隣に眠る体温の

 

深夜、オビ=ワンのベッドにもう一人分の重みがかかった。

どさり、と重い音をさせベッドにもぐりこんできた人物は、オビ=ワンのよく知るものだ。若い体は、ベッドの上で詰めていた息を吐き出し、ついでに小さな唸り声を一つ出した。

若いナイトは、その若さに似合う分だけオーダーを詰め込まれている。かつては、オビ=ワンだって、そうだった。

あの頃は、毎日ぎりぎりまで緊張したまま日々を過ごした。夢の中でまで、オーダーに立ち向かっていた。そして、目が覚めれば、そのままオーダーをこなす事を求められた。

眠るための時間だけを与えられ、アナキンは、家に戻ってくる。

それは、本当に眠るためだけの時間だ。くつろいだ笑顔を見られるのは、月に一度あればいい方であり、過労で倒れないためだけに与えられたオフは、大抵ベッドの中で眠ったまま消化される。

アナキンは、泥のように疲れている。もぞもぞと自分好みの体勢になるまでシーツの中で体を動かし、やっと落ち着いたのか、もう一度小さく息を吐き出した。アナキンが動いたせいで、同じベッドに眠るオビ=ワンのシーツがよじれた。弟子の帰宅に目を覚ましてしまったオビ=ワンは、アナキンの口から寝息が漏れ出すのをじっと息を詰めて待った。弟子は、とても疲れている。もし、ここでオビ=ワンが目を覚ましたことを知ったとしたら、それでも重い瞼を開け、一言、二言何かをしゃべろうとするだろう。しかし、それは、這うようにしてベッドにもぐりこんできた若いナイトの睡眠時間を削ることになった。

オビ=ワンは自分の意識のレベルを努めて低いものに保ち、眠りに落ちようとしている若いナイトの邪魔をしないようにした。アナキンの呼吸が平坦なものに変わり始める。代わりに、オビ=ワンは、ゆっくりと繰り返していた呼吸を通常に戻した。

すると、いきなり、アナキンががばりと頭を上げる。

オビ=ワンは、慌てて呼吸を元に戻した。しかし、アナキンは、オビ=ワンの演技に気付き、目をあけたわけではないようだった。眠ったふりをする師匠の上にアナキンの影が落ちていた。アナキンは、オビ=ワンの顔をじっと覗き込んでいるらしく、オビ=ワンは自分の頬にちりちりと視線が這うのを感じた。アナキンは目を瞑るオビ=ワンの髪へとおずおずと手が伸ばした。アナキンが、そっとオビ=ワンの髪に触れる。師匠を起こしてはまずいと思っているのか、シーツに散るオビ=ワンの毛先を手の中に治める。

ナイトは金の髪にそっと唇を押し当てた。

「おやすみなさい。マスター」

呟いたアナキンは、今度こそ、まっさかさまに眠りに落ちていく。ベッドにうっつぷすようにしてどんっと顔をうずめたアナキンは、もう寝息を立てている。

まるで気絶でもしたかのような勢いだ。

しばらくオビ=ワンが弟子の様子を伺っていたのだが、眠りにくかったのか、アナキンが寝返りを打った。オビ=ワンに向かって顔をみせた横向きの姿勢で、アナキンは眠っている。

オビ=ワンは、まだ、そのまま待っていた。アナキンの呼吸音が部屋の中に広がっていく。

アナキンはもうすっかり深い眠りについたようだ。弟子から感じる意思の力は緩慢になり、体の熱さえ、拡散され辺りに放射されている。

オビ=ワンは、しずかにベッドの中で体を起こした。顔にかかる髪をかき上げ、眠る弟子を見下ろす。

弟子は眉の辺りには、まだ、緊張感を残しているくせに、あどけなく口を開いて眠っていた。

自然にオビ=ワンの唇が緩む。

「はぁ……」

眠れなくなったオビ=ワンは、息を吐き出した。途中で眠りを覚まされた体はぼんやり熱をはらんでしまい持ち余し勝ちだ。

部屋の中は、目を凝らさなければ何も見えない薄い光しかない。ほとんど暗闇と同じだ。

そんなときは、自分の身に近い場所にいる人間がことのほか意識される。

アナキンは眠っている。

 

