その愛はいらない。

 

汗が、若いジェダイナイトのこめかみを伝っていた。

この星は、植物が多すぎ、酸素の多さに、アナキンはめまいがした。

押し寄せる熱気は息苦しい。

アナキンの目の前には、二体のエイリアンいた。

二体は、この星系を牛耳る男のかわいらしいペットであり、住民達を食い荒らす害獣だ。

彼らの棲処の沼地には、大量の食い残しが放置されている。

腐った肉の甘い匂いが空気に混ざった。

それは、この星の赤く大きな花の匂いにも似ていた。

アナキンは、甘ったるいその匂いを嫌い、息を詰めて、足に力を入れた。

敵の攻撃は、かなりレベルが高い。

獣は、下等そうに見える外見を裏切り、動きは素早く、空気を圧縮し、ぶつけて餌を確保するという技まで持っていた。

もう、五日、師弟はこの獣を捕らえようとしていた。

アナキンは、エイリアンの注意を十分に引きつけ、二つを相討ちさせるつもりだった。

そのため、危険を承知で、両方の攻撃範囲に、自分の身を置いていた。

害獣は、じりじりと間合いを詰める。

大きな目をぎょろつかせ、攻撃を仕掛けようとタイミングを計っている。

獣が大きく腹の穴を開き甘く重い空気を吸い込む。

緊張感がアナキンを包んだ。

だが、それを声がうち破った。

「危ないっ! アナキン!!」

他の小さなエイリアン達に、ライトセーバーを振るっていたオビ=ワンが、タイミングを待っていたアナキンの前に飛び出した。

その瞬間のオビ=ワンには、弟子を守ることしか頭になかった。

身の丈の3倍はあるという獣の両端から弟子に向かって大きな口を開いていた。

その攻撃の脅威は、この5日、傷らしい傷を獣に与えることが出来ずにいたジェダイマスターを震撼たらしめるには十分だった。

弟子の前に飛び出した師は、アナキンをかばうように両手を広げた。

だが、それは、アナキンが二体の獣の攻撃に反応し、飛び出そうとするタイミングだった。

「マスター!」

「退け! 下がるんだ! アナキン!」

戦士として名高いジェダイマスターは、大きな声で叫んだ。

そして、片一方の獣の攻撃に対し、自分の身体を使ってフォースの壁を作った。

だが、その瞬間を逃さず、もう一方の獣が、ものすごい重量の空気弾を放った。

アナキンを狙っていた。

せめて、それをもう一方のエイリアンに直撃させようと、アナキンは動いた。

だが、またもや、それをオビ=ワンが阻んだ。

自分の身体を使って、アナキンをかばった。

「うっ!!」

オビ=ワンは、直撃を受け、弟子に向かって吹っ飛んだ。

「マスター!!」

アナキンは、エイリアン同志を相撃ちにさせるつもりだった。

そのため、焦る心を抑え、じっとタイミングを待っていたのだ。

だが、飛び込んだオビ=ワンのせいで、アナキンの努力は無駄になった。

だから、せめてと、次の手を打ったのだ。

だが、それすら、オビ=ワンは邪魔をした。

ジェダイナイトは、それ以上の手が打てなかった。

気を失ったオビ=ワンが邪魔で、フォースを振るうことすら適わなかった。

逃げるしか出来ず、アナキンは、オビ=ワンの腕を掴んで必死に飛んだ。

 

 

