸ばす。
  
「友雅、さん?」
 
おそるおそる、その頬を指でつつけば、  
あかねの指に弾力がかえってくる。
 
友雅がいたずらに自分に触れてくることはあるが、  
その反対というのは、  
あかね自身が恥ずかしがって出来ない。  
いつもはできないそれを気兼ねなく出来ることに、  
あかねは段々と楽しくなってきた。
  
「友雅さん・・・」
 
友雅を起こす為に掛けた声のはずが、  
いつのまにか友雅の睡眠を確かめるためのものとなる。
 
かわらない様子に、  
あかねは安心して、もう一度手を伸ばす。  
顎のラインを、撫でるようにそっとすべらす。
 
骨ばった感触が、友雅が大人の男であるということを  
改めて意識させる。  
そんな人が自分の傍にいてくれるという、  
途方もない幸せに、ためいきがでる。
   
 友雅さん・・・。
 
その名を呼ぶだけでは物足りない。  
いや、それだけでは足りないのだ、きっと。
 
あかねは、ほうっ、とひとつ息をはいて、  
そして。
 
そっと友雅の頬に口付けた。
 
思わず、あかねは俯いた。  
その時。
 
ぐいっと引かれる感触に驚く間もなく、  
気付けばベットの中。
  
「なんともかわいらしいことをしてくれるね、私の姫君は」   
「と、友雅さんっ!?」
 
どうにか体を起こすと、  
友雅の上に倒れこんでいる自分。
 
友雅の固い胸の上で  
あかねはますます赤くなる。
 
そんなあかねに友雅は少し笑って、  
次の瞬間、体勢をかえる。
 
あっという間にあかねを自分の下に、  
そのまま囲んでしまう。
 
友雅の長い髪が、あかねに向かってまっすぐに落ちてくる。  
その影によって際立った、友雅の瞳には、  
眠りの残滓などひとかけらもない。  
あるのは、笑いを含んだいたずらっぽい光だけだ。
  
「起きてたんですかっ!?」
 
その事実に気付いて、あかねの顔が、いや全身が真っ赤に染まる。  
薔薇色に色付いた首筋が目に入り、友雅の微笑は深くなる。
  
「し、信じらんない〜〜」
 
あかねは両手で顔を覆うと、  
情けない声でそう言った。
 
そんな様子に友雅は、とうとうクスクスと笑い出す。
 
笑い声に気付いたあかねは、目の前にある友雅の胸をドンドンと叩く。
  
「友雅さんのバカっ。どうしてそういうことするんですか〜!!」
 
自分を責める言葉さえ、友雅には甘い言葉。  
赤く頬を染めながら涙目でそう訴えるあかねに、  
どんな威力があるというのか。
 
友雅はそんなあかねの責めを微笑で受け止めると、  
あかねの頬に手を伸ばす。
 
あかねの体が、ビクンと震える。  
頬に触れてから、やわらかな顎のラインをすっと撫でる。  
友雅は指を離し、そしてその頬に口付ける。  
・・・・あかねと同じ様に。
 
そして小さく言った。
  
「私も信じられないよ・・・」
 
あかねが、私に触れてくれるなんて、ね。
 
胸の浮かんだ想いいの全てを、言葉にすることは難しい。  
だから友雅は微笑んだ、その想いのままに。
 
その微笑みはあかねを一瞬で捕える。  
ぼうっと自分を見上げるあかねに、  
友雅はもう一度微笑んで、そして口付ける。  
それは唇を合わせるだけのやさしいキス。  
その甘さにあかねは心震えて、ゆっくりと瞳を閉じる。  
唇を離す直前に、もう一度だけ押しつければ、  
離れる時には、チュッと大きめに音が響いた。
 
その羞恥にあかねの目尻が赤く染まる。  
それすらもいとおしくて、友雅はそこにも口付けを落とす。
  
「三度私に触れてくれた君に、三万回の口付けを贈るよ・・・」
 
驚いて目を見開いたあかねの唇をふさげば、  
その声をも奪う、深い口付け。
 
友雅の熱に浮かされて、あかねの瞳が惚けていくまで、  
友雅は口付けを止めなかった。


 
恋人たちの甘い吐息に誘われて、  
この部屋には再び夜が訪れる。




 終





風華様のサイト『月ノ花』の3万HIT記念創作を拉致って来ました!
ん〜ふふふ〜vv(>気色悪っ!)
もう余りのラヴラヴっぷりについ顔がにやけてしまい、エライ事に!
「きゃぁーみてられんわ〜///」と両手で顔を隠すものの、
ちゃっかり指の間から覗き見ている始末です。くすv
>野次馬根性丸出し
友雅さんから3万回も 『ちゅーの倍返し』されたあかねちゃん。
無論、ずえっっったい!ちゅーだけでは済まないでしょう!(断言)
一体いつ頃開放されたのやら?と、ふと考えて・・・・・いやぁーんvvもうっ!
>これぞ必殺!一人妄想、萌え!(何がどう必殺なのやら:汗)

風華様、素敵なお話をどうもありがとうございましたvv(ぺこり)

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