空を指す枝

 

アラゴルンは、夜番を終え、土の上に身を横たえようとした。

「アラゴルン」

ボロミアが、小さな声でアラゴルンを呼んだ。

ボロミアは、メリーと、ピピンの間に身を起こしていた。

すこし小首をかしげるようにして、アラゴルンを見た。

「どうした?ボロミア」

「いや、今晩は眠れそうか?」

「・・・・・・・ああ、気付いていたのか」

アラゴルンは、気遣うボロミアの声に、ため息を落とした。

ボロミアは、月の光に照らされた白い顔に心配そうな表情をのせ、アラゴルンをじっとみつめる。

「ボロミア。そんなに見ないでくれ。大丈夫。一晩や、二晩、眠れないことなどよくあることだ」

「一晩や、二晩じゃないだろう?」

ボロミアの声には、責める響きなどどこにもなかった。

ただ、仲間を思い、気遣う言葉をかけているだけだ。

アラゴルンは、自分の掌に額を落とした。

小さく首を振りながら、ため息を吐き出す。

「どうしてそんなことを知っている?ボロミア、あんたも眠れずにいるなんて言うなよ」

「私は、この旅をアラゴルンに任せてしまっているから、ぐっすり眠らせてもらっている。それに、この二人の間に挟まれては、すっかり体が暖まってしまって、起きていることなんてできない」

ボロミアは、メリーと、ピピンへと上掛けにしているコートをかけなおすと、そっとそこから立ち上がった。

「今晩は眠れそうか?アラゴルン」

ボロミアは、ゆっくりとアラゴルンへと近づく。

「眠れないと、言ったら、慰めてくれるのか?」

アラゴルンは、柔らかいボロミアの手を取り、額へと近づけた。

滑らかな感触が、アラゴルンの額を撫でる。

アラゴルンは、その指先に口付けながら、ボロミアを見上げた。

白く美しい男は、とたんに視線を逸らした。

アラゴルンは、頼りない頬をしたボロミアをじっと見つめた。

ボロミアは、唇を震わせ、小さな声を出した。

頬が赤くなっていた。

「・・・私に出来る方法でいいのなら」

ボロミアは、アラゴルンの側へと膝をついた。

アラゴルンに立ち上がるよう小さな声でささやいた。

 

二人の関係は初めてではない。

いや、アラゴルンが、関係を強要した夜以来、二人の間には、頻繁に関係が持たれた。

アラゴルンは、昼間とまるで違う顔を見せるボロミアに、苛立ちながらも、酷く惹かれていた。

ボロミアは、性交を教えられた体をしていた。

快楽を味わうために自分から進んで習い覚えたのではない。

ボロミアは、ある人の好みにあわせ完璧に躾られていた。

 

ボロミアは、見つけた岩陰に、アラゴルンを誘うと、小さな声で聞いた。

「私の体を改めるか?」

アラゴルンは、ボロミアに、また、支配の痕を見て、自分の額を押さえかけた。

慰めを必要とした父親か、弟か、どちらかが、こういう時、必ずボロミアの体を改めたのだろう。

アラゴルンとボロミアが、交わる時、とっさの危険を考えて、裸になることなど、ほとんどなかった。

そうでなくとも、アラゴルンは、ボロミアの体を改めなければならないような必要性を感じていなかった。

ボロミアは、命令されるのを待って、上着のボタンを触っていた。

暗闇のため、ボロミアの美しい緑の目は、灰色にしか見えなかった。

しかし、アラゴルンは、ボロミアの瞳に、はっきりと献身の色を読み取ることが出来た。

アラゴルンは、あどけないと言っていいほど、真摯な表情で待っているボロミアを見た。

その必要はない。と、言いかけた。

だが、アラゴルンは、こういう時に、ボロミアがどのように躾けられたのか、知りたい気持ちになった。

強い支配の痕を残すボロミアは、アラゴルンを苛立たせた。

しかし、ボロミアに施された躾は、恐ろしく魅力的だった。

ボロミアは、閨をともにする相手に、全く逆らわない。

耐えろと一言、言いさえすれば、どんなことをしても耐えようとする。

自分の快感よりも、相手の快感を優先とし、射精すら、ボロミアは、相手の許可を必要とした。

アラゴルンは、ボロミアがこういう時にどうするのか、知りたかった。

ボロミアは、アラゴルンの言葉を待っている。

アラゴルンは、頬へと少しばかりの、緊張感を漂わせたボロミアに向かって頷いた。

 