倒した小物のエイリアンたちの体液で、べっとりと緑に汚れる師匠を引きずったアナキンは、気絶したままの師匠を床へと投げ出した。

今日の作戦を失敗した師弟は、自然の恵みばかりが多い星で、また、一晩宿を借りることになった。

部屋の中は、粗末だが、少なくとも、この星を覆う湿気が多く粘る空気を閉め出してくれる。

アナキンは、顔を伝う汗をぬぐった。

師は、ごろりと床に投げ出されたままだ。

瞑ったままの師の睫が、時折苦しそうに震えるのに、弟子は苛立ち、舌打ちした。

冷たい目をして師を見下ろし、もう一度舌打ちすると、身をかがめた。

弟子は、師の頬を張った。

二度、三度と叩き、オビ=ワンが目を覚ましたところで、アナキンは、手酷い殴打をその頬に見舞った。

オビ=ワンが、呆然と目を見開いた。

「……ア・ナキン……」

開かれた目は、まるで状況が理解できていなかった。

師は、ただ、完全に目覚めていると分かりながらも弟子が張った頬の痛みに目を見開いている。

アナキンは、オビ=ワンの襟元を掴み上げ、顔を近づけた。

「目が覚めました?マスター」

低く唸るアナキンの声に、オビ=ワンは息をのんだ。

「なっ、何を?」

オビ=ワンの声が微かに震えていた。

師は、全く、何も理解できなかった。

オビ=ワンが覚えているのは、アナキンを助けるために、彼の前に飛び込んだところまでだ。

アナキンは、無防備な顔をした師の様子に苛立った。

「マスター。自分がどうなったのか、わかりますか?」

「私は、……お前の前に出て、」

オビ=ワンは、あの時の状況を必死に手繰り寄せようとした。

アナキンをエイリアンが、挟み撃ちにしていた。

弟子は、策があるように、間合いを計っていたが、それを、無謀過ぎると、師は判断した。

「……ああそうだ。私は、お前の前に出た。それで」

「そう。マスター、あなたは、俺の前に出て、俺の邪魔をした。あなたさえ、いなければ、今日でこの星から帰れるはずだった」

アナキンの声は、冷たかった。

弟子は、師の行動を無駄だったと断定した。

オビ=ワンは、獲物をしとめ損ねた弟子の苛立ちを理解したが、それは、奢りだと思った。

「……それは、無理だ。アナキン。お前はあの時、危なかった」

「そうですか? それは、本当に正しい判断でしょうか?」

弟子は、唇に冷笑を浮かべた。

「あの時、あの獣を倒すのは、無理じゃなかった。あなたさえ、邪魔しなければ、今日、終わっていたはずだった」

「……アナキン」

オビ=ワンの声が、静かにアナキンを諫めた。

すると、アナキンは、師匠の頭が床を打つほど強く揺さぶった。

「アナキン、やめなさい!」

がくり、がくりと、オビ=ワンの首が揺れた。

「私が助けなければ、お前は危なかった!」

「マスター。あなたが、そんな風だから、俺は!!」

弟子は、また、師の頬を強く叩いた。

「何をするんだ!」

オビ=ワンは、弟子に凶行の理由を求めた。

だが、アナキンは、口を開かず、殴打は止まらない。

オビ=ワンの右の頬は、すでに赤く腫れ上がっていた。

アナキンは、反対側の頬を張るため、手を振り上げた。

「ちょっ……」

オビ=ワンが、身体をひねり、アナキンの手を避けた。

逃げるのかとアナキンがその背に手を掛けた。

だが、師匠は、その場で身体を丸め、蹲った。

苦しい呻き声を上げ、オビ=ワンは、床に嘔吐した。

アナキンは、立ち上がり、師匠を見下ろした。

汗で濡れた髪をかき上げる。

オビ=ワンが、胸を押さえ、低く呻いた。

また、吐く。

「……肋骨が折れてますね」

オビ=ワンは、はぁはぁと、辛そうな息を吐き出しながら、床を爪でひっかいた。

まだ、痙攣の発作に身体を振るわせる師匠の髪をアナキンは掴んだ。

オビ=ワンは、目尻に涙を溜めたまま、首をひねって弟子を見上げた。

「……ア、アナキン……何を」

師の顔には、苦痛の色があった。

あの攻撃からアナキンを守ろうと身体を挺したのだ。

骨の一本や、二本折れていても不思議がない。

