優しくね
年若いジェダイナイトが、部屋に戻ると、未だ、ローブも脱いでいないジェダイマスターがソファーにぼんやりと座っていた。
「おかえりなさい。マスター」
帰ったのは、自分のほうであるというのに、アナキンは、機嫌良く師匠にそう声を掛けた。
オビ=ワンは、驚いたようにドアへと顔を向ける。
「お待たせ致しましたか? マスター」
アナキンは、羽織っていたローブから腕を抜き、師匠の座るソファーへと近づいた。
「どうでした? マスター、仕事の方は。勿論あなたのことですから、順調につつがなく事を終えられたでしょうけれども、何か変わった事でもありましたか?」
アナキンの少し皮肉っぽい口振りは、いつものことだが、その声には、ぼんやりとしていた師匠を気に掛ける気持ちが隠されている。
オビ=ワンは、弟子の顔を見上げた。
大きな目が、ぽっかりとアナキンを見上げた。
「……お前の方は……? アナキン」
僅かに首を傾げたオビ=ワンは、自分へと近づくジェダイナイトへとゆっくりと手を伸ばした。
アナキンは、腕にかけたローブが、師匠との間を邪魔することを気にしながらも、身体を曲げ、師匠が自分を抱くのにまかせた。
オビ=ワンの唇が、アナキンの頬を掠める。
アナキンの唇も、オビ=ワンの髪に押しつけられた。
「ただいま。マスター。一人の仕事に慣れてきたとはいえ、やはり、道中さみしいです」
オビ=ワンは、弟子の首を抱いたまま、ふっと息を吐き出し、その耳元へと口を寄せた。
「おかえり。アナキン。そっちこそ、全く問題のない任務遂行ご苦労だったな」
オビ=ワンは、師匠らしい対応だった。
しかし、オビ=ワンの唇は、必要以上にアナキンの耳へと寄せられていた。
「……さみしい……さみしい……か」
オビ=ワンは、独り言のように、弟子の耳元で囁いた。
アナキンは、オビ=ワンを両手で抱きしめ、背中を撫でた。
「どうしたんですか? マスター。酷くナーバスですね」
「……途中で、会ったんだ……。背の高い、……髪の長い……」
オビ=ワンは、唇を噛んだ。
顔は苦渋に満ちている。
アナキンは、オビ=ワンを抱いていた手を放した。
「マスター。それは、あなたの、マスター?」
アナキンは、オビ=ワンの目をのぞき込み、きつく尋ねる。
「あなたのマスターに、似た男? あなたが大好きだった男に似た奴?」
アナキンは、オビ=ワンの顎を掴んだ。
「俺に、その話をして、どうしたいんですか? マスター。あなたが恥知らずにもその男について行ったのかとでも、尋ねさせたい? ああ、顔がぶたれたい?」
アナキンに大きく揺さぶられ、オビ=ワンの目に、おびえが走った。
激しい自我を持つアナキンに、クワイ=ガン・ジンの名前は禁句だった。
オビ=ワンとアナキンの二人は師弟関係にあった。
だが同時に、肌を許しあった恋人同志だ。
年若いアナキンは、とても気性が荒い。
弟子の手が振り上げられる。
オビ=ワンは、目を瞑った。
しかし、その手は、師匠をぶちはしなかった。
代わりに、アナキンは、大きく笑った。
「……マスター。ごめ……。俺、実は、向こうの星で、面白い食べ物を頂きまして」
吹き出したアナキンは、身をすくめていたオビ=ワンを抱きしめた。
やに下がった顔でにやにやと笑う弟子のことが分からず、オビ=ワンは、未だ表情におびえを残していた。
構わずアナキンは、師匠を抱く手に力を込める。
「悟りの味っていうものなんですけどね。まぁ、一種、幻覚作用のある果物です。普通はこれを使って、宗教的幸福感ってやつを体験するためのものらしいんですが」
アナキンは、食いしばられたままのオビ=ワンの唇にキスをした。
師匠の瞳には、もう泣く準備が出来上がっていた。
「俺は、どうも体質に合わなかったようで、別の効果が現れました」
アナキンは、オビ=ワンのローブの裾をめくった。
アナキンの手が、オビ=ワンの太腿をなで上げる。
「オビ=ワン。今、俺、あなたの考えていること、全部聞こえてるんです。だからね。あなたが、何で、クワイ=ガンのことを言い出したのかもお見通し。ねっ、マスター。一杯して欲しいって時には、前の男の名を出すんじゃなくて、正直に、して。って言えばいいんです」
弟子は、師匠の目を甘く見つめてにやりと笑った。
