日常の中で押し殺される感情

 

オビ=ワン・ケノービと、その元弟子は、いつもより早めの朝食を食べていた。
早朝の部屋の中は、僅かではあるが夜の雰囲気を残し、薄暗い。
人口の光が、部屋の中を煌々と照らし、無理やり朝を作り出している。

「マスター。あなたの帰りは?」
オビ=ワンの皿がおかれているのは、床の上だった。

弟子は、きちんとテーブルに着き、フォークの先にカリカリに焼いたベーコンを突き刺しているが、オビ=ワンの手元にはコップすらない。

床の上には、浅めのボウルが一つだけ。

その中でシリアルがミルクに浸かっている。

床の上に四つん這いになって這っているオビ=ワンは、自ら頭を下げて、皿の中のミルクへとピチャピチャと舌を伸ばしていた。

口元の髭は、ミルクで白くなっている。


「あっ」

アナキンは、小さな笑みを浮かべた。
自分が失態を犯したことに気付いたのだ。

師は、アナキンの言葉など聞こえなかったかの振りで、熱心に皿へと顔を突っ込んでいる。失礼な態度だが、この場合は、オビ=ワンの態度が正しい。

わざわざ普段よりも早めに起きだし、極たまにしか行うことのできないとても楽しい遊びに興じている今、何も、互いのスケジュールを掌握しあう必要などないのだ。

そんなことはいつだって知ることができる。それよりも、この愛に溢れた時間に、日常を持ち込まないことが重要だ。

 

アナキンは、フォークの先に刺さっているベーコンを手のひらの上に乗せた。

テーブルの下へと手を差し出し、オビ=ワンを呼ぶ。

「おいで」

オビ=ワンが顔を上げた。

師は早朝の温度に不似合いなほど明るい人工灯の下で口の周りを濡らすミルクの白をピンクの舌で舐め取る。

見上げる青い目の真摯さに、アナキンは、心が震えた。
主人に忠実な犬のように、オビ=ワンの瞳には邪気がない。澄みきった目は、一心にアナキンを見上げ、どうしたの?と、聞くように、僅かに首を傾ける。

「おいで。オビ=ワン」

アナキンからのもう一度の要請に、今度、オビ=ワンはすばやく反応した。

四足の動物が動くのと同じように、オビ=ワンは前足と後ろ足、いや、腕と、足を動かし、アナキンに近づく。

アナキンは、オビ=ワンの口元にベーコンの乗った手を差し出し、残りの手で、柔らかな金髪を撫でた。

「食べて」

舌と、歯を動かし、アナキンの手のひらに載ったベーコンを食べ始めたオビ=ワンの唇が皮膚に触れ、アナキンは少しくすぐったい。

ベーコンを噛み、飲み込んでいるオビ=ワンも、アナキンの手で髪を撫でられ続けながらの食事は迷惑そうだ。
しかし、アナキンは飽きもぜずオビ=ワンの髪を撫でる。

そのまま、オビ=ワンの首筋にも触れていく。

オビ=ワンの首には、細い首輪が留められている。

「苦しくない?」

新しい皮は、まだオビ=ワンの首に馴染んでいないようで、心配そうに首を撫でるアナキンの目は、とても優しかった。

ベーコンがなくなり、弟子の手のひらに残った塩味を舐めていたオビ=ワンが顔を上げる。

「苦しくはない」

テーブルの下から弟子を見上げた師の声は、とても落ち着いていた。

アナキンの手のひらについていた塩分を全て舐め取ったオビ=ワンは、尻を床に付け、お座りのポーズを取り、アナキンを見上げた。

大きな目は、少し楽しげだ。

「そうなんだ。それは、よかった」

アナキンもオビ=ワンに笑い返す。

新調した首輪は、本当によくオビ=ワンに似合っており、アナキンもとても嬉しかった。

アナキンは、オビ=ワンが首輪を新しくしたがったわけがわかった。

 

このジェダイたちは、個人の所有物を許さないオーダーの意思に反し、二本の首輪を秘密裏に所有している。

一本は、かわいらしい中型犬、もしくは、いい過ぎの感もあるが、小型犬のかわいらしさをかもし出しているオビ=ワンのための細い濃いブラウン。

そして、もう一本は、やんちゃで甘えたがりの大型犬を大人しくさせておくための鎖までついた太い黒だ。

黒は、アナキンが着ける。

 

