大好き
ドクは、にやにやと満足げな薄笑いを浮かべる若い男の顔を蹴り殺してやりたかった。しかし、致死のダメージを与えるには、ドクの白い足にはいつもの汚れたブーツはなく、それどころか、ズボンすら履いてすらいない。
「……遅ぇ」
ドクの足が跨ぐ子供は、年上が羞恥と屈辱にまみれながら、自分で開いた尻に油を塗り広げる僅かな時間すら待ちきれず、苛々と手元の銃へと視線を向けた。乾いた空気に埃がふわふわと舞う中、カチリと、銃鉄が音を立てる。キッドの指は引き金にかかっている。
ドクは、金色の髪を振ると、きつくキッドを睨んだ。
「少しくらい待て」
「遅すぎる」
ドクの膝が膝を付いている土の上に、キッドの銃は置かれている。他の何もかもがいい加減だというのに、銃だけはいつだって磨き上げられている。
「もういいだろ。早くやらせろ」
「もう少しだ。もう少し」
しかし、キッドの銃が持ち上げられ、ドクの額を真正面から狙うと、ドクは自分で弄っていた尻からゆっくりと両手を離し、上へと上げた。情けのない思いを堪えるためきつく結んだ口の代わりに鼻から息を吸い込むと、乾いた飼葉が場に不似合いな安心感をドクに与える。
「俺はやるって、言ってるんだよ」
「わかった。ビリー。わかったから、銃を下ろせ」
キッドの子供じみたくっきりした目はあどけなさを感じさせるほどなのだが、それがやはり子供のようにいつまでも見開かれたままなので、この男の精神の歪みを感じさせた。仲間のはずのドクに向けられたキッドの銃は下ろされず、仕方なくドクは銃でぴたりと頭を狙われたまま、キッドの腰へと下ろしていた尻を上げた。途端、ドクの尻の重みに踏まれていたキッドのペニスがピタンと立ち上がる。若い男の顔にある子供の目はその猛々しい様子に興奮しきらきらと輝いていた。
ドクは、キッドのペニスを掴むと自分の尻の位置をずらした。自分で油まみれにした尻の穴を拡げ、先走りで濡れているキッドのペニスの先端を宛がう。位置を決め、一つため息を吐き出すと、今度ドクは、たったこれだけの間が待ちきれず不満そうな顔をしだした短気な子供が引き金を引く前に、自分のペニスと陰嚢を持ち上げた。
「これで見えるか?」
「オッケー。いい感じ」
薄暗がりとはいえ、短い金の毛が覆う穴へと突き立つ自分のペニスをはっきりと確認したキッドは、舌なめずりをした。ドクはその傲慢な顔を睨みつけてやりながら、ゆっくりと尻を下ろす。
キッドが文句を言ったとおり、ぐじぐじと時間をかけて慣らしたそこは、若いキッドのペニスにまだ成長の余地があることもあり、ドクに低いうめき声を上げさせはしたものの、なんとかペニスを飲み込んでいった。しかし、肉をこじ開けられ、重量のあるものでそこを埋められていく苦しさは、何度味わおうとも、ドクに嘔吐の予感を抱かせる。
開いたドクの口が繰り返し、ヒクつくのを見咎めたキッドは、じっとりと舐めるようにして眺めていた股の間から目を上げると、銃の狙いを開いた唇の間へと変える。
「……ゲロをかけやがったら、撃つ」
「黙ってろ!」
生理的な欲求すら我慢を強いるキッドの子供じみた傲慢さに対する怒りが、銃口を向けられてさえ、ドクを怒鳴らせた。ドクはもうここまでで、十分我慢をしている。ここへと連れ込まれる前に、動物にするのと同じようにキッドが自分へと縄を投げたのにも我慢したし、その縄が首を絞め引き摺ったことにも耐えた。キッドの銃が仲間である自分を撃つつもりで狙うことにも、腸が煮えくり返るほどの怒りを感じながらも、どこか欠けているキッドの目を見れば、本気で自分を撃ちかねない不信感が拭いきれず、従った。
ドクの大声に、さすがのキッドもびくりと体が竦んだ。そのことに自尊心を傷つけられたキッドは、涙目になりながら、何度も何度も深く息を吐きだしている金髪へとまっすぐに銃を向けたまま睨み上げた。
キッドは、ドクの柔らかな金髪も、そんじょそこらの女に負けない滑らかな肌の感触も、上等な感じがして大好きだった。今にも泣きそうに潤んでいる青い目も、色がきれいだから大好きだ。見上げた顔の中では、似合いもしないくせに格好をつけて生やしている口髭の中の落ち着かない舌が、苦しそうな息を吐き出す唇をしきりと舐めていた。ドクの薄い唇は、普段はそれほどでもないというのに、こうやって濡れると、いきなり色っぽくなる。