髭を吐き戻したものでべっとりと顔を汚したオビ=ワンには、ジェダイとしての威厳などなかった。

アナキンは、卑下するように、オビ=ワンを見下ろした。

「マスター。……あなた、自分が何をしたのか、わかっていますか?」

「アナキン……」

オビ=ワンには、こうまで苛立つアナキンの気持ちが分からなかった。

たしかに、オビ=ワンの弟子は、野獣のように気性が荒い。

だが、作戦の失敗を修正できぬほど、愚か者ではなかった。

オビ=ワンは、痛みを堪え、ジェダイコードを引き合いに、弟子を諫めようとした。

「アナキン、お前は……」

敏感な弟子は、それをすぐさまかぎつけた。

「マスター。あなた、俺が、ジェダイとしてふさわしくないとでも言うおつもりですか?」

「アナキン、お前の態度は、全くふさわしくない。ジェダイたるものは」

だが、弟子を導こうとするオビ=ワンをアナキンは遮った。

いきなりアナキンは、激高した。

「マスター、俺が、ジェダイとしてふさわしくないと言うのなら、それは、あなたが育てたせいだ! 今日よく、わかった! マスター、あなた、今日、自分が何をしたのか! あの瞬間、何を思って行動したのか!」

弟子は、オビ=ワンを突き放した。

あの瞬間、アナキンは、目の前に飛び込んできたオビ=ワンに震え上がったのだ。

アナキンは、タイミングを計っていた。

十分攻撃から逃れるだけの算段があった。

あれは、決して命がけなどというものではなかった。

なのに、師は、弟子の危機だと、命をかけて、アナキンの前に飛び込んできた。

守られていると分かった瞬間、その執着に、アナキンは恐怖を覚えた。

床へと投げ出された師は、折れた肋骨を押さえ、蹲った。

「……うっ……」

アナキンは、汚れたオビ=ワンの顔を見下ろした。

苛立ちのあまり、アナキンは、凄惨に笑った。

「マスター。あなた、あの瞬間、命をかけましたね。……俺を助けるために、死さえ選んだ!」

アナキンは、蹲る師の側に立ち、自分を見上げている男の頭をブーツで押さえた。

オビ=ワンは、弟子に踏みつけにされた衝撃で声さえ上げられなかった。

「……違いますか? マスター」

弟子は、ぎりぎりと、師を踏んだ。

「マスター、命をかけての犠牲。それも、任務遂行のためじゃない。ただの私欲からの犠牲! それは、ジェダイとして正しいことなんですか?」

アナキンは、唸るように低く師に尋ねた。

オビ=ワンは反論しようとした。

だが、師の答えを待たず、弟子は、言い募る。

「違う。それは、絶対に違う! それは、マスター、あなたの俺に対する執着だ!!」

アナキンは、吠えるように怒鳴った。

「マスター、あなたは、いつも、俺に、執着を捨てろと言う。だが、マスター、あなたが一番俺に執着している! あなたは、あの時、冷静な判断力をなくしていた。……俺に、死んで欲しくない? 自分が死んでもいい程、俺に、死んで欲しくない? ……マスター。それは、執着だ。俺に対する執着なんだ! 誰が、助けてくれと言った!!」

「アナキン!!」

オビ=ワンはするどく弟子を叱った。

唇を噛み、自分を踏みつけるアナキンを睨み付けた。

だが、弟子の口は止まらない。

「……違うとでも言う気ですか? では、どういう言い訳を?」

アナキンは、更に強く師の頭を踏みつけた。

オビ=ワンの頬は、床を擦っている。

「マスター。どれほど、あなたの教育が間違っていたのか、今日、俺は、はっきり知りました。マスター、あなたは、口先だけで俺に全てを平等に愛せと言う。だが、あなたの愛は、どうなんだ。……あなたは、俺のために命すら差しだそうとする。手塩にかけた弟子だから? もし、俺が、知らない人間だったら、そうしなかった? ああ、あなたは、知らない人間でも助けようとするでしょう。でも、マスターあなたは、十分に力のある人間を無理に助ける必要なんてなかった。自分を危機にさらしてまで、何かをする必要なんてなかった。何の策もなしに、生身の身体を差し出して俺を守るなんてことが、ケノービ将軍の行動としてふさわしいのか!」

