抱きしめる腕

 

「…疲れたか?」

アラゴルンが見下ろす場所に、ボロミアは膝をついて目を閉じていた。彼が膝をつく場所は、冷たい土の上で、辺りを木々が遮り、星の光さえ、わずかにしか差し込まない。

「ん?」

アラゴルンがさらに促すと、ボロミアはゆっくりと首を振る。

首を振る動作によって唇の端が動き、温かい口内に含まれたアラゴルンに心地よさを与える。

アラゴルンは、ボロミアの髪を掴んだ。

「では、目を開け。きちんと顔を見せるんだ」

強い力で髪を引っ張り、ボロミアの顔を晒す。

ボロミアの瞳が開かれた。青い瞳は、わずかな涙にうるみ、金の髪に彩られた、整った顔に、アラゴルンの醜悪なものが出入りしている。

「もうすこし熱心にしたらどうだ?」

アラゴルンは、喉の奥へさらに突き入れ、ボロミアは、一瞬、苦しそうに顔を歪めた。

「…得意だろう?」

ボロミアは、苦しさをやり過ごすと、逆らいもせず、熱心に柔らかい舌を使う。

「そうだ。あんたが何よりも得意なことなんだからな。手を抜かずにやってもらわないとな」

アラゴルンは、苛立ちのままに、意地の悪いことを言い、従順なボロミアに満足して頷いた。

ボロミアは、決して文句を言わず、湿った口内を明け渡し、アラゴルンに奉仕を続ける。

ボロミアが手を抜いていたわけではなかった。いつも通り熱心に口内を使い、吸い上げ、何度もアラゴルンの快楽に終わりを告げさせようとした。

しかし、その度、アラゴルンが自分から身を引いて、ボロミアの奉仕を長引かせていたのだ。

ボロミアの舌は、もうアラゴルンの味しか感じていなかった。頬の筋肉は疲れて痛み、何度も突き入れられた喉の奥は、熱く熱を持っていた。

しかし、ボロミアは従順だった。アラゴルンの気の向くまま、いつまでもアラゴルンを含み、だるくなる首の痛みも気にせず、いつまでも顔を前後させる。

アラゴルンの望みどおり、青い瞳も今度は閉じない。かすかに眉を寄せたまま、アラゴルンを見上げ、快楽に奉仕する。

「そうだ。俺は目を閉じているのは、好みじゃないと教えただろう?他の誰かと間違われちゃ困るからな」

アラゴルンは、ボロミアの顔にかかった金の髪を後ろへと撫でつけた。髪を全て払い、ボロミアの顔を更に晒す。

眉を撫で、震える瞼の上を指で辿る。

「目を閉じていて欲しがるのは、どっちだったんだ?」

アラゴルンは、残酷な顔で微笑んだ。前後するたび窪む、ボロミアの頬を柔らかく撫で、首をくすぐる。

ボロミアは、アラゴルンから口を離さず、かすかに首を振った。

「わかっている。父君だよな。あんたのほとんど全ては、父君の好み通りなのだから」

ボロミアは、否定もせず、アラゴルンの顔を見上げたまま奉仕を続けた。苦しそうに時折鼻から音を漏らすほかは、全く声を上げることもしない。

アラゴルンは、そんなボロミアを冷たい目で見下ろした。

ここでアラゴルンがボロミアの顔をひっぱ叩いたところで、ボロミアは逆らわない。もっときつく、喉の奥へと突き入れ呼吸を止めてしまっても、涙を零しながら、じっと耐える。

ボロミアの快楽には、深い支配の跡があった。近親相姦という恐ろしい支配は、ボロミアに抵抗という言葉を教えなかった。快楽が分かち合うものだということを、ボロミアはしらない。ボロミアにとって快楽とは、全て受け入れるものであり、従うものだ。

アラゴルンは、暗く笑った。ボロミアの頭を強く掴んで、激しく腰を喉へと突き刺す。

見下ろすボロミアは、苦しそうに眉を寄せているが、馬鹿々々しいほど素直に、アラゴルンを見上げている。

瞳に、苦痛はあるが、拒否は無い。

激しく前後される口が、どんなに苦しくとも、唾液が溢れさせ、アラゴルンのため、懸命に舌を使う。

その様は、いっそ哀れなほどだ。

アラゴルンは、全く抵抗をしないボロミアに苛立ち、そうする自分に深い悔恨を感じて混乱した気持ちを持て余した。けれど、することといえば、ボロミアの口を犯し、精液を注ぎ込むことなのだ。

 

