優しくて、残酷な

 

その日のローハンは、高貴な客人の到来に、わき上がっていた。

隣国の年若い、兄弟の到来だ。

城の中では、侍女達がいつもよりいいドレスでめかしたて、料理をするいい匂いが朝早くからさせた。

足音の高いのは女達だけではない。

男達は、自分の馬の手入れを念入りにし、鞍に磨きを掛けた。

年上の客人は、馬が好きだった。

そして、若いくせに、剣の腕が鋭い。

男達の剣術の訓練には、数日前から、熱が入った。

太陽のように笑う兄と、その影で控えめに微笑む弟の知性は、他国の人間とはいえ、近しい間柄のローハンの人間を昔から虜にしていた。

……だが、その、人々から一心に愛されている兄が、エオメルの上にのしかかっていたのだ。

 

見下ろしてくる顔のせっぱ詰まった様子に、エオメルはとうに抵抗を諦めていた。

エオメルを寝台へと押し倒し、口付けを顔中に降らせるボロミアは、エオメルに身体をすり寄せている。

「エオメル、エオメル……」

ボロミアの髪からは、昼間の太陽の匂いがしていた。

高い鼻が、エオメルの顔をはい回り、しつこいほどの口付けを降らしていく。

「エオメル、エオメル」

「……ボロミア」

エオメルは、痛いほど強く握られている手首を見上げ、小さなため息を吐きだした。

「ボロミア、手を離しては下さいませぬか? ご存じでしょう? 私は逃げたりは致しませぬ」

エオメルとて、同じ武人として、ボロミアの手をほどけぬ訳ではなかった。

だが、ボロミアの熱に浮かされたような目がエオメルに力を込めるのをためらわせていた。

それに、今更、と、いうこともあった。

そう。エオメルが、ボロミアにこのように拘束されるのは初めてのことではなかった。

「エオメル……」

寝台に埋まるほどの強さで、エオメルの腕を押さえ込んでいるボロミアは、少し考えるように眉を寄せた。

だが、見下ろす緑の目は、やはり、力を緩めはしなかった。

昼間、剣を握って模範試合を披露し、ローハン一の馬を振る舞われ、誇らしげに手綱を握っていた手がエオメルを拘束する。

その上、ボロミアは、年若いエオメルに下肢をすりつけ煽った。

柔らかな太腿が、エオメルの足を挟む。

「ボロミア」

エオメルは、覆い被さるボロミアの髪へと口付けながら名を呼んだ。

髪から薫るボロミアの匂いだけで、エオメルの身体は正直な反応を示した。

それを直接肌で感じ取っているボロミアはさらに身体を寄せる。

熱は、互いの気持ちを煽った。

エオメルは、自分からボロミアに下肢を押しつけながら、口を開いた。

「ボロミア、そんなに無抵抗の人間をさらに力で押さえつけるのが、お好みですか?」

若いエオメルの声はかすれていた。

ボロミアは、僅かに顔を上げ、エオメルを見下ろした。

「そうだ。知っているだろう? 私は、どんなにエオメルが嫌がろうが、全て私の好きにさせて貰う」

ボロミアは顔へと掛かる金の髪をうっとおしそうに首を振って払った。

艶めいた動きだった。

「……ボロミア」

エオメルは、ボロミアに見惚れていた。

ボロミアの美しさに、エオメルは幼い頃から憧憬を抱いていた。

そのエオメルがこの行為を嫌だ思うはずがない。

だが、このやりとりは、二人の間では何度か繰り返されていた。

「ボロミア、手を離してくだされば、私にもあなたにして差し上げられることが沢山出来ました」

エオメルは、首を伸ばして間近にあったボロミアの耳を舐めた。

嫌がったボロミアが身を引く。

だが、エオメルはボロミアを追いかけた。