深い眠りの中にいるアナキンは、体のどこにも力を入れているわけではないのに、体の中に俊敏さを保っていた。訓練を積み重ねたことで体に宿った静謐な筋肉の配列が美しい。

若いアナキンは、眠り、穏やかな呼吸をしているというのに、どこか獰猛でもあった。目を開けたと同時に、獲物を押し倒し首へと前足をかけ踏みつけることができるだろう強さが、この肉体には潜んでいた。

強く、若い男だけが持つフェロモンだ。

オビ=ワンは、アナキンを起こさぬよう、先程弟子がしたのと同じように、ベッドに散った砂色の髪を手の中に握った。長い髪はこういうときに都合がいい。オビ=ワンは体を折り、アナキンの髪に口付けた。

そして匂いを嗅ぐようにそのまま髪に顔をうずめる。オビ=ワンの鼻先をアナキンの髪が擽る。

 

あまりにも疲れているアナキンは体を洗うことすら明日の朝に回したようだ。明日の朝だって、早く起きることなどできるわけはなく、髪を乾かす時間もなく飛び出すことになるに違いないのに……。

オビ=ワンは、保護者めいたことを考えながら、しかし、手を自分の体に這わせていた。

夜着の上からオビ=ワンは自分の太ももを撫でている。その手は、太もものきわどいところにも触っていく。

オビ=ワンの唇からは、熱い息が吐き出された。

弟子の髪からは汗のにおいがしていた。鼻先を擽る髪の感触と同じだけ、その匂いはオビ=ワンを誘惑する。

深く眠る弟子は、そんな師のはしたない行為を知りもせず、寝息を立てていた。

オビ=ワンは、アナキンのペニスの感触を口の中に思い出している。

 

「マスター。……セックスしましょう」

珍しくオビ=ワンが寝ようとする頃に家へとたどり着いた弟子は、目の下にはっきりわかる隈を作って、ベッドに入ろうとしていたオビ=ワンの袖を引いた。

「アナキン。お前、そんなことしてる場合じゃないと、いう顔色だぞ」

オビ=ワンは思わず驚いた。

「……わかってます。でも、俺、もう死にそうで……」

アナキンは、激しい悲壮感を漂わせており、オビ=ワンはせっぱ詰まったその弟子の様子に思わず吹き出してしまった。アナキンの髪はまだ乾いていなくて、髪からはしずくが伝っていた。

弟子は、セックスがしたくて師が眠ってしまう前に、慌ててここに駆け込んだのだ。こんな悪い顔色なのに。

「ぶっ倒れそうじゃないか。アナキン」

オビ=ワンは、ベッドに腰掛け、手を伸ばすと弟子の指先に触れた。アナキンは、オビ=ワンの手を握り返して、ほんの少し瞳を緩めた。しかし、弟子は、ふてくされでもしたように、オビ=ワンの足元ばかりをみつめ、口を開く。

「マスター。俺、眠い。……でも、したい。……マスター、すぐ済ますから、一回だけ、させてください」

自分勝手なアナキンの言いようは、オビ=ワンに笑いを誘った。それは、疲労した若い男にあまりにふさわしい欲求だった。アナキンは、セックスが面倒なのだ。しかし、体は射精を要求している。アナキンは疲れているから、簡単にセックスを終わらせてしまいたい。それは、師の睡眠を邪魔することになるから早く済ます、などという配慮とは違う。

