迷走迷路
「オデッセウス…」
オデッセウスの名ばかりを優しく呼んで、アキレスは、にやりと笑った。
決して優しい笑みではなかった。
アキレスは、オデッセウスに、弓を引く、衝撃的な出迎えをした。
その後、ギリシャ軍への出陣と引き替えに、オデッセウスに、一つの要求をした。
オデッセウス、一人を連れ出した、アキレスは、柔らかく髪を撫でた。
指の動きは、いつもの口付けの前と変わらない。
だが、髪を梳く指の優しさとは、まるで別の空気がアキレスを取り巻いていた。
紺碧の海を臨む、木の葉の陰で、アキレスは、オデッセウスに囁いた。
「あんたの召還に応じてもいい」
アキレスは、冷たい声だ。
「ギリシャ軍に参戦してやるとも」
アキレスは笑う。
「この日の為に、あんたは、俺を飼っていたようなものじゃないか。言う事をきいてやる」
アキレスの目が、オデッセウスを見た。
オデッセウスは、視線に耐えた。
「…だが…」
憎々しげに、アキレスは、オデッセウスを睨んだ。
「…パトロクロスにいい思いをさせてやってくれないか?戦いに出るのならば、あいつも、連れて行こうと思っている。抱かれるのにだけ長けているようでは、あいつだって、戦場で立場が無いだろう?」
冷たい目をしたまま、アキレスは、オデッセウスに笑いかけた。
張り付いた笑みは、ぞっとするものだ。
オデッセウスが、どこまで、アキレスを求めているのかを試されていた。
何をしてもでも、アキレスを求めるかどうかを試された。
アキレスは、言う。
「あんたくらい楽しめるのなら、あいつの面倒をみるくらいのこと容易いだろう?」
アキレスは、知っていた。
オデッセウスにとってそれは容易いことではない。
オデッセウスは、アキレス以外と関係を持たない。
だが、冷たい目をしてアキレスは、オデッセウスに笑った。
赤毛を撫でる手はやさしい。
だが。
オデッセウスとアキレスの関係は、古いものだ。
英雄としての生を受け、その誕生から皆の注目を集めたアキレスに、オデッセウスはいち早く目をつけた。
気位が高く、奔放で、恵まれたアキレスは、差し出されるどんな宝にも心を奪われることなどなかった。
12や、13にならんとした少年が、王の差し出す財宝を投げ返すのだ。
そして、王の持ち込んだルピーに輝く宝剣を王の首に突きつける。
そこで、本当に剣先を引きかねない獰猛さが、アキレスにはあった。
青い瞳の冷たさには、この世に対する諦観があった。
オデッセウスは、多くの王のようなおろかな真似をしなかった。
アキレスに近づき、彼の好みを十分に吟味し、そして…自分を差し出した。
アキレスが、この世で唯一心を動かされるのは、気高く、決してアキレスに屈しない人間だ。
冷たいだけの金銀にアキレスは心を煽られない。
アキレスは生まれついての戦士だ。
何事も勝ち負けで、ものを判断する。
オデッセウスは自分にアキレスを夢中にさせるだけの価値があることを知っていた。
オデッセウスは、アキレスの前で服を脱いだ。
肉欲は、人を縛る。
手に入らないオデッセウスの知恵と勇気を手の中に入れたとアキレスに錯覚させる。
オデッセウスは、自分の頭脳に絶大な評価を与えていた。
オデッセウスは、自分の身を投げ出すだけの価値を、アキレスの将来に見出していた。
それだけの価値が、アキレスにはあった。
オデッセウスは、どんなことをしても、アキレスの手綱を握りたかった。
国の未来を変えるだろう、英雄。
両手に勝機を握る戦士を、操る自分。
オデッセウスは、似合わぬ真似をした。
それは、オデッセウスにとっても決断を伴う贈り物だった。
少年だったアキレスは、オデッセウスに夢中になった。
そして、青年になったアキレスは、酷くオデッセウスを憎むようになった。
オデッセウスの背中にパトロクロスが張り付いていた。
額に汗を滲ませて、必死に腰を打ちつけていた。
熱い息が、オデッセウスの背にかかる。
オデッセウスの穴は、パトロクロスのものを締め付けていた。
白い尻が、パトロクロスに向けられていた。
