ウルちゃん、満腹になる。
皆と、同じテーブルに着き、ウルヴァリンは、夕食を平らげた。
席は、ウルヴァリンだけ、特別に、テーブルの上に、また、机が置かれていた。
おもちゃのような大きさだったが、これも携帯同様、プロフェッサーが特別に作らせた本物とまるで代わりの無い代物だった。
ウルヴァリンは、満腹になった腹をさすりながら、椅子にもたれていた。
皆は、まだ、食事の最中だった。
ざわつく食堂のなか、ウルヴァリンは、ご満悦だった。
今日の夕食も旨かった。
Xメンのメンバーになって、ウルヴァリンが幸せに思っていることの一つに、ここの食事が旨いというのがあった。
一人でさすらっていた時に比べて、ウルヴァリンの毛皮は艶が良くなっていた。
重みも増していたが、そのことについては、ウルヴァリンは考えないことにしていた。
今日も、ウルヴァリン机の上には、空になった皿が積みあがっていた。
「ウルちゃん、みっともない」
ストームが、腹をさするウルヴァリンをたしなめた。
「腹いっぱいなんだ。苦しいくらいだ」
ウルヴァリンは、腹を撫でる動きをやめようとはしなかった。
椅子に浅く腰掛け、腹を突き出すように椅子にもたれるウルヴァリンに、ストームの目が、色を変えようとした。
ウルヴァリンの隣に座っていたサイクロップスが、ひょいっと、ウルヴァリンを持ち上げた。
Xメンのメンバーになってから、いくらウルヴァリンの体重が増したといっても、コウサギのことだ。
グラム単位の話に過ぎない。
ウルヴァリンは、簡単にサイクロップスに持ち上げられた。
じたばたともがくウルヴァリンを、サイクロップスは肩の上に載せた。
うつぶせに肩に乗せられたウルヴァリンは、腕をサイクロップスの肩に引っ掛けるような形で張り付いた。
サイクロップスの手が、ウルヴァリンの背中を撫でた。
優しく、何度も背中をなで上げ、時に、ぽんぽんっと、ウルヴァリンの背中をたたいた。
ウルヴァリンは、その感触にうっとりとなった。
毛皮を撫でられる手の動きに、すっかり、体の力は抜け、耳も、ぺったりと垂れ下がった。
満腹の体には、堪えられない刺激だった。
ウルヴァリンは、尻の辺りを持ち上げているサイクロップスに完全に体を預け、足は、ぶらんと遊ばせた。
ウルヴァリンの目は閉じられ、快感のあまり、髭がひくひくと動いていた。
サイクロップスの手は、優しくウルヴァリンの背中を撫でる。
ウルヴァリンは、知らず、小さく口を開いていた。
コウサギの小さな口から、ゲップがこぼれた。
「ゲプッ」
ストームが、目を吊り上げた。
「ウルちゃん、みっともない!」
「まぁ、まぁ、そう言わずに」
メンバーと一緒のテーブルについていたプロフェッサーがストームを宥めた。
ウルヴァリンは、自分が漏らしたゲップの音に少し赤くなった。
だが、まだ、サイクロップスの手が、ウルヴァリンの背中を撫でていた。
とても、心地よかった。
あまりの幸せに、ウルヴァリンの目は、自然に閉じそうになっていた。
プロフェッサーは、楽しげな声で、サイクロップスに話しかけている。
「サイクロップス、うまいもんじゃないか。この学園に、いつか、赤ん坊がくることがあったら、君に面倒を頼むことにしようか」
優しく笑うプロフェッサーの言葉に、サイクロップスの肩の上で、うとうとしかけていたウルヴァリンの耳がぴんっとたった。
サイクロップスは、笑いながら、プロフェッサーの言葉にうなずいた。
コウサギは、爪を出して、サイクロップスの肩を刺した。
「ウルちゃん!」
緊迫したジーンの声が、食堂に響いた。
サイクロップスは、涙目になりながら、思い切りにらんでいるウルヴァリンを肩からはずしながら、ジーンに言った。
「ジーン、大丈夫。ウルヴァリンは、近頃、爪とぎをサボっているんだ。君の爪で引っかかれるほうが、ずっと痛い」
ウルヴァリンは、毛を逆立てたまま、何度も引っかきのポーズを決めた。
だが、残念なことに、サイクロップスの顔には、引っかき傷も残らなかった。
テーブルに戻されたウルヴァリンは、サイクロップスの体を駆け上がった。
思い切り、サイクロップスの顔に噛み付いた。
END
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