「あんたのこと、こうやって見上げるの好きだぜ」
キッドの怒りは、自分好みの美人を泣かせているのだという興奮ですっかり拭い去られた。子供は銃の先で、ドクの顎を持ち上げへらりと笑う。
「くそっ!」
自分の怒りを全く受け付けないキッドに、ドクは、さっさと気持ちを切り替えようとした。せめて中途半端に止まり、耐え難い重苦しさを与え続けているペニスを、全て飲み込もうともがく。じわじわと腸壁を拡げらていくのは、苦しい。ドクは、最初にキッドに強姦されたとき、散々肛口を親指で弄りまわされ、嫌というほどその不快感を味わった。キッドは商売女にかわいがられたことはあるらしいが、男を、それも、全くその気のない男をやることにしたキッドの無知と無茶に、ドクは死ぬかと思ったのだ。だから怒鳴った。
「やめろっ! 入る訳ないだろっ!」
ドクの両腕は天井の梁から垂れている縄で両足の先がほんの少し土に触れる程度に吊るされていた。首を吊り下げている縄は、それよりほんの少したわんでいるだけだ。
「ガキが! 油かなんかを取って来い!」
ドクは、強姦の痕跡の残る下半身を丸出しにしたまま死体となった自分が、梁からぶら下がったままの姿で親しい仲間たちに発見されるのが嫌だった。死体になる手前までなら、不本意ながら経験がある。理不尽な目にでもあっているかのような不満げな顔をしたキッドは、それでも何度かドクの尻へとペニスを突き立てようと無茶をしたが、固いドクの尻は、キッドのペニスに痛みを与えるだけだった。
「なんでだよ」
「お前が相手にしてきたような、緩んだケツと一緒にするな!」
キッドの腹へと尻を落としたドクは、やっと根元まで飲み込むことの出来たキッドのペニスが、腸壁をこの間よりも深く押し拡げているような気がした。だが、頭を振って、その考えを否定した。いくらキッドが成長期でも、そんなことはあり得ない。いや、今でさえ持て余しているというのにそんなのは御免こうむる。
いつのまにか、深く入ってしまえば、もぞもぞとした落ち着かなさを与えるようになったペニスの形に、自分の内部が開くのを待つと、ドクは、強引な方法で急かされるより前にと、乾いた土のせいで白く汚れてしまった膝に力を込めてゆっくりとだが腰を持ち上げ始めた。せっかく納めたペニスが抜けてゆく。ずるずると引き出されていくペニスの張り出しが、腸壁を擦っていくと、ぶるりと体が震え、ドクは唇を噛んだ。やはり、キッドのペニスはこの間より大きくなっている気がする。いっそ潰れてしまえばいいのにと、ドクは強く尻に力を入れてみたが、それは、キッドをにやつかせ、ドクにはキッドのペニスを一杯に頬張っているのを実感させるだけの効果しか生まなかった。
もっと早く動けと急かすキッドの目を睨み付けたまま、あまり大きく動かすのは辛いドクは、今度はそろそろと腰を落とす。一度全長が収まってしまえば、この挿入にすらドクの腸壁は薄い快感を得るようになっていた。じわりと腹の奥が熱くなるのを悔しく思ったが、ドクの体は自分に埋めるものが深くなるのを喜んでいる。ぴしゃりとキッドの手がドクの太腿を叩く。
「あんたさ、いいぜ」
せめてもは、性交中のキッドは年相応に余裕のないのが、ドクの救いだった。余裕の言葉を気取ってみても、キッドは、もう快感に息を上げ、顔を顰めている。射精を堪える忍耐力にも、キッドは乏しい。
「でも、いつまであんたのペースなんだ?」
いきなりキッドが強く腰を突き上げた。まだ固さを残す深い部分を強引に押し開かれ、ドクは腹を破られるような恐怖を味わう。
甘えた目元の子供は、いつまでたっても、売り物でない体とのセックスを覚えない。
「っハ……っ!!!」
ドクは必死にキッドの体を押し留めようとした。
「やめっ……ろっ! まだっ、早……いっ!!」
しかし、その手に銃が押し当てられる。
「面倒くせぇよ。どうせ、あんた出来るだろ」
「緩んだケツと一緒にするな!」と怒鳴りつけたドクのあまりの迫力にひるんだのか、それとも、思い通りに入れられない尻の穴に焦れたのか、ペニスを押し込み、ズボンを引っ張り上げ出て行ったキッドは不機嫌な顔のまま、でかい油の缶を片手に下げて納屋へと戻ってきた。ドロリと重く汚れた使用済みの機械油の饐えた臭いに、天井から吊り下げられたままのドクはいっそ死にたくなる。
