愛している
ファラミアの整頓された部屋へ夜着のまま訪れたボロミアは、ドアの内側で立ち止まり、じっと、弟を見上げた。
兄の訪れを受け入れるため、ドアを開いたファラミアは、顎をしゃくって、もっと部屋の奥へと入るよう促す。
しかし、美しく磨かれた木目の光る扉の前で、ボロミアは動かなかった。
金の髪で顔を隠すほど、俯き加減にしていた頭を上げ、緑に光る目に縋りつくような表情を浮かべて、ファラミアを見上げた。
手が、簡素なつくりの白い夜着を所作なげに握っている。
こんな頼りない顔を、昼間にはみせない。
ファラミアは、いかにも仕方なくという態度を崩さず、兄の顎を掴み上げた。
見下すように、僅かに瞼を閉じ、小さくボロミアに向かって頷く。
ボロミアは、嬉しそうに笑って、目を閉じると唇を開け、ファラミアに向かって一歩踏み出した。
ファラミアは、その身体を腕の中に抱きこみ、唇を重ね合わせた。
開いている唇の、上と下とを交互に挟み込み、何度か口付けを続けてから、待っている舌を愛してやるために、口の中へと舌を差し込む。
ボロミアの舌は、大人しくファラミアの訪れを待っている。
自分から舌を伸ばすようなことをしない。
最初のキスは、いつもこうだ。
けれど、ベッドの上に上がる前に、キスを求めるのは、ファラミアに対してだけだ。
甘えている。
おずおずとではあるが、キスの最中に長い指がファラミアの癖毛を撫でたりもする。
ボロミアの昼間、あんなに快活に話す口が、極端に口数か少ない。こうやって、呼び出しを受けた時には、ボロミアの口は、別のことに使われる。
「もう、いいですか?兄上」
ボロミアは、ファラミアの身体に緩くしがみつきながら、歯列をなぞるファラミアの口付けにうっとりと目を瞑っていた。
その身体を抱きしめたまま、ボロミアの金の髪を撫で、ファラミアは耳元で意地悪く囁いた。
抱きしめていた腕を開き、部屋の奥にあるベッドを顎でしゃくってみせる。
態度と声で、ボロミアのしなければいけない仕事を思い出させた。
ファラミアの視線に、ボロミアが俯く。
ボロミアは、うっすらと頬を染めて、ファラミアの前を通り過ぎた。
ファラミアの視線を避けるようにかすかに俯いて足早に通り過ぎようとする。
ファラミアには、どうやったら、こんなに長い間、ボロミアに、この初心さを失わせずにいることができるのか、わからなかった。
ファラミアが、兄を自分の寝所に引き込んで、もう、かなり経つ。
兄が、父の寝所に通うようになってからは、一体どのくらいの年数が経っているのか正確には知らない。
ボロミアの身体は、十分開発されきっている。
それなのに、少しも擦れたところがない。
従順に、まるで、なにも知らないような顔をなくすことなく、いつも、いつも、ファラミアの前を通り過ぎる。
期待する身体を夜着の中に隠しているのに、それを恥じることを忘れない。
その純粋さを見ていると、丹念に慈しみ、ボロミアを好み通りに育て上げた、父、デネソールの顔がちらつく。
ボロミアは、ベッドの端に腰掛け、足を揃えてファラミアが近付くのを待っている。
多分、かなり幼い頃から、そうするよう教え込まれてきたボロミアは、昼間と夜の自分の違いについて、おかしいと考えることもしない。
昼間、ファラミアの部屋を訪れ、ソファー代わりに腰を下ろすベッドでは、ボロミアは、リラックスした顔で笑い、楽しそうにファラミアに話し掛ける。
今、ベッドに腰掛けるボロミアは、肩のあたりに緊張を残し、頼りなげな顔をして、口を噤んだまま、ひたすらファラミアを待っている。
どちらも、高貴に整った顔をし、皆に愛されているファラミアの兄だ。
この落差に埋まるものはなんなのか。