「私はもう、あなたのすることに怯えた十三の子供ではありませぬ」

ボロミアは、口付けを繰り返そうとする強い瞳に緩く首を振った。

美しく整った顔が、微苦笑を浮かべる。

「エオメル、知っているだろう? 私はこういうのが好きなんだよ」

その顔は、十五になったエオメルが愛しい人を誇らしげに抱きしめたつもりだった夜と同じものだった。

あの夜、自分を強引に寝台へとさらおうとするボロミアを、エオメルは、口付けで押しとどめた。

エオメルは、美しく、不器用な恋人に沢山の愛を語るつもりだった。

「違うんだ。エオメル。私はそういうつもりではなく……」

十三のエオメルと、強引な性交渉で関係を結んだのはボロミアだった。

その時、エオメルは、まだ、たった一人しか女を知らなかった。

客人を迎えた夕食の席で、それを王にからかわれ。

少年が恥ずかしさのあまり、早々に寝台へと潜り込んでいた夜、ボロミアが、無理矢理エオメルの上へとのしかかった。

エオメルは、ボロミアが何をする気なのか分からず、恐れるあまり抵抗した。

だが、ボロミアは、うっとりするほど美しい顔で、エオメルを押さえつけた。

「いい子だ。エオメル」

ボロミアは、少年が知ったばかりの方法で、エオメルを追いつめた。

つまりは、その甘く柔らかな身体をエオメルに使わせ。

エオメルは、ボロミアにしがみつくしか出来なかった。

そして、秘密裏にエオメルの寝所へと通うボロミアの行為を愛情だと少年がやっと受け止めた時。

ボロミアは曖昧に笑い、エオメルの目を見なかった。

「違う。エオメル。……私はエオメルに何も望んでいないのだ」

美しく、優しく、そして、とても残酷な。

エオメルは、あの時と変わらぬ顔で自分を見下ろす貴人ににやりと笑った。

「知っております。エオメルは、あなたの大事な弟君の変わりが務められて光栄だと思っております」

ボロミアの目がつり上がった。

ボロミアは、寝台の上で弟の名を出されるのを好まない。

心の中で、いつもエオメルの上に彼を思い描き、それに強い快楽を感じているくせに、ボロミアは、エオメルが弟の名を口にすることを許しはしなかった。

ボロミアは、年下の武人に罰を与えることを素早く選んだ。

エオメルの腹に拳を埋めた。

だが、それを待っていたエオメルは、ダメージを最小限に留め、反対にボロミアの腕を掴んだ。

「ボロミア殿。私の背があなたを越したのは、もう、二年も前だと気付いておられましたか?」

 

ボロミアは、エオメルの上で腰を振りながら言ったことがある。

かわいいあの子が嫌がるのを押さえつけ。

あの子のものを口の中で育ててやるのだ。

そして、大きくなったあの子のものを身体の中に迎え入れ……。

唇を舐め、瞳を欲望で濡らしながら語ったボロミアは、感極まったようにエオメルを締め付けた。

汗で濡れた白い身体は、ぬるりとした手触りで、立ち上る匂いはエオメルの下腹を切なくさせた。

ボロミアが言うのは、十三のエオメルにしたことそのままだった。

あの夜、恥ずかしいことに、エオメルは泣きながらボロミアの体内に射精した。

女などと比べものにならない締め付けのきつさに恐怖を覚え、エオメルは

「許してください、ボロミア! 許してください!」

と、何度叫んだか分からない。

だが、美しい金髪は、泣くエオメルの涙をうまそうに舐めた。

自分の大事な弟を汚さぬために、ボロミアはエオメルをむさぼった。

震えるエオメルに、甘い口付けを何度も与えたのだ。

 

 