アナキンの怒りは納まらない。

「……あの瞬間、俺が思ったのは、いっそ、あなたに死んでくれということだった。俺は、恐かった。だが、恐かったのは、獣じゃない。マスターあなたの存在だ! あの執着心! あなたは、身をもって、俺にジェダイコードからの逸脱を教えている! あなたに育てられた俺が、正しいジェダイになどなれるわけがない!」

アナキンは、苛立たしげに部屋の中を見回した。

そして、低い声で尋ねる。

「……マスター、あなた、あなたに命がけで助けられて、俺が喜ぶとでも?」

オビ=ワンは、身を起こし、弟子の背中に言った。

「……死ぬ気などなかった。ただ、私は、お前を守ろうと……」

弟子は、荷物をかき回し、拘束錠を取り出した。

ジェダイたちは、要人の護衛に当たる際、捕まえた犯人が身分の高い人物で殺してしまうわけには行かないときにそれを使う。

「そして、結果として、死にかけた?」

アナキンは、恐いような笑顔を見せた。

「マスター、あなたは、その身体がいらないんですね。俺のために平気で差し出せるものなんだ。無価値なものをいつも貸して下さってありがとうございます。とても嬉しいです。俺」

弟子は、師の手を掴み上げ、拘束錠をがちゃりと掛けた。

師の言葉をまるで受け入れなかった。

 

 