「吐き出してもいいのだぞ」

激しく喉を使われ、その勢いで口の中に精液をたっぷりと含まされたボロミアは、苦しそうに咳をこらえていた。

口を両手で塞ぎ、こみ上げてくるものを耐えようと、背中が震えている。

アラゴルンは、ボロミアの手を掴んで、無理やり口から離させた。そのまま、指を唇へと押し込み、口を抉じ開ける。生臭いにおいが周囲に広がった。

しかし、覗きこんだボロミアの口内は、きれいなものだ。

「飲んだのか?」

肩で息をするボロミアは、躊躇わず頷く。

「苦しかったんだろう?」

「ああ、だが…」

アラゴルンが苦い顔をして、顔を近づけると、ボロミアは、アラゴルンの手から逃れて顔を伏せた。

「今、話しているのは、俺だ。俺は、あんたの顔を見て話がしたい」

「しかし、いやだろう?私の口からは、あんたのにおいがしているはずだ」

ボロミアは、何も無い土の上を見るばかりで、顔を上げようとしない。

「今、あんたと話をしているのは、誰だ?答えろ。ボロミア」

「…アラゴルン、あんただ」

アラゴルンに、きつい声に、ボロミアは、おずおずと顔を上げた。瞳が、アラゴルンの顔色を窺っている。

「俺は、吐き出せばいいと言った」

「…わかっている」

「では、俺を苛立たせるな」

「…すまない」

言われたとおり、ボロミアは、アラゴルンを見た。顔に自分の不手際を詫びるような困惑が張り付いている。アラゴルンは、自分の思い通りになるボロミアに苛立つ。

「逃げるな」

きつい声で命令を与えれば、ボロミアは決して逆らわない。

アラゴルンは、体を硬くしたボロミアの顎を掴んだ。

ボロミアは、行為にどんなに羞恥を感じようとも、命令されれば、じっと耐える。幼い頃からの教育というものが、こんなにも深く根をはるものかと、アラゴルンは空恐ろしい気持ちにもなる。

アラゴルンは、唇を重ね、縮こまる舌に、自分のものを絡めた。

ボロミアが、少しでも吐き出す息を減らそうと、耐えているのが分かる。

アラゴルンは、頭の後ろへと手を伸ばし、ボロミアが、我慢できなくなるまで口の中を蹂躙した。

口のなかの自分の味を、ボロミアと分かち合う。

精液の味がわからなくなり、お互いの唾液が口の中で、存分に交換された頃、やっとボロミアの手が、アラゴルンへと伸ばされた。

 

アラゴルンは、ボロミアの行動を監視していたわけではなかった。

休憩中や、見回りのときに、わずかに姿を隠すことなど、誰でも行うことであり、わざわざ、探すような必要があることではなかった。

それは、偶然だったのだ。

ボロミアが姿を隠していることなど意識せず、アラゴルンが付近の見回りにでた時だった。アラゴルンは、木陰に座るボロミアを見つけた。

何をしているのかなど、森の木々の間に隠れようとする背中を見ただけで、すぐ見当がついた。

だから、アラゴルンは、ことさら足音を消して、その場を離れようとした。

ほんの少し、高貴な顔をした彼が、自分を慰める様を、覗いてみたい気はしたが、流石にそんな失礼なことをする気にはなれなかった。彼は、多少頑固な面を持っているが、信頼に値する、大変気持ちのいい男なのだ。

しかし、気づかれぬうちに足を進めようとしたアラゴルンの聡い耳は、ボロミアの小さな声を拾ってしまった。

「…父上」

アラゴルンは、仰天した。

押し殺したような声が、確かに聞こえた。ボロミアの口から、ほんのわずかに零れている。

アラゴルンが、耳を疑う前に、ボロミアは、何度か名を繰り返した。甘えるような、切ない声が、森の木々に吸い込まれながらも、アラゴルンの耳にも忍び込む。

アラゴルンは、信じられない思いだった。こんな時に呼ぶ人が、ただの関係だとは考えられない。

一層、ボロミアに、自分の存在を気づかれるわけにはいかなくなった。

わずかな音も立てず、ボロミアから遠ざかる。この時のアラゴルンには、冷静さはなかった。早鐘のように鳴る自分の心臓の音を誰にも聞かれたくなくて、皆の元も戻らず、辺りをさ迷った。

さ迷う足は、歩みを止めず、ますますアラゴルンに混乱をもたらす。ボロミアが、今までとは違った人間のように感じた。信じられる剣の腕を持つ武人の肩が、木々の間で、怯えたように丸められ、明るい色の青い瞳は震える金のまつげに閉じられていた。

か細い声は…とても、なまめかしかった。

アラゴルンは、混乱した。

ボロミアのことが気に掛かるようになり、その後も、さりげなく姿を消したボロミアを探すようになった。

そして、アラゴルンは、更に深いボロミアの罪を知ることになった。

ボロミアは、切なく父、デネソールの名だけでなく、弟、ファラミアの名すら呼んだ。

アラゴルンは、信じられない思いだ。

日中、あんなにも明るい顔をして笑う男が、ひっそりと縋る声で肉親の名を呼び、果てる。その落差は、眩暈を起こすほどだ。

自分の性質の悪さに顔をしかめながらも、アラゴルンは、ボロミアへの盗視を繰り返した。

その度に聞く、肉親の名前。

か細く、耳に忍び込む声。

苦しそうに吐き出される息の音が、アラゴルンの混乱を、欲求へと変えた。

 

「…アラゴルン」

いつまでも続けられる口内への愛撫に、ボロミアはほんのりと目尻を染めて、アラゴルンの名を呼んだ。

アラゴルンは、ボロミアの唇と撫で、何度か髪を撫でた。

「ボロミア、すまなかった。苦しかっただろう?」

ボロミアが、この質問に頷くことはない。

ボロミアが、アラゴルンの気持ちを受け入れ、関係を結ぶようになってから、アラゴルンは、何度か繰り返し教えた。アラゴルンが苛立ち、自分勝手に振舞った時は、受け入れる必要はないのだと。