ボロミアは、ボタンに手をかけながら、アラゴルンに謝った。

「・・・すまない。私は、また、間違えたんだな」

長いアラゴルンのためらいが、ボロミアに自分の間違いに気付かせた。

ボロミアは、いつまでも肉親の支配下にある自分に対し、アラゴルンが苛立ちを感じていることを知っていた。

アラゴルンは、身構えているボロミアにそっけなく言った。

「いいや、いい」

ボロミアは、殴られることも覚悟して、頬を晒し、立っていた。

少なくとも、アラゴルンは、この程度のことでボロミアを殴ったりはしなかった。

謝罪の言葉を口にしながら、ボロミアは、また、新たに深い支配の痕をアラゴルンへと見せつけた。

しかし、ボロミアは、それに気付かない。

ボロミアは、許されたことにほっとした表情を見せると手早く上着を脱ぎ始めた。

アラゴルンは、手を貸そうとはしなかった。

ボロミアが、どうするのかをじっと見ていた。

ボロミアは、自分で、上着を脱ぎ落とすと、今度は、下肢を露わにした。

普段は、厚い布に覆われ、真っ白な色を保った肌が、月の光に晒される。

全てを脱ぎ終えると、羞恥に顔を染めながら、ボロミアは、アラゴルンに近づいた。

「アラゴルン・・・どうしたらいい?本当に、私の体を改めるのか?・・・」

ボロミアの表情は、野うさぎのように臆病だった。

ボロミアは、この話題を続けることが、アラゴルンの苛立ちを誘うことを知っていた。

だが、閨において、ボロミアは、誰かの命令を待つことしか知らなかった。

「どうして、改める必要があったんだ?」

アラゴルンは、聞いた。

ボロミアは、裸の体のままで、唇を噛んだ。

ボロミアには、出来れば、アラゴルンに隠しておきたいことがたくさんあった。

ボロミア自身、自分がおかしいということがわかっていた。

ボロミアは、アラゴルンに嫌われたくなかった。

しかし、アラゴルンは、口を開こうとしないボロミアに、もう一度訊ねる。

「ボロミア、どうして、あんたの体を確かめる必要があったんだ?」

「・・・僭越にも、お慰めしようと褥に上がるのだ。きれいな体でなくては・・・」

固い言葉でボロミアが言うのは、父親との同衾の場合だ。

アラゴルンは、更に聞いた。

「弟君の時も?」

「・・・あいつは、もともと毎回確かめるんだ。ここに、必ず跡が残っていたから」

ボロミアは、自分の足の付け根へと指を這わした。

父親が、必ずそこへと跡を残したということだろう。

ボロミアは、目を伏せがちにして、アラゴルンを伺い見た。

「アラゴルン・・・今は、体を改めて貰う必要などなかった。俺が、間違えた。この体には、あんたの跡しか残っていない」

「では、その跡を、父君達にしていたように、俺に確かめさせてくれ」

アラゴルンは、ボロミアの頬を撫でた。

ボロミアの頬は強くこわばっていた。

しかし、ボロミアは、命令を受けてしまえば、嫌ということを知らなかった。

 