「どうしろって?」
ドクは唇を噤んで答えなかったが、さすがのキッドもこの油をどう使うのかくらいは想像が付いていた。だが、キッドにとってそんなことは面倒臭い。今までキッドを抱きしめた女たちは、前を使おうと後ろを使おうと、キッドにこんなことをさせたことはなかった。しかし、目の前で睨み続けているドクを、キッドは自分でも思いがけぬほど気に入ってしまっている。だから、今日のキッドは、気付かず特別寛大な行動を取っている。
左へと銃を持ち替えたキッドは、右手を手の甲まで油の缶へとどぼりと浸けた。そのまま白い尻を掴むと、どす黒い油塗れの自分の手の形にドクの尻が汚れ、なんだか愉快な気持ちになる。
「やめろっ!」
キッドが油まみれの手を擦り付け、白い尻を汚すように塗りたくると、ドクは埒もない抵抗をまた始めた。ドクの手首の皮はすっかり捲れ、首にも縄の擦れた跡が残っている。薄赤く色づき汗の浮いた体は、キッドが油の缶を取りに行っている間に、どうにか逃げようともがいた痕跡を残している。
「尻の穴を解して欲しいんだろ?」
普段すまし顔ばかりのドクが、どれほど大また開きになって、逃げようともがいたのか、見たかったとキッドは思った。そして、またこの金髪を吊るして、今度はじっくり見ようと決める。
「やめろっ! 触るな!」
「へぇ……じゃぁ、じっくりやってやる」
キッドの親指が、ぎゅっと尻の穴に押し当てられ、そのままじわじわと中へと押し入ってくる痛みと重苦しさに、ドクの目には自然に涙が湧き上がっていた。だが、どれほど尻に力を込めようと、油で滑るキッドの指は、ぐいぐいとドクの尻へ侵入を果たす。もう久しく忘れていた、無理やり肉を押し拡げられる感覚の異様さに、ドクは息をすることさえ忘れそうだった。
固い爪で守られたキッドの指が、容赦なくドクの中を埋めてゆく。気持ちの悪さを与えるそれをなんとか押し戻したいのに、息苦しく首を吊るす縄も短く、つま先だけが地面に触れる不安定な体勢のドクには出来る抵抗も少ない。どれだけ力を入れても、自分の中にある生ぬるく滑る異物は、いつまでもそこにある。
ドクは、窮屈に締め上げる内壁をキッドの指が乱暴に押し拡げ続けるのに、震えた。
「……気持ちが……悪い……ビリー」
内臓がせり上がるような不快感に、ドクの口内には苦いものが込み上げる。
「へぇ……」
湿った睫を震わせる濡れた青い目が、いつもの穏やかで清ました様子とまるで違うことに、キッドはすっかり嬉しくなりニヤニヤと、冷や汗を浮かべるドクの顔ばかりを見つめ続けた。いっそドクが泣けばいいのにと思うのに、潤む目からはなかなか涙が零れ落ちない。どうやら、ドクは尻の穴を指で弄られるのが大嫌いな様子で、だったらこのまま続けてやれば、いつか泣き出すんじゃないかと、キッドは、更に熱心に指を動かした。
キッドは、ドクが好きだ。自分のせいで、ドクが泣くのかと思うと、ドキドキとなんだかたまらないのだ。
「……さてと、そろそろもういいか」
散々、尻の穴を弄繰り回していると、嘔吐と一緒だったとはいえ、とうとうドクの目から涙が零れ落ち、自分がこの年上を泣かせたことに、キッドは誇らしいような満足感を感じた。しかし、縁を赤くする尻の穴から指を抜くと、思わぬ事態に顔を顰める。
「汚ねぇ……」
顔を自分の嘔吐物で汚し、うなだれていたドクは、キッドの言葉に全身の血が一気に頭まで駆け上るような羞恥にさいなまれた。叫びだしたいような怒りにも襲われ、切れるほど強く唇を噛む。ふてくされた態度のキッドは指の汚れを地面に擦り付けていた。今まででも、十分、これ以上の酷いことなど考えられないと思っていたのに、キッドの仕打ちは、ドクの想像の上をいった。堪えきれずドクの目から落ちた涙が乾いた土へと吸い込まれる。
「……だったらやめろ!」
「なんでだよ。こんな面倒なことしといて、やめれるか」
納屋の土間に仰臥するキッドの腰は、まだ感覚に馴染めずにいるドクの尻へと容赦なく何度もぶち当てられた。若い腰は、肉付きは薄いものの、強靭で獰猛な動きで、ドクの腸壁を遠慮なく擦り上げ続ける。ピシャリ、ピシャリと下から打ちつけられ、ドクの尻が立てる音が、板壁に響いていた。