しかし、ボロミアは、わからない。自分が苦しくて、辛いことをされたのだと理解しようとしない。自分の扱いが不当なものであると思わないのだ。

やはり今回も、ボロミアは、首を振った。アラゴルンの顔をみて、穏やかに微笑む。

この繰り返しが、時にアラゴルンを激しく苛立たせ、ボロミアを苛む方向へと押しやるのだが、ボロミアは、それだって理解することができない。

「喉は、痛くないか?」

「大丈夫だ。私のことは、気にせず、あんたの好きにしてくれて構わない」

「…ボロミア」

こうして、ボロミアに、施された支配の痕跡を見るたび、アラゴルンには、こみ上げてくるものがある。

いつも、耐えなければならないと思う。しかし、ボロミアの全てに深く刻まれたやり方は、どうしても、アラゴルンの苛立ちを煽る。

そして、ボロミアは、荒々しいアラゴルンのやり方にも、全く逆らおうとしないのだ。

逆らわないよう仕込まれたボロミアを見て、ますますアラゴルンは、激しく苛立つ。気づくと、彼の髪を掴んでいる。

途切れなく続く迷路をさ迷っている気分だ。

していることは、ボロミアの前の支配者と、まるで変わらない。

アラゴルンは、ボロミアの肩へと顔を埋めた。ボロミアは、アラゴルンの背を優しい手つきで撫でる。

「…本当に、気にしないでくれ。あんたは怒るかもしれないが、私にとっては、この方が気楽なんだ」

まるでアラゴルンを労わるようなボロミアの声を、馬鹿々々しい思いでアラゴルンは聞いた。

「俺が良くしてやるのは嫌か?」

「嫌ではないが…この間のようなことは、やめてくれると嬉しい」

ボロミアは、ゆっくりとアラゴルンの髪をなでる。

「どうして?とてもよかっただろう?」

「…あの時も言ったが、私にとって、あれは、罰なんだ…」

「ああ、ファラミア…彼が、父君のお仕込を嫌って、あんたに男をあてがったとかいう…」

思い出したくないことなのか、口を噤んだボロミアは、アラゴルンの腕の中で目を閉じた。

ボロミアが、肉親をどう捉えているのか、アラゴルンにはよく理解できない。だが、すくなくとも、憎んでいないことは、わかった。彼は、普段、穏やかな顔をして肉親を語る。他人が聞いたら、必ず嫌悪の表情で唾を履き捨てそうな状況ですら、ボロミアは受け入れ、従ってきた。それは、とても酷い環境であったと、アラゴルンは思う。しかし、ボロミアは酷いとは、思っていない。彼は、そんな環境を作り出した肉親を恋しがり、愛情を注いでいる。

それは、アラゴルンが、嫉妬するほど、繊細で豊かな愛情だ。

「あんたが、あのやり方が好きだというのなら我慢する…だが、私は、あんたに技巧の限りを尽くされると、自分を抱いているのが、あの時の男のようで、落ち着かないんだ」

「そんなにも辛かったか?」

アラゴルンは、ボロミアの顔を見た。

「…だから、あんたが、そうしたいのなら、我慢する」

いつもの健やかさなど無縁の色気の滲む顔をして、ボロミアは、伏目がちに、アラゴルンを見る。

「我慢は、しなくてもいい。ただ、もうすこし、説明してくれ。あんたは、あの時、泣き出してしまって、十分な話を聞くことができなかった。

…俺には、どうしてそんなに嫌なのか、よくわかない」

「…」

ボロミアが、躊躇うのがわかった。

アラゴルンの視線を避け、伏せた目が、土の上をさ迷う。

ボロミアは、アラゴルンが、自分の秘密を理解していることをわかっていた。それをアラゴルンは、関係を結ぶ上での取引の材料にさえしたのだ。だから、何も隠す必要のないことなど、わかっていた。

しかし、ボロミアは、自分の体に染み付いた過去について話したがらない。

ボロミアは、自分の特異性が、人を怯えさせ、嫌悪されるに値することだということを、わかっている。

しかし、ボロミアについて、アラゴルンは少しでもわかりたかった。

腕の中のボロミアをそっと抱きしめる。

ボロミアが、落ち着かない様子で、何度か自分の唇を舐めた。

アラゴルンは、腕の中の体を土の上へと横たえ、その隣に体を倒すと、もう一度、温かい体を、腕の中へと抱き込む。

向かい合わせに顔を覗き込み、体を全て密着させた。

ぬるい体温が、互いの間を行き来する。

アラゴルンは、ボロミアが落ち着くまで、彼の髪を撫でた。

 

ボロミアが、躊躇いがちに口を開いた。

「…父上が、声を出すのを嫌うのは、もう、わかっているよな」

「ああ」

ボロミアは、アラゴルンの口元へ視線を落すようにして、口を開いた。

アラゴルンも、あえてボロミアの目を見つめようとはしない。先ほどまでの口付けで、少し赤みの増した、ボロミアの薄い唇を見ている。

躊躇う唇が、開かれるのを、ゆっくり待っている。

「…私は、だから、声を上げない」

ボロミアは、躊躇っている。腕のなかに抱きこんだ体も、すこし、強張っている。

「…しかし、ファラミアは、それが、どうしても許せなかったのだ。いや、多分、ファラミアと父上の好みは、ほとんど同じだったから、ファラミアだって、そんなに好きな行為ではなかったと思うんだが…父上と、全く同じでは、許せなかったんだろう。だから、何度も声を出すように言われて…だが、苦手だったんだ。昔、声を上げるたび、何度も叩かれたから…どうしても、みっともなくて許されないことだという意識が抜けなくて」