この健やかな顔が隠している、弟を無理矢理自分のものとしたいという欲望。

エオメルは怒りもあらわな緑の目を見下ろした。

それは、暗い欲望だ。

「離せ! エオメル!」

ボロミアは、自分を押さえつけるエオメルを眼力で押しのけようというように、強く睨んでいた。

「離せ! 離せ! エオメル!」

一兵だったら、震え上がるだろうきつい叱責。

しかし、エオメルとて、最早子供ではなかった。

今や、自分の部隊も持ち、後に続く部下のため、ためらいなく先陣を切るのがエオメルの役目だ。

「ボロミア殿」

エオメルは、外見からは伺うことの出来ないねじれを身の内に隠す美しい人の目をのぞき込んだ。

強い意志を溢れさせる緑の目は、揺るぎない正義だけを見つめているがごとく、澄んでいる。

だが、間違った快楽は、禁忌なだけに、それだけ人を惹きつけた。

一度とらわれた人間をそうそう離しはしない。

ボロミアもまた、囚われた人間の一人だった。

寝所に置いて、熱に浮かされたように一方的に話される懺悔に似た言葉を繋げば、ボロミアが恐ろしい程昔から、弟だけに執着してきたことが分かる。

自分の小さな弟を、誰にも、そう、弟が慕う侍女にさえも取られたくないと、切なく思い詰めたまだ幼い日。

もっと自分のものにしてしまいたいと、寄り添って寝た寝台の中で、ぴったりと身体を寄せて抱きしめて離さなかった弟思いを装った兄。

少年になり、女を知り、そして、戦場において男をも知った時、ボロミアの中には、明確な快楽への道筋が出来上がった。

未来のゴンドールを担う少年が抱くにはあまりにもねじれた欲望。

ボロミアは、エオメルの上で息を弾ませながら、切れ切れに訴えた。

あの細い手首を掴み上げるんだ。

きっと驚きで声もなくした唇を強引に塞いで。

細い身体を寝台に押さえつける。

かわいいあの子は、きっと嫌がる。

だが、あのかわいらしい子に私が無理矢理快楽を教え込むのだ。

ボロミアの目はエオメルを見てはいなかった。

遠くを見つめ、陶酔している。

時に、ボロミアは、エオメルの上で腰を振りながら、吐息に混ぜて禁忌を犯した。

「ファラミア……」

その名を口にするだけで、ボロミアは、恐ろしく身体を熱くした。

 

エオメルは、初めて逆転した立場で、ボロミアを見下ろした。

見上げようが、見下ろそうが、ボロミアの美しさには変わりがなかった。

今、癇性に寄ったボロミアの眉は、彼の弟によく似ていた。

全く、この一族は、姿からして、何者かに愛されている。

エオメルは、ボロミアを見下ろし、笑いを浮かべた。

「ボロミア、あなたの弟君は、あなたのお好み通りに今頃は、うちの侍女達にのしかかられているのかもしれない」

ボロミアの頬がひくりと引きつった。

エオメルを睨み付けていたボロミアの顔が、逸らされ、その目は、部屋の床を這った。

階下には客人のための部屋がある。

「……そうなのか?」

ボロミアの声が低く、エオメルに問いただした。

エオメルは、盲目な愛情を弟へと向けるゴンドールの貴人に思い知らせてやった。

「さぁ? しかし、我が王は、侍女達があなたの弟君の部屋を訪問するのを歓迎している。何故なのかなど、ご存じであろう? 万が一にも我が国の女が弟君の赤子を身ごもれば、……将来の我が国にとっていい取引材料となる」

「侍女の妻など、あの子には迎えぬぞ!」

ボロミアは、真剣な顔で、エオメルに主張した。

エオメルは、こんな当たり前の事も見えなくなっている未来の執政に眉を寄せた。

「ボロミア、私達だって、侍女をあなたの国へ嫁がせようなどとは思っておりませぬ。当たり前のことだ。生まれた子は、我が国で育てる。ゴンドールの戦力が必要な時のための大事な人質だ」