キッドの腹の脇へと膝を付いたドクのまっすぐな太ももが震えている。最初何度かの暴虐に近い挿入に耐えてしまえば、濡れた腸内を擦っていくペニスのごつごつとした感触は、キッドとのセックスを数度にわたって余儀無く受け入れざるを得なかったドクに快感を与えるのだ。固いペニスは、挿入の度に、ドクの中にある快感のありかに届いて、無遠慮に押しつぶし、ドクの腰を痺れさせる。
目を閉じたドクは、自分の置かれた立場の屈辱を胸の中へと押さえ込み、肛口をこじ開けて、ペニスが出入りするたびに、腹の奥底が熱くなっていく感覚へとあえてしがみついていた。ずるりとペニスの張り出しが腸壁を擦りながら引き抜かれると、ぞわりと背中の毛が逆立つような快感に、唇が開いていった。腸内を占領していたものがなくなり狭くなった道へと、ペニスがずぶずぶ突き進めば、苦しいのに、確実にドクの腹は熱くなった。それが繰り返し、早く、遅くとぬちぬち腸壁を抉るようにして繰り返れると、声が自然と出てしまう。
「……う……ッあ!」
「やっぱ、乗ってきたな」
ドクの声ににやりと笑ったキッドは、下からの突き上げだけではじれったさを感じ、ドクの腿をぴちぴちと叩いた。その手が持ったままの固いものが、肉を打つゴトリと鈍い痛みにドクがうっすらと目を開けると、込み上げる射精感に、もうすっかり顔を歪めたキッドはドクを叩いた銃を振り、地面へと伏せるよう促す。
「ンっ……ぅっ……っ!」
ずるりと、勢いよくペニスを引き抜かれ、のろのろと地面へと這うドクの股の間にあるものも立ち上がり、すっかり先端を濡らしていた。
「俺にされるのっ、いいんだろ」
土の上に這うドクへとペニスをねじ込みながら、上がった息を無理やり押さえ込み平生を装おうとするキッドはドクの背に覆いかぶさり、耳朶を噛むようにして囁いた。ドクは、嫌がって頭を振った。
「んー? すげーいいって、正直に言えよ」
「あっ……あっアっ!!」
背後からずぶりと勢いよく再挿入されたキッドのペニスに、仰け反ったドクの喉が震えた。
「なぁ、いいってっ……わめけよっ」
キッドは、ドクの後ろ髪を掴み揺さぶりながら、ドクを突き上げた。ドクは、キッドの態度に屈辱を感じながらも、突き上げられる度、じんじんと痺れるように感じる、どうしようもない快感に溺れた。内壁が擦られると、腹の奥が熱い。自分の腰を押さえつけるように掴んでいるキッドの手が握る銃が疎ましいはずなのに、その硬さにすら、ぞくりと感じる。
「……ッ……あ、……あッ!」
「んぐぅ……あ……、ッ! っ!」
ドクの声が止まらなくなると、キッドはその腰を抱くようにして、夢中になって激しく打ちつけだした。
「なぁ、あんたっ……イキそうだろっ……俺のでされて、イキそう……なんだろっ」
「出るッ!あー!アっ!……ンーーー!!」
ドクのペニスからは激しく白濁が飛び出し、腰が何度も小刻みに震えた。キッドは、自分より先にいった年上の美人をしつこく追い詰めてやりたくて奥歯を噛み締め、更に腰を動かす。すると、その度、ドクのペニスからは、また小さく飛沫が飛び出していく。
「とうとうあんたが先に出したぜ? ドク」
勝ち誇った声を出したキッドは、まだ胸を喘がせるドクへと、みっともなくもがっつくようにしがみつくと、自分も射精する為に腰を動かし始めた。もう邪魔だと銃を置く。すると、焦点を失ったようにぼんやりとした目をしていたはずのドクの手が、まるでその時を待っていたように銃へと伸びた。掴まれた銃の狙いは、ぴたりとキッドの頭だ。
「ビリー、抜け」
「……あんた、俺、まだ」
きつく締まるドクの尻に、キッドの射精寸前の勃起が突き刺さったままだ。
しかし、下腹を白濁で汚したまま、ドクは冷たくキッドを見据える。
「じゃぁ、死ぬか?」
ギンギンにおっ勃ったペニスをおっぴろげたキッドの股間ぎりぎりに一発射ち込んだドクは、さっさと服を着ると、納屋のドアを開けた。
「くそガキが!」
吐き捨てると、ドクはキッドの宝物である銃を馬たちのいる柵の向こうへと投げ捨てる。
「てめーは、晩飯抜きだ。もう、帰ってくるな!」
「ドク、てめーだけずるいぞ!」
END
……お祭りに向けての練習作品。
自分に与えた課題は「誘い受」じゃない「年下攻」。……がんばれっ、自分!……ばたり