*代理出席
トムとトーマスは、ポールの母親、つまり二人の祖母に招かれ、ティーパーティーに出席していた。
祖母は、二人にお菓子を差し出しながら、将来の夢を尋ねた。
「まだ、決めてないけど、宇宙飛行士。でも、絵描きもいいなぁって」
「うん。だって、パパの描く絵、素敵だもんね」
「まぁ、二人は、パパが大好きなのね。将来は画家になりたいなんて、なんてかわいらしい事を言うんでしょう」
祖母は、とろけそうな顔で、双子の話に目を細めていた。
彼女の友達が声を掛けた。
「かわいらしい未来の画家さん達は、何歳でいらっしゃるの?」
「えっ? なんておっしゃったの? うちの工場の跡取りの歳をおたずねになったのかしら?」
双子は、うちに帰り、ポールに言った。
「ねぇ。パパ。早くおばあちゃんと和解しなよ。おばあちゃん、未だにパパが画家になったこと許してないみたいだよ」
*事故調査
トムとトーマスは、夏休みの宿題に、ロンドン市内における交通事故の調査をしていた。
休みの終わり、ため息をつく、双子に、ポールは言った。
「どうした? 出来てないのか?」
「違うよ。出来たんだけど、数の多さにうんざりしてさ」
「確かに、すごい事故の数だな」
「うん。でも俺たち、別に事故の数を嘆いてる訳じゃないんだ」
双子は、父親を見上げ、説明した。
「夏休み前にさ、アネッサが、良く当たるっていうジプシー占いに連れて行ってくれたんだけど、そこで、占い師が俺たちの父親は、この夏の間に交通事故に遭うだろうから、気をつけてやれって言ってさ」
「そう。だから、もし、俺たちのパパが生きているとして、もしかしたら手がかりにならないかなぁと思って、ちょっと調べてたんだよ」
やはり養父では足りないものがあるのかと、ポールは寂しい気分になった。
しかし、双子は色塗りをしていたペンを放り出すと、ぐいっと顔を近づけ、笑いながらポールの目をのぞき込んだ。
「ねぇ、パパ。パパもこの夏、歩いてて、自転車とぶつかるって事故をやったよね」
「十年前のことなんだけど、俺たちの遺伝子学上のパパになる可能性のあることした心当たりはないかな?」
*自衛の手段
ポールは喧嘩をして帰ってきた双子に言い聞かせていた。
「お前達、女の子と喧嘩するなんて最低だ。手を出さなかったことは褒めてやるが、今度からは絶対にするな。お前達も、もうすぐ、十歳なんだ。女の子の腕をとってやる位にして当然なんだからな」
双子の頬には、ばりかかれた跡があった。
「ボーイズ、理由は分かるか?」
ふてくされている双子はじろりとポールは睨んだ。
「わかってるよ。パパ」
「自衛のためだよね」
*同じじゃないの?
「セックス、セックス、セックス! お前達のしたいことはそれ以外ないのか!」
もう、一分たりともベッドの上にいたくないというのに、ベッドから降りることも適わない程疲れ果てたポールが双子に怒鳴った。
「だったら」
「パパが、俺たちの同じ年頃だったころに、したかったことを教えてよ」
*大物だな
真夜中、普段は使わない裏口のドアががたがたと音を立てるのに、ポールは目を覚ました。
キングサイズのベッドで眠る双子を揺り起こし、声を潜めた。
「おい、泥棒かもしれない」
「パパ、一緒に行くから。まず、服を着て」
トムは、すぐさま跳ね起きて、白い肌を惜しげもなく晒して寝室のドアから様子をうかがうポールにパジャマを手渡した。
確かに、裏口の外ではごそごそと音がしていた。
しかし、目を擦るトーマスは、ポールをベッドへと呼び戻した。
「もうちょっと待とうよ」
あくびをするトーマスは、ポールの手を引き、半裸の父親を抱き枕にした。
「あそこのドアさぁ。もう、ずっと開かないでしょ? もしかしたら、あの人が開くようにしてくれるかもしれないじゃん」
むにゃむにゃと父親の背中に顔を埋めるトーマスはすぐさま眠りに落ちた。
パパ豆〜v
もうそろそろネタ切れって思ってたのに、どうやら、相当好きらしい(笑)