ハニー・ハニー・ハニー(小話風)

 

*罪と罰

 

要するに、クマと、その弟子は嵌められたのだ。

ジェダイの介入をよく思わぬ組織というものは、いくらでもある。

その星もまた、この戦禍において軍事力が幅を利かせ始め、軍人達は権力を握り始めていたのだ。しかし、フォースを持つジェダイが介入し、華々しい救出劇が行われると、人々の心は、軍隊より、中央から来たジェダイに移った。後からやってきたジェダイが上前をはねたのだ。事実はそうではないが、すくなくとも、この星の将軍は、そう考えた。

「わかりました。確かに、私の弟子は、戦火をのがれるため、空き家になった民家に侵入し、窃盗を行ったかもしれません。まぁ、確かに、それは事実なのですが」

腹のすいたクマの命令により、民家に押し入り、ほんの僅かの食料をちょろまかす罪を犯したアナキンは、馬鹿馬鹿しくも将軍の目の前まで連れ出され、裁判にかけられていた。

自分は、ジェダイなのにと、アナキンは、恥ずかしい。せめて、もっと大きな罪で裁かれるのであればと、身の置き所もない。あの時、クマが腹が減ったとわめくのを無視すればよかったのだ。アナキンは、どっぷり反省している。

しかし、このまずい状況の中で、弟子をそんな窮地に追い込んだというのにクマは、すこしも反省していなかった。アナキンの目の前を行ったりきたりしながら、なにやら自信ありげに、黒いツヤツヤの目をピカピカさせ、熱弁をふるっている。アナキンに盗ませたパンと、蜂蜜と、林檎を食べたから、満腹なのだろう。ずいぶん幸せそうだ。

手首には手錠をかけられ、床に膝を付いているアナキンの口からはため息が出る。

「しかし、です。将軍。考えてください。彼は立派なジェダイなのです。その彼に民家から持ち出させ食料を掴んだのは、心弱い右腕だけなのです。何故、私の弟子は、たった一本の腕が犯した罪により、彼自身が罰せられなければならないのでしょうか!」

クマは、無闇やたらと張り切っている。

アナキンとしては、自分を立派なジェダイだと認める気があるのであれば、もう、食料強盗などさせないで欲しいと、そればかりが望みだ。第一、アナキンに盗みをさせたのは、右腕ではない。そこでふかふかの身体に策謀をめぐらせているクマだ。

将軍は、にやりと笑った。

「ほう。では、ジェネラルケノービ。私もそれほど心の狭い男ではない。君の弟子が罪を犯したのは、右腕だけだという君の主張を認めてもよい。では、アナキン。いや、アナキンの右腕に告げよう。君が犯した罪により、一年間の刑に処す。アナキン、君も付き添って服役してもらってもいい。勿論、右腕だけで服役してもいい」

クマは、ぬいぐるみのクマにも似たそのかわいらしい外見に反し、ずいぶんずるがしこいのだ。厳かにオビワンは命じた。

「アナキン。では、右腕だけ、置いていきなさい」

オビワンの言葉に、周りを取り囲む軍人達はざわめく。

「……ジェネラルケノービ。いくら、君の弟子だといっても、こんな将来のある若者にそんな酷いことは……」

上前をはねられたとはいえ、アナキンの有能さを見ていた軍人達は、その能力が惜しいのだ。

「はい。マスター」

アナキンは、義手を取り外し、立ち上がった。

あまりの事態に人々は、ぽかんと口をあけている。

クマは、得意の絶頂だ。

「では、右腕が刑期を果たしましたら、コルサントまで送ってください。私どもは、これにて失礼いたします」

唖然とする将軍たちを前に、自分の食い意地のために弟子に罪を犯させた師匠が、胸を張って歩く。

「ああ、その右腕だけでは、誰の腕がわかりませんね。盗み食いをしたジェダイの腕だと、プレートをつけてくださって構いません」

アナキンは、クマの機転には感謝したが、一度師匠に深い反省を求めるため、ここで服役していくのも悪くない考えだと思った。

 

END