オデッセウスは、パトロクロスほど汗をかいていない。
パトロクロスに向かって開かれている尻も、いつものように、リズミカルに揺れることはなく、すこしばかり緊張を残していた。
それに、気付かず、パトロクロスは、尻の肉に指を食い込ませ、絡み付いてくる柔らかな肉をぐりぐりと抉っていた。
気の遠くなりそうな気持ちの良さが、パトロクロスを襲っていた。
強く歯を噛み締めていなければ、持っていかれてしまう。
ふくよかな尻肉は、パトロクロスを締め付け、離そうとしない。
穿つ内部が、パトロクロスの敏感な性器を遠慮なしに締め上げる。
「うっ…あ」
オデッセウスが一声も声を上げないというのに、パトロクロスは声を押さえることが出来なかった。
パトロクロスごときでは、側へと寄ることも許されない尊い人を犯しているのだという興奮があった。
アキレスが、言い出さなければ、一生手を触れることも許されなかっただろう。
相手は、イタケ王であるオデッセウスなのだ。
だが、尊いお方でも、尻は、同じように貪欲だった。
パトロクロスの性器を咥えこんで、いっぱいに開いている。
伸びた穴を薄い毛が囲む。
パトロクロスが引き抜けば、粘膜が捲れあがって、赤い色を晒す。
「…オデッセウス」
パトロクロスは、詰った息を、胸から押し出すように、オデッセウスの名を呼んだ。
背中に覆い被さり、ぐりぐりと性器を中へと押し込んだ。
パトロクロスは、薄い腹をオデッセウスの尻に擦りつけた。
パトロクロスの髪を伝って、オデッセウスの背中へと汗が滴る。
背中から抱きしめると、オデッセウスの体が、固く強張っているのがパトロクロスにも分かった。
それを、どうしてやれば、蕩かすことが出来るのか、パトロクロスにはよく分からなかった。
前に回した手で、オデッセウスの胸を揉んだ。
尖った乳首を指に挟んで、撫で回した。
「オデッセウス…」
少しでも、感じて欲しくて、パトロクロスは、何度も首筋に口付けを落とした。
擦り付ける下腹に、オデッセウスの毛が擦れる。
オデッセウスは、何度も首を振った。
力まかせに、ただ穴を穿つパトロクロスを、嫌がっていた。
それでも、パトロクロスが触ったオデッセウスの性器は立ち上がっていた。
だが、パトロクロスほど、感じているわけではなかった。
いくら口付けても、声を上げないオデッセウスの目は、決してパトロクロスを見なかった。
緑の目は、アキレスを求め、さ迷う。
躊躇いがちに、何度も視線をアキレスに向ける。
パトロクロスが意地になればなるほど、オデッセウスは、下を向いていた顔を上げ、アキレス探した。
「…」
オデッセウスは声を出さない。
ただ、アキレスに縋るような目を向けた。
アキレスは、恐い目をして、オデッセウスを眺めていた。
壁にもたれかかり、繋がる二人を見下ろしていたアキレスは、うるさく付きまとうオデッセウスの視線に、最小限の口を開いた。
「何だ?」
アキレスは、縋るような目を向けたオデッセウスを詰問した。
声の冷たさは、この場を用意した本人のものとは思えなかった。
アキレスは、凍るような目をして、パトロクロスに向かって尻を差し出すオデッセウスを、見下ろしていた。
オデッセウスが、しきりに舌で唇を舐める。
求めるように薄く唇を開け、アキレスに濡れた瞳を向けた。
「…」
だが、アキレスの目が、オデッセウスに言葉を話させなかった。
アキレスは、怒り、そして、オデッセウスを軽蔑していた。
自分で、そうしろといったくせに、従ったオデッセウスを憎んでいた。
「オデッセウス、もっと、いつもどおり、尻を振ってやったらどうなんだ?」
縋りついたオデッセウスをアキレスは、冷たく突き放した。
青い目を冷たく光らせたアキレスは、まるでこの仕打ちに耐えているようなオデッセウスの態度をあざ笑った。
アキレスは、オデッセウスの体が、幾らにも艶かしく動くことを知っていた。
オデッセウスが本気で腰を使えば、パトロクロスなど、あっという間に昇天だった。
それを、オデッセウスは、わざとらしくも、被害者面をしていた。
