レゴボロBOX 〜裂け谷編〜 21〜25
*それに勝る薬なし
それは蔵書室へ向かうエルロンドだった。
エルロンドがいた位置は、柱の影になっており、ボロミアは月が照らした影に向かって口を開いた。
「私は悩んでいるんだ。これから先のことを考えると、夜は眠れず、昼は頭が痛く……」
ボロミアは始終胃をさすっていた。
だが、用件はそれだけではないように、声にはしたたり落ちるような色が含まれていた。
人間違いだと分かっているエルロンドはため息とともに尋ねた。
「お客人、お望みなのは薬かね?」
声に、ボロミアはあわてたように柱の影をのぞき込んだ。
「薬なら、私にもお渡しできる。だが、レゴラスが欲しいのなら、自分で探しにいっていただけるとありがたい。私も暇ではないのだ」
*キスがしたい
その日、レゴラスは、アラゴルンから学んだ人間とうまく付き合う方法を実践すべく、ボロミアを遠乗りに連れ出した。
早駆けで競い合い、狩りをし、ボロミアはすっかり上機嫌だった。
やがて真夜中になり、レゴラスは、もう一つ教えられていたことを思い出した。
「ボロミア、申し訳ないんですが」
レゴラスは、色恋沙汰の場面ではそうしろと言われていた通り、誠意を持って切り出した。
「キスがしたいんです。許していただけるでしょうか?」
「レゴラス」
ボロミアの眉が跳ね上がった。
「今更体位を変えろというのか?」
*ため息
「アラゴルン、人間というのは、本当に信じやすい生き物です。ボロミアの素直なこと。信じられない程です」
うれしそうに目を細めるレゴラスに、うろんな目をしたアラゴルンが応えた。
「レゴラス、エルフもそう対して変わらない。若かった私が口にした君の望みならなんでもかなえるという言葉を、アルウェンは未だ疑おうともしない」
*人の評価
ボロミアは照れくさそうにアルウェンにのろけた。
「レゴラスは、めちゃくちゃに私のことを愛してくれておりまして」
「あまり自信を持たれたない方がよろしいですよ。人間の方。もうずっと昔から、レゴラスは、めちゃくちゃな人でした」
*まぐろで結構
いよいよ指輪を葬る旅にでようとする日が近まり、ボロミアは、アラゴルン、そして、人間の王たちと、道中で出会うだろう魔物の話をしていた。
「長虫にはお気を付けを……」
「ウルローキ(火の蛇)に出会われましたならば……」
「私は、じゅうが苦手ですよ。あれは、意外にかわいい顔をしているもので、どうにも殺してしまうのがためらわれる」
アラゴルンは、笑って年老いた王たちの心配を退けた。
ボロミアは顔を顰めて言った。
「私は、シェロブ(毒蜘蛛)が嫌いだ。あれは、気持ちが悪い。どうにも好きになれない」
アラゴルンが、守ってやると言い出そうとしたところに、声が飛んだ。
「ボロミア、大丈夫です」
遠くで他のエフルたちと談笑していたはずのレゴラスが、席を立っていた。
困ったように眉を寄せ、頬を染めていた。
「ボロミア、しゃぶるのが苦手だったんですか? でしたら、そうおっしゃって下さればいいのに。熱心にしてくださるから、きっとお好きなんだと思っておりました」
アラゴルンは、穴が開くほど、ボロミアの顔を見つめた。
ボロミアは唇が切れるほど強く噛みしめた。
「闇の森のエルフめ!お前が一番有害な魔物だ。今、この場で、退治してやる! そこを動くな!」
研ぎ上がったばかりのアラゴルンの剣が、ボロミアの手によって鞘から抜かれた。
まだ、続くよv(笑)
17.6.4