アナキンは、オビ=ワンの耳の後ろを撫で、もう一枚ベーコンを食べるかどうか、師に尋ねた。

オビ=ワンは、いらない。と、言う。

「じゃぁ、戻っていいよ」

アナキンは、オビ=ワンの顎の下へと手を伸ばし、そこを優しくくすぐると、飼い犬に手を振った。

オビ=ワンは、アナキンの手の甲へと顔を擦りつけひとしきり甘えると、くるりと背中を向け、床に置かれたボウルの前へと戻っていく。

そこでまた、ぴちゃぴちゃと音をたて、ボールの中のミルクを舐め始める。

師匠は、どこからみても立派なジェダイの姿でありながら、今、この時は、アナキンの犬だった。

朝に会議が控えるオビ=ワンは、ローブこそ袖を通していないものの、ベルトだってきちんと留め、もうブーツまで履いている。

 

オビ=ワンよりは遅い出を予定しているアナキンは、まだ、部屋着、部屋履きのままで、つっかけただけの靴を脱ぐと足の先で、飼い犬の尻をつついた。

「こら、やめろ。アナキン」

びっくりしたように、オビ=ワンが顔を上げる。

「だって、マスター。こんなおいしそうなお尻みせられてちゃ、触らずにはいられないですよ」

にやにやと笑うアナキンは、机に頬杖をついたまま、足を伸ばし、またオビ=ワンの尻を爪先でつつく。

「今は、食べてる最中なんだ」

オビ=ワンの皿は、まだ半分ほどミルクが残っている。

「あれ? この間、俺の皿ひっくり返して邪魔した挙句、アレ、しゃぶらせた人は誰でしたっけ?」

 

アナキンの言葉に、オビ=ワンが真っ赤になった。

肩を竦めて、床を見つめた犬の顔をわざわざ覗きこむため、アナキンは、身体を曲げで、テーブルの下へと手を突く。

オビ=ワンが視線を避ける。

アナキンは、手を伸ばし、オビ=ワンの髪を撫でる。

「マスター。マスター、今日は、かわいい俺のワンちゃんですけど、飼い主の日は、暴君だもんな。人が腹が減ってるって言ってるのに、ちっとも聞いてくれなくて、癇癪起こして、皿、蹴っ飛ばした挙句、こっちに来いって、鎖引っ張って」

アナキンの首輪には、鎖がついている。

それを、オビ=ワンは引きずる。

「腹ペコの俺の首根っこ掴んで股間に押し付けるなんて、ほんと恐い飼い主なんだから」

 

恐い飼い主の太腿は、あの時、うっすらピンクに染まっていた。

真っ赤な頬の持ち主は、震えて今にも閉じてしまいそうな足を精一杯大きく開いて椅子に座り、テーブルの下の犬に自分のアレを舐めるように命じた。

何度も瞬きが繰り返される長い睫は、恥ずかしそうに震えており、アナキンは、飼い主に甘えたくて、意地悪をした。

いつもだったら着けているはずの下着すら履いていない股間に顔を埋めはしたものの、勃起しはじめているペニスには触れず、前足を付いた柔らかな太腿を舐め回す。

「アナキン!」

オビ=ワンはじれったそうに椅子の上の尻をもじもじと動かした。

犬は、舌を伸ばす。だが、触れるのは、ミルク色をしたやわらかな太腿だけだ。

「アナキン!」

「舐めてるじゃないですか」

オビ=ワンの目はもどかしさで濡れており、その目尻は朱色に染まっていた。

「そうじゃなくて!」

飼い主の太腿に顔を埋めて幸せそうに頬ずりをしている大型犬は、首をかしげて、にっこりと笑う。

「俺、ただの犬ですから、ちゃんとやり方まで言って頂かないとわかりません」

 

オビ=ワンは、何度か息を吐き出し、アナキンの目の前で腹をへこましたり、膨らませたりした挙句、顔を真っ赤にしたまま自分の犬を躾け始めた。

だが、口を開いてもまだ、ためらいがあるようで、舌が唇を舐める。

アナキンは、オビ=ワンの指示を待って、きちんと飼い主を見上げている。

「……ペニスを口に入れるんだ」

口にした後、オビ=ワンは自分の言ったことが恥ずかしいのか強く目を瞑った。

アナキンの首輪から伸びる鎖を握る手も、痛いのではないかと思うほど力が入っている。

 

「はい」

アナキンは、口の中へとオビ=ワンのペニスを迎え入れた。

しかし、舌の上に乗せただけで、それ以上動こうとはしない。

オビ=ワンが悔しそうに舌打ちした。

開いた目は、うるうると潤んでいる。

「舌で舐めろ……」