アラゴルンは、ボロミアの背を撫でた。ボロミアは、アラゴルンの肩へと顔を埋める。

「…とうとう、ファラミアは、業を煮やして、城のご婦人方が秘密で雇い入れている男を私にあてがったのだ。男は、ファラミアの前で、きちんと仕事をこなして…私は、彼の技術が、恐ろしかった」

「だから?」

「ああ、あんたも、多少、そういう生活をしたことがあるんだろう?この間、私を見る目があまりに冷たくてこわかった。どんどんと、体を高みに追いやっていくのに、あんたは、その仕事振りに満足した顔をするばかりで、私をただの肉体として扱っていて恐かった」

「快感はなかった?」

「いや、感じるのも、度を過ぎると、苦しいばかりだから…」

アラゴルンは、当然思い当たっていた。限界を超えたボロミアが、我を忘れて、泣き叫ぶのが面白く、アラゴルンは、自分が満足いくまでボロミアを許さなかった。

あの時も、デネソールに教えられた所作を無意識に行ったボロミアに腹を立てて、始めたことだったから、ボロミアがそう思うのも、仕方のないことだった。

「悪かった」

「いや、あんたが、上手すぎるから、そんなことになるんだよ。ただ、私も…こんなだろう?まるで、色事の技術を競い合わされているようで…な」

アラゴルンは、ボロミアの柔らかい髪を撫でた。

「酷くされているほうが、気楽か?」

「…あんたの、好きでいい。あんたの気の済むようにしてもらうのが、一番いい」

「あんたの希望を聞いてるんだ」

「私は、アラゴルンの思うままでいいんだ。申し訳ないが、それが、慣れているし、安心していられる。それにあんたは、とても上手だから、酷いことなんて、なにもしないじゃないか」

アラゴルンは、腕の力を強めて、ボロミアを抱き寄せた。

肩口へと伏せている顔を起こさせ、頬へと口付けをする。

「ボロミア…」

アラゴルンは、やさしい目をしたボロミアの瞼を舐めた。

 

ボロミアの手が、もぞもぞとアラゴルンの下肢へと伸ばされる。

アラゴルンは、彼の動きやすいように、少し体の間に空間を作った。

先ほどまで、ボロミアの口内をいいようにしていた肉が、ボロミアの掌に包まれる。

柔らかくなっていたのものも、なめらかな掌に掴まれると、すぐに硬くなっていく。

ボロミアは、大人しくアラゴルンの快楽に奉仕した。10本の指は、休み無くアラゴルンに絡みつき、わずかな強弱をつけながら、硬くなるものを優しく撫でる。そこにある全ての皮膚を滑らかな指先が辿り、血を集める。

