*無用の長物

 

学校の帰り雨に降られた双子は、バスルームに駆け込んだ。

双子が濡れた服を脱いでいると中からヴィゴが出てきた。

ヴィゴは、前を隠すこともせず、おまけに、産毛のような毛の生え始めた双子のものをちらりと見るとにやりと笑った。

双子は、わざと声を潜めて会話した。

「なぁ、トーマス、ヴィゴが自分のの方がちょっとばかりでかいと思って見せびらかしてるぞ」

「いいんだよ。トム。ヴィゴは予行練習してるんだよ。あと、一年もしないうちに、アレの役目なんて見せるって事以外になくなっちゃうんだもん」

 

 

 

*あいつはオウム

 

ポールが肩を落としていた。

昨日まで開いてていた個展の評判が良くなかったからだ。

「ヴィゴ。あんたも、マックスのこと、知ってるよな?あいつ、俺の絵をめちゃくちゃに言ってるんだ。俺の作風の変化を拝金主義になったせいだって吹聴して回ってるんだ」

ヴィゴは、ポールの肩を抱きながら、少しばかり冷たいことを考えた。

今回のポールの個展をバックアップしたのは、成金で有名な人物だった。

沢山色が塗ってあるほど価値が上がると言いたげな人物の感心を惹こうと、ポールが今までの作風と違うものを描いたのは確かだった。

やめろと言っても聞かなかった、憎らしくも可愛らしいポールを反省させるために、ヴィゴは真実を教えてやった。

「ポール、マックスの言うことなんて気にする必要はない。マックスは、オウムだ。あいつには、絵を見る力なんてない。あいつはみんなの言ってることを繰り返してるだけさ」

 

 

 

*機嫌を直して

 

トムは、にこにこと笑いながらポールの隣へと腰を下ろした。

「ねぇ、パパ、今晩のことなんだけどね」

「嫌だって言ってる」

ポールはくるりと背を向け、テレビに集中する振りをした。

にべもなかった。

トムは、少しも慌てずポールの背中に話しかけた。

「知ってる。知ってるさ。パパ。さっき、トーマスが断られたのを俺はちゃんと見てたんだ。だから、俺には、これっぽっちもパパのベッドに潜り込もうなんて気はないんだけどさ」

トムは、ぐいっとポールに向かって拳を突き出した。

「でも、誘いもしないなんてパパに失礼かと思って言ってみることにしたんだ。……ほら、パパ。この手の中に何が入ってるか、もしパパに当てることが出来たら、俺もいろいろ忙しいんだけど、パパのベッドに行ってやるよ」

ポールは、うんざりするほどしつこい息子にちらりと目をやり、面倒くさそうに答えた。

「象が一頭」

「惜しい!」

トムが叫んだ。

「惜しいよ、パパ! 近いんだけど、ちょっと外れてるから、俺の代わりにトーマスをパパのベッドに行かせるよ。……もう、パパったら、トーマスだって色々付き合いがあるんだから、明日の試合を一緒に観に行けないことくらい許してやれよ」

 

 

 

*俺もいるんだ。

 

暑い日だった。

中学生になったばかりの双子は、友人のジミーを連れて家に帰ってきた。

家では、ポールがアイスキャンディーを食べていた。

三人に気付いたポールは、にこやかに笑いかけた。

「暑かったろ。お前達も食べるか?沢山買っといたんだ」

溶け始めているアイスはポールの長い指を濡らしていた。

すかさず双子は、ポールに近寄りアイスキャンディーと、ポールの指を一緒くたに舐めた。

「パパ、俺たちが本当に舐めたいものが、まだ、アイスキャンディーだと思ってる?」

「同じ棒なら、もっとおいしいものパパ持ってるでしょ?」

過ぎた冗談を言う二人を叱るより前に、ジミーが叫んだ。

「頼む、二人とも! 地球上には君んちのパパ以外にも人間は生息してるんだ!」

 

 

 

*チェンジの必要

 

とあるパーティー会場で、ポールは、一人の男と揉めていた。

その男は、芸術に対して理解ある金持ちとして有名だった。

ポールのエージェントは、慌てて二人の間に割って入った。

「うちの画家が申し訳ありません。サー。こいつ、絵描きとしては最高なんですけどね。少しばかり頭に血が上りやすい性質でして……」

金持ちを新しいポールの客の一人として目をつけていたエージェントは、画家の無礼を必死になって詫び、ポールの腕を掴んで、壁際へと引き寄せると小声で注意した。

「ポール、相手は金持ちなんだぞ。その上、芸術にも理解がある。あの人は、あんたの絵をその価値どおり高く買ってくれる珍しい客になる予定の人物だ。なぁ、ポール。あんたの絵に心酔してて、その上、商売熱心な俺からお願いがある。俺をエージェントとして認めているなら、パーティーの間くらい、別人になりきって何を言われても笑って済ませてくれないだろうか?」

「……、あんたが良いって言うんなら、俺は構わないが……」

憮然とした表情のポールに、エージェントは理由を聞いた。

「あいつ、あんたのことヌード好きの色情魔だって言ったんだ。そのうちモデルだけでなく、絵描きまで脱がすに違いないから、エージェントを変えろって」

 

 

パパ豆って、かわいいなぁ。と、思っているわけです(笑)

今回の笑えました?