「ファラミア!」

寝台から起きあがり、今からでも弟の寝所に駆け込みそうなボロミアをエオメルは押さえつけた。

夜具にボロミアの頭が沈む。

「エオメル!!」

ボロミアは顔を赤くして叫んだ。

金の髪が顔に散らばっている。

「ボロミア、私があなたより力強い身体を手に入れたことは、お分かりになっていただけたのではなかったのですか?」

エオメルは、暴れるボロミアを押さえつけ、びくりとも動かなかった。

「そして、ボロミア、あなたは、これにも気付いておられるはずだ。 ファラミアは、もう、十の子供ではない。あなたが押さえつけどうにか出来るほど、彼は幼くない。今日、二人で並んで歩いている所を拝見した。弟君は、あなたより大きくなられた。あなたが私にしたようなことなど、もう、とうに、あの弟にすることができない。ボロミア、いつまで目を瞑っているおつもりなのだ?」

エオメルは、口を開こうとしたボロミアの唇を塞いだ。

勢いのわりに、甘い口付けだ。

「ボロミア……」

エオメルは、十五の夜に封じられた口付けの続きを、五年たった今、ボロミアに教えた。

 

エオメルは、ボロミアの唇を挟んだ。

ボロミアは口を開けようとはしない。

エオメルは、最早押さえつけて置くことの出来る年上を見下ろし、開かない唇を舐めた。

「ボロミア殿。……本当に、ボロミアは、あの弟君を思い通りにしたいので?」

ボロミアは顔をそらした。

「このエオメルにだけ、正直に打ち明けてもよいのですぞ?」

「何を言えというのだ」

思い通りにならない事態に、ボロミアは苛立った声でエオメルを詰問した。

エオメルは、ボロミアに覆い被さったまま、金の髪を撫でた。

いつも、触れてみたかった。

しかし、寝台へと縫いつけられ、ボロミアを見上げることしか許されなかったエオメルには許されたことのない行為だった。

やはり、ボロミアは、苛立ちのままにうなり、頭を振る。

柔らかな髪は、エオメルの手の中をすり抜けていく。

エオメルは、ボロミアの手を一纏めにし、片手で掴み上げると、残った手を下肢へと這わせた。

「何を、ですか? 私が申し上げてもよろしいので?」

エオメルの大きな手が、薄い衣の上から、ボロミアの身体をなぞった。

ボロミアは強く膝をすりあわせた。

身をよじるが、上にのしかかるエオメルに身動きが取れない。

「ボロミア、あなたが分からない振りをなさるおつもりなら、私がお話しよう。ボロミアが、大事な弟君に望んでいることだ。あなたは……」

エオメルは、乱暴にボロミアの下衣を引き下ろした。

「なにを!」

ボロミアが慌てて身をよじる。

しかし、エオメルはボロミアの顎を強く掴んだ。

「ボロミア、小さなあの子が嫌がるのを押さえつけるのでしたか?」

じっと緑の目を見つめたエオメルは、ゆるくボロミアの頬を打った。

そして、エオメルは、ボロミアの下腹で立ちあがったままのものを掴んだ。

驚きのためか、ボロミアのものは先ほどまでに比べれば、幾分力無い。

しかし、間違いなく、ボロミアのものは勃ち上がっていた。

「これを口に含むのでしたな。ボロミア殿」

エオメルは、突然の暴力に、呆然とした顔のボロミアのものに口を寄せた。

鋭い叱責がエオメルを打った。

「やめろ! エオメル」

身を起こしたボロミアは、エオメルの髪を掴み、股間から引き離そうとした。

強く髪を掴むボロミアに、エオメルは、顔を上げると、青ざめた貴人の両手を掴んだ。

「行儀の悪い手ですな。ボロミア」

エオメルは、気の優しい男に似合わぬ、こわい顔で笑った。

「ボロミア殿、どうして嫌なのですか? これは、あなたが私になさったことだ」

エオメルは、力強く押し返そうとするボロミアの手を押さえつけ、唇を合わせた。

ボロミアはうなり声を上げ、嫌がる。

しかし、エオメルの力は強い。

「ボロミア、このエオメルは、あなたが仕込んだ。すべてあなた好みのはずだ。隠す必要なぞないのです。いつからかあなたの望みは形を変え、私との行為とて、満足していないはずだ」