ぶたれた時を想定して、もう涙で潤み始めていた師匠の目は、大きく見開かれたままだ。
アナキンは、オビ=ワンの重いほど茂った睫を舐めた。
「マスター。俺、別々に任務に就くと、なんでいつもいつも帰るなり喧嘩になるのか、不思議だったんですけど、なるほど、こういう訳だったんですね」
「……なにを!ばかなっ!」
オビ=ワンは、弟子を押しのけようとした。
弟子の腕は、力強くオビ=ワンを抱き込み離さない。
「俺、いつも不思議だったんですよ。たしかに俺も任務が済んだばかりで、疲れから苛ついてるってのはあるけど、どうして、こうも再会したばかりのセックスが酷いことになるかなぁって」
アナキンは、俺は、毎回気持ちいいセックスをしようと思いつつ帰ってくるんですよ。とぶつくさ言いながら、赤く染まりだしたオビ=ワンの耳を噛んだ。
「マスター。あなた俺のこと誘導してますね。そんなに俺のこと確かめたいんですか? 俺とほんのちょっと離れるだけで不安になるの? 酷いことされる位じゃないと、自分が一番愛されてるんだって自信が持てない?」
アナキンは、オビ=ワンの赤くなった頬にいくつもキスをした。
オビ=ワンは、弟子を押しのけようともがいた。
「マスター。あなた、かわいいけど、……迷惑な人だ」
アナキンは、仕方がないというように肩をすくめた。
「何を言っているんだ。私は、そんな気など!」
オビ=ワンは、弟子を押しのけるのに成功した。
しかし、弟子を押しのけ、立ちあがれたと思ったのは、オビ=ワンの間違いだった。
弟子は、悠々とオビ=ワンの腕を掴み、見上げた師匠の唇を激しく奪った。
「マスター。お望み通りのセックスをしてあげましょうか?」
上から師を見下ろし、弟子は、目元を赤く染め上げた師匠に笑った。
師は、強く睨み付けた。
「なっ! なにを!」
「今日ばかりは、恥ずかしがらなくていいですよ。マスター。隠そうったって、無駄なんです。マスター。全部聞こえてるって言ったでしょう?今日、あなたが、クワイ=ガン・ジンの名前を出した訳もちゃんと聞こえましたよ。マスター、あの人がしてたみたいに、あなた、俺に抱っこして、して欲しいんですよね?」
笑ったアナキンは、手早く師匠の下衣だけを緩めた。
オビ=ワンは、ブーツに下衣を絡めたまま、真っ赤になって立ちすくむ。
師匠は、しゃがみ込みたかったが、弟子の腕が強く身体を引っ張りあげ、それも適わなかった。
アナキンの手が、オビ=ワンのペニスを握った。
オビ=ワンのペニスは、通常の状態だというには、無理がある状態だった。
にやにや笑いのアナキンは、ペニスを手の中で弄ぶ。
師匠の股の間に手を入れて、垂れ下がる袋も握り込んだ弟子は、赤い師匠の額へとキスをした。
「マスタークワイ=ガンがしてたアレが懐かしいっていうんだったら、俺もむかつきますけど、マスター、あなた、やってる最中に俺にしがみつきたいなぁって。そんなかわいいこと考えて」
袋ごとペニスを嬲る弟子は、柔らかい太腿を締め付けてアナキンの手を阻もうとする師のブーツを蹴った。
もとより、縺れた下衣のせいで、きちんと足を閉じておけない師匠のブーツは、きちんと揃っていなかった。
アナキンのブーツが、オビ=ワンのブーツを割った。
現在、オビ=ワンの柔らかい太腿は、膝上だけが摺り合わされている状態だ。
こんなのは、アナキンにとって拒まれているうちに入らない。
勃ち上がっているペニスの先をくちゅくちゅと弄ぶアナキンは、悔しそうな顔のオビ=ワンの耳元で囁いた。
「唇を噛んでないで、舐めて。って言ったら? マスター」
「アナキンっ!」
「いま、そう思ったくせに」
「嘘だっ!」
真っ赤になったオビ=ワンは怒鳴った。
しかし、弟子は、全く応えていない顔で、オビ=ワンに唇を尖らせた。
「マスター。何回説明したら、受け入れます? 悟りの実。マスターのことだから、その存在もご存じでしょう? まぁたしかに俺の反応は正しくないけど、あれのせいで、俺、今、テレパス状態なんですって。マスターの考えてること、全部おみ通し。先っぽ撫でたら、舐めてくれたらいいのに。って思ってましたよね、今……言えばいいのに。そしたら、してあげるのに」
弟子は、真っ赤になって自分を睨む師匠の顔に満足した。
