レッスン2
閉店した店の駐車場へと無断で車を乗り入れた。
「イアント」
車が減速し始めたところで、察し良く体を緊張させ始めていたイアントに、サイドブレーキを踏み込みながら、ジャックはにこりと笑って視線を合わせる。
「ボス」
「うん。イアント」
肩に力を入れて助手席に座るイアントが可愛らしくて、ジャックは、優しくイアントを見つめ続けていた。
携帯の呼び出し音が大きな音を立てた。
ジャックは、イアントの裸の下腹に、自分のペニスを押し付けたまま、スマートに胸ポケットから携帯を取り出す。
「トシコ?」
『ジャック、オフのところ悪いんだけど、ちょっと、あなたがいないとダメみたい』
ジャックは気分良くボスにお出まし頂こうとお世辞を口にするトシコの処施術を、楽しげに笑う。
「君がいても、ダメなの?」
『ダメ、ダメ、全然ダメ。せっかくのオフなんだし、あなたなしでやろうって私は言ったのよ。なのに、オーエンがあなたを呼べってうるさくて』
「おやおや? 俺はチームの揉め事を収めるために呼ばれるのかな?」
車の天井を見上げながら、しゃべるジャックは楽しげだが、ジャックの体の下にいるイアントは、それどころではなかった。感度のいい携帯に酷く荒い自分の息遣いを拾われたくないと、口を押さえる。ジャックの通話相手は、イアントの同僚だ。二人が付き合い始めたことは、オープン過ぎるジャックのせいで知られてはいるが、はしたなくも見知らぬ駐車場で、車内とはいえ下半身を晒して、しかも、二人ともペニスを勃たせている。
ジャックにのしかかられているイアントのYシャツは、汗でぬれ、車のシートと背中の間でくしゃくしゃだ。
『デートの邪魔がしたいだけかも。やだ。オーエン、睨まないでよ。しょうがないでしょ? ジャックは今、ラブラブなんだし、あなたがフリーなのは、ジャックのせいじゃないわ。……あっ、ジャック、また新しい時空の裂け目が出来たの。なんだか、大物が流れ着いたみたいで、だから、あなたにも現場に行って欲しくて』
「今すぐ?」
ジャックが初めて困ったように眉を寄せた。
『ええ、できれば、今すぐ。現場は……えっ? 今すぐは無理なの?』
「そうだな……」
ジャックがイアントを見下ろした。青い目は、じっと探るようにイアントを見つめる。暗闇のなか、はっきりと目を焼くシャツの捲り上げられた白い腹で、落ち着きのない息を繰り返している部下を見下ろす短い黙考の後、果てしない厚顔さをトーチウッド、カーディフ支部のボスは発揮した。
「1分待って」
「1分って?」
「いや、二人とも勃っててさ、あといくばっかりだったんだよ。だから」
『ちょっと、オーエン、ジャックったら、イクまで1分待ってろって言ってるのよ! 信じ……』
電話の声は、ジャックが携帯を後部座席に投げ捨てたせいで、遠くなった。トシコと同じく信じられない思いのイアントの目は見開かれたままだが、ジャックは気にせず、まず、慎み深く口を覆うイアントの手の甲にキスをすると、そっとそれを口から剥がし、開いたまま固まってしまっている口へと唇を押し当てた。
「イアント。ムードがなくて悪いんだけど、お互いに仕事の時間みたいだから、巻きをかけさせて貰うよ?」
青い目にじっと見つめられても、イアントはただ事態を受け止めかねているだけだった。
だが、ジャックは愛情たっぷりに微笑むと、イアントの太ももに手をかけ、ぐいっと開かせ、今までがお遊びだったとわかる手管で腰を擦りつけ、挿入をまねた動きでいやらしく揺さぶり出す。
ジャックが電話に出た時点で、少し萎えたイアントのペニスは、ふれ合う体毛のざらざらとした生々しさに、ドクリと血を集めた。それは、イアントがいくら頬を染めようとも、互いのペニスを、固くしまった腹で擦られることで、ますます硬くなる。開かされた足を恥ずかしがる間もなく、股の間に差し込まれた大きな手に、陰嚢を卑猥に揉みしだかれ、イアントは呼吸することすら難しいかのように、息を詰まらせている。
「悪いね。イアント。今度はゆっくりするから、」
ジャックは腕を顔へと近づけ、時計の秒針を眺める。
「今日は、あと、40秒でいかせていいかな?」
二本をまとめて扱くジャックの手は、卑猥な液体でヌトヌトと濡れているイアントのペニスの裏側へと指が当たっている。
本当に40秒でイアントはジャックに達かされた。
同じタイミングでジャックもいったが、その時、ジャックが、イアントの衣服を汚さないように、ちゃんとハンカチを用意していて、イアントはますますこのボスの底知れなさを感じたのだ。
「トシコ。悪かったね」
『やーだ。もう。ぴったり1分で戻ってこないでよ』
後部座席から携帯を拾い上げたジャックは、会話の合間にイアントの頬へと優しいキスをしている。
『早漏野郎。現場の地図データーを送ったぞ』
「さぁ、じゃぁ、行こうか、イアント?」
まだ、イアントが呆然としているというのに、キーを回す前には、スイートなキスで、きちんとデートの締めくくりまでしたジャックは、いきなりアクセルを踏み込んだ。
「……ボスっ!」
「何? イアント、大好きだよ」
END