アラゴルンは、熱心に作業するボロミアの髪をかきあげ、額へと口付けをする。

ボロミアの額は、ほんのわずかに、汗を浮かべていた。肉体的な興奮というより、たぶん、先ほどの告白を行った緊張のせいだろう。金の髪の生え際に、何度も唇を寄せる。

アラゴルンも、ボロミアの衣服へと手をかけた。

止め具の多い衣服を全て脱がすことは、流石にしないが、アラゴルンが堪能したい部分は、夜風に晒していく。

ボロミアの、滑らかに隆起した胸の筋肉をなで回すことができる程度に、上着を開け、引き締まった腹は、下から手をいれて、その硬さを味わう。

下履きを太腿まで下げさせ、白い肌も、楽しむ。

ボロミアのものは、まだ、ゆるく立ち上がっている程度だ。

アラゴルンは、絡みつく指を外させ、ボロミアの上へと覆い被さった。

あまり、ボロミアは好まないが、アラゴルンは、ボロミアが良さそうな顔をするのが、好きだ。

この間のように、やりすぎさえしなければ、そのほうが、ボロミアにとっても、良いだろうと、信じている。

アラゴルンは、ボロミアの首へと、唇を寄せた。

肩の近くから、耳の後ろまで、唇で辿り、緩く吸い上げる。

横を向かせて、うなじに軽く歯を立てる。

「…ボロミア」

ボロミアの手が、アラゴルンの髪を撫でる。

アラゴルンは、ボロミアの髪の匂いを堪能すると、もう一度、舌で首筋をたどった。

今度は、滑らかなカーブを描く、胸を目指す。

張りのある肌に、ところどころ歯を立て、その感触を楽しみながら、恐ろしく感度のいい乳首を口に含む。

ボロミアの体が、引きつれる。

だが、一瞬息を呑んだだけで、それ以上は声を漏らさない。体には、十分力が入っているが、唇を開かない。

アラゴルンは、顔を胸へと伏せたまま、手探りでボロミアの顔を探った。

唇を噛み締めていることが分かる頬の形を指でさわり、唇の中へと指を押し込む。

ボロミアは、口を開いた。進入したアラゴルンの指を舐める。

だが、まだ、声を漏らさない。

アラゴルンは、乳首を吸い、片手で、胸の肉を揉みしだいた。

ボロミアの舌の動きが止まる。

それでも、まだ、アラゴルンの指は、息だけしか感じない。

アラゴルンは、胸から顔を上げた。

口の中の指を出して、ボロミアの顎を掴む。

ボロミアの目を捉えると、ボロミアは、しまったとでもいうように、瞬きして、顔を背けた。

「…すまない」

謝るボロミアに、アラゴルンは、緩やかに顔を振った。

ボロミアの唇を捕らえ、薄い粘膜を舌で辿る。

「…ん」

ボロミアが、息と一緒に声を吐き出した。

顔は、苦悩するようにしかめられている。

「無理なら、声をださなくていい」

アラゴルンは、ボロミアの体に染み付いた習性を、できるだけ受け入れようと努力した。

声を漏らすことを、極端に嫌がるのは、幼い頃から、そうすることを否定されてきたからだ。

ボロミアは、アラゴルンに従順であろうとしている。それは、わかっている。だが、何度も繰り返し、深く根を下ろす支配を目にすると、アラゴルンも、反発したくなる。

目の前が見えなくなるほどの怒りが、今日は訪れないことを、アラゴルンは、祈った。

いつもと、同じように祈った。

アラゴルンは、閉じようとするボロミアの唇に誓うように口付けた。

「…アラゴルン」

ボロミアの手が、アラゴルンの背中を撫でる。

肩甲骨の形を辿り、盛り上がった肩へと腕が回される。

アラゴルンは、口付けを続けながら、ボロミアの腹を撫でた。

固い腹の中心にある臍へと指を入れて、すこし、くすぐり、わき腹を指先で撫でる。

腰骨の上は、ボロミアが体を疼かせる部分だ。

だが、そこを辿るとき、ボロミアは、声を漏らさない。

体に力を入れて、なんとか快感をやり過ごそうとし、アラゴルンの指が離れると、安心したように、息を漏らす。

それから、やっと、声を漏らすのだ。

ボロミアにとって、声を出すことは、自然なことではない。ファラミアによって、後天的に植え付けられた技術でしかない。

「…あっ…ん」

アラゴルンが、ボロミアの腹へと顔を寄せて、ふくらみの無い下腹を舐めた。

白い肌が、ぴくぴくと引きつる。

おずおずと伸ばされた手が、アラゴルンの髪に差し入れられ、緩やかに頭皮を撫でる。

躾の行き届いたボロミアは、アラゴルンの邪魔をしないよう、足を曲げることもしない。

アラゴルンは、頭髪より少しばかり赤みの濃い毛の中へと舌を進めた。指が、腰骨を掴んでいるので、ボロミアの声は、途切れている。

爪の先で、腰骨を刺激してやりながら、舌を進める。

たどり着く前に、ボロミアのものは、先走りを零し始めていた。

硬くなっているものの裏側から、アラゴルンは、上に向かって舌を伸ばす。

舌に、どくどくと血の集まる感触を味わった。

腰骨を掴んでいた手を離して、白い太腿に、手を置く。

ボロミアは、小さな息を吐いた。

多分、しばらくの間、声を聞かせてくれる。

案の定、アラゴルンが、ボロミアのものを口に含むと、小さな声が聞こえる。

アラゴルンは、軽く顔を上げ、ボロミアの薄く開かれた口と、眉間に寄せられた皺を、苦い思いで見つめた。

アラゴルンは、ボロミアの声が聞きたいのか、聞きたくないのか、自分でもよく分からなかった。

掠れるようなボロミアの声は、心地いい。

しかし、声を上げるボロミアは、とても苦しそうな顔をしている。

だが、アラゴルンは、人形のように声を漏らさないボロミアを抱くのは、苦手だ。

ボロミアは、始終無言で、熱い息に耐え、何もかも、アラゴルンの思い通りになる。

「…アラゴルン」

ボロミアは、決して力をいれず、アラゴルンの髪を撫でる。

アラゴルンは、ボロミアをきつく吸い上げ、また、ボロミアを無言にした。

口の中一杯に含み、舌を使って先端を舐め上げる。先端の皮膚の薄い部分は、アラゴルンの舌が巻きつくたびに、ひくひくと震えた。

アラゴルンは、舌先を尖らせ、穴のあいた部分をできるだけ開かせる。そうしておいて、唾液に濡れた茎の部分を素早い動きで上下させた。

ボロミアの背中がしなる。

 

しつこいアラゴルンの愛撫に耐えていたボロミアだったが、遠慮がちに手を伸ばすと、アラゴルンの肩を叩いた。

唇を唾液で汚したアラゴルンが、顔を見上げると、潤んだ瞳が、アラゴルンをみつめている。

薄い唇が、早い息を漏らしていた。白い皮膚の目元が赤いのが、アラゴルンを気分よくした。

「ボロミア、どうして欲しい?」

アラゴルンは、ずり上がり、早い息をする胸に手を這わせながら、額へと口付ける。

ボロミアの額には、粒になった汗が吹き出ていた。額に金の髪が張り付いている。

アラゴルンは、舌で、ボロミアの汗を味わった。汗は、ボロミアの匂いを含み、アラゴルンは、舌を這わせながら、彼の髪に鼻を押し付けた。

アラゴルンが、何をしているのか悟って、ボロミアは、躊躇いがちに、アラゴルンの体を押す。ボロミアは、体の匂いを嗅がれるのが、苦手だ。そんなことを、今までは好まれなかったせいか、とても恥ずかしいことだと感じているらしい。しかも、館にいた時分なら十分に体を清めてから寝台に上がることもできたのだろうが、旅の今は、精々、体を拭うことくらいしかしてない。

