ウルちゃん、しかられる。

 

プロフェッサーの机の周りに、Xメンのメンバーが集まっていた。

遅れてきたウルヴァリンは、慌ててメンバーの背後に近づいた。

だが、見えない。

なんと言っても、ウルヴァリンは、コウサギなのだ。

そもそも、体のサイズが違う。

ウルヴァリンは、がんばって、後ろで飛び跳ねてみた。

だが、残念ながら、机の上でみなが、眺めているものの正体は見ることが出来なかった。

悔しかったウルヴァリンは、メンバーの足の間をすり抜けていくことにした。

ウルヴァリンに気付いたジーンが、にっこり笑って、道をあけてくれた。

だが、ほかのメンバーは、プロフェッサーの話に夢中で、足元のウルヴァリンに気付かない。

ウルヴァリンは、プロフェッサーの机を目指して、乱立する足の間を走りぬけた。

 

ピッツ!

先ほど、必死でジャンプした時に、ウルヴァリンの爪は、出ていた。

そのせいで、ウルヴァリンの爪が、ストームのストッキングを引っ掛けた。

小さな音に、反応したストームが、眉を寄せ、足元のウルヴァリンの強くにらんだ。

ウルヴァリンは、必死で目を逸らした。

爪を出したせいで、ウルヴァリンの黒目のウルウル度が高くなっていたのだが、ストームには、このウルウル攻撃がなかなか通用しなかった。

かわいこぶって逃げることもできないウルヴァリンは、爪の先から、ストッキングの糸をさりげなくはずそうとした。

ウルヴァリンの額には、汗が浮かんでいた。

ストームが、白い髪に彩られた美しい顔に、とても妖艶な笑みを浮かべた。

「ウ〜ルちゃん。今月に入ってから、何足目かしら?そのお爪、切ったほうがいいんじゃない?」

ストームのストッキングは、ウルヴァリンが糸を引くせいもあり、大きく伝染していた。

ウルヴァリンは、震える声でしらを切った。

「何のことだ?」

「その大きなお耳は、なんのために付いているの?いくら、かわいいお目目でうるうるしても、許さないわよ。普段は、全く役に立たない爪の癖に、こんなことばっかりしてくれちゃって!」

ストームの目が光った。

ウルヴァリンは、空気が、ざわめくのを感じた。

ふわりと、ウルヴァリンの体が浮いた。

「今月、もう、5足目よ!いい加減にしてよね。ウルちゃん!」

「ス・ストーム!悪かった。でも、悪気は無かったんだ。本当だ。悪かった!!」

ウルヴァリンは、洗濯機の中の洗濯物のように、部屋の中で嵐に揉まれた。

小さなウルヴァリンは、洗濯物にまぎれて、本当に洗濯機の中に放り込まれたことがあるので、その息苦しさについては、よく知っていた。

ウルヴァリン自慢のヘアースタイルもぐちゃぐちゃだ。

 

襲い掛かる雨と、風にもみくちゃにされていたウルヴァリンの体を優しい空気の塊が包んだ。

「そろそろ、お仕置きは終わりでいいかね?」

プロフェッサーが、柔らかい声で、ストームに笑いかけた。

ストームは、肩をすくめ、息を吐き出すと、ウルヴァリンめがけて、雷を一つ落とし、ウルヴァリンを驚かせた。

プロフェッサーの作るバリアに守られているウルヴァリンに実害は無い。

だが、ウルヴァリンは、バリアの中で飛び上がった。

耳がピンッと立っていた。

小さく、プルプル震えていた。

それで、許されたウルヴァリンは、プロフェッサーの念力によって、机の上へと運ばれた。

震えるコウサギにふさわしく、机の上へとそっとだ。

しかし、机の上に降り立ったウルヴァリンは、何事も無かったかのように、手櫛でぐちゃぐちゃに濡れた髪を整えた。

見つめるメンバーの視線を、強気に見返した。

「女のヒステリーに付き合ってやるのも、大変だぜ」

ウルヴァリンは、涙目になっていたが、メンバーは優しく、見てみぬ振りをした。

 

 

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