《 いっそ過去になればいいのに 》



私の年上の恋人にはイイトコロが沢山ある。

三十過ぎとは思えないほど体力あるし
こっちが困るくらい元気一杯だし
テクニックも豊富だから毎回スッゴク気持ちイイし

だけど、ワルイトコロも沢山ある。
 
ダルくてツラい時もあるし
すぐ子供扱いしてからかうし
何より一番いやなのが、私の胸を触る時に絶対っ!
『可愛いね』って言う事っ!!

どーせ、ナイスバディじゃないモン!
・・・・・・・・・胸、大っきくないモン・・・・・・・・

あーあっ、こんな事ならもっと牛乳やチーズ食べとけば良かった。
こっちの世界じゃ、貴重品なんだよね。
あっ、でも確かあの食べ物も・・・



夕刻、友雅があかねの房に忍んでやって来た。
先触れも出さず、藤姫の了解も得ていない、当然目的は逢瀬の為だ。
御簾を潜り、几帳の奥に足を踏み入れる。

「やぁ、神子殿」
「とっ、友雅さん!?」
 
いつも以上に驚いた様子を見せるあかねに、少々訝しく思ったが  
そこは年の功、そんな事はおくびにも出さず  
いつもの様に抱締めようとした・・・が
     
「きょっ、今日は駄目ですっ!」
 
と、激しく拒絶されてしまった。
  
「何故だい、何か私は君の気に障ることをしてしまったのかい?」
 
あかねは首を横に振る。
  
「では、体調でも悪いのかい?」
 
顔を赤くしながら首を横に振る。
  
「もう、私の事など嫌いになってしまわれたのかい?」
 
涙目になりながらも首を横に振る。
  
「だったら、君に触れさせてくれまいか?」   
「今日は駄目なんです、お願い帰って下さいっ!」
 
理由は分からないが、あかねの頑なな態度は変わる事はなかった。  
ここで無理強いして本当に嫌われてしまうのは、本意ではないが  
折角、甘い一時が過せると思っていた友雅の落胆は大きい。
  
「『こむ世にも はやなりななむ 目の前に つれなき人を 昔と思はむ』
 ってとこかな。    
 では私は失礼するよ、神子殿」
 
溜息と共に少々意地の悪い歌を詠み、立ち上がろうとした瞬間
  
「いっ・・・痛たたたたたっ!」
 
あかねが下腹部を抑え、倒れ込んでしまった。  
その顔色は真っ青だ。
    
「神子殿!やはり具合が悪かったのだね    
 誰か、誰かいないかっ!」
 
渡殿に向け声を張り上げれば、何事かと女房達が駆けつけ  
神子の房の異変だ、幾間も置かず藤姫もやって来た。  
当然いる筈のない人物の存在に、目を光らせる。
  
「友雅殿! 神子様の房で一体何をなさっているのですか!!」   
「今はそんな事より、神子殿が疝痛を」   
「まぁ神子様、大丈夫ですか! 誰か薬師をっ!!」
 
慌てて薬師を手配しようとした矢先
  
「必要ない」
 
相変わらず、簡潔明快な台詞と共に泰明が現れた。
  
「泰明殿?」   
「大分前から神子の気が乱れていた。友雅、神子を寝かせろ」
 
訳も分からず、取り合えず言う通りにすると  
泰明は、札をあかねの腹に翳し、呪を唱える。  
すると、だんだんとあかねの顔色も良くなり、痛みも消えた様だった。
  
「神子、お前の行動は理解できない。    
 何故そこまで我慢するのだ」   
「どう言う事だい?」   
「屁だ」   
「へっ!?」   
「放屁を我慢し続けた為、腹が張って臓腑の動きを弱めた。    
 だから疝痛を起したのだ」   
「・・・・・・・・・・クッ」
 
理由が理由だが、その為に自分があれ程まで拒絶され  
大人気なくあんな歌まで詠んでいたとは・・・あまりの事に自然と肩が震える。
 
二人のそんな様子に、あかねは真っ赤になり、どんどん身を縮め小さくなっていく。
  
「御二人ともっ! さっさと出て行って下さいませっ!!!」
 
それは、敬愛する神子様の乙女心を不遠慮に辱めた者への  
当然至極な雷だった。


 
夜半、傷心のまま眠れずにいたあかねの元にその元凶がそっと忍んで来た。  
今度は声も掛けず、衾ごと彼女を抱締める。
  
「!」   
「やぁ、神子殿」   
「ととととと、友雅さん!!!」   
「今度は、何があろうと抱締めさせてもらうよ」   
「う〜〜〜〜〜っ」   
「女房に聞いたら、君の希望で夕餉は芋の物ばかりを食したそうだね」        
 さて、何故そんな事をしたんだい?」   
「・・・・・・・・・・」   
「言わないと、この腕は離れないよ。    
 もっとも、私はそれでも構わないがね」   
「・・・・・・・・胸・・・・・・・・」   
「胸?」   
「いつも友雅さんが、触る度『可愛い』って・・・小さい・・・って言うから    
 少しでも、大きくしたかったんです!    
 ・・・お芋には、そう言う成分が含まれているらしいから、だから・・・」
 
友雅は、ここにいたって誤解の元に気付く。  
『可愛い』と言ったのは胸の事ではなく、触った時のあかねの初心な反応に対して  
それが、ここまで思い込んでいるとは、夢にも思わなかった。   
 
誤解を解いて安心させようか、とも思ったが  
『おあずけ』の代価を払ってもらうのもいいかもしれない、と口角が上がる。
  
「私は別に、胸の大きさ等に拘らないが    
 あかねが気にすると言うのなら、協力してあげようねぇ」   
「えっ?」
 
嬉しそうに微笑むその顔に、何だか嫌な予感が
  
「揉むと大きくなるらしいから、毎夜揉んで差上げるよv」   
「!(////)」




私の年上の恋人の最もワルイトコロは「有言実行」なトコロ


  
 【訳】早く来世になってしまえばいい。そうすれば目の前にいる冷たい人を、    
 過去の人だと思うことが出来るのに。







姫君主義のセアル様私の4コマを元ネタに書いて下さいました。
ブツの完成、お待たせしてしまった上にこの様なお返しまで・・・。
あ、ありがたい事です〜(ぺこぺこ)
そういえば、『胸は揉むと大きくなる』 というのは
そういった行為によって艶っぽい気分(爆)になると
分泌されるホルモンの影響・・・だとかどこぞかで聞いた記憶が。
>うろ覚えですみません(汗)
少将殿がお相手なら、かなり効果絶大?!(殴)


セアル様、どうもありがとうございました(深々)

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