ボロミアの体からは、いい匂いしかしないのに、嫌がるボロミアが可愛らしく、アラゴルンは、顔を両手ではさんで、顔じゅうに舌を這わせた。

眉の間には、深い皺が寄っている。アラゴルンは、その深みにも舌を差し入れる。

アラゴルンがしたいだけ舌を這わせる間、ボロミアは、大人しくしている。

「ん?ボロミア?」

アラゴルンは、ボロミアの潤んだ目を見た。ボロミアの唇は、噛み締められ、赤くなっている。

「もう…しないか?」

ボロミアは、とても小さな声を出した。唾液に濡れたアラゴルンの顔を見ていられないのか、目がさまよう。それでも、アラゴルンを誘うボロミアに、アラゴルンは嬉しくなった。

「ああ、しよう。ボロミア」

口元を緩め、アラゴルンは頷く。

ボロミアは、背中を晒す。衣服の端から覗く肩が、なまめかしい。

体を返す際に、ボロミアは、視界の端で、アラゴルンのものを確認したのがわかったが、その位のことは、アラゴルンにとって、気分を害するようなことではなかった。

ボロミアは、入れてくださいと、お願いする。

お願いしたあと、ねだるように、勃ったものへと、口を寄せる。自分で濡らして、それから、足を開く。

アラゴルンを驚愕させたその行為を、最初の夜、ボロミアは、なんの躊躇いも無く行った。

美しい彼が、目元を潤ませ、懇願する様は、恐ろしく嗜虐心を満足させる。だが、お互いを求め合い、行う行為には、必要のないことだ。

アラゴルンは、その行為を止めさせた。

ボロミアは、落ち着かない素振りだが、それでも、卑屈な態度をとらないよう、努力している。

アラゴルンは、衣服の中に忍ばせてあった、薬草と香油を混ぜ合わせた小さな瓶を取り出した。

指先へとぬり、浅い息を続けるボロミアの背後に近寄る。

ボロミアは、乱れた衣服のまま四つん這いになり待っている。

背中のラインの美しさを堪能しながら、アラゴルンは、尻のあわいを開いて、指をボロミアの中へと入れた。

ボロミアの背がしなり、白く盛り上がった尻の肉がぴくりと震える。

柔らかいボロミアの内部は、拒絶も見せず、アラゴルンを締め付ける。

引き寄せるような動きすらして、アラゴルンを誘い込む。

アラゴルンは、ゆっくりと、内部で指をめぐらせながら、白い尻へと唇を寄せた。

滑らかさを表面に持ちながら、鍛えられ、固く引き締まった尻たぶに口付けし、指を含む穴へと次第に近づく。

一本分の指など、難なく飲み込む穴の縁を、舌先でくすぐった。舌先が探る縁がひくつく。

どんなことをされるのかと、ボロミアの背中が緊張している。

アラゴルンは、引き気味になる腰の辺りを捕まえ、指を引き抜くたびに、めくれあがる赤い粘膜を舌で舐めた。

「…アラゴルン…」

ボロミアは、躊躇いがちな声で、名を呼んだ。

ボロミアは、嫌なのだ。

ボロミアには苦手な行為がいくつかある。どんな躾をうけてきたのか、自分ばかり、気持ちの良くなることが、罪悪であるかのように、怯えた目をする。

勿論、耐えろといえば、ボロミアは、射精するまで声を殺して大人しくしている。

アラゴルンは、指を増やして、穴を広げた。差し込んだ指の分、ボロミアの皮膚は、大きく伸ばされる。

二本の指で、出来た空間に、舌を差し込んで、内部を嘗め回す。

ボロミアの背中がますます固くなる。

「ボロミア、もうすこし、このまま」

アラゴルンが、広がった縁を舌で辿る。

ボロミアは、手を握り込むようにして体を硬くしたまま、小さく頷いた。

香油の油に、アラゴルンの唇も、ぬめぬめと光った。

ボロミアは、息を殺しながら、足を広げている。

アラゴルンは、優しく背中を撫でた。

ボロミアが、振り向く。

目が、濡れている。潤んでいるのではない。もう、涙を零している。

内部に進入した指は、ボロミアに締め付けられるせいで、自由に動くことが難しくなっていた。

背中が震えている。

もう、どんなにも、ボロミアは、気持ちいいのだろう。

だが、許しがもらえないので、ボロミアは、射精することができない。

これだけは、アラゴルンにも、変えることができなかった。

ボロミアは、謝罪を繰り返し、許しを貰って、やっと射精することができる。

許されたと、わかるまで、ずっと耐えている。その姿は、痛ましく、そして、愛おしい。

アラゴルンは、ボロミアの背に被さった。

アラゴルンの指が、腰骨の部分を掴むせいで、ボロミアは体を捩る。

アラゴルンは、金の髪の間から見えるうなじに噛み付きながら、ボロミアの内部に進入する。

ボロミアが息を呑んだのがわかった。

崩れるように、草の上へと、顔を落し、自由になった両手で、自分の高ぶりを掴んでいる。

荒い息を吐き出し、射精に耐える様をいじましく思いながら、アラゴルンは、力の入った肩へと唇を落した。

アラゴルンが動かずにいるせいで、少し落ち着いたらしいボロミアが、眉を寄せた顔を見せる。

アラゴルンは、顔にかかった髪を払ってやって、ボロミアの強張る頬を撫でた。

「…許してくれるか」