熟成した尻を振りたてることもせず、いじましい振りをして、どうしようというのだ。
「集中しろ。オデッセウス」
アキレスは、オデッセウスに冷たく笑った。
オデッセウスが目を伏せた。
悄然とした振りをしている。
「声を出してやれ、あんたは、もっといい声が出せるだろう?」
オデッセウスが、ますます顔を伏せた。
自分の腕の中に顔を隠してしまっていた。
「褒美が待っているぞ」
アキレスは、腹が立っていた。
だが、冷たく言い放つ以外自分の感情を表現する方法を知らなかった。
アキレスは、もっと自分が冷静にこの場を楽しめると思っていた。
オデッセウスとは、古い仲だったが、ずっと、この年上の男が、憎らしいと思っていた。
はっきりと、嫌いだと思ったこともある。
いつか、オデッセウスを踏みにじってやろうと思っていた。
オデッセウスは、完全に自分の身体を餌だと認識しつつ、アキレスに与えていた。
忘れた頃になるとオデッセウスは現れ、アキレスに対する支配力を確かめていった。
そして、アキレスは、確かにこの男に支配されていたのだ。
最初、アキレスが、オデッセウスにむしゃぶりついた時、今考えれば、あの時は、オデッセウスも初めだった。
あの時、上手く、アキレスがそのことに気付くことが出来たなら、多分、違う関係に持ち込めた。
だが、15の少年には、オデッセウスは手ごわすぎた。
アキレスが、決して屈しない強い目に心引かれることを見極めていたオデッセウスは、いつまでも、アキレスの上にたちつづけた。
そして、15の少年に蒔いた種を今、オデッセウスは刈り取ろうとしていた。
誰も、連れ出せないアキレスを、ギリシャ軍へと連れ出す。
英雄は、戦場に不可欠だ。
アキレスを連れ出されば、それだけで、オデッセウスの価値は上がる。
アキレスは、オデッセウスの持ち駒になどなる気は無かった。
だが、アキレスは、オデッセウスに飼いならされていた。
オデッセウスの顔を見るだけで、心が弾んだ。
何にもまして、笑う唇を口付けで塞ぎたかった。
裸にして、汗に濡れた腕で、自分だけを抱かせたかった。
高い声で、アキレスの名を呼ばせたかった。
「パトロクロス、もっと、頑張ってやれ。オデッセウスが退屈している」
情けなく眉を寄せた、従兄弟が、アキレスに縋る目を見せた。
唇をきつく噛んでいる。
潤んだ目が、パトロクロスの限界をアキレスに伝えていた。
情けなかった。
オデッセウスの体が、やっと身の内に湧き出した快感を持て余し始めたばかりだというのに、パトロクロスは、もう終わりを迎えようとしていた。
だが、その気持ちを、アキレスも、分からなくも無かった。
オデッセウスの尻肉は、とても従順だ。
内部を荒らしまわる侵入者を優しく受け入れる。
そして、十分にもてなすのだ。
絡みつく、肉のしっとりと濡れた感触は、今日始めて、人を犯すパトロクロスには堪らないだろう。
「アキレス…」
オデッセウスに伸し掛かる従兄弟までもが、アキレスを縋るように呼んだ。
アキレスは、小さなため息をついた。
小さく横に首を振り、つまらなさそうに目を閉じた。
アキレスに突き放されたパトロクロスは、必死になってオデッセウスの身体を撫で回した。
尻を掴んで揺さぶり、いきそうになると半ばまで引き抜き、前に回した手で、オデッセウスの性器をきつく扱いた。
いかないオデッセウスに腹を立て、肩に、背中に歯を立てた。
これだけ、内部を擦られれば、パトロクロスなら、とっくにいかされていた。
アキレスの大きなもので、中を広げられ、伸し掛かられると、それだけで、もう、性器の先端から、よだれが零れた。
パトロクロスは、オデッセウスとアキレスとの性交を盗み見たことがあった。
アキレスとの性交時、オデッセウスの様子はこんな風ではなかった。
オデッセウスは、恥かしげもなく声を上げていた。
狂ったように頭を振って、アキレスにしがみついていた。
自分から、アキレスの腰に足を巻きつけていた。
白い尻が、汗に濡れて、アキレスに向かって振られていた。