ボロミアは、草の上へと横になった。

背中には、冷たい土が触れているはずだ。

ボロミアは、肉付きのいい太ももをゆっくりと引き寄せると、自分で大きく足を開いた。

「・・・確かめて・・・くれ」

恥を知る声が小さくつぶやく。

暗闇の中、白い体が、アラゴルンに向かって開かれた。

隠すところなく、大きく開かれた腿とは別に、ボロミアの目は、ただ、闇を見つめていた。

そこには、表情がなかった。

自分がとっている姿勢や、これから、されることを忘れさろうとしているようなそんな傷ついた面持ちだ。

アラゴルンは、ボロミアの膝へと手をかけた。

開いているボロミアの硬い足をもっと大きく開かせた。

ボロミアは、決してアラゴルンの行動を止めようとはしない。

ただ、小さく息を吐き出し、この時間が過ぎることを待っている。

アラゴルンは、ボロミアの白い足に残った自分の跡を確かめた。

跡は、腿のいたる所に残っていた。

「たくさん、跡が残っている。あんたは、肌が柔らかいな」

アラゴルンが、手を離すと、ボロミアは、足を下ろした。

アラゴルンが見ている前で、今度は、うつぶせに体を返した。

犬のように這う形をとり、小さく、息を吐き出すと、両肩を土につけた。

尻だけが高く上がった。

白く美しい背中のスロープが、冷たい土へと頬を付け、目を閉じているボロミアの横顔にまで続いた。

ボロミアは、背中へとまわした自分の手で、尻を開いた。

「・・・・・こちらも・・・」

アラゴルンは、緊張に硬くなっている白い尻を見つめた。

背中の肉も、硬くこわばっている。

「・・・ボロミア」

アラゴルンは、ボロミアの従順さに心が痛くなるような気がした。

だが、ボロミアを憐れだと、ただ優しくしてやることが、アラゴルンには出来ないのだ。

どれだけの回数、こうやって体を改めさせたのだと、奥歯を噛み締めて耐えなければならない怒りが、アラゴルンの胸の中にこみ上げた。

父に、弟に、こうして体を晒していたボロミアを思うと、アラゴルンは、嫉妬を感じるのだ。

父親以上に、ボロミアに自分を強く刻みたいと思ってしまう。

ボロミアが、愛しいのだ。

アラゴルンは、ボロミアの白い尻へと手をかけた。

強くつかんで、さらに谷間を開かせると、ボロミアの体がこわばった。

小さく息を吸い込んだ音が聞こえたが、それは、声には変わらなかった。

ボロミアは、背中を強く緊張させながら、耐えていた。

アラゴルンは、自分の付けた跡しか残さぬ、滑らかな背中を撫でてやり、ボロミアを開放した。

ボロミアは、恐る恐るという態で、足を寄せた。

振り返ったボロミアの目は、アラゴルンが何を言い出すのか、待っていた。

 

アラゴルンは、ボロミアの裸を抱いて、髪へと口付けを贈った。

「ボロミア、この次は、どうするんだ?」

ボロミアの肌は、緊張に冷えていた。

あれほどの格好を自分から取れるというのに、ボロミアは、羞恥からは逃げられない。

きっと恐ろしいほどの数、あのような格好など取らされてきたに違いない。

それなのに、ボロミアは、同じ数だけ、それを恥ずかしいことだと教えられてきた。

ボロミアは、金のまつげを伏せながら、言った。

「アラゴルンのいいように、してくれれば・・・」

やっと、すこしだけ、自分の要求を伝えることを覚えたボロミアだった。

しかし、その要求が、すでに、アラゴルンに従うことを望むというものだった。

アラゴルンは、ボロミアの肌を撫でながら、耳元でささやいた。

「じゃぁ、ボロミア、父君をお慰めしたように、俺にもしてくれ」

「本当に?・・・」

ボロミアは、アラゴルンがそれを嫌っているのを知っていた。

アラゴルンは、ボロミアに目を開くように言い、声を出すように言った。

ボロミアは、アラゴルンから、対等なのだと何度も言われた。

そして、その言葉に従えず、何度もアラゴルンを怒らせ、罰を受けた。

ボロミアは、父親にしたように、アラゴルンにすることによって、また、彼が怒り出すのではないかと、恐れを抱いた。

しかし、アラゴルンを慰めるほかの方法など、ボロミアは、知らないのだ。

「本当に?いいのか?アラゴルン。

確かに、私は、慰め方など、一つしか知らないのだが・・・」

頼りないボロミアの声に、アラゴルンは、頷いた。

 