震える唇が、アラゴルンに向かって開かれる。

アラゴルンは、首を横に振った。ボロミアが、濡れた瞳を閉じる。肩にもっと力が入ったのがわかった。

「ボロミア。目を開けて」

アラゴルンは、ゆっくりと腰を動かしながら、ボロミアに命じた。

ボロミアが、ゆっくりと瞼を開く。青い瞳には、涙以上に許しへの懇願が溢れている。

この瞳があまりに、多くのことを語るから、デネソールは目を閉じるようにと命じたのだろうか。

それとも、昼間に笑う彼のまま、あまりにも無垢であったから、情欲にまみれた瞳を見ていられず、閉じさせたのだろうか。

ボロミアは、アラゴルンの動きにつられて、腰を動かしている。前後に揺すられる腰は、アラゴルンを飲み込み、吐き出し、ボロミアが感じているだろう快感以上のものをアラゴルンに与える。

柔らかい内部は、時々、とんでもなくアラゴルンを締め付け、天国のような心地よさを味あわせる。

アラゴルンは、ボロミアの肩に手をかけ、腰を深くへと突き上げた。

「…んっ」

ボロミアが、ほんのわずかな声を漏らす。自分で上げたその声に、驚いたように、閉じかけていた瞳を開けた。

「あうっ…ハァ…」

唇が、忘れていた声を上げる。アラゴルンの望みをボロミアは、精一杯叶えようとしていた。色のついた声が、熱い息と同じように唇から零れる。声を上げるほどに、眉間の皺が、深くなる。

アラゴルンは、ボロミアの口へと手を当てた。

「…無理しなくていい」

ボロミアが、アラゴルンの掌を小さな獣のように舐めた。

そのまま舌先が、かたい皮膚をくすぐるのを味わいながら、アラゴルンは、ゆるくボロミアの内部を擦った。

アラゴルンの知る、ボロミアのいいところを擦ってやると、舌が、時々、動きを止める。

アラゴルンは、ボロミアの呼吸の妨げにならによう、注意しながら、ボロミアに手を与えつづけた。

「…っ…・っ」

次第にボロミアは、ほとんど舌を動かさなくなった。突き出された舌は、アラゴルンの掌に触れたままだが、突き上げる衝撃にときおりひくつくだけで、アラゴルンへの愛撫の意味をなさなくなった。

掌は、ボロミアの詰められる息を感じている。

ボロミアの手は、アラゴルンが進入したときからずっと、自分のものを掴んでいた。許されていないのに、射精することなど、ボロミアにはできない。

しかし、とうに限界は越しているのだろう。

アラゴルンが、腰を動かすので、両手に自由の無いボロミアは、土へと顔を擦りつけながら、許されるときを待っている。

アラゴルンは、ボロミアのしなる背に手を這わせた。美しく筋肉のついた背中は、衣服の上からでも、その形をアラゴルンに伝える。

優しく背中を撫でられ、ボロミアが、アラゴルンを見上げた。

「…」

濡れた目が、アラゴルンに許しを請うている。激しく動かされる腰が、アラゴルンの最後を求めている。

「いやらしい動きだな。ボロミア」

アラゴルンが、その顔のなまめかしさに自分の唇を舐め、嬲るように声をかけると、ボロミアは、頭を振って、更に腰の動きを早めた。

「そんなに擦り上げて、まるで獣が発情っているようじゃないか?」

「…アラゴルン…許して欲しい…」

ボロミアの両肩は、震えながら懸命に自分の体重を支えている。

アラゴルンは、ボロミアの胸へと指を伸ばした。

ボロミアの胸は汗に濡れ、しっとりとアラゴルンの掌に吸い付いた。早い鼓動を感じながら、尖った乳首を探り当てると、アラゴルンは、指先に摘む。

ボロミアは、腰を捩って、手から逃れようとした。自分の下腹部を掴む腕で、乳首を隠そうと、肩を寄せる。

アラゴルンは、あまり痛くならないよう気をつけながら、爪を乳首へと食い込ませた。

「・・・…っ」

ボロミアが、激しく息を吸い込む。

「許してっ…くれっ」

擦り上げる腰の動きはますます激しくなり、丸め込んだ背中には、酷く力が入っている。

剥き出された白い太腿も、痙攣するように震えていた。

揺する腰の激しさに、アラゴルンのものが、抜け落ちそうになっている。

「…アラゴ…ルン…もうっ……許し…」

アラゴルンが触ったボロミアの手は、かわいそうな程、力が入っていた。

こんなに握り締めていては、痛いばかりだろう。

アラゴルンは、もう、ボロミアを許してやろうと思った。震えの酷くなるボロミアの下腹を撫で、彼の目元にでも口付けをおとし、自分と共に終わりを迎えさせてやろうと思ったのだ。

しかし、ボロミアは、目を閉じたまま、涙を流して、口の中で謝罪の言葉を繰り返し始めた。

その小さな声は、アラゴルンに使う言葉より幼く、「ごめんなさい」と、繰り返している。

アラゴルンの頭に激しい怒りが込み上げた。

抑えなければいけない。と思う。こんなことは、今までだってあったことだと、アラゴルンは、思う。

しかし、今までだって、アラゴルンはボロミアがこういう態度をとることを許せたことなどないのだ。怒りは、アラゴルンが表面的に装おうとする優しさなど、簡単に剥ぎ取っていく。