オビ=ワンは、アナキンを見上げ、目だけで笑った。口元には、もともと笑みが張り付いている。

「アナキン。そこに凭れるようにしてベッドに腰掛けるといい」

本当は、あまりに眠く、口を利くのも面倒なのだろうアナキンは、オビ=ワンの言うとおり、ベッドに腰をおろし、足を投げ出した。やはり顔つきは不機嫌そうだ。本当に弟子は疲れているのだ。

オビ=ワンは、アナキンの足の間に体を進めた。

「えっ? マスター?」

オビ=ワンがアナキンのペニスに顔を寄せ、弟子はさすがに驚いたような声を上げた。

「少し腰を上げろ。口でしてやるよ。その方が、楽だろう?お前」

「でも、そんなじゃ、マスターが良くないじゃないですか」

「今日のお前に、満足の良くサービスなんて期待できそうには見えないがな」

口ではなんと言おうとも、疲労は弟子に怠惰と快楽を求めさせ、アナキンは、少し腰を浮かした。

オビ=ワンは、そんな弟子の様子に穏やかな笑みを浮かべながら、アナキンの腰から夜着をずり下げ、最初から硬いペニスを口に含む。

これは、別段、アナキンがオビ=ワンの態度に欲情しているから勃起しているのではない。師、自ら望んで口腔奉仕をしようということは、確かにアナキンを多少興奮させたかもしれないが、それでもこれは、単なる疲れからくる勃起だ。

オビ=ワンは、濡れた舌でアナキンのペニスに触れた。それは、硬く充実し、迫力を持ってオビ=ワンの舌を押し上げた。

ふっ、っと、アナキンが息を詰める。

「アナキン、あまり我慢するなよ。サービスする私の立場もちゃんと考えろよ」

オビ=ワンは、普段あまりフェラチオをしない。従って、この言い草は、妥当だのだが、本当のところは、疲れきっている弟子に余計な我慢をさせないための言い訳だった。これならば、奉仕するオビ=ワンに配慮し、早い終わりへと急いだのだとアナキンの自尊心を傷つけないですむ。オビ=ワンは自分の髪を耳にかけ、アナキンのペニスを口の中へと含んでいった。

ごつりと、硬い肉が、オビ=ワンの口の中を占拠する。

 

目を瞑って、軽く口を開いているアナキンの髪からしずくがオビ=ワンへと落ちていた。オビ=ワンは、口の中を支配するアナキンのペニスの感触に、うっとりと目を瞑っていた。実のところ、オビ=ワンは、それほど口腔性交が得手ではない。だから、決して嫌いというわけではないのだが、オビ=ワンはあまりこういう真似をしなかった。

本当のことを言えば、オビ=ワンは、弟子のペニスをしゃぶるのが好きだ。口の中をペニスの先で撫で回されるのは、気持ちがいい。大きなものに口内を一杯にされ、それに夢中で吸い付いていると、自分のペニスを舐められているというわけでもないのに、オビ=ワンは激しく興奮した。口内を擽る柔らかなくせに硬い感触が気持ちいいのだ。しかし、その心地よさにばかり気持ちが向いて、オビ=ワンは、アナキンに奉仕することを、つい忘れてしまった。そのことをアナキンは、師の焦らしなのだ。と、受け取っているようだったが、それは、違った。オビ=ワンは、ただ、自分の快感に夢中になっているだけだ。

そのせいで、アナキンがもどかしげにしているのをオビ=ワンは、後になって後悔する。決して勿体ぶっているわけではない。ただ、オビ=ワンのやり方ではアナキンに満足を与えることなどほとんどできなくて、師は、あまりオーラルセックスをしない。

しかし、今夜は、そんな技術の拙い師のやり方でも、疲れすぎている弟子は射精するはずだった。もしかしたら、オビ=ワンは今夜初めて口でアナキンをいかせることができるかもしれない。

アナキンのペニスの先に唇で触れ、その濡れて滑らかな感触にオビ=ワンはぶるりと腰を振るわせた。アナキンペニスが唇に与える快感に、腰の奥が疼いていた。だが、アナキンは、そのことに気付かずしきりにオビ=ワンの頭を撫でている。