あまりに動くものだから、アキレスに尻を叩かれていた。
この白い体が、赤く色付くことをパトロクロスは、知っていた。
性器は、始終濡れていて、何度も、何度も、精液を吹き上げた。
パトロクロスは、強く歯を食いしばり、オデッセウスを揺さぶった。
もう、完全に限界だった。
やっと、オデッセウスの性器が濡れ始めたばかりだというのに、パトロクロスはもう、我慢ができなかった。
乗り気でなくとも、オデッセウスの尻は、使用者に極上の快感を味合わせた。
「慈悲を…」
パトロクロスは、巻き毛の隠れた形のいい耳に嘆願した。
オデッセウスが振り返った。
火照った顔が、不満げにパトロクロスを見た。
オデッセウスは、自分の中に巣食う欲求が満たされないことに、きつく吊り上がった目を潤ませていた。
「…パトロクロス」
だが、オデッセウスは、一瞬でその顔を取り繕うと、優しくパトロクロスの名を呼んだ。
初めて、パトロクロスの名を呼んだオデッセウスは、その背にすがり付こうとしたパトロクロスを止め、身体を切り離した。
身体を返したオデッセウスが、腕を広げ、パトロクロスを抱きしめる。
「おいで」
与えら得た慈悲は、極上だった。
閉じた尻穴に性器の先を押し込むだけで、パトロクロスはいきそうになった。
うまく力を抜いてパトロクロスを受け入れたオデッセウスは、パトロクロスの頭を抱くと、腰を使う。
「あっ、そんなことされたら…」
パトロクロスは、泣き出しそうな声で、オデッセウスを止めた。
もう、性器の中が、ぱんぱんに膨れ上がり、今にも漏れ出しそうだった。
我慢なんてできない。
許されるものなのかと、アキレスを見ようと顔を上げようとしたパトロクロスを、オデッセウスは抱きしめたまま離さなかった。
仰け反ったオデッセウスと、アキレスだけが、視線を合わせる。
オデッセウスは、薄く口を開いて、アキレスを求めていた。
パトロクロスはよく努力したが、オデッセウスを満足させるには程遠かった。
いつも、もっと深い快楽を味わっているオデッセウスには、まるで物足りなかった。
だた、パトロクロスに中途半端に煽られた快感が体の中で鈍く渦巻く。
アキレスに焦らされるといる時とは違う。
パトロクロスの技術不足がオデッセウスをいかせない。
じれったさが、オデッセウスを苛立たせた。
睨んでいるアキレスを、オデッセウスは、視線で求めた。
オデッセウスには、この若い男が何に苛立っているのか知っていた。
苛立ちを解消しようと、オデッセウスのプライドに爪を立て、そして、自分が傷ついてしまっていることに気付いていた。
「あっ、あっ、あっ」
パトロクロスは、オデッセウスの中に精液を溢れ返らせた。
オデッセウスの胸に抱かれ、肩で息をする若いパトロクロスは、腰を小さく震わすと、オデッセウスの上に倒れこんだ。
オデッセウスに抱きしめられ、パトロクロスは安堵の表情で目を瞑る。
尻穴から、パトロクロスの精液を零しているオデッセウスは、優しく金髪へと口付けを与えると、未だに睨んでいるアキレスを見た。
オデッセウスは、自分の苛立ちを押さえ、アキレスに笑いかけた。
「…これでいいか?」
腕の中にある冷たい男と良く似た色の髪を撫で、もう一度、口付けをした。
パトロクロスは、オデッセウスの胸へと顔を擦り付け甘えた。
アキレスが、ゆらりと身体を起こした。
いつまでもオデッセウスにしがみつく、パトロクロスを抱き上げると、放り投げた。
そして、敷物の上に放ってあった服を取り上げ、パトロクロスに乱暴に投げつけた。
「戦にでれるよう準備を整えろ」
アキレスは、戸口で佇むパトロクロスを振り返ることもせず、そう言い捨てると、出て行くよう、外を指差した。
オデッセウスが、やっと安堵の顔で笑った。
オデッセウスは、起こしかけていた身体を乱暴に敷物に戻された。
アキレスの手が、オデッセウスの喉を押さえた。
アキレスが、食い殺しそうな目をしてオデッセウスを睨んでいるというのに、オデッセウスは満足そうなため息を漏らした。
「いかせて欲しいのだろう?」