「しょうがない。後でもっとすごいこと、ちゃんと言って貰いますよ? ほら、足、もっと開いて」
アナキンは、師匠の足下に座り込むと、上を向いているペニスを口に含んだ。
舐めながら、師匠のブーツに手を掛ける。
「足、上げて」
自分の膝の上に師のブーツを載せたアナキンは、オビ=ワンのブーツを脱がしてしまう。
そのまま絡みついていた下衣も取り去り、アナキンは、オビ=ワンの足をなで上げた。
オビ=ワンの太腿がぶるりと震える。
アナキンは、震えでぷるりと揺れたペニスの先端を舐めながら、にやにやと笑った。
「マスター。立ったまま、されるの好きなんだ? ……色々思い出すから」
悟りの実は、アナキンによく聞こえる耳とともに、寛容の心も与えたらしかった。
オビ=ワンは広げた股の間に座る弟子にペニスを舐められることで、様々な羞恥で身を焼いていた。
一番古い記憶は、壁際に追いつめられ、壁に押しつけた尻にタイルの冷たさを感じながら、師匠の髪を強く掴んでいたパダワンの頃。
だが、それを凌駕して記憶を塗り替えるアナキンにされた野外でのフェラチオ。
あの時も、下だけ脱がされ、オビ=ワンだけが追い上げられた。
師匠は何度もしゃがみこもうとしたが、尻を掴む弟子の手が、許さなかった。
いくつもの記憶が、フラッシュバックして、オビ=ワンの背中を痛みにも似た甘さが駆け上がっていく。
「……アナキン」
オビ=ワンは、弟子の髪に指を絡め、切ない声を出した。
アナキンの笑みが深まる。
「俺、マスターがそのいやらしい顔してるときって、何、考えてるのか勝手に想像するばっかりだったんですけど、いいですね。こういうの。なるほど、もっとしてかと思ってたんだけど、マスター、あなたもっとせっかちだったんだ。でも、そんなに急かなくても、これだって、気持ちいいでしょ?」
アナキンは、焦らすようにオビ=ワンのペニスを舐め続けた。
開いた股の間に手を入れ、尻孔へと続く細い道を指先で辿る。
生い茂る陰毛をなぞられ、オビ=ワンの腰が揺れた。
欲しがっているのを十分承知で、アナキンは、穴の周りを撫でるだけだ。
オビ=ワンが、アナキンの髪を掴む。
倒れた上体が、アナキンを圧迫する。
アナキンは、顔を打つペニスにちゅっとキスをし、ほんの少し膨らんだ腹にもキスをした。
「ねぇ、マスター。今、考えてることがして欲しいこと?」
「……えっ?」
「ねぇ、ほんとです? 濡れてるんですか? ここ?」
オビ=ワンの耳元に唇を寄せたアナキンの指が、するりと尻孔の中を探った。
「……濡れてる……」
指先を濡らすどろりとした液体に、アナキンは、驚きの声を上げた。
そのままずるりと指は中へと忍び込む。
「中も、すっかりだ……」
あまりに真摯な弟子の声に、オビ=ワンは恥ずかしさで、アナキンから逃れようともがいた。
「アナキンっ!!」
「そんなに恥ずかしがらないで。いいじゃないですか。俺、嬉しいばっかりですよ」
アナキンは、弟子の手を逃れ、這ってでも逃げようとした師匠を捕まえた。
丸みのある尻にキスの雨を降らす。
オビ=ワンは無駄に床に爪をたてていた。
唸るような声を上げている。
「堪んないなぁ。俺怒らせて、無理矢理される時を想定済みなわけですね。用意周到なマスターだ」
アナキンは、尻の肉をかき分け、きつく閉じようとしている穴の上を舐めた。
「でも、こんな風にしてるってことは、虐めて欲しかったんだ? 無理矢理入れて、こんなに濡れてちゃ、俺、絶対に、言いますよ。そんなに欲しかったんだ。って。マスター俺にそうやって言われたかったの?」
「うるさいっ!」
この言葉以上に、唇を噛んだまま唸るだけの師匠の心から直接、アナキンは、山ほどの罵倒の言葉を聞いた。
だが、弟子は、それを、聞かなかったことにした。
ぺろぺろと震える白い尻を舐める。
そして、オビ=ワンの心を占めるほぼ9割を占める羞恥からくる攻撃性を無視し、アナキンは、師匠を床から抱き上げた。
「掴まって。マスター」
弟子の力強い腕に強引に抱き上げられたオビ=ワンは、弟子を睨み付けたままだったが、しぶしぶという調子で、腕を首へと回した。
しかし、出来上がったポーズと言えば、尻を持ち上げているアナキンに師匠は太腿まで絡みつかせ、しっかりとしがみついている格好だ。