やはり今日も、師は夢中になってペニスの先を上あごに擦り付けていた。

オビ=ワンは、弟子のペニスを吸い上げることすら忘れ、自分の快感に夢中になっている。

それでも、アナキンは、短い息を何度も吐き出していた。

「マスター、……もう、出そう……」

オビ=ワンは、アナキンの手が頭を押さえてきたことによって、初めて思い出したように、口内を使って、弟子のペニスを扱いてやった。出来るだけ、アナキンの気持ちがいいように、と、オビ=ワンは、強弱をつけ、弟子のペニスを吸い上げる。

口の中にじわじわと広がっていく苦い味は、オビ=ワンに満足を与え、夜着に隠されたオビ=ワンのペニスを尚一層重くもたげさせた。

アナキンが、オビ=ワンの頭を強く押さえた。

「いくっ! マスター。いくっ!」

どくどくと口の中に溢れた精液をオビ=ワンは喉の奥へと流し込む。

オビ=ワンは、ちょっとした感動を味わった。強く頭を押さえつけてきたアナキンの指に髪が絡んで痛かったが、そんなことは帳消しにしてもいい。と、思った。

オビ=ワンは、アナキンの息が収まるまで、丁寧にペニスを舐めてきれいにしてやった。

呆然とベッドの背もたれにもたれかかっていたアナキンが髪をかき上げた。

「……ずげぇ、気持ちよかった……」

そして、弟子は瞳を濡らしながらも、きちんと膝を揃え、アナキンのペニスを清めている師に手を伸ばした。

アナキンは、とても愛しげにオビ=ワンの髪を撫で、顔をなでる。

オビ=ワンは、弟子の手から逃げたいわけではないのだが、くすぐったくて、少し身を反らした。

「ごめん。マスター。俺の髪が濡れてたから、マスターすっかりびしょびしょになっちゃいましたね」

射精後の弛緩にあるアナキンは、眠そうな目をして、オビ=ワンの頬にキスをした。

オビ=ワンは、口内に粘る精液の味に、少しばかり寛容な気持ちになっていた。

「口を濯いでくる。アナキン。お前は、もう寝ろ」

オビ=ワンが、ベッドに戻ると、アナキンは、すでに寝息を立てていた。

その姿は、本来オビ=ワンが求めていたものとは違う。

しかし、安穏と眠る弟子の様子に、オビ=ワンは勃ち上がってしまっているペニスを持て余したまま、仕方なくその隣へ滑り込み、目を閉じた。

 

オビ=ワンは、とても硬かったあの時のアナキンのペニスを思い出していた。

口内でアレを味わったのは、2週間も前だ。体の奥底で、アレを堪能したのなど、多分、一月も前になる。

性欲よりも、睡眠に押し切られている弟子を恨みたくなる気持ちがオビ=ワンにはあった。

2週間前のあの時、あんな物のわかったような態度を取ったのは間違いだったと。オビ=ワンは後悔している。

疲れた弟子にセックスを求めるのはかわいそうだと思う。しかし、オビ=ワンは、それほど淡白な性質ではないのだ。

 

一人寝のベッドで、行っていたことを、師は眠る弟子の体を隣に行う。

オビ=ワンは、夜着の中に手を入れて、自分のペニスを掴む。

眠る弟子の邪魔をしないように、師は、彼を包む暖かな空気の塊の中には進入しない。その代わり、ベッドの上に散った長い砂色の髪のへとオビ=ワンは顔をうずめている。その髪に口付けをしながら、肩と膝だけで体を支えたオビ=ワンが、自分のペニスを扱いている。