ボロミアを愛しいと思おう気持ちすら、粉々に打ち砕く。

「…許さない。まだ、我慢するんだ、ボロミア」

アラゴルンは、冷たく命じると、深くボロミアに覆い被さり、彼の頭へと手を伸ばした。

汗で張り付く髪を掴み、無理やり引っ張り上げると、ボロミアの唇へと噛み付く。

ボロミアは、顔を振って抵抗しかけたが、すぐ、舌をアラゴルンへと伸ばした。

あまりに喘ぐせいか、ボロミアの口の中が粘ついている。

アラゴルンがきつく髪を握り込むため、痛みにボロミアの額には皺が寄っている。

しかし、アラゴルンは、髪を離しはしなかった。無理な姿勢に、ボロミアが背をしならせるままに、激しく腰を突きつける。

「目を開けろ。ボロミア、目を開けるんだ」

きつく揺さぶられ、髪をつかまれ、ボロミアは、濡れたまつげを震わせていた。

血管の透けて見える白さの瞼が、ぴくぴくと痙攣している。ボロミアは、懸命に目を開こうとした。

開きかけた瞳に、アラゴルンは舌を這わせる。

眼球の柔らかな感触が、アラゴルンの舌さえ、震えさせた。

「…あっ…」

流石に、ボロミアも嫌がって、目をきつく閉じ、顔を背ける。しかし、髪がつかまれたままなので、あまり大きく逃げることができない。

「ボロミア、目を開けるんだ」

アラゴルンの舌を恐がってか、恐る々々ボロミアは、瞳を開いた。揺れ動く瞳に、怯えが見て取れる。

アラゴルンは、ボロミアの腰に手を回して、彼がもう一度四つん這いになるよう体を引き上げた。

ボロミアは、握り込んでいたものから手を離し、土の上へと手を付く。せき止めるものが無くなったボロミアのものは、耐え切れない液体をとろとろと零した。

「アラゴルン…もう、許し」

全てを言わせないうちに、アラゴルンは、ボロミアの腰骨に爪を食い込ませ、激しく腰を前後させた。

「…はうっ」

ボロミアが、腰をうねらせる。

髪の間から覗く、ボロミアのうなじが、彼の汗の匂いをアラゴルンへと運んでくる。

「…ああっ…ボロミア…」

アラゴルンは、加減など忘れてボロミアの腰へと、爪を食い込ませた。痙攣を繰り返すボロミアの体は、いまにも土の上へと崩れ落ちそうだ。

アラゴルンが突き立てているものと、跡が残るだろう程に食い込まされている指だけで、ボロミアの体は辛うじて支えられているような状態だ。

怒りのままにアラゴルンは、ボロミアをいたぶるつもりだった。

デネソールも、ファラミアも、亡霊のようにボロミアに付きまとう者たちなど、全て自分で追いやるつもりだった。

しかし、彼らが仕込んだ体は、絶品だった。

アラゴルンに耐えられない瞬間をもたらす。

もう一度、ボロミアの髪を掴んで、振り向かせると、瞳を開けているのを確認し、唇を寄せた。

熱い息をボロミアから奪い取る。

「いけ」

アラゴルンは、短くボロミアに命じた。同時に、ボロミアがどうしようもなく身を捩る部分へと、深く突き入れる。

ボロミアは、苦しそうに身を捩って達した。

荒い息が収まらない体を揺さぶってアラゴルンが腰を使うのに、声にならない悲鳴をあげている。

感じすぎてつらいのだろう、体が逃げようとするのを必死で耐えている。

アラゴルンは、激しい締め付けのなか、ボロミアの内部へと精液を流し込んだ。

 

アラゴルンは、ボロミアの背中へと覆い被さり、息が落ち着くのを待つと、ボロミアの握り込んだ拳に、自分の手を重ねた。

ボロミアは、涙の残る目のまま、アラゴルンを振り返る。

整った顔が、汗と涙、それに、唾液で汚れていた。

アラゴルンは、ずるりとボロミアの中から自分のものを出し、零れ落ちるものを、布で拭い取る。

アラゴルンの体が離れたので、ボロミアは、体を返した。

土に尻をつき、まだ落ち着かない息を抑えながら、汚れた顔を手で拭う。

「…悪かった」

アラゴルンは、ボロミアの汗で湿った髪を撫でた。

「…だい…じょうぶだ…」

ボロミアは、アラゴルンに体を寄せるようにして、アラゴルンの顔を見た。激しい情交のせいか、声が上手くだせていない。

「また、だ。また、あんたを…」

アラゴルンは、湿った髪に唇を押し付けた。

「いい…俺が悪いんだから。あんたが、俺に愛想をつかさないでいてくれるだけで十分だ」

「…ボロミア」

夜か暗いのは、星が少ないせいばかりではない。

アラゴルンは、濡れたボロミアの唇を甘く噛んで、彼を抱きしめた。

 

                                                            END

 

 

 

すっかりアラゴルンを翻弄する体のボロミアさん。

パパも、ファラミアも、私は大好きです。

勿論、ボロミアさんに関しては、目が眩むほど愛してます。

でも、私の愛は、少しゆがんでいるのです。許してください。

ボロミアさんが泣いたりすると、めちゃくちゃうれしい。…腐女子としては合格でしょうか??