*自覚なし

 

中学に上がったばかりの双子が、友達を連れて帰ってきた。

「でさ、俺のかわい子ちゃんてのは、赤毛で、そばかすがキュートでさ」

「分かった。キャシーだ!」

年頃になった双子と仲間達は、意中の女の子の話題で盛り上がっているらしい。

「じゃぁ、次、俺。俺のかわい子ちゃんってのは、結構背は低いのに胸がでかくて、足の形が最高!」

「えっと?誰?もっとヒントを出してよ。髪の色は?」

「黒」

「黒髪で、胸のでかい女の子・・・?あっ!ミディー?」

ヴィゴとベッドルームに篭っていて出るに出られなくなっていたポールは、口を尖らせた。

「あいつら、なんて下品なことをしてるんだ。クラスメイトを捕まえて、かわい子ちゃんだの、胸がでかいだの」

「まぁ、まぁ、そんなことの言いたい年頃なんだよ。ポール。ジュニア・ハイに上がった時は、あんただって、殆ど変わらないことしてたぜ?」

苦笑したヴィゴは、ポールが外に出るための準備を手伝った。

つまり、ベッドの中から、くしゃくしゃになったシャツを取り出し、靴下を探し出し。

「トムと、トーマスのかわい子ちゃんは?」

「えっ?俺たち?」

少し戸惑ったような双子の声がした。

しかし、双子は答えだした。

「髪は金髪。背は高い方かな?背中がすっげーセクシーで、まぁ、ちょっと尻軽ってやつ?」

「そうそう。キスですぐとろとろになっちゃうくせに、俺たちだけのものになってくれないんだよね」

「なんだよ!二人は、もうその子とそういう関係なのかよ!!」

「年上か?教えて貰ったって奴?」

興味津々にクラスメイトが双子に詰め寄った。

「教えて貰ったって言うか……う〜ん。ちょっと説明が難しい」

「いいなぁ。エッチな美人なんて最高じゃないか!」

「なんだよ!紹介しろよ!どこで知り合ったんだよ!」

「紹介?どうしよっかなぁ……」

双子の周りにいる大人の女達が、成長中の双子にちょっかいをかけているのを知っているポールは、聞き捨てならない双子の発言に、威厳を持って部屋を出ようとした。

ヴィゴは、慌ててポールを止めた。

「やめとけ、ポール!今、出てくと、お前があいつらのかわい子ちゃんだって、すぐにばれるぞ!」

 

 

 

*父と非似

 

ヴィゴは、暗い顔をしてソファーに座りこんでいるトーマスに聞いた。

「どうした?学校で嫌なことでもあったのか?」

「……ヴィゴ。俺、同じテーマだからって、キャシーと共同でレポートを書こうとしたんだよ。でも、話を聞いてたら、アンのテーマも面白そうだと思って、そっちに乗り換えたんだ。……そしたら、キャシーが、俺のこと浮気者の最低男だって……」

ヴィゴは、ナーバスになっているトーマスの肩を抱き、優しく髪を撫でた。

「なるほど。トーマスはモテモテなわけだ」

「違うよ。そんなんじゃないんだ。だって、勉強なんだよ?俺、本当に、アンのテーマが面白いと思ったんだよ。だから!」

「トーマスはパパの昔に似てるな。俺は、同じことで落ち込んでたお前のパパを慰めたことがある」

「そうだよね?女の子って、過激な言い方をしすぎるんだよね。だた、レポート書くだけだってのに、浮気ものとか、最低とか」

「……、いや、ポールの場合は、レポート内容にかこつけ、本当に、黒髪から、金髪に乗り換えたもんだから、なじられてたんだ」

 

 

 

*俺の方が早い

 

寝ぼけ顔のポールにコーヒーをサービスしながらトムが言った。

「俺、朝起きて一番最初に思うことはいつもパパのことなんだぜ?」

ジョギングを終え、シャワーまで浴び終えた息子と違い、寝起きのポールは、機嫌がいいとは言いがたかった。

「トム、朝は少し口を閉じていてくれ。それに、その口説き文句は、もう十年も前にヴィゴから聞いたよ」

トムは、にやりと笑いながら父親に近づいた。

口を閉じていろという父親の命令に従い、口を閉じたままで出来ることをするために、ポールに顔を近づけた。

「パパ、ヴィゴが十年前に使ったからって何だよ。十年前だって、きっと俺の方が早起きしてたに違いないんだ」

 

 

 

*もう一枚あるんだ!

 

それは、学校の図工で描いた一枚の絵だった。

好きなものを描いていいという教師の言葉に、トムは、父親の絵を描いたのだった。

「すごく上手いじゃないか。トム。色使いもいいし、顔だって似ている。さすが、絵描きの子だ」

一生懸命に描かれた自分の絵を見つめ、ポールの緑の目は幸せそうに細められていた。

「本当?俺、画家の子にしては、絵が上手く描けないっていつも思ってるんだ。友達や、先生だって、何が描いてあるかわかんないっていうし……」

「そんなことないぞ。とても上手だ。だが、もし、トムの絵が下手だったとしても、パパは、パパのことを描いてくれたってことだけで、すごく嬉しいよ。だって、パパのことが好きだってことだろう?」

ポールは、息子を抱きしめ頬にキスをした。

才能があるくせに謙虚な息子にすこしばかり誇らしい気持になっていた。

トムは、もじもじとしながら父親を見上げた。

「ねぇ、パパは、俺が描いたのがパパの絵だってのが嬉しいの?もし、俺がもう一度パパの絵を見せたら、もう一回キスしてくれる?」

「ああ、勿論。なんだ?来週も、同じテーマで絵を描くのか?」

「違うよ。それ、本当はトーマスの絵なんだ。すぐ俺の絵を持ってくるから、ちゃんとキスしてよ!」

 

 

 

*ヘルスメーター

 

朝食中に、ポールはトーマスに聞いた。

「なぁ、俺、太ったかな?少しダイエットした方がいいか?」

トーマスは、父親に立ち上がるようにいい、しげしげと体を見回すと大丈夫だと答えた。

「パパ、心配なら、ヘルスメーターを買う?」

ポールの家の体重計は、もう、半年も壊れたままだった。

「いや、それほどでもないってんならいいんだ」

ポールは、安心したように、フォークを持ち直した。

 

その夜、ベッドの中でしっとりと汗に濡れたポールを抱きしめたトーマスがぼそりと言った。

「ねぇ、パパ、朝は、ああ言ったけどさぁ……やっぱり少しダイエットした方がいいような……」

二人は騎乗位で楽しんだ後だった。

今日は、どうしてもそうして欲しいとトーマスがねだり、ポールが上に乗ったのだ。

ポールは、機嫌の悪い顔で、ベッドから降りた。

「……、お前ら、兄弟して、同じ体重の量り方をするな!」

 

 

このパパ豆は、幾つも思い浮かぶんですが、あんまり簡単に思いつくせいか、すぐ忘れちゃうんですよ(笑)

だから、メモを取っとかないと!と、思ったんですけど、仕事の予定を書き込んだメモと一緒にしちゃだめだ(笑)