ボロミアは、アラゴルンに横になるようにと言った。

「全部は・・・脱がないよな?」

ボロミアが全裸である分、剣を手元に置くアラゴルンに、ボロミアは、小さく笑った。

手早くアラゴルンの下肢を緩め、晒した肌に、頬を寄せる。

ボロミアは、そうして、しばらくじっとしていたが、顔を上げるとアラゴルンに聞いた。

「触ってもいいか?」

「ああ」

アラゴルンは、冷たいほど短く答えた。

ボロミアは、たぶん、そう返事されることに慣れているはずだった。

アラゴルンに見つめられながら、ボロミアは、アラゴルンのものを扱いた。

滑らかな長い指が、アラゴルンのものに絡む。

人にかしずかれることに慣れ、あんなにも、不器用にしか見えない手が、とてもうまく仕事をこなした。

余る皮をボロミアは優しく撫でる。

先端の丸みを、指の腹で擽り、うっすらと漏れ出した、まだ、粘度の低い液体を全体に塗り広げた。

ボロミアは、熱心に見つめていたアラゴルンのものから、ちらりと、顔を上げた。

「アラゴルン・・・口に含んでもいいか?」

ボロミアの薄い色をした唇が開いていた。

舌が、今にも伸びそうに口の中で、浮いていた。

奉仕することに、ボロミアは、とても熱心だった。

アラゴルンは、ボロミアの頭を押さえつけた。

柔らかく唇を閉じたボロミアは、押さえられる力のまま、まず、アラゴルンのものに小さな口付けを贈った。

開かれた唇が、アラゴルンのものを優しく包む。

ボロミアの舌が、アラゴルンのものに絡みついた。

喉の奥まで大きく開き、ボロミアはアラゴルンを受け入れた。

口蓋が、温かくアラゴルンを扱きあげる。

息の音しか漏らさないボロミアは、熱心に顔を上下させた。

アラゴルンは、ボロミアの金の髪を撫でた。

ボロミアの頬は、アラゴルンのものの形によって、膨れたり、へこんだりした。

 