師は、口の中で、何度もアナキンの名を呼んだ。寝息とはいえ、アナキンの息遣いがするのがオビ=ワンを煽っていた。髪からはアナキンの匂いが立ちのぼっている。

いつ見つかるかもしれないという怯えが、一層オビ=ワンを興奮させていた。

もし、アナキンがいきなり目覚め、こんなところを見られでもしたら、どんな言い訳もできない。そして、弟子が、何を言うのかすらオビ=ワンには想像できなかった。だが、きっと、アナキンはベッドから身を起こすと、習慣どおり顔にかかった髪をかき上げ、それから呆れたきった目をして、ため息の一つも吐き出すだろう。

 

オビ=ワンは、その時のアナキンの目を想像し、かぁっと、体が火照てらせた。師は、こんなみっともない姿を弟子に見られるのは嫌だった。しかし、いっそ、もう逃げられない現場を押さえられ、それほどアナキンが欲しかったのだと、白状させられたら、と、考えるとオビ=ワンは激しく興奮するのだ。

夜着の中で硬くなり、しずくの零れだしたペニスをオビ=ワンは懸命に扱く。

どうしたって、こんなにも硬くなり、先走りさえ溢れさせているペニスをしていて、何でもないんだ。なんて言い訳がアナキンに通用するはずがない。

オビ=ワンは、自分の頬が赤くなっている自覚があった。発情し、汗だってかいている。

オビ=ワンの妄想の中で、アナキンが、オビ=ワンのはしたないペニスに視線で詰った。それから、興奮のあまり少し体温の高くなっている師の体の匂いを確かめるように鼻を近づける。オビ=ワンがペニスから手を離そうとすると、じろりと睨む。疑問系で発せられる優しさには、包まれているが、アナキンの声がオビ=ワンをたしなめる。

「マスター?」

オビ=ワンは、まるでそうされているかのように、ぎゅっと自分の身を縮こまらせた。吐き出す息が熱くなるのを止めることができない。突き出した尻は自然と揺れ、ペニスへの刺激だけでは物足りなくなっていた。

オビ=ワンは、いっそ、アナキンにそうやって喉元へと爪のある前足をかけて、押さえつけられたいのだ。

師としての尊厳など剥奪された状態で、アナキンが欲しいのだと、ずっと飢えていたのだと、白状させて欲しい。

オビ=ワンは、股の間に手をくぐらせ、そうっと後ろの穴に触れた。

それだけの刺激で、きゅっと、穴は硬く締まる。いや、刺激が心地よくオビ=ワンの尻は、勝手に尻穴を締め上げてしまう。

オビ=ワンは、何度も指を穴に近づける。

軽いタッチで繰り返される接触に、オビ=ワンの鼻から甘えた声が漏れてしまった。しかし、アナキンに目覚める様子はない。

オビ=ワンの指が大胆になる。

師は、アナキンの髪に口付けを繰り返し、心の中で、何度も何度もアナキンの名を呼びながら、自分の尻穴を指でこじ開けていく。

甘く体の中を駆け抜けていく痺れに、オビ=ワンは唇を噛んだ。指は、第一関節まで埋まり、そこで浅い挿入を繰り返している。だが、オビ=ワンはそれだけなどというだけでは我慢ができなかった。

指は、熱く濡れた肉を掻き分け、ずぶずぶと深くなっていく。

自分の指が入った尻を突き出したまま、オビ=ワンは、自分のペニスを懸命に扱く。

オビ=ワンは、シーツに散っているアナキンの髪を噛む。

 

とうとう、弟子の髪にキスをするだけでは我慢ができなくなり、オビ=ワンはもう少しアナキンに近づいた。

弟子の腕に触れるか触れないかのところで、オビ=ワンは舌を伸ばして、アナキンの肌を舐める真似をした。

シャワーも浴びずベッドに入った弟子の体は舐めたらきっと塩辛いに違いない。オビ=ワンは、その味を想像し、きゅっと尻を穿つ自分の指を締め付ける。

オビ=ワンの目には、アナキンの手が見えていた。

あの大きな手にされていることを想像しながら、オビ=ワンは自分の体をまさぐる。

疲れ果てている弟子は、深く、深く、眠っている。

 