エオメルは、ボロミアの手を後ろへと回させ、胸を突き出すような格好にさせると、膨らんだ乳首に耳を沿わせるようにした。

「ほら、胸の音が高らかに鳴っている」

エオメルは、ボロミアの小さな乳首を耳で押しつぶした。

「大きな音を立てている。期待しておられますな? ボロミア」

エオメルは、笑った。

ボロミアは、笑いかけるエオメルに噛み付こうとした。

エオメルは、手が抜ける程に、ボロミアを強く引っ張り、寝台へと放り出した。

とっさに飛び起きようとしたボロミアのみぞおちに拳をあて、エオメルは見下ろす。

「近頃は、実戦にお出にならないのですか? すこし身体がなまっておいでのようだ」

唸ったボロミアが、足でエオメルを蹴り上げようとした。

エオメルは、その足を捕らえ、逆にねじった。

ボロミアはとっさに身体を返したが、ひねられた筋に、うめき声を上げた。

「っうう!!」

「弟君も大変だ。こんな兄上を無理矢理組み敷くだけの技量は、確かに彼にはまだ、ないかもしれない」

ボロミアの手が、寝台を打つ。

「何のことを言っているのだ!」

「あなたの本当にしたいことを。ボロミア殿」

エオメルは、掴んだ足をひねったまま、ボロミアの背にのしかかった。

ボロミアの背が反り返る。

「ひっっ!……ぐうっ……」

「痛そうだ。ボロミア」

ボロミアの手は筋を立てて、寝台の上のシーツを握りしめた。

「やめろ、と、お叫びになられればいい」

ボロミアは、額に汗をにじませ、エオメルを睨んだ。

「……それで、やめるか?」

「やめません。それを、あなたは望んではおられぬはずですから」

エオメルは、武人の利き足を、健が伸びるほど、ねじ曲げた。

「ひいっっ!!!」

ボロミアが歯を食いしばった。

しかし、悲鳴が漏れる。

エオメルは、殊更優しくボロミアの足を撫でさすった。

踝には唇までも押し当てる。

「さて、この位で、やめておくと致しましょう。明日、歩けなくなっては困るというものです。わかられますか?ボロミア、あなたを無理矢理犯そうとするということは、この位力業になるのです。弟君におできになるでしょうか?」

エオメルは、涙の盛り上がった緑を見下ろした。

色をなくしたボロミアの唇からは早い息が漏れている。

エオメルは、優しく顔を撫でた。

「年若かった私に無理矢理乗るのとは訳が違う。あなたが、夢を叶えたいのであれば、もう少し手加減をなさるがいい。ファラミアは、優しい。彼は、今はもう、あなたより力も強いだろうが、兄上に暴力を働くことは好む性質ではない」