富豪のペットに住民を餌として差し出さなければならないような未開の星だが、水は、ふんだんにある。

浴室に師匠を連れ込んだ弟子は、シャワーをひねった。

降りかかるシャワーの下に、師匠を突き飛ばし、アナキンは、拘束したままのオビ=ワンの顔を上向かせた。

嘔吐で汚れたオビ=ワンの顔に、シャワーの雨が降りかかる。

オビ=ワンは、苦しさに顔を背けようとした。

だが、アナキンは、掴んで離さない。

アナキンは、オビ=ワンの口を開かせ、その中にもたっぷりと水を含ませた。

「……アナキン!」

「綺麗にしてください。臭うんです。マスター」

水は、遠慮なく、オビ=ワンの口を満たした。

苦しさのあまり、オビ=ワンは、吐いた。

アナキンは、胃の残留物が残るそれに、もう一度オビ=ワンの口へとシャワーコックを押しつけた。

「ア・アナ……キン」

オビ=ワンは、首を振って逃れようとした。

だが、アナキンが離さない。

オビ=ワンは、多くの水を飲み込む努力をした。

しかし、肋骨の骨折によりもとよりむかつていた胸が、我慢することを拒否した。

師は、また吐いた。

今度は、殆どがただの水だった。

アナキンが頷いた。

今度は、アナキンの手が、オビ=ワンの顔中に水を掛ける。

涙は、水流で流れた。

髭を汚していた汚物も消えた。

しかし、襲いかかる水流を避けながらする呼吸に、肋骨の折れたオビ=ワンは苦痛を覚えた。

「苦しい……アナキン」

「汚いんです。マスター、あなた」

アナキンは、しつこく師の汚れを流していく。

オビ=ワンはずぶぬれだった。

服にしみこんでいたエイリアンの体液さえ、流れ落ちた。

「痛い。アナキン……」

汚れが流れ去ると、アナキンは、シャワーの水流を弱めた。

そして、いまだ暗い目をしたまま、オビ=ワンを脱がし出した。

オビ=ワンの手は、後ろ手に繋がれ、拘束錠が邪魔をしていた。

弟子は、オビ=ワンの上着を腕に絡めたまま放置した。

師匠は、驚いたが、弟子の行動を阻まなかった。

肉体関係なら、かなり前からある。

アナキンは、無言でオビ=ワンの足下に跪いた。

師匠からブーツを脱がせ、下衣を落とした。

オビ=ワンは、柔らかく降り注ぐシャワーの下に立っていた。

「これがしたいのか?アナキン」

オビ=ワンは、着衣のままの弟子に全てを晒しながら聞いた。

アナキンは、オビ=ワンの全身を検分するように眺めながら、手をのばし、下腹を覆う毛の中でうなだれたペニスに触れた。

しっとりと水に濡れ、柔らかなそれをくちゅくちゅと弄ぶ。

弟子の目は、変わらず冷たかった。

しかし、アナキンは、オビ=ワンの弱点を握りながら、暴行を加えようとはしなかった。

オビ=ワンは、濡れる弟子を見下ろしながら、おずおずと口を開いた。

「……アナキン。それなら、しばらく待っていてくれ。準備ができたら、ちゃんと行くから」

オビ=ワンは、もうこれ以上アナキンを刺激せぬよう、自分が感情的な行動にでぬようセーブしようとした。

弟子は、オビ=ワンを恐いと言った。

弟子が、どうして自分を恐いと評するのか、師には、上手く理解することができなかった。

だが、これだったら、オビ=ワンには受け入れることができた。

そして、結果を予想することも。

アナキンは、今、大変苛立っている。

行われるセックスは、オビ=ワンにとって好ましいものとはならないだろう。

だが、繰り返された肉体交渉を、また、踏襲することによって、事後、弟子は、落ち着く。

弟子の気に染むセックスを受け入れ、従順に彼を抱きしめ、その後、ゆっくりと話し合えばいい、と、オビ=ワンは思った。

そのために、オビ=ワンは、まず、拘束錠を解いて貰おうとした。

まず、弟子の手に触れられることが嫌だというわけではないと分かって貰うために、自分から、ペニスを弟子に押しつけた。

痛みを堪えながら、身をかがめ、師は膝をついたままの弟子の髪に口づけた。

「アナキン、拘束錠を解いてくれ。じゃないと準備が出来ない」

弟子は、オビ=ワンを見上げた。

口元には冷笑がある。

「いいんですよ。マスター。あなたは、命すら、俺に差し出すと言うんでしょう? 身体なんて、とっくに俺のものに決まっている。俺は、自分のものの始末を他人にして貰うつもりなんてない」

「……どういう?」

オビ=ワンには、弟子の言葉が理解出来なかった。

立ちあがったアナキンは、オビ=ワンに後ろを向かせた。

拘束錠に引っ掛かり、垂れ下がった邪魔な上衣を師匠の腕に巻き付けた。

「アナキン? どうしようというんだ? ここで、しようって言うのか?」

オビ=ワンは、背後に立った弟子の様子が分からず、言葉を連ねた。

「アナキン。お前を拒否しようってわけじゃない。ちょっと待っていて欲しいと言ったんだ。拘束錠を外してくれれば、ちゃんとお前の元に行く」

アナキンは、師匠の顔を壁へと押しつけた。

「そんな必要は、ありませんよ。恥知らずのマスター」

弟子は、今までよりもずっと甘い声で、師匠の耳元に囁いた。

「マスター。あなたの身体を使った交渉術がどれほど俺に有効なのかは、俺だって、十分存じています。それで、あなたが俺を丸めこもうと思ってらっしゃるのも分かってます。でも、マスター。俺は、知ってしまったのです。もう、その資本となるあなたの身体そのものが、俺のものなんだってことを。残念なら、俺は、自分がもう得ているもので、取引をしようとは思いません」