ボロミアは、アラゴルンのものを舐めながら、自分の衣装を探った。

行儀の悪いその態度は、アラゴルンとの間で、覚えたものかもしれない。

今までにないボロミアの動きだった。

顔を上げないままに、小さな壜を取り出したボロミアは、顔をアラゴルンのものへと沿わせたまま、ゆっくりと側面を舐めあげた。

舌が、温かくアラゴルンのものを舐める。

ボロミアは、壜のふたを開けた。

手を添えなくても力強くそそり立つ、アラゴルンのものから、残っていた手も離してしまうと、アラゴルンのものを口に含んだままで、長い指へと油をたらした。

薬草の混じった油は、周りへと匂いを振りまいた。

ボロミアは、油で濡れた指を自分の股の間へと持っていった。

指は、アラゴルンからは見えない場所へと潜り込んだ。

中を濡らすために行う行為の淫らさをボロミアは知っているに違いなかった。

強く目を閉じ、背中を赤くして、しかし、指を奥へと忍ばせている。

奥へと押し込むたびに、ボロミアの体が、前のめりになった。

ボロミアは、口を開け、アラゴルンのものを含んだまま、体を前後に揺らしている。

「こういう時は、準備も自分でするのか?」

アラゴルンは、恥じらいを忘れない態度とは別に、大胆に指を使う慣れた体を、優しく撫でた。

アラゴルンが、ボロミアの頭を下げさせたせいで、ボロミアの尻が上がっていた。

ちょうど山の谷間で、ボロミアの指が、仕事をしているのが見えていた。

息の音だけさせているボロミアが、唇から唾液を滴らせたまま、顔を上げた。

アラゴルンのものの先端が、ボロミアの唇を擽っている。

「・・・・・・・自分で・・・準備をする。・・・嫌だったか?」

「嫌なわけが無いだろう?さぁ、もっと教えてくれ。これからは、どうするんだ?」

うっすらと緑の目をあけたボロミアの顔をアラゴルンは撫でた。

ボロミアは、続きをせかされたのだと誤解したようだ。

舌を使いながら、懸命に穴をほぐし始めた。

高く上がった尻の間に、次々と指がねじ込まれた。

顔を顰めながら、しかし、決して呻きも漏らさず、ボロミアは、アラゴルンのものを舐め続けた。

アラゴルンは、自分の中にある残酷な気持ちを殺してしまうことが出来なかった。

ボロミアの献身は、受け取るアラゴルンの心にも痛みを与えた。

だが、その一方で、極上の快感を味あわせてもくれるのだった。

アラゴルンは、憐れなボロミアを止めてやることができなかった。

ボロミアが、苦痛に耐えていることなど、こわばった背を撫でるアラゴルンには、手に取るようにわかった。

だが、その苦痛を自分のために耐えているのだという理解は、アラゴルンの心を強く揺さぶった。

ボロミアが、顔を上げた。

そらしがちな視線が、それでも、アラゴルンの顔をさ迷う。

油に濡れたボロミアの指が、アラゴルンの下肢へと戻っていた。

震える唇が、小さくアラゴルンに聞いた。

「上に乗ってもいいか?」

「そうするのが、お慰めする決まりになっていたのだろう?」

アラゴルンは、口元に笑いを浮かべた。

ボロミアは、アラゴルンの体を跨いだ。

白い腿が、アラゴルンの胴を挟み込んだ。

ボロミアは手をアラゴルンの腹へと付いた。

突き出すようにした尻の間に、片手を入れて、アラゴルンのものへと添えた。

目を瞑ったままのボロミアが、腰を落とし始めた。

金の茂みに隠れた、ぬるついた穴へと、アラゴルンを誘い込む。

柔らかなボロミアの肉が、アラゴルンのものへと触れた。

ボロミアは、膝で自分の体を支えると、アラゴルンの腹へと付いていた手を離して、自分で尻を大きく広げた。

指は、穴の中に潜り込み、アラゴルンが挿入しやすいようにと、手助けする。

アラゴルンは、その全てをじっと見ていた。

整えられた爪が、尻から漏れる油でぬめるのを見た。

長い指が、アラゴルンのものをそっと掴んでいたのを見た。

ボロミアの大きな尻が、アラゴルンのものを懸命に飲み込んでいく様を見ていた。

 

