*どっちに?
「ねぇ、パパとヴィゴが幼なじみだったって、本当?」
「ああ、まぁな」
ポールと、ヴィゴは少し照れくさそうに笑った。
「ねぇ、じゃぁ、どっちがモテてた?」
「男にか? 女にか?」
ヴィゴの足をポールが踏んだ。
*パパはすごい
山ほどのラブレターを発見した双子は、ポールに言った。
「パパって、すごいね」
「ほんと、僕、尊敬する」
照れくさそうに伏し目がちになったポールは、双子が見ているものに眉をひそめた。
「こら! ボーイズ。お前達が見るようなものじゃない!」
「なんでさ、パパの書いたスペルがことごとく間違ってるから?」
「ほんと、パパって新しい単語を考える天才って感じ」
それは、若かかりしポールが突き返されたラブレターの束だった。
*転ばぬ先の……
ハンサムでシャイな上、優等生だったヴィゴは、女の子にモテモテだった。
それは、仲間がやっかむ程で、高校のダンスパーティでは、少しでも女の子から遠ざけようと指揮者に選ばれてしまった。
だが、ヴィゴは、仲間が意中の女の子と踊っていれば、わざとゆっくり指揮棒を振る気の利きようで、いくら学校一女の子に人気が高かろうが、勿論、仲間からの信頼は厚かった。
「ヴィゴ……?」
一楽章をまるまる飛ばし、強引に曲を終わらせたヴィゴに、第一バイオリニストが声を掛けた。
「どうした? 何かあったか?」
「……いや、何かあると困るんだ……」
あまりに短かった曲に、きょとんとしたポールがミスハイスクールとダンスフロアーに立っていた。
*猛烈と、強烈
「どっちが女の子にモテてたか、どうしても知りたいのか?」
さっきの質問を蒸し返されたヴィゴは、困ったような顔になった。
ポールは言いよどむヴィゴの膝をつねり、うるさい双子を軽く睨んだ。
「ヴィゴ、俺に気を遣ってくれなくて結構。はっきり言えばいい。そうだ。ヴィゴの方がモテてたよ。ヴィゴは、猛烈にアタックされてたんだ」
懐かしい昔を思い出したのか、ヴィゴはくすりと笑った。
「ポール、あんたは、強烈めにあわされたな」
「ああ、おかげさまでね。二股、三股がばれるたびに、強烈なびんたを食らったよ」
*だめだよ。パパ。
リビングのテーブルの上には、三台の携帯電話が置かれていた。
一つは、ヴィゴのもの。
あとの二つは、双子それぞれのものだった。
テーブルで紅茶を飲んでいたポールは、気になるのか、何度もちらちらと携帯電話に視線を送っていた。
そして、あたりを伺うように部屋の中を見回し、とうとう携帯に手を伸ばした。
ポールは、履歴の検索をしている。
「俺の秘密が知りたいんだ。やっぱり、俺が一番愛されてる」
ドアの隙間から覗いていたヴィゴが言った。
「違うよ!一番疑われてるんだよ!」
ふてくされた双子は、思い切りドアを開け、ポールを飛び上がらせた。
開かされた衝撃の過去!
なんとヴィゴとパパは幼なじみだった!!
その上、パパはやんちゃだった!!(いや、私ばっかり楽しい設定だから。苦笑)