アナキンの手が、オビ=ワンの尻に掛かった。

オビ=ワンは、弟子のやり口を疑った。

「もしかして、このままやる気か?」

「ええ。勿論」

「だから、私は、まだ、何の準備もできてない、と」

脅えたオビ=ワンは、大きく目を見開いて背後の弟子を見上げた。

「心配しないで下さい。俺は、大変執着心の強いマスターに育てられたんで、自分のものを大事にするんです」

アナキンは、広げたオビ=ワンの尻にシャワーヘッドを近づけた。

オビ=ワンは、身体に力を入れそれを阻んだ。

だが、押しつけられた水圧には適わない。

「マスターは、何を心配しておられるんですか? 俺に、無理矢理突っ込まれて、切れること? それとも、俺にぐちゃぐちゃとかき混ぜられて、漏らすのを見られること?」

アナキンが押しつけたシャワーの水流がオビ=ワンの腸内を一杯にしていく。

重くなる下腹に、オビ=ワンは呻いた。

吐き気がこみ上げ、もう、何も出すものなどないというのに、えずきあげる。

「無理矢理入れたりはしません。それに、中は綺麗にしてあげます」

「やめ……ろ。アナキン。悪い趣味だ」

オビ=ワンは、必死に尻の穴を引き締めた。

下腹に溜まる水は、大量で、強く意識しなければ、あふれ出すことは必至だった。

だが、アナキンは、まだやめようとしない。

「やめなさい。アナキン、それは、全く悪い趣味だ!」

「ええ。マスター。俺、悪趣味な師匠にずっと教えを頂いてきたんです」

アナキンは、オビ=ワンの腹を撫でた。

ふくらみを増した腹は、中に溜まる水の加減で、ずいぶん柔らかだ。

たぷんと手を押し戻す感触に、アナキンは目を細めた。

だが、オビ=ワンは身を震わした。

それは、とてもつもなく苦しかった。

「……触るな!」

「何故、あなたが、そんなことを? この身体は、俺のものです」

シャワーの水は、まだ、オビ=ワンの直腸に注がれていた。

限界などとっくに越えている。

その苦しさのあまり、オビ=ワンは叫んだ。

「誰がお前のものだと言った! 思い上がるのもいい加減にしろ! 師が弟子を助けた。それの何がいけない!」

「ジェダイは、誰か一人のために、命をかけてはいけない」

アナキンは、苦しさに捩れるオビ=ワンの腹を撫で続けた。

「マスター。あなたが、私に教えました。ジェダイが命をかけるのは、平和という使命のためだけだと」

アナキンの手が、オビ=ワンの腹を押した。

師匠は、歯を食いしばって耐える。

「……アナ……キン。よせ。も、無理だ。本当に、耐えられない」

オビ=ワンは、かちかちと歯を鳴らした。

こみ上げる排泄感に、タイルを打つ水の音さえ遠かった。

思うのはただ、腹が破裂しそうな程、押し込められている水の重さ。

息すら苦しく、師匠は喘いだ。

浅く胸で繰り返す息に、折れた骨が痛んだ。

排泄してしまう瞬間の快感は、強い誘惑だった。

何もかもうち捨てて、もう、出してしまいたい。

オビ=ワンは、ぎりりと唇を噛み、目尻に涙を浮かべたまま、弟子を睨み付けた。

「アナキン、……出ていけ」

「出していいですよ。あなたの身体の全ては俺のものだ。どんなことになろうとも愛している」

オビ=ワンは、必死になって怒鳴った。

「出ていってくれ! 出ていけ! アナキン!」

「マスター、あなた、命は平気なのに、プライドは投げ出さないおつもりで?」

アナキンは、笑った。

もう、水を飲み込むことのできない師匠の肛門からシャワーのヘッドを退け、その下にかがみ込んだ。

「マスター。こんなに硬く締めて」

何時も以上に力が入り、きつく締まった尻の穴をアナキンの指が撫でた。

師匠は身を震わした。