いくら考えてもファラミアにはわからない。
ファラミアは、焦らすように、ゆっくりとボロミアに近付いた。
「兄上、口を開けて」
ベッドに浅く腰掛けているボロミアの顎を掴み上げると、ファラミアは、兄に向かってぞんざいな口を利いた。
ボロミアは、小さく口を開くと、顔を上げたまま、瞼を閉じる。
金色の睫が、小さく震えていた。
色が白いせいで、瞼に薄く血管が透けて見える。
「舌を、出して」
ファラミアは、ボロミアの顔を見下ろしながら、次の指示を出す。
ボロミアは、赤い舌を唇から覗かせた。
ファラミアは、顔を寄せて、舌の先を舐めた。
先ほどより、余程、ねっとりと舌を絡ませ、兄の夜着に隠された太腿を撫でた。
ぴったりと合わさっている太腿の肉を、掌で味わっていく。
ボロミアが、小さく、鼻から声を上げた。
ファラミアの首に縋りつくように腕を回して、仕切りと舌の動きに応えようとした。
わざとらしい声だった。
ボロミアの首が赤くなっていた。
んんっっと、甘えるような声をだして、ボロミアは、ファラミアにしがみつく。
ボロミアは、本来、性交時に、殆ど声をもらさない。
どうしても堪えられないときだけ、うめくような声を上げ、自分の声に驚いたような顔をして、許しを請うように相手の顔色を探る。
その耐える様子に、ファラミアは存分にそそられていたが、あまりに、父親好みであることが悔しくて、ファラミアは、自分の相手をするときには、声を出すことを強要した。
出来ずにいたボロミアに酷い罰を与えもした。
今のボロミアは、我を忘れない限り、ファラミアの希望を叶えようと懸命に努力していた。
しかし、自然のままに声を上げるということができない。
刺激を受け、声が出そうになると、それに堪え、そうでない時に、頭で考え、声を出そうとしていた。
声を出すという行為に、どれ程の羞恥が潜んでいるのか、それだけで、体中を赤くし、身体に力を入れていた。
「兄上、夜着を」
短く命じただけで、ボロミアはファラミアの要求を正しく受け取った。
顔を伏せ気味にし、恥じらいながら、ゆっくりと夜着の裾を持ち上げる。
太腿が、半ばまで剥き出しになった。
ファラミアは、兄の髪を耳にかけ、裾を掴む指先を震えさす金の髪に、口付けをした。
耳が赤くなっていた。
「いつものように、見せてください。今日は、私だけなんでしょうね」
父親は、ボロミアのことを共有する息子に対して、先有権を見せつけるように、ボロミアの柔らかい太腿に跡を残した。
ファラミアは、ボロミアと同衾する際、まず、一番にそこを確認した。
兄は、弟の視線による蹂躙に耐えながら、夜着を捲ってく。
白い肌が剥き出しになる。
いつも、父が跡を残す部分は、最も奥深い部分だったから、ボロミアは、大きく夜着を持ち上げなければならない。
下着をつけることなしに、部屋を訪れるようファラミアが強要するので、それをするために、ボロミアは、全てを弟に晒さなければならない。
隙間なく寄せられている白い太腿の肉の上で、恥らう姿とは裏腹に、ボロミアのものが、緩く立ち上がっていた。
ボロミアは、伏せた顔を横に反らして、何度も瞬きを繰り返していた。
早く、この羞恥に満ちた時間が過ぎることを待っている。
ファラミアは、ボロミアのそれに触れることなしに、ボロミアの腿を掴み、左右に大きく開かせた。
少し汗で湿っている腿の暗がりに、鼻を突っ込むようにして、ボロミアの足の奥を覗き込んだ。
掴んでいる太腿は、力が入り、小さく震えている。
「今日は、私だけのようですね」
父は、昼前から出かけており、視察のために、3日は城を空ける。
ボロミアを構っている暇はなかった。