ボロミアは、アラゴルンの全てを飲み込むと、小さく体を揺すり始めた。

かたくなに瞼は開かれなかった。

唇は、開いていたが、漏れ出すのは、息の音だけでしかなかった。

アラゴルンは、ボロミアの腰に手をかけ、下から、突き上げた。

ボロミアの背が反り返った。

うっすらと脂肪のついた腹が前へと突き出され、小さな乳首を残して、ボロミアは後ろへとのけぞった。

とっさに、ボロミアは、アラゴルンの太ももを掴み、倒れこむのを防いだ。

アラゴルンは、そのままボロミアを揺さぶった。

従順な体は、逆らうことなく、アラゴルンの上で揺れる。

強くアラゴルンのものを噛む尻穴が、ボロミアの緊張を伝えていた。

肌も、あわ立っていた。

ボロミアにとって、この突き上げは、まだ、刺激が、強すぎた。

しかし、嫌だとは、決して言わない。

唇を噛み、ボロミアは、懸命にアラゴルンへと合わせようとしていた。

早いリズムで、突き上げるアラゴルンにあわせ、腰を振った。

ボロミアのものは、小さく勃起している程度だ。

アラゴルンは、ボロミアを脅かすのをやめ、緩やかに、腰を使い始めた。

ボロミアの唇から、安堵の息が漏れた。

きつく閉じられていた瞼の力が抜かれた。

だが、残念なことに、緑の目が開かれることは無かった。

アラゴルンは、ボロミアの胸へと手を伸ばし、立ち上がった乳首を指先で弄りながら、話しかけた。

「ボロミア、自分のいい所に当たるように腰を動かしてみろ」

ボロミアが、腰をよじった。

腰にできたくぼみが、アラゴルンの気持ちを煽った。

「出来るだろう?自分の体だ。自分が一番知っている」

ボロミアは、まだ、ためらっていた。

このためらいが、アラゴルンにとって、愛しかった。

以前のボロミアは、ためらうことすらしなかった。

命令には、従うことしか、知らなかった。

「俺が、そうするあんたを見たいんだ。いいところに、押し付けろ。そこを擦ってもっといい気持ちになってみろ」

ボロミアは、アラゴルンのためだけに、上下に動かしていた腰に、少し、前後の動きを加えた。

開かれた口が、熱い息を吐き出す。

だが、声は聞こえない。

「そう。そうしたほうが、気持ちがいいだろう?」

アラゴルンは、ボロミアの立ち上がったものを手の中に収めた。

金の毛で覆われた色の白いものをくちゅくちゅと扱く。

ボロミアの唇が、細かく震えた。

舌が、口の中で浮き上がっていた。

ボロミアの喉は、確かに、あえぎに震えているというのに、決して、その声が、アラゴルンに聞こえることはなかった。

「・・・ボロミア、声が聞きたい」

顎を上げ、扇情的なラインを見せていたボロミアが、慌てたように、顔を下ろした。

緑の目を開けた。

ボロミアは、アラゴルンをしっかりと見た。

「・・・・すまない」

ボロミアは、瞬きを繰り返し、面を伏せるようにして、謝った。

「今、いるのが、父君の腹の上ではないことを思い出したか?」

アラゴルンは、緩やかにボロミアを突き上げる動きを繰り返しながら、ボロミアのものを扱いた。

「気持ちがいいだろう?」

「・・・気持ちがいい」

顔を染め、ボロミアは、自分の状態を告白した。

「声を聞かせてくれるか?」

「ああ・・・・勿論」

ボロミアは、目を閉じ、アラゴルンの腹に付いた手を頼りにして、腰を動かした。

「・・・・・・んっ」

小さな声が、ボロミアの口から漏れる。

その、ただ、一声を聞かせるために、ボロミアは、顔はおろか、体までも、真っ赤になった。

滑らかに動かされていた腰は、ぎこちなくなり、アラゴルンの動きとタイミングが合わなくなった。

ボロミアは、小さく唇を震わせながら、声を聞かせる。

アラゴルンは、ボロミアを見上げながら、手の中のものを優しく動かした。

「・・・あっ・・あ・・・アラゴルン」

「・・・父君は、こうやって、あんたのことを見上げ、疲れを癒していたというわけだ」

アラゴルンは、ボロミアの胸を触っていた手を離し、柔らかく肉をつけた尻を撫でた。

アラゴルンのものを噛む、肉の輪を指先で撫でた。

肉は、びくりとアラゴルンのものを強く締め付けた。

ボロミアの背が、美しいカーブを描いて、反り返る。

「確かに、あんたは、最高だ。父君の趣味の良さは、認めるよ」

休むことなく、腰を動かすボロミアは、また、一つ、短いあえぎを漏らした。

ボロミアは、顔を伏せしまっていた。

声を上げることに対する羞恥に耐え切れず、肩を震わせていた。

「ここで、たっぷり癒して貰って、そりゃぁ、公務にも精が出たことだろう」

「・・・言わないでくれ。アラゴルン」

ボロミアの手が、アラゴルンの胸を撫でた。

甘えかかるように、指先が、アラゴルンの肌をなぞっていき首に触れた。

ボロミアは、体を前に倒し、アラゴルンの胸の上へと体を伏せた。

手は、アラゴルンの髭まみれの頬を撫でた。

滑らかな指先が、アラゴルンの唇をふさいだ。

「・・・上手く出来なくて、すまない。でも、・・・アラゴルン。許してほしい。どんな風にでも、あんたの言う通りにするから、そんなに酷いことを言わないでくれ」

