ウルちゃん、プレゼントになる。

 

学園の子供たちに、クリスマスプレゼントを配るのも、Xメンのメンバーの仕事だった。

パーティーの引けた後、メンバーは、子供たちをベッドへと追いやる。

しかし、片付けに忙しい女性陣は、サンタになっているわけにもいかなかった。

代わりにサイクロップスと、ウルヴァリンがプレゼントを持って学園の廊下を歩いていた。

 

「似合うな」

サイクロップスは、足元をちょろちょろと動くウルヴァリンに声をかけた。

ウルヴァリンは、もみの木の衣装を脱いで、今度は、サンタの格好をしていた。

ちゃんと耳の出る赤い帽子まで被っていた。

ウルヴァリンは、ふくれっつらで振り返った。

「好きでやってるわけじゃない。プロフェッサーの趣味につき合わされているだけだ。それより、お前、ジーンのことを何とかしろ。サンタの衣装のまま絶対に戻って来いって、危ない目つきで・・・」

振り返ったまま前に進む、コウサギは、困惑げに眉をひそめた。

サイクロップスは苦笑した。

「お前、そういうのが似合うからな。ジーンは、普段自制してるだけで、かなりお前のことが好きだぞ。そんな格好をされたら、たまらないってところだろうな」

サイクロップスの言葉に、ウルヴァリンは立ち止まって自分の衣装を指先で摘んだ。

「そんなに似合うか?」

「似合う、な。普段の3割は、かわいらしく見える」

「もしかして、お前もこういうの好きなのか?」

「結構好きだな。クリスマスのプレゼントに、ぜひ、欲しいところだ」

サイクロップスは、機嫌よく答え、ウルヴァリンを足元から掬い上げた。

「だから、というわけではないが、ウルヴァリン、このまま抱いて歩いてもいいか?出来れば、急いでプレゼントを配って歩いて、片付けを手伝いたい」

珍しくサイクロップスは、ウルヴァリンの頭を撫でた。

コウサギは、サイクロップスの手の感触に気持ちよさそうに目を瞑った。

「仕方が無い。どうしも、というのなら、お前の言うことをきいてやる」

ウルヴァリンとって、この展開は、まんざらでもなかった。

 

サイクロップスは、子供達のベッドの脇に靴下を下げ、その中に、菓子や文具を入れていた。

一緒に回っているとはいえ、ウルヴァリンは、邪魔をしないよう、眺めているだけだった。

「なぁ、その靴下、余らないか?」

ウルヴァリンは、サイクロップスにたずねた。

せめてもの手伝いにと、コウサギは、布団をはいでしまった子供の毛布を直してやろうとした。

勿論、コウサギに出来る仕事ではないので、それは、サイクロップスがすることになった。

コウサギは、寝相の悪い子供にベッドの端へと追い詰められていた。

「多分、いくつかは余るな」

サイクロップスは、ついでに、飛び出している足を毛布のなかに押し込んだ。

「俺に、一つくれないか?」

ウルヴァリンは、サイクロップスにねだった。

「菓子付きか?」

ウルヴァリンは、膨れた。

そこに、寝返りを打った子供の手が落ちようとしていた。

サイクロップスは、コウサギを掬い上げた。

コウサギは、掌の上で、ばたばたと足を踏み鳴らした。

「くれるのか、くれないのか」

「やるよ。でも、お前、気をつけないと、自分が入っちまうぞ?」

サイクロップスは、コウサギを抱き上げ、大きな靴下を見せ付けた。

「いいんだ。そういうのが欲しいんだから」

「新しい巣材?」

サイクロップスは、特別に用意されたウルヴァリンのベッドがあることを知っていながら、からかった。

 

片付けをするパーティー会場に戻ったウルヴァリンは、サイクロップスに貰った靴下を前に、にんまりと笑った。

コウサギは、サンタ服のまま、その靴下に潜り込もうとしていた。

ウルヴァリンは、サイクロップスへのプレゼントになろうとしていたのだ。

しかし、もぞもぞと動く靴下に、興味を示していた人間がいた。

生徒の中でも、学年の高い者は、片付けの手伝いをさせられていた。

パイロが、何気ない風を装い、テーブルの上から、ウルヴァリンが潜り込んだ靴下を掴みあげた。

「・・・神様からのプレゼントだ」

パイロの声と、共に、吊り上げられたウルヴァリンは、必死になってもがいた。

「お前!離せ!何を考えているんだ!!」

思わぬ展開に、ウルヴァリンは必死で怒鳴った。

「しーっ、ローガン」

「離せ!!俺は、サイクロップスのプレゼントになるために!!」

ウルヴァリンは、口の閉じられた靴下の中で、怒りまくりながら、暴れた。

しかし、パイロは、コウサギ入りの靴下をぎゅうと掴んで離そうとはしなかった。

「サイクロップスに?俺のほうが、ずっと欲しいと思ってる」

「離せ!」

「離したら、ローガン、逃げる?」

「当たり前だ!!」

ぶらぶらと揺れる不安定な自分の体に、すっかり不安になっているウルヴァリンは、靴下の中で、爪を出した。

靴下の外側に、爪だけが、突き出された。

パイロは、それをうっとりと見つめた。

「かわいいなぁ。もう、絶対に欲しい」

パイロは、靴下の表面に頬ずりした。

中のウルヴァリンは、震え上がった。

ウルヴァリンは、大声で怒鳴った。

「離せ、変質者!!お前のプレゼントにだけはなりたくない!!」

泣き叫ぶコウサギは、その声の大きさに、なんとか仲間に救出された。

ウルヴァリンは、何を遊んでるの?と、言うストームにすがりつきながら、パイロのことを蹴り飛ばした。

 

 

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