「やめろ! 触るな! 触るな!!」

尻を振って、オビ=ワンは逃げだ。

「出さないと苦しいだけでしょ?」

アナキンは、きつく山の寄った尻を掴んだ。

指の腹で、肛門をマッサージするように押す。

刺激を受けたことによって、こみ上げた排泄感に、オビ=ワンは、悲鳴を上げた。

「無理! 無理だ! アナキン!!」

「強情ですね」

まだ、力を緩めようとしないオビ=ワンに、アナキンは呆れた声を出した。

師匠の下腹は、可哀相なくらい膨れていた。

ペニスは、小さく縮み上がっている。

尻は、かつてないほど、力が入り、アナキンの手を拒んでいた。

白い太腿が震えている。

とうとう、オビ=ワンは立っていられず、蹲った。

腹を守るように、身体を丸める。

アナキンは、師匠の尻に指で触れた。

「やめろ! やめてくれ!」

オビ=ワンの顔は蒼白だ。

にじむ汗を、アナキンは舐めた。

「マスター、まだ、意地を張りますか?」

オビ=ワンが鼻をすすり上げた。

「……頼む……頼む。……アナキン……出ていってくれ」

泣き出した師匠に、アナキンは言った。

「わかりました」

だが、アナキンがしたのは、浴室にあったソープを手に取ることだった。

指にそれを垂らし、オビ=ワンのきつく締まった尻にねじ込む。

「いやーー!! アナキン!!」

オビ=ワンは、這ってでも逃げようとした。

しかし、弟子は、強引に入れた指で、師の腸内をかき回した。

腸内には、一杯の水が詰め込まれている。

混ざり込んだソープの刺激に、激しい煽動運動が起こり、オビ=ワンは、脂汗を流した。

オビ=ワンは、耐えた。

しかし、ぐるぐると腹が音を立てた。

もう、どれだけ、息を吐き出そうが、身体の中に詰まったものを押し出したい欲求の代替えとはならなかった。

アナキンは、タイルの上で、身体を丸めた師匠を撫でた。

「さぁ、これで、もうダメでしょう?」

アナキンの声は、いっそ優しかった。

弟子は、師の足首を掴み、開かせると、ペニスに触れた。

師の腹にひくりと力が入り、広げた足は、そのまま留まった。

排泄欲求に抗うオビ=ワンは、呻き声すら上げられなかった。

広げられた脚も、こわばり、それ以外の形にはなれなかった。

「出しなさい。マスター。きっと気持ちがいいですよ」

誘惑は悪魔の声だ。

オビ=ワンの頭の中は、もう、排泄すること以外なにも思い浮かばず、その瞬間の快感ばかりを想像した。

「……ア…ナキン……目を……」

我慢仕切れず、オビ=ワンは、涙ぐんだ目で、弟子に目を瞑ってくれるよう頼んだ。

弟子は、はっきりと首を振った。

「いいえ。マスター。俺は、俺のものを粗末に扱ったりはしないんです」

オビ=ワンは、強く唇を噛んだ。

視野が狭かった。

例えではなく、オビ=ワンの目の前が暗くなった。

きりきりと激しい痛みが、腹を襲う。

口からは、唾液が零れている。

涙なのか、汗なのか、顔がべたつき、しかし、身体は、恐ろしく冷たく感じだ。

「本当に、強情だ。マスター」

アナキンが感心したような声を出した。

アナキンの手が、オビ=ワンを撫でようと伸びた。

「アナ……キン」

もう一度、懇願を繰り返そうと、オビ=ワンは声を出し、その動きで、腸が引きつれた。

もはや、我慢など出来なかった。

「ああっっっーーーーー!!」

苦しかった。

痛かった。

だが、排泄の快感が、オビ=ワンを飲み込んだ。

オビ=ワンは、しゃくりあげ、開いたままの目からは、ぽろぽろと涙をこぼし、口からは、よだれを垂らした。

「あーっ、ぁあぁぁーー!」

オビ=ワンは、はぁはぁと、激しく息をした。

