*パパも寝た方がいいみたいだね。

 

トムが頭痛薬を探していた。

「ねぇ、パパ、確かここに頭痛薬ってあったよね?」

「どうした?風邪を引いたのか?」

「違う、多分、寝不足かなぁ?」

ゲームだの、テレビだのと近頃就寝時間が遅くなっている息子を叱るいい機会だと、ポールは息子に向き直った。

「トム、人間、眠る時間は大切なんだ。眠りが足りないと、いらいらしたり、頭が痛くなったりする。どうせ、お前達、眠りもしないでしていることって言ったら、ろくな事じゃないんだろう?」

角を生やしたポールに、困ったようにトムが笑った。

「う〜ん。パパ、頭痛薬欲しがってるのは、ヴィゴ」

 

 

*密談

 

「ねぇ、パパにプレゼントを贈りたいんだけど、何がいいかな?」

双子はヴィゴに相談した。

「ポールに何がしたいんだ? それ次第だろ」

経験者のヴィゴは、にやりと笑った。

 

 

*質問の仕方

 

「なぁ、ポール、今日車を使うか?」

「いいや、別に? なんだ? 何か運びたいのか?」

ポールは、絵筆を止めて、ヴィゴを振り返った。

「いや、今日あんたが一日ここにいるんだなぁと思って幸せだと感じただけだ」

昼下がりのリビングに、照れくさい程甘ったるい空気が流れた。

 

 

*そういう男だったんです。

 

美大生だった頃のポールの話。

ポールはその当時付き合っていた彼女に、浮気を謝る手紙を書いた。

彼女は手紙を受け取りもせず、また、ポールは手紙を書いた。

何通かそう言ったやり取りが続き、やっと彼女の怒りが解けた。

しかし、また、ポールが浮気をした。

手紙を送る日々が続いた。

とうとう彼女は、メールボーイとつきあい始めた。

 

*さすがにだまされないぞ。

 

「パパは、もう俺達を愛してないんだ!」

「ちっとも俺達の話を聞いてくれない!」

トムとトーマスがしゃくりあげながら、ポールに訴えた。

ポールは二人を残して、自分のベッドルームのドアを閉めた。

双子の泣き声がわっと大きくなる。

「聞いたら酷い目に合うと分かっていることを何で聞かなきゃならないんだ」

ポールは寝室のドアに鍵を掛けた。

「八歳の時ならともかく、十八の嘘泣きになんか付き合ってられるか」

 

今日はこんなところで(苦笑)