ウルちゃん乗り遅れる。

 

Xメンのメンバーは、慌てたプロフェッサーの声を聞いた。

「いかん。ローグが一人で学園を出た。ここから去る気だ。連れ戻してくれ」

プロフェッサーは、その類まれな超能力で、悲しみに混乱しながら、学園を飛び出そうとするローグの心を読んでいた。

ウルヴァリンは、ウルヴァリンは、プロフェッサーの机から飛び降りた。

プロフェッサーを囲む、Xメンのメンバーの間を走り抜けた。

プロフェッサーがウルヴァリンの背に声をかけた。

「どこへ行く気だ?ウルヴァリン」

「俺が連れ戻す」

プロフェッサーは、コウサギの暴挙に顔を顰めた。

「無理だ。ローグは駅に向かっている」

メンバーも唖然とウルヴァリンを見た。

「無理かどうかは、ためしてみないとわからないだろう?」

コウサギは、格好よく決めた。

しかし、後追いのストームと、サイクロップスが、地下駐車場でウルヴァリンを捕まえた。

 

「ウルちゃん!プロフェッサーの寿命が縮まるから、無茶なことはしないで!」

「離せ!ストーム!!」

ストームは、暴れるコウサギを胸の中に抱き込んだ。

コウサギは、じたばたと短い足を動かして逃げようとした。

ウルヴァリンは、ストームに向かって、爪を出さなかった。

この間、ストームのドレスを破り、きついお仕置きを受けたばかりだった。

だから、がむしゃらに暴れた。

「ストーム。ちょっといいか?」

サイクロップスがストームの胸で暴れるウルヴァリンをひょいっと掴んだ。

コウサギは、サイクロップスの手の中でも暴れた。

「ウルヴァリン、そんなに行きたいのなら、連れてってやる。おとなしく俺の車に乗れ。お前、自分の足で行く気なのか?」

サイクロップスは、車のドアを開け、コウサギをぽーんっと中へと放り込んだ。

ウルヴァリンは、爪を出して、サイクロップスの投げた勢いを殺した。

後部座席にコウサギの爪が突き刺さった。

ソファーがアマダンチウムの爪に切れた。

 

「遅いぞ!サイクロップス!亀だって、もっと早く走る。どうして、そんなにお前はどんくさいんだ!」

後部座席では、コウサギがわめき散らしていた。

サイクロップスの車は、法定速度など無視で駅に向かって走っていた。

コウサギは、鋭い角度で曲がるカーブのたびに、ドアにぶつかったりしていた。

なのに、口だけは達者で、その上、カーブで上手く爪を使う業を身につけつつあった。

もやは、速度を落とさないままに曲がる程度では、コウサギは、ソファーに爪を立てて、体を支えてしまっている。

「もう、お前は乗せない」

サイクロップスは、切れていくソファーの状態とそれを作り出しているウルヴァリンの姿を、バックミラーで確認して、顔を顰めた。

コウサギは、爪のせいで涙目のくせに、まだ、わめき散らしていた。

サイクロップスの運転が下手だと大声で怒鳴っていた。

サイクロップスは、うるさいコウサギを一瞬でも黙らせるために、きつい角度でカーブを曲がった。

そのうえ、アクセルを思い切り踏み込んだ。

「うわぁ!!」

それには、コウサギも吹っ飛んだ。

「ウルちゃん、黙ってなさい!」

ストームは、小さな風を起こして、ウルヴァリンが窓ガラスに激突するのを防いだ。

「今は、ローグを連れ戻すのが先よ!」

目の色が変わっている女に、サイクロップスも大人しくカーブを曲がった。

 

サイクロップスの車は、駅に着いた。

ローグの所在を確かめようと、駅員を尋ねる二人を置いて、ウルヴァリンは、列車へと走った。

列車は、まだ、ホームにいた。

ウルヴァリンの目は、うつむいたまま座席に座るローグを確認した。

コウサギは、人がごった返すホームをひた走った。

列車までは、あと少しだった。

発車を知らせるベルが鳴った。

ウルヴァリンは、必死で駆けた。

幸いなことに、ウルヴァリンは、ドアが閉まる前に間に合った。

しかし、列車とホームの間には、コウサギにとって遠すぎる距離が開いていた。

ウルヴァリンは、焦った。

勢いを付けるため、必死に引き返した。

助走を付け、跳ぶつもりだった。

 

しかし、ウルヴァリンは前を見ずに走ったせいで、小さな女の子にぶつかった。

「おあ!」

ひっくり返ったウルヴァリンに、女の子は、目を輝かせた。

手が伸び、ウルヴァリンをぎゅっと抱きしめた。

「あら、ウサちゃんね。誰のかしら?かわいいわね」

柔らかい少女の手が、嬉しげにウルヴァリンを撫でた。

少女の母親も、ウルヴァリンのことを繰り返し撫でた。

無情にも、ウルヴァリンの目の前で列車のドアは閉まった。

ウルヴァリンが、親切な親子に駅長室へ届けられている間に、ローグは列車で行ってしまった。

 

ローグはマグニートーによって連れ去られた。

こうして、Xメン対マグニートーとの戦いは始まったのだった。

 

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