「っぁんんんーー!!」

オビ=ワンを形作るもの全てが弛緩した。

ペニスからは、尿が漏れた。

尻は酷い音を立て、臭いものをぼとぼとと落とす。

液体状のそれは、跳ね返り、オビ=ワンの白い尻を汚した。

アナキンは、満足そうに笑った。

激しく息をし、倒れそうなほど、色のない顔をした師の髪にキスをした。

「よくできました。マスター」

声は、昔、オビ=ワンが、パダワンを褒めた時のように温かだ。

アナキンの手が、シャワーの湯量を調節し、オビ=ワンの足下に溜まる汚物を流した。

オビ=ワンは、震えたままそれを享受した。

次第に肌に色が戻った。

急激に暖められた身体に、頬はバラ色だ。

だが、まだ、ひくりと腹が動き、オビ=ワンは呻いた。

アナキンがシャワーのヘッドをオビ=ワンの尻に近づけた。

「マスター。綺麗に流しておきましょう」

オビ=ワンは、首を横に振った。

だが、弟子は聞き入れなかった。

湯が、オビ=ワンの直腸を満たし、もう、師匠は、我慢など出来なかった。

アナキンの許可があるより先に、オビ=ワンの尻は、湯をはき出す。

「おやおや」

アナキンは笑うと、オビ=ワンの身体を抱き上げ、丁寧にその身体を流した。

指がオビ=ワンのぴくんと立った乳首をつまみ上げる。

「中、空っぽになったから、入れて欲しくなっちゃいましたね」

アナキンは、足下のおぼつかない師匠の身体を自分にもたせかけ、からかうように耳元で囁いた。

オビ=ワンは、横に首を振った。

アナキンは、楽しげに師匠に尋ねた。

「そうなんですか? マスター」

オビ=ワンは頷く。

オビ=ワンは、今、どこも触って欲しくなかった。

一人、ベッドで、布団を被り、泣いてしまいたい。

しかし、弟子の手は、排泄の快感で僅かにだが大きくなっていたペニスを握り、その後ろの袋とともに揉み込んだ。

「いや、だ。アナキン……」

力無いオビ=ワンの拒否は、弟子に無視された。

「頼む。……嫌なんだ。アナキン……」

だが、弟子は、オビ=ワンのペニスを無理矢理勃たせ、その足下に跪いた。

口を開け、ペニスを含む。

「やめてくれ。……頼む。アナキン……」

尻に指を入れられ、オビ=ワンの目からは、涙が零れ落ちた。

後ろ手に拘束されたままのオビ=ワンの涙は、ぽとぽとと床に落ちた。

アナキンが手を伸ばし、オビ=ワンの目尻をぬぐった。

「……準備ができたら、俺の所へ来ると言いました。マスター」

「も、嫌だ。……嫌なんだ。アナキン」

オビ=ワンは、更に涙を流した。

「マスター。嫌なことは全て済みました。後は、何時も通り、あなたがいいように俺を誑し込むだけの時間です」

アナキンは、オビ=ワンの唇に指で触れた。

オビ=ワンは震えている。

「私は、お前を誑し込んでなど……」

「ええ、勝手に俺が、騙されるだけです。マスター」

アナキンは、立ち上がり、師匠を抱きしめるとキスをした。

「俺は、あなたを愛しています。だが、死さえ賭してあなたに愛して貰いたくはない。それが、あなたの望むジェダイの姿だ」

アナキンは、ぐったりとした師を抱きしめた。

髪に耳にと口付けを落とす。

「さぁ、マスター。俺に、また、あなたを信じさせて下さい。あなたが、まごうことなき正しいジェダイだと」

 アナキンは、もう一度オビ=ワンを抱きしめ、拘束錠を解くと、そのまま浴室を後にした。

濡れた衣服を脱ぎ落としながら、部屋へと向かう。

「待ってますから。ゆっくりどうぞ。マスター」

 オビワンは、泣いた。

 

END

嗚呼、絶対に読みとれないとは思うんですが、実は、すっごく愛し合ってる二人のつもりで書いてます。わかんない……よね。