わかっていたくせに、ファラミアは、いつもの習慣を繰り返した。
今、ボロミアを所持しているのが誰なのかを、兄に教え込まなければならない。
ファラミアは、意地悪く、薄くなった父の所有印を指先で撫でた。
ボロミアの白い太腿から、これが、消えてしまうことはない。
ボロミアは、ファラミアの指が、何度も同じところを撫でる理由を知っている。
自分で夜着の裾を持ち上げ、性器を晒しつづける兄の強張った顔を撫で、ファラミアは、やっとボロミアに許しを与えた。
ほっとした顔で、ボロミアが、裾を下ろす。
詰めていた息を、小さく吐き出す。
これから、全ての衣服を剥ぎ取られ、白い身体を余す事無く弟に晒すことになるのだというのに、ボロミアはぴったりと足を合わせ、次の指示を待つように、ファラミアをじっと見上げて待っていた。
ファラミアは、ボロミアを腕の中に抱き込むと、ゆっくりとベッドの上に押し倒した。
柔らかく、いい匂いのするボロミアの身体は、ファラミアの思い通りに、ベッドの上に倒れ込む。
少し顎を反らし気味にして、ファラミアの背中を抱きしめる兄は、自分からは何の行動も仕掛けてこない。
そう、教え込まれている。
大人しく、どんな指示にも従うが、自分の欲望は一つも要求しようとしない。
甘えるような顔をしながら、口付けが欲しいとも言わない。
それどころか、取らされた姿勢が苦しくとも、涙を流しながら耐えている。
どんな加減か、時に、子供のように、「はい」と、指示に対して、真摯に返すことすらする。
ファラミアは、兄の身体を抱きしめ、その匂いを胸一杯に吸い込むと、夜着の裾から手を入れて、金色の産毛が生える太腿を掴んで撫で摩った。
目を瞑るボロミアの振るえる睫を見つめながら、小さく開いたままの唇に吸い付く。
舌を絡ませると、ボロミアの舌が、おずおずと応える。
ファラミアは、ボロミアの口の中に自分の唾液を流し込み、彼にそれを飲み込むよう口付けを止めなかった。
兄の喉が動く。
口の中に溢れていた唾液が、喉の奥へと消えていく。
ファラミアは、兄の髪を撫で、行為に褒美を与えると、太腿よりも、もっと奥深くへと手を差し入れた。
恥かしい行為に慣れきっているボロミアの体は、こんなにも慎ましい雰囲気とは、裏腹に、これからを期待することも知っている。
ファラミアの部屋を訪れるために、しなければならない準備を自分で施す時に。
部屋を出る前、弟のために下着を脱ぎ捨てる時に。
ボロミアは、顔を赤らめながら、ゆっくり興奮していくのだ。
固さを含んだ兄のものを手に握り込んで、ファラミアは、ボロミアの首筋にキスを落した。
手を動かすと、ボロミアの足に力が入る。
閉じている睫が震える。
思い出したように、唇が震えて、小さく甘い声をもらす。
頬が赤くなる。
自分で出す声が、どうしてそんなに恥かしいのか、ファラミアに身体を寄せ、顔を隠そうとした。
「兄上、膝を立てて」
ファラミアは、自分の身体の下に潜り込もうとする兄をくすりと笑いながら、白い太腿を軽く叩いた。
ボロミアは、ゆっくりと膝を立てていく。
次の言葉を知っているので、左右に足を開いていく。
ファラミアは、ボロミアのものから手を離し、太腿の間に手を入れた。
片手で、尻の肉を掴んでひろげ、香油で微かに光る穴を横に引き伸ばすと、もう一方の手の指をその中に潜り込ませる。
内は、油を含んで、ぬめぬめとファラミアの指を飲み込んでいった。
入り口の輪っかは、何も知らぬと言いたげにきつく閉じていたくせに、ファラミアの指を痛いほど締め付ける。
指を伝って、香油がベッドのシーツを濡らす。
「ちゃんと、用意ができてますね」