オビ=ワンは、膝でずり下がり、アナキンの指の先に唇を押し当てた。わずかに指を曲げた手は熱く火照り、まるで力が入っていなかった。

アナキンに目覚める様子はない。

オビ=ワンは、たまらなくなり、アナキンの指を舐めた。

激しく胸にこみ上げる感情があり、オビ=ワンの心が熱くなる。体も熱い。

どれほどアナキンの様子を伺っても、アナキンに目覚める様子はなかった。アナキンは完全に意識を手放し、深い眠りに陥っている。

 

早い息を吐き出しながら、オビ=ワンはしばらく逡巡していた。

しかし、貪欲に疼く尻に入れた指を引き抜いた。

ペニスからもれ出るいやらしい液で濡れている手も止めた。

そして、少しの変化も見逃さないよう、弟子の顔を見据えているオビ=ワンは、もぞもぞと夜着を脱ぎ捨てた。

オビ=ワンは、破れてしまいそうなほど大きな音を立てている胸をあえがせながら、弟子の手をそっと持ち上げた。

アナキンの腕は重い。眠りにつく体の部位は、火照り、そして力が抜けている。

アナキンは、オビ=ワンの行状に少しも気付かず眠っていた。

オビ=ワンは、その指を胸に抱き、指先を口に含んだ。

硬く尖った爪が、オビ=ワンの上あごを刺激する。

オビ=ワンは、はぁっと、快感の息を吐き出し、その指を口から出した。

アナキンの手をそっと下ろしていく。内側に曲げられたアナキンの指の背が、立ち上がり、いやらしく濡れているオビ=ワンのペニスに触れる。

「んっ」

オビ=ワンは、浅ましい方法で快感を得ようとする自分に、吐き気がするほどの嫌悪を感じた。罪悪感が胸を焼く。しかし、オビワンは、やめることはできなかった。アナキンが触れたところは、ただ、触れたというだけなのに、たまらない快感をオビ=ワンに与える。

オビ=ワンは、もっと上げてしまいそうな声を必死に堪えた。ドキドキと鳴る胸の音は激しく、喉はひりついてしまっているのかと思うほど渇いていた。

唾を嚥下し、オビ=ワンは、もう一度アナキンの手を動かす。

ペニスにアナキンの指が当る。

「……んんっ……」

オビ=ワンのペニスから漏れ出すカウバー液で、アナキンの指が汚れた。

とんでもないことをしてしまった思いで、オビ=ワンは、慌ててそこを舐めた。

無邪気に眠っているアナキンに対し、申し訳ない思いをオビ=ワンは抱く。しかし、アナキンに触れられているのだ、という思いは、オビ=ワンを激しく燃え上がらせる。

 