アナキンは、師匠の尖っている唇にキスをした。
「はい。お望みのポーズ」
アナキンは、上げた腿で、師匠を支えたまま、自分の前をくつろげる。
オビ=ワンがペニスを擦りつけたせいで、漏れだしていた液体で濡れた黒布は広げられた。
アナキンは飛び出したペニスを師匠のものと擦り合わせる。
興奮があった。
しかし、オビ=ワンは先を望んでいた。
今日のアナキンには、大きくそれが聞こえる。
「マスターの欲張り」
「……うるさいっ」
オビ=ワンは、弟子の唇を無理矢理塞いで、口を利けなくした。
飢えたように師は、弟子の口内を荒らし回る。
アナキンは、首を振って、師のキスから逃げた。
持ち上げた師の尻の位置を調整して、ペニスの先端を穴にあてがう。
「……ああっ……んんぁああ……ん」
腕の力を緩めたアナキンのせいで、オビ=ワンは深く弟子のペニスを味わうことになった。
背を反り返し、急激な挿入から逃れようと、もがく師匠に今度は弟子が強引なキスを迫った。
弟子の舌が、師匠を捕らえ、舌の表面が摺り合わされる。
オビ=ワンは、かわいらしい鼻声を上げた。
自分からも求めるように、唇を押し当てる。
アナキンは、師匠を抱き直し、彼を揺さぶりやすくした。
オビ=ワンは、弟子の首に縋り付き、とろりと身体の力を抜いている。
アナキンは、師匠を持ち上げ、ペニスの上へと何度か落とした。
「あっ!……んんっ……んっ」
オビ=ワンの手が、アナキンを求め、きつく首に絡みついた。
太腿も、はしたない程アナキンを挟み込んでいる。
これを、普通だったら、アナキンは、喜びだけで受け入れられたはずだったが、今日ばかりは、苦笑いした。
「わかりました。マスター。俺、もうちょっとウエイト増やしますね」
師匠は、安定の悪さに怖がっていた。
気持ちが良さそうに目を瞑ってはいるけれども、オビ=ワンは、ウエイトの軽いアナキンが、自分ごと転ぶのではないかと、脅えていた。
きつく求めてくる腕や、足は、ただ単に、安定を図ろうというオビ=ワンの防御だ。
オビ=ワンは、自分の挟んだ腰の細さに、過去になかった不安感を持っていた。
アナキンは、オビ=ワンの唇を噛んだ。
「比べない。マスター」
ぱちっと音がしそうな程、大きくオビ=ワンが目を開けた。
小さく横へと首を振る。
「……比べたりしてない」
「はいはい。じゃぁ、絶対に落としたりしませんから、好きなように腰を振ってもいいですよ?」
アナキンは、オビ=ワンを突き上げた。
激しい突き上げに、オビ=ワンの背が反り返ろうとも、びくともしない。
「……ああっ……あ……あ、んんっ……ん」
ぐちゅぐちゅと音がするほど激しく中を擦り上げられ、オビ=ワンの太腿へとジェルが伝った。
オビ=ワンが自分のいい部分へ刺激を受けるため、もそもそと腰を動かす。
師匠のいいように抱き上げ直してやりながら、アナキンは、オビ=ワンの首筋をきつく吸い上げた。
「マスターのこと、大好き」
ゆっくりと腰を突き上げてやりながら、キスを繰り返すと、オビ=ワンの腕が弟子の首をきつく抱いた。
今度は、怖がっているせいではない。
尻は大きく開かれ、アナキンのペニスを根本まで飲み込んでいる。
アナキンは、気持ちよさそうに閉じられた目尻へと話しかけた。
「マスター。ご希望の抱っこは、これで満足できそうですか?」
今日の弟子は、答えだって分かっていた。
だが、あえて、アナキンは、オビ=ワンに聞いた。
オビ=ワンが目を上げた。
とろりと潤んだ目の目尻は赤く染まっていた。
アナキンの腹を濡らすペニスからは、とろとろと生温かな液体が零れだしている。
それをしきりに、師は、弟子の腹へと擦りつける。
「……気持ちいいの? マスター?」
弟子にすっかり身体を預け、しがみついているだけの師匠は、こくんと小さく頷いた。
「いつだって、こうやって素直になってくれれば、俺、酷いことせずにすむのに」
アナキンはそう言って、オビ=ワンの耳元に囁いた。
だが、すぐその後に耳を噛み、思い直したように甘く囁いた。
「でも、マスター、俺に酷いこともして欲しいんだもんね。仕方ないか」
その後に、床の上でしばらくいちゃつき。
ベッドまで這っていき、もう一度して。
