レゴボロBOX 〜裂け谷編〜 16〜20

 

*どこを探った?

 

夜半、人気のない廊下でレゴラスとすれ違ったアラゴルンは尋ねた。

アラゴルンは、ただの野伏として、金髪の執政に下世話な興味興抱き尋ねたのだが、エルフの口を開かせるため、顔にはゴンドールの王としての威厳を保った。

「どうだ? あのボロミアについて、何かわかったことがあるか?」

レゴラスは、少し首をひねった。

「そうですね。まだ、はっきりとは。今も寝台の上で徹底的に探りをいれて来たのですが、……なかなか、ボロミアは手強いです」

 

 

*代弁します。

 

夕食後、美意識にあふれるエルフの中庭で夕涼みをしていたボロミアにアラゴルンが近づいた。

「ボロミア、私と少し話をしないか? 私は、レゴラスのように、あなたに口付けを迫ったり、襲いかかったりはしない。親しい友としての礼儀に適う振る舞いをしよう。どうかな? 私に話をする機会を与えてくれるだろうか?」

野伏は笑みを浮かべていた。

相手は王であり、ボロミアは言葉に詰まり、一瞬返答までの間があいた。

にこやかに笑いながらレゴラスが二人に近づいた。

「残念です。アラゴルン。どうやらボロミアは今の条件を聞いて、すっかりあなたと話をする気がなくなったようです」

 

 

*危険な花

 

アラゴルンの頭に出来たコブをエルロンドは心配していた。

「いえ、たいしたことはないのです。ゴンドールから来たという男が憂い顔でバルコニーにおりましたので、すこし気分を盛り上げてやろうと歌を歌ってやったのです。そうしましたら、彼が、花を投げまして」

エルロンドの眉間に皺が寄った。

「お前の歌で花を?」

「ええ、鉢付きでした。義父上、あの部屋に置くのは、今度から切り花にしてください」

 

 

*必要なのはそれか?

 

エルロンドは、エルフの王子ともあろうものが、人間に夢中になっているのを憂慮し、彼の父親である闇の森の王に手紙を書いた。

ボロミアは人間であり、男であり……と、書きつづるうちに、気持ちよく酒を飲み、快活に話す彼のことが気の毒になり、ボロミアが、大国ゴンドールの執政の息子であること、戦では、総大将を勤める勇猛果敢な戦士であることなど書き足した。

だが、また、エルロンドは、エルフの未来を思い、執政家の確執や、王が戻らない場合のゴンドールという国の未来のなさについて書きつづり、しかし、また、城下における執政家の長男の人気の高さを書き、結局、手紙は、ボロミアという人なりをその文だけで分かるほどの膨大な量となった。

それを闇の森に送って、わずかに数日、裂け谷に、早馬が駆け込んだ。

一体幾日駆け通しに馬を走らせたのか、伝令のエルフは、息も絶え絶えだった。

差し出された水も含まず、エルフは口を開いた。

「我が主人が、エルロンド様にお尋ねです。彼の者の目は、宝石のように輝いておるか? 髪は、絹糸のように綺羅めいておるか?と」

エルロンドは、エルフを抱きかかえ、親身に水を飲ませようとしているボロミアを冷たい目で見下ろした。

 

 

*デート現場

 

月の綺麗な晩だった。

エルロンドは養い子と一緒にバルコニーに立っていた。

「こんな暗い時代になりますと、あそこに横たわっておられる偉大なエルフの英知が、失われたことが悲しまれますね。義父上」

ため息とともにはき出されたアラゴルンの言葉に、頷きかけたエルロンドは、ぴくりと眉を動かした。

「いや、いっそ、失われた方がましだな」

「どうしてですか?」

「墓場は止めろと言っておいたのに! あの馬鹿王子め!」

気を許した息子なだけに普段は使わない言葉でレゴラスを罵るエルロンドの目は、暗闇であろうともその威力を失わないエルフアイだった。

 

今日のアップはこれだけじゃないよv(笑)

17.6.4