「……エオメル」

ボロミアが、低い声を出した。

いきなり、エオメルの髪を掴んだ。

エオメルの顔を無理矢理顔引き寄せ、噛み付くように睨み付ける。

「エオメル、お前は、ずっと私を恨んでいたのか?」

悔しげに噛みしめられた歯の間から押し出された声は、腹の底にためられた怒りそのもののように熱かった。

エオメルは、ボロミアを見つめた。

「エオメルは、あなたを愛しております。ボロミア」

エオメルは、ボロミアのこわばる頬へと口づけた。

そのまま耳へと唇を滑らし、ボロミアに囁く。

「ボロミア殿、明日も、御前試合を見せてくださるはずでしたな。足だけでなく、腕までどうにかなったら、どうなさる?」

エオメルの手が、ボロミアの腕を掴んだ。

急所を押さえ、強く掴むやり方に、ボロミアが掴んでいた髪が手の中を離れる。

ボロミアは、唇を噛んだ。

「私が無理矢理お前を思い通りにしてきたらからか? エオメル?」

「いいえ。ボロミア。全て、あなたの望み通りに。ボロミア殿、あなたは、もう、小さなファラミアに無理矢理襲いかかる事など、望んではおられぬはずだ」

エオメルは、ボロミアの腕を縛り上げ、股の間に顔を埋めた。

「そうではないのですか? ボロミア。近頃のあなたの気のなさは、どうしたものかと考えていた。そして、分かった。男らしく成長した弟を目の前に、何時までも昔の妄想にしがみついていられる訳がない。本当は、ボロミア、もうあなたは、弟に無理矢理のしかかりたいなどとはもう思っておられぬはずだ。 それよりも、あなたは、逞しく成長した弟に、無理矢理ねじ伏せられたいと望んでおられる。 あなたは、優しい兄の顔で笑いつつ、弟に犯される自分を夢想している。違いまするか」

エオメルは、ボロミアの口にしていたのと同じように、嫌がる身体を無理矢理押さえつけ、股間のものを口に頬張った。

「そうであるなら、私の役目も変わろうというもの」

嫌がるボロミアの足は、エオメルを蹴ろうともがいていたが、股間のものは力強く立ちあがっていた。

何が嫌なものか。

やはり、こうされることに、ボロミアは、興奮している。

「これでは、私のすることがない」

エオメルは、はしたなく揺れるものにわざとらしいため息をついた。

そして、先端から漏れ出す液体を舐めながら、ボロミアの白い尻に手を掛けた。

肉厚の尻を左右に割り、間に窄まる襞へと指を差し込む。

「やめろ! エオメル!!」

ボロミアの尻が、ぎゅうっと、エオメルの指を締め付けた。

「やめるんだ。エオメル!!」

とがった声の調子に、エオメルは満足そうに笑った。

「そう、その調子だ。ボロミア殿。あなたは、無理矢理犯されるのだ」

エオメルは、暴れるボロミアの腰を膝の上に抱き上げた。

いつも準備のいい尻の香油で濡れている穴の中へと指を抜き差しする。

ボロミアは顔を赤くして、大声でエオメルをなじった。

「離せ! お前ごときが触れることなど許さない!!」

「だが、いつもは、あなたが触れと命令なさるのですよ。ボロミア殿」

エオメルは、たっぷりと香油を含み、水音までさせる穴のなかで節高の指を動かす。

「触るな! 私を誰だと思っているのだ! エオメル! お前がそんなことをするのは許さない!」

「そうですか? では、目を閉じれるがよい、ボロミア。私を、あなたの弟君だと思われるがいい。どうぜ、私は、十三の時から、彼の代わりだ。あなたは、昔のように、私に弟を重ねておればいい。あなたを犯そうとしているのは、ファラミアだ。どうせ、もう、そう思っていらっしゃるのだろうが」