不思議な実のせいで、オビ=ワンの全てが聞こえているアナキンは、実に寛容な態度を示した。
抱きしめ、どんなに気持ちよさそうな顔をしていても、オビ=ワンの表面思考には、さまざまなノイズが走る。
それは昔の男だったり、ジェダイとしての誇りだったり、さまざまだが、それらはいつもオビ=ワンに弟子へとどっぷりと浸かることに警告を与えた。
オビ=ワンは、そのノイズが走るたび、アナキンを遠ざける。
それが、表情や、仕草などに現れ、いつもなら、アナキンが激高することになる。
しかし、今日のアナキンは、それに惑わされる必要がなかった。
何もかも聞こえている。
気持ちがいいと泣いているオビ=ワンの声も。
アナキンを愛していると叫ぶオビ=ワンの声も。
表層を流れている様々な、時にに暴力的なまでの力強い意識をかいくぐり、もっとオビ=ワンの深層へとダイブすれば、そこにあるのは、頑ななまでのオビ=ワンの愛情だった。
オビ=ワンは、真実、アナキンを愛していた。
一人での任務をさみしいとアナキンを待ちわび、力強く抱きしめて貰うために、罠を張って待ってしまう愚かしい師。
「マスター。大好きですよ」
アナキンは、幸福だった。
信じられないくらい幸福だった。
アナキンは、ぬるついた身体を抱きしめ、その温かさに、開けかけた目をもう一度閉じた。
「……アナキン」
小さな声が、アナキンの眠りを覚ます。
アナキンは、小さく唸り、身じろぎする身体を抱きしめ、大人しくさせようとした。
「……悪い。手を放してくれ。アナキン……」
オビ=ワンは、弟子の腕から逃れようとした。
たっぷりと中に出されたものが尻の間を伝っていた。
「アナキン……」
何度も師に呼ばれ、渋々アナキンは目を開けた。
「……うん?」
アナキンは、自分の置かれた立場がわからなかった。
船に乗り込む前、土産だと言われ、いくつも持たされた果物のうちの一つを口にした。
操縦桿を握った自分を記憶している。
しかし。
アナキンには、そこからの記憶がまるでなかった。
ここに居て、師匠を抱きしめている以上、無事船を飛ばし、帰ってきたことは間違いないだろう。
だが、不確かな記憶を探るため、顔を顰めたアナキンをオビ=ワンがのぞき込んだ。
師は、弟子の髪を撫で、額へとキスをした。
「記憶がないんだろう? アナキン」
青い目が、アナキンをまっすぐにのぞき込んだ。
「……えっ?」
「食べたのは、悟りの実だったって言ってたな。あれの原種は、習慣性があったから、品種改良されたんだ。効果のある間は、多幸感に包まれるが、切れるとその間の記憶も消える。その間にあったことは、深層の記憶に刻まれ、不確かな幸福のイメージだけが心に残る。まぁ、その適度の繰り返しで、あの星が信ずる宗教の真理に近づくんだ。お前は、すこしばかり不思議な反応を示していたが」
オビ=ワンは、ベッドから降りようとし、ぐらついた。
アナキンが慌てて、その身体をかばう。
抱きしめたアナキンは、思わず片目を瞑った。
オビ=ワンの身体には、目を覆いたくなるようなほどのキスの跡、それだけでなく、噛み跡まで残っていた。
任地から帰った後、ろくなセックスにならないことを経験済みのアナキンは、苦渋に満ちた声で、師匠に尋ねた。
「……俺、又、まずいことしました?」
「いいや」
「本当ですか……?」
アナキンの声は、自分を信じてはいなかった。
オビ=ワンは、自分を抱く胸にもたれ掛かった。
幸せだった。
昨夜は、どんな酷い目にも合っていないというのに、オビ=ワンは、アナキンに愛されている自分を、強く自覚することが出来た。
アナキンは、どうしても不安になる自分に対して、飽きるほどの、愛の言葉を与え続けた。
オビ=ワンは、不安そうな弟子の唇を奪った。
「……アナキン。おかえり。お前のことを待ってた」
師匠の手が、ぬるついた腿へとアナキンの手を誘導する。
アナキンの表情が変わった。
「もっと、なんですか? マスター」
オビ=ワンは、笑った。
その笑顔の意味がアナキンにはわからなかった。
ただ、笑う師の顔に、惑わされる。
仕方なく、アナキンは、それをもっとだと受け取り、師をベッドの中へと引きずりあげた。
「マスター。愛してます」
END
いちゃいちゃ(笑)