ボロミアの肉は、柔らかくファラミアの指を受け入れ、締め付け、決して拒みはしなかった。
ゆるく内で指を回すと、兄の肉が、ぎゅっ、ぎゅっとファラミアの指に絡みつく。
「今日は、何をしてあげましょうね?」
ファラミアは、何を言っても逆らわない兄の頬に口付けを落した。
ボロミアは、ただ、ファラミアを待っていた。
ボロミアは、大きく口を開けて、ファラミアのものを頬張っていた。
力強く剣を握るくせに、繊細な指が、ファラミアのものを扱き、喉の奥へで、固いものの先をぎゅうっと絞めようとしていた。
舌は、とても熱心にファラミアを舐めた。
時折思い出したように鳴く声が、気に触り、ファラミアは、伸し掛かっている兄の喉をもっと深く犯した。
兄は、足を立て、大きく広げ、ファラミアの下で、身体に汗を浮かべている。
夜着を剥ぎ取られたボロミアは、従順に、ファラミアのものを口に含んだ。
逆さまに重なったファラミアが、兄の足を割り裂き、大きく広げて、その間に指を差し込もうと、閉じた睫を震わせ、眉間に皺をよせて、口の中のものに奉仕した。
指は、自由に出入りを繰り返した。
内で折り曲げ、内壁を擦るようにして、足を痙攣させることも簡単だった。
ファラミアは、ボロミアの口から自分のものを引き出すと、口の周りを汚す兄の顔を見つめた。
兄は、そっと目を開けている。
いつでも閉じられるよう、視線を合わせず、シーツだけを眺めるように金の睫を伏せている。
ファラミアは、兄に自分を見るよう命じた。
ボロミアが、緑の目でファラミアを見る。
「兄上、起き上がって、あそこにあるものを取ってください。布で包んであるそれです。落さないようにこっちまで運んでください」
ボロミアは、身体を起こすと、小さく頷き、脇机の上から、布ごと大事そうに取り上げると、ファラミアに渡した。
ファラミアは、受け取ったものを掌に乗せ、ゆっくりと布を捲った。
中から、黒い色をしたものが現れた。
ファラミアの手のなかを見つめていたボロミアが小さく息を吸い込む。
ファラミアの持つ、擬似男根から頑なに目を反らし、シーツの上ばかりを見つめる。
「兄上、触ってみてください。温かくしてあるんです。この間、父上があなたに聞いていらっしゃったでしょ?冷たいから嫌なのか。と」
ファラミアはボロミアの手を取り、無理やり黒い表面に触らせた。
表面は、男根の形を模しながら、馬が象られていた。
「父上がお使いになっていたものより、少し、意匠が凝っているんです。鬣がね、ほら、この間のより、かさ高になっているでしょう?これで擦られるといい具合になるんだと、商人がにやにやとしておりましたよ」
ファラミアはボロミアの指を捉え、リアルに波打つ馬の鬣を撫でさせた。
滑らかに整えられた爪の先が震えていた。
「ほら、温かいでしょう?中に湯が入るようになっているんです。これなら、兄上が嫌がらなくて済む」
父親の手で馬を奥へと押し込まれていたボロミアは、身体を強張らせ、瞳から涙を零していた。
嫌がるボロミアを、父は、何故だときつく折檻した。
その場にはファラミアもいた。
結局2人掛かりで篭絡されたボロミアは、馬をくわえ込んだまま、激しく身体を震わせて射精した。
尻の穴が大きく開いて、象牙色の馬の鬣をきつく締め付けていた。
あの時の、泣き顔が忘れられない。
あの時以上の顔を自分の手でさせてやりたい。
ファラミアは、黒い馬を取り上げると、兄の口元に先を押し当てた。
「舐めなさい。兄上はこれを使って気持ちよくなるんです。だから、これにも、奉仕をしなくては」
ファラミアが、閉じている唇に馬の顔を押し付けた。
先端と、ボロミアの白い歯が当たり、小さな音を立てる。