エオメルは、後ろを抉られ、ますますそそり立つボロミアのものをぺろりと舐めた。

屈辱に顔を歪ませるボロミアが腰を震えさせる。

尻は、エオメルの指をがっちりとくわえ込み、自然と揺れていた。

「こんなに歓待して頂いたのでは、私は自分の立場を忘れてしまそうだ」

エオメルは、まだ準備の整わないボロミアをうつぶせに、寝台へと転がした。

後ろ手のボロミアは、すかさず、寝台の上を這った。

エオメルが、いざって逃げようとするボロミアの足首を掴み、ゆっくりと引き寄せる。

「明日の御前試合は、おやめになられるおつもりか?」

その足は、先ほど痛めた方の足だった。

エオメルも、ボロミアも、武人だった。

加減することと同じくらい、一生動かなくなるほどの加虐を加えることが出来るだけの知識と力があった。

ボロミアの喉が鳴った。

入っていた力が抜ける。

エオメルは、足を離し、真っ白なボロミアの尻を持ち上げた。

普段は柔らかいばかりの肉が、緊張にこわばっていた。

エオメルは殊更、重みをかけ、ボロミアにのしかかる。

「さぁ、嫌がられるがいい。ボロミア」

白く盛り上がった尻に、エオメルのものが押し当てられた。

息を詰めて、衝撃に耐えようとしているボロミアを焦らすように、濡れた先端が襞の周りを撫でていく。

シーツへとうなだれていたボロミアは、怒鳴った。

「お前を許さない!」

「結構です。ボロミア」

「一生、憎んでやる!」

「なるほど、そうやって、弟君を縛り付けると、いうわけでございますな。ボロミア」

エオメルは、遠慮なく、ボロミアを突き刺した。

「うぐぐっっ……」

エオメルのものは大きかった。

自分勝手にエオメルを扱うばかりだったボロミアは、その衝撃に、背をそらした。

「痛っ……痛い…………」

十分な体積のあるエオメルのものは、無理矢理ボロミアを貫くには大きすぎた。

まだ、解れていなかったボロミアの尻は、エオメルのもので無理矢理大きく口を開かされ、赤みのある襞には皺一本残っていない。

ボロミアの手がシーツをたぐり寄せ、それを白い歯が噛んだ。

うめき声を押さえている。

そして、緑の目は閉じられていた。

こわばる背中を押さえつけ、エオメルは、ボロミアの名を呼んだ。

ボロミアが声を振り払うように、首を振った。

エオメルは、ぎっちりと噛み付き、身動きすらままならない狭隘な肉の狭間で、無理矢理腰を動かした。

「っっぃっ……っぃいぅううっ……!!」

「無理矢理だとしたら、この位の感じだと思われませぬか?ボロミア殿」

痛みだけしかないはずの交接に、しかし、ボロミアのものはまだ、勃ったままだ。

体中が苦痛を訴えているというのに、それを裏切って、シーツへとぬめりが落ちてゆく。

エオメルは、強引にボロミアの中へと自身を埋めた。

そして、引き出す。

何度もそれを繰り返す。

エオメルの額から汗がこぼれ落ち、痛みにこわばったボロミアの背中へと落ちていく。

だがボロミアの背は、色づいている。

 

 

「ボロミア」

もやは、叫び声を押さえぬ、ボロミアに、エオメルは呼びかけた。

勿論、答えはない。

「ボロミア」

「……んんんっ……っっぅあっ……んっ!!!」

エオメルの声を聞きたくないとばかりに、ボロミアは大きな声を上げる。

エオメルは思う。

ボロミアを犯しているのは、誰なのか?

あの弟なのだと、エオメルは思う。

ボロミアの瞼は閉じたままだ。

抗うために、エオメルの名を呼びもしない。

だが、これならば?

エオメルは、ボロミアの背に打ち明けた。

「ボロミア、私の王は、あなたが十三の私に何をなさったのかご存じです。そして、あなたの弟君の部屋へと押し掛けたいばかりの侍女達に笑いかけながら、王は私にも言われました。あの方のお気に召すように歓待して差し上げてくれと」

ボロミアの背から、色が引いた。

「ゴンドールは大国だ。私一人の命など、あなたのお好きできる」

エオメルは、ボロミアを深く犯した。

「兄上、と、お呼びした方がよろしいか?」

 

 

翌日はよく晴れていた。

隣国の兄弟は、仲むつまじく隣り合って立っている。

高らかに兵士が声を張り上げた。

「次の試合をもって、御前試合の終了といたします」

武具を身につける兄、それを手伝う弟。

兄は、少し足を引いてる。

「手加減を。エオメル」

ファラミアは、仲の良い友人でもある武人の肩を叩いた。

「そなたの兄上に、そんなことをしたら、私の首が飛んでしまう」

エオメルは、勇ましく笑い、剣を構えた。

 

 

 

END

 

エオメルの言葉使いに撃沈。

翻訳コンニャクが欲しい……。