闇の中、汗をかいた額に張り付いた髪を払いのけ、オビ=ワンは、アナキンの腕を抱かえ直した。

ごくりと喉を鳴らしたオビ=ワンは、そろそろと足を開く。

弟子の腕を股の間に挟むようにして、オビ=ワンはベッドの上を膝で動いた。

オビ=ワンの股の間をくぐり、持ち上げられている手は、眠っている。

快感を求めるオビ=ワンは、片手でアナキンの腕を支え、もう一方の手で、自分の尻肉を広げた。

オビ=ワンは、むき出しになった肛門をアナキンの指に向かって下ろしていく。

穴に寄った皺にアナキンの熱い指先が触れる。

「あっ……んんっ……」

オビ=ワンは腰を捩った。

ほんのわずかに、アナキンの指が触れているだけでしかないのに、それだけの接触がオビ=ワンにはたまらない。

「んっ……はっ……はぁ……」

自分の尻を上下させ、オビ=ワンは、アナキンの指で、己の尻穴を愛撫させた。

襞に、アナキンの爪先が触れていく。

指は、オビ=ワンのかける力が強くなれば、くにゃりと丸め込まれてしまうほど力が抜けていた。オビ=ワンは、自分の尻をぎゅっと押し付けてしまいたい欲求と戦った。

何度も何度も軽いタッチで、オビ=ワンはアナキンの指を味わう。

自分の尻穴がアナキンの指を頬張りたくてはしたなくも開いてきているのにオビ=ワンは気付いていた。

外側の皮膚だけでなく、粘膜にも、アナキンの指が触れる。

普段は隠されている濡れて光る赤い肉へとアナキンが触れる。

オビ=ワンは、強く唇を噛んだ。

自分の長い髪の味がした。

「んんっ!……んっ!……ん!」

こみ上げる射精感にオビ=ワンは身を捩り、せめて弟子の体をこれ以上汚すまいと努力した。

 

張り詰めたペニスから勢いよく飛んだ精液は、シーツへとぽたぽたと落ちる。

はぁはぁと、オビ=ワンは肩で息をし、体に力を入れていた。

ぼたり。と、自分の膝のすぐ側へと最後の精液が零れ落ち、オビ=ワンの体から、次第に力を抜けていった。

師は、弟子の手を離した。

弟子の手は、ベッドの上で弾んだが、アナキンが目覚める気配はない。

 

オビ=ワンは、ほうっと、満足のため息を落とし、そろそろとベッドから降りた。

自分の汚したシーツをぬぐうために、部屋を後にする。

 

翌朝、アナキンは、髪も濡らしたままに部屋のなかを走り回っていた。

「マスター。ねぇ、マスター。今日は無理でも、明日か、あさってには、必ず早く帰ります。絶対やりましょうね。お願いですから、やらせてくださいね!」

一晩寝てもまだ目の下に隈を作ったままのアナキンが、先ほどからしつこくオビ=ワンにセックスをねだり続けていた。しかし、若いナイトにはなんと言っても時間がない。今だって、もう行かなければならない。だから、アナキンは走りまわりながらオビ=ワンに訴えている。

オビ=ワンは、のんびりとコーヒーを飲んでいた。

「急がないと遅れるんじゃないのか? アナキン?」

「ああ、もう、どうしてそうやって余裕なんですか! 畜生、 マスターも、昼間に白昼夢をみるほど、そのことで頭が一杯になればいいのに! 俺、もう、何回、マスターとセックスする夢を見たかわかりませんよ! 夕べはとうとう一人で盛ってるマスターの夢までみました!」

必要なものをかき集めるため、あちらの部屋へ、こちらの部屋へと移動し続けている弟子は、大きな声でわめいていた。

オビ=ワンは、アナキンの言葉に思わず首を竦めた。

やはり、昨夜の行状は無茶だったようだ。確かにあればやりすぎだった。後少しでアナキンにばれるところだったらしい。

どたばたとアナキンが部屋の中を走り回る。

「マスター。キス! せめてキスだけしてください! ああ、もう、本当に時間がない!」

主人に挨拶するため駆け寄ってきた犬みたいに、アナキンはまっしぐらにオビ=ワンへと近づいた。

オビ=ワンは、濡れているアナキンの髪を撫で、目を瞑ると、首を傾けた。

「風邪を引くなよ」

アナキンの唇が重なる。

「よし! これで、今日一日は乗り切れる!」

アナキンが飛び出していく。

「マスター。そんな悟っちゃった顔してないで、ちゃんと性欲ってものを思い出しといてくださいね!」

叫ぶアナキンに、オビ=ワンは、やれやれと笑いながら手を振った。

弟子がものすごい勢いでスピーダーを発信させたから、オビ=ワンの髪がふわりと巻き上がる。

勿論、オビ=ワンは性欲というものを覚えている。ただし、夕べその欲求が解消されたから、涼しい顔をしているだけだ。

 

END

 

ロン毛萌えです。

投稿先は、かわいい感じの話が多いです……。エロは……えっと。

とりあえず、自主規制で自サイトにてひっそりと祭りを応援w

ロン毛フォー!