ボロミアは、歯を閉じていた。
「兄上、どうしたのですか?父上の言葉でなければ言う事が聞けない?」
ファラミアは、力をこめて口の中に馬の顔を押し付けた。
逆らうことなど教えられたことのないボロミアは、従順に口を開く。
舌が、馬の鼻を舐める。
「温かいから、大丈夫でしょう?」
ボロミアが嫌がった理由が温度のせいなどではないと知りながら、ファラミアは兄の口を馬で犯した。
こんなものに必要だとは思えないリアルな美しさを持った馬が、兄の口の中へ深く飲み込まれる。
口内の敏感な部分を、凹凸で撫でるように動かしながら、ファラミアは兄の顔をじっと見つめた。
ボロミアは、閉じてしまった薄い瞼を小さく震えさせている。
父のものを、自分のものを口に含んでいる時と同じ顔だ。
ファラミアは、乱暴に馬を引き抜いた。
中に入っている湯の温度もあり、引き出すと、表面についたボロミアの唾液が、うっすらと湯気を立てた。
ファラミアは、兄を仰向けに転がし、片足を胸に抱きこむと、油に濡れて光る穴の中へ、それをつき立てた。
「兄上、どうです?」
馬の顔が、ボロミアの穴の中へと飲み込まれる。
太く作られた顎の部分が穴を広げ、ボロミアの顔を歪ませる。
さすがに一突きでは、入りきらない。
ボロミアは悲鳴を堪えている。
「口を開きなさい、兄上。ファラミアがお尋ねしているのですよ」
ファラミアは、あまり痛みを与えすぎないよう、注意深く内を探りながら、突き入れる速度を極端に落した。
それでも、起伏にとみ、かなりな大きさをもつ馬の姿に、ボロミアの内部は、恐ろしく緊張している。
「…あ…あ…あまり好きじゃない」
ボロミアは懸命に身体の力を抜こうと努力しながら、弟の言葉に答えた。
白いシーツをきつく握り締めている。
「どうして?温かいでしょう?それに、こんなに大きくて、実に兄上好みだ」
ファラミアは、馬をもっと奥深くへと進めた。
ファラミアに対してだけは、なんとか否定の言葉を口にすることができる兄は、もう一度好きではないと、口にして、縋る目をファラミアに向けた。
嫌なのだ。
こういったもので、弄られるのを、ボロミアは怖がっている。
しかし、ファラミアは、鬣の部分が全体を擦るよう、馬を内部で回転させた。
なぜなら、どんなに嫌がって見せようと、ボロミアの身体は、こういったものを味わうことが出来るからだ。
ごとごとと馬が抵抗を手に伝えた。
肉が、ねじれるのだろう。
ボロミアは、苦しそうに何度も息を吐き出す。
「簡単に飲み込んでしまうではないですか。内が温かいでしょう?こうやって擦ると、もっと熱くなれますよ」
ファラミアは、ボロミアの内部で馬の頭を出し入れした。
加減をしながら、小刻みに動かし、ボロミアのいい部分を撫で上げると、次第に兄の息が次第に熱くなる。
抵抗するためではなく、脱け出していくそれを捕まえるために、肉が強く締まりはじめた。
大きく盛り上がっている顎の部分が体外に引き出される時、ボロミアの肉が捲れあがって、赤い粘膜が顔を見せた。
油を含んでぬとぬとと光るその部分をファラミアは指の腹で撫でた。
敏感な部分を撫でられ、ボロミアは身体をひくつかせる。
閉じてしまいそうになる足を、必死になって大きく開いている。
「兄上、私の名前を呼んでください」
ファラミアは、兄に要求した。
兄の額には小さな汗が浮かんでいた。
「…ファラミア」
ボロミアは、小さな声でファラミアの名を呼び、鼻から甘い声を漏らした。
「そうです。忘れていますよ」
声を出すよう、言外に要求した弟の言葉を敏感に感じ取り、ボロミアは身体を赤く染めながら、何度も小さな声を上げた。
肩が小さく震えていた。