ボロミアは、アラゴルンの額へと口付けをした。

アラゴルンは、ボロミアの頬をつかんだ。

「目を開けろ」

アラゴルンは、ボロミアに命じた。

緑の目は、従順にアラゴルンを写した。

「俺の名を呼べ」

「・・・アラゴルン」

アラゴルンは、自分に全ての重みを預ける恋人をきつく抱きしめ、口付けした。

開いた口の中を全て支配し、横暴に暴れ回った。

ボロミアは、唇が離れるわずかの合間に、アラゴルンへと謝罪した。

「慰めるなんて、言っておいて、反対に、苛立たせてだけだ。私は、全く役に立たない。・・・すまない」

アラゴルンは、謝罪の言葉をせき止めるべく、舌を絡ませた。

ボロミアは、ゆっくりと腰を動かし始めた。

また、ボロミアは、アラゴルンのためだけに、体を使っている。

アラゴルンは、ボロミアのためだけに、突き上げを強めた。

息を呑み、まだ、声を殺してしまったボロミアを責めることはしない。

アラゴルンは、かわいそうな愛しい人を、快楽の高みへと追い上げた。

ボロミアの体が、硬くなった。

アラゴルンの的確な動きに、射精の瞬間が近づいていた。

懸命に開いている目が、アラゴルンに哀願した。

「いかせて・・・くれ。アラゴルン」

ボロミアの声が、アラゴルンに許しを請うた。

この瞬間に対し、アラゴルンは、怒りよりもある種の優越感を持つようになっていた。

許可が無い限り、ボロミアは、涙をこぼしてでも、射精を耐える。

生理的な欲求を凌駕する支配力を、ボロミアは、アラゴルンに与えたのだ。

「いきたい・・・許して・・・」

切々と、ボロミアは、訴える。

突き上げを止めないアラゴルンの動きに、耐え切れなくなったのだろう。

ボロミアは、自分のものをきつく握った。

強く唇を噛む顔に、涙が盛り上がった。

「アラゴルン・・・・許して・・・許して・・・くれ」

動かなくなってしまったボロミアの腰をつかんで、アラゴルンは、更にボロミアを揺さぶった。

ボロミアの口が大きく開かれた。

声はなかった。

だが、確かに、アラゴルンは、高い声を聞いた。

「許してやる。ボロミア。ちゃんと腰を振ることを忘れるな」

ボロミアは、アラゴルンのものを強く締め付け、必死に腰を振りながら、手の中に温かい液体をこぼした。

 

ボロミアの瞳からあふれた涙が、アラゴルンの掌を暖めた。

アラゴルンは、ボロミアが、射精するタイミングに、あえて自分を解放しなかった。

アラゴルンの腹の上で、大きく息をあえがせているきれいなボロミアの体を撫でてやった。

アラゴルンは、ボロミアが落ち着くのを待つと、また、ゆっくりとボロミアの奥をえぐり始めた。

ボロミアは、懸命にアラゴルンに応えようとした。

アラゴルンは、ボロミアの頬を撫で、つんと尖った乳首を摘んだ。

思うが様にボロミアを突き上げた。

アラゴルンは、もう一度、ボロミアに許しを請わせ、やっと自分を解放した。

 

 

ボロミアは、肩を落としていた。

衣装の乱れを直すアラゴルンを見ていた。

「役には、立てなかったな・・・」

ボロミアの表情は、自分ばかりが満足を得たことに、曇っていた。

「そんなことはない。あんたの睡眠時間を奪った分、今晩は、十分眠れると思う」

アラゴルンは、ボロミアに上着をかけてやった。

なかなか袖を通そうとしないので、アラゴルンは、ボロミアに服を着せ掛けようとすらした。

ボロミアは、慌てて、袖を通し、ボタンを留めた。

アラゴルンに、背中を向け、自分の体を汚す二人分の精液を拭った。

アラゴルンは、ボロミアの用意が整うのを待ち、背中を抱きしめた。

ボロミアの髪は、汗で湿っていた。

さらさらと指の間をこぼれるはずの髪が、あちこちにほつれを作っていた。

アラゴルンは、ボロミアのうなじに顔をうずめ、ささやいた。

「今夜は、ここで、このまま寝よう。あんたの体で俺を暖めてくれ」

「一緒に寝てもいいのか?」

ボロミアの顔に喜びが湧いた。

アラゴルンは、考えてみれば、抱き合うように眠ったことなどなかったことを思い出した。

だが、それは、アラゴルンだけなのか。

「ここには、わざわざ戻るような自分の部屋などありはしない。ボロミア」

アラゴルンは、冷たく言った。

「・・・・・アラゴルンと一緒に眠れるということが嬉しいのだ。アラゴルンが、眠れるよう、今度こそちゃんと見ていてやる」

ボロミアは、アラゴルンを抱きしめた。

 

ボロミアは、まだ、肉親の支配から抜け出せてはいなかった。

だが、確かに、アラゴルンを愛していた。

 

 

            END

 

                        INDEX

 

 

癒し系のボロミアさんを探して、自分の引き出しを漁っていたんです。

癒し系?ってのが、出てきてしまったかもしれません(苦笑)

整理整頓が悪いっていうより、分類の仕方が悪いようです。

私にとっては、このボロミアさんは、癒し系。