アキレスは、喉に絡まったような低い声を出した。
「浅ましい男だな。お前は」
吐き捨てたアキレスは、自分こそ浅ましくオデッセウスに欲情していた。
オデッセウスに伸し掛かったアキレスは、有無を言わせず、オデッセウスの太腿を持ち上げると、そのまま乱暴に性器を押し込んだ。
パトロクロスのものに馴染んでいたオデッセウスの穴は、アキレスの大きなものに、酷く引き伸ばされた。
オデッセウスは、アキレスの首にしがみつき、その痛みに耐えた。
ごつごつと太いものが、オデッセウスの中を隙間なく埋めていく。
擦られる硬さは、パトロクロスとは比べ物にならない。
痛みと紙一重なのに、だが、確かに、そこに快感があった。
身のうちから、湧き上がる快感にオデッセウスの口から、自然と声が漏れる。
「ああっ…」
開いた口を、アキレスが乱暴に覆った。
舌を求め、アキレスがオデッセウスの口の中を蹂躙する。
オデッセウスも、アキレスに向かって舌を伸ばした。
思い切り引き伸ばされ、皺一本残っていない穴が、アキレスを絞り上げた。
相手を蕩かす方法のわかっていないパトロクロスによって、無意味に追い上げられていたオデッセウスは性急に快感を求めていた。
自分から、アキレスに尻を擦り付けた。
奥を擦られ、腰に、熱く湧き出すものがあった。
もっと動かすと、それが、じんわりと体全体に広がった。
アキレスのものを深く咥えこんで、やっとオデッセウスに満足感がこみ上げた。
それでも。
「…アキレス」
慌ただしい口付けの合間に、何度もアキレスの名を呼び、動かないアキレスの腰を、足で打った。
もっと欲しかった。
もっと、乱暴に突き上げて欲しかった。
この焦れた身体を解放して欲しかった。
欲求ばかりが、オデッセウスを攻め立てた。
「こんなことをされても、まだ、俺が欲しいのか?オデッセウス?」
アキレスは、嘲るような目をして腰に絡みつくオデッセウスを見た。
顔を反らそうとしたオデッセウスの髪を撫で付ける振りで、アキレスは、視線を離させなかった。
視線の強さは、オデッセウスを居たたまれなくさせるほどだった。
冷たい目には、少なくとも、甘い感情は期待できなかった。
それでも、体の中で溢れそうになって出口を求めている快感が、オデッセウスをアキレスに縋りつかせた。
アキレスであれば、必ず、オデッセウスを満足させた。
「返事は?オデッセウス?」
弄るためだけに聞くアキレスに、何度も、何度も、オデッセウスは、頭を振った。
アキレスは、益々冷たい目をしてオデッセウスを見た。
「…お前は、そういう男だよ」
アキレスは、胸を支配する感情のままに、乱暴にオデッセウスを突き上げた。
体の芯から痺れるような快感がオデッセウスに湧き上がる。
「あああっ…ああ…」
派手な声をオデッセウスは上げた。
喉から絞り出すような獣の唸り声を上げ、パトロクロスでは、満足できなかった身体を解放させた。
うつぶせたアキレスの背中に、オデッセウスは腕を回していた。
汗の吹き出た身体を、風が冷やしていた。
「そんなに、俺が憎いか?」
オデッセウスは呟くように聞くと、パトロクロスと良く似たアキレスの金髪を撫でた。
アキレスは、頭を振って、手を嫌がった。
オデッセウスは、髪を梳く手を止めなかった。
風が汗を乾かしていった。
オデッセウスは、アキレスの頭を抱きしめ、髪に口付けながら聞いた。
「…間違いなく、参戦するな?」
アキレスは、低い唸り声を上げた。
オデッセウスの手を捻り上げ、その体の上に伸し掛かった。
青い目が怒りに燃えていた。
「あんたは、その為にずっと餌を与えてきたのだろう?自分の価値が実証できて満足か?払いすぎは、戦場で返してやる。これ以上、何もしゃべるな」
アキレスは、オデッセウスを食い殺さんばかりに睨みつけた。
オデッセウスは、その首に腕をまわして、口付けた。
END
BACK
パトオデと見せかけて、いつも通りのアキオデ(笑)
でも、書きたかったのは、情けないパト(笑)
しっかし、何だかんだといいながら、オデ二人も初物頂いてるんじゃん(苦笑)