それでも、懸命に弟の要求に応えている。
それから、ひとしきり、馴染ませるように内部で馬を動かしていたファラミアは、兄の身体から緊張が抜けたのを見て取り、激しく奥に突き入れ始めた。
ボロミアの声が止まり、身体を丸め込むようにして、ファラミアの腕に縋ろうとした。
馬を掴んでいるファラミアの腕を中心にボロミアの身体が小さく纏まり、動きにつられてベッドの上で揺れる。
馬を噛むボロミアの肉に力が入る。
顔が赤くなり、喉がそらされる。
父親の寝所でやったならば、きっと、足を強く叩かれていただろう。ボロミアの足が、ファラミアの腕をはさみこんで、動きを阻もうとする。
「兄上」
前を濡らしながら、弟の腕を止めようとするなどという矛盾した行動をとるボロミアの丸められた肩に口付けを与えながら、ファラミアは、反り返った顎にも唇を寄せた。
喉が、ひくひくと動いていた。
随分身体は熱くなっているというのに、ボロミアは、一声も上げようとしない。
ここに、声が留まってしまうのだろう。
ファラミアは、動く喉を舌で舐めた。
もう、刺激が過剰になっているボロミアは、がくがくと身体を震わせる。
ファラミアは、動きづらいほど締め付けてくる肉から、強引に馬を引き抜き、また奥へと擦り上げた。
馬の鬣は、動かすファラミアにもわかるほど、入り口で引っかかり、内部でも強い刺激を与えている。
ぐりぐりと中でねじると、ボロミアの身体が反り返る。
作り物でない本物のうめきを小さく上げ、自分の声に身体を竦ませる。
零れ出た液体は、べたべたとファラミアの腕すら濡らしていた。
ファラミアは、兄の髪を撫でた。
「今日、あなたを抱いているのは、ファラミアです。私はあなたを叩きませんよ」
ファラミアは、兄の目尻から零れ始めた涙を舐めた。
結局、あの時ほど、ファラミアは兄を焦らすことは出来なかった。
擬似男根で擦り上げるだけで、いくことのできる体を兄が持っていることはわかっていたが、涙を舐めるファラミアを見上げた兄の目の色に、ファラミアは、強く馬を噛んでいる肉の中から生ぬるい作り物を抜き出すと、自分が代わりに覆い被さった。
ボロミアは、ファラミアを求めていた。
作り物でない、ファラミア自身で、中を埋められ、抱きしめられることを望んでいた。
甘えていた。
それは、父には見せない顔だった。
ボロミアの身体から抜かれ、ベッドの上に放り出された黒い馬は、油に濡れて鈍く光っていた。
温かく湿った感触は、ボロミアの体温と同じだった。
ファラミアは、高くボロミアの足を抱え込み、尻の中に自分のものをねじ込んだ。
作り物の男根に今の今まで穿たれていたせいで、ボロミアの穴はすんなりとファラミアを飲み込んだ。
背中に回されるボロミアの腕同様、ファラミアを優しく抱きしめ、気持ちよく包み込んだ。
「…ファラミア」
奥深くへファラミアが突き込み、そこで、一旦動きを止めると、ボロミアが、甘い声でファラミアを呼んだ。
うっすらと開いた目が涙に濡れて、なんともいいがたい美しい色をしていた。
ファラミアは、汗で湿った兄の髪を撫で、額に口付けを落すと、ゆっくりと腰を動かし始めた。
兄が腰を何度も捩る。
強い刺激を受けつづけていた内部は、敏感になって、ファラミアが小さく動くことにもすぐさま反応を返した。
うねる内部が、ファラミアを締め付ける。
捏ね回すように動かすと、堪らないように、足で腰を締め付けようとする。
ファラミアと兄の腹の間で擦られるものが、じくじくと粘液を零していた。
ファラミアは、兄の肩から胸に向かって口付けを落していった。
ぷっくらと立ち上がっている乳首には、少しだけ歯を立てて、小さく引っ張った。
よく鍛えられているボロミアの胸の筋肉は、両手でもみこむと、小さな盛り上がりを作った。
それを寄せ上げるように捏ね回し、褐色に色づく柔らかい尖りは何度も舌で舐った。
口に含んで吸い上げると、後ろがぎゅっとファラミアを絞り込んだ。
ファラミアは、兄の乳首を吸い上げながら、激しく腰を打ち込んだ。
ボロミアは、尻をベッドから完全に浮かし、ファラミアが動くのに、激しく身体を揺すられている。
白い尻の肉が、つられて小さく揺れていた。
顔には汗が吹き出ていた。
睫は重く湿っていた。
美しいボロミアの顔が歪んでいた。
口を開け、声を出さずに叫んでいた。
こんなに追い詰められているというのに、ボロミアの声は、いつもどおり、聞こえなかった。
徹底的に、しつけられていた。
だが、手は、ファアミアの首に回され、縋り付いていた。
これは、ファラミアの寝所でだけ見られる光景だった。
ファラミアには、ボロミアが自分の名を呼んでいるように聞こえた。
荒い息を吐き出している過ぎないが、何度もくり返し、名前を呼ばれている気がした。
閉じてしまっている瞼のせいで、緑の目は、ファラミアを見なかったが、こんなにも激しい目をして兄を見つめる自分を見られなくていい。と、ファラミアは思っていた。
ファラミアは兄の腰を抱き上げ、上から激しく突き下ろした。
隙間のない腹の間に、ねっとりと濡れた感触がある。
挟み込んだ固いものがぴくぴくと震えている。
ファラミアは、激しく兄を肛虐し、声なくして、全身で叫ばせ、ファラミアに縋りつかせると、やっと、兄に許しを与えた。
「兄上、いってもいいですよ」
小さな声で、許してくださいと、繰り返していたボロミアは、許しを得て、やっと全身の力を抜くと、ファラミアの身体の中にぐずぐずと崩れ落ちた。
「兄上、今日は、入れてくださいとお願いしませんでしたね」
汗で額に張り付いている金の髪を撫で付けながら、ファラミアは激しく胸を喘がせているボロミアの顔を覗き込んだ。
ボロミアは、きまづそうに視線を泳がせ、ゆっくりとシーツへと突っ伏していた身体を持ち上げた。
見ていると、ボロミアの後ろで精液をぶちまけ、その上、潤滑用の油で濡れているファラミアのものへと唇を寄せようとする。
ふさふさとした下毛の中へ鼻を突っ込んだボロミアの顔を引き上げると、ファラミアは、すこし顔を顰めてボロミアを見た。
ボロミアは、許しを請うような目をしていた。
「怒っているわけではありません。そんなことをしなくていい。ただ、いつも、いつもそうするのに、どうしたのかと思っただけです」
「…ファラミア…だったから。あの…あれを抜いてくれたし…お前は…」
「父上より、あなたに甘いからですか?」
ファラミアは、言いよどむボロミアの言葉を継いだ。
ボロミアは、つかまれている首を赤くして、目を伏せた。
「兄上、私のことが好きですか?」
ファラミアは、しっかりとボロミアの顔をあげさせ、両手で顔を挟んで逃がさないようにすると、品のいい唇に口付けた。
「…好きだ。ファラミア」
ボロミアは、吸い返してくる。
腕が、ゆっくりとファラミアを抱きしめ、髪を撫でる。
「かわいらしく、いやらしい兄上。私も、あなたが大好きです」
ファラミアは兄を抱きしめ、心行くまで、その唇を味わった。
END
ファラボロ。
抱きしめる腕のアラボロは、単発もののつもりだったんですけど、好きって言ってくださる方がいらっしゃって、つい、やってしまいました。
しかし、書くなら、アラボロで続きを書けばいいのに、何故かあの設定のファラボロ。
でも、こっちのが、書きたかったんです。(笑)
どうして、こんなに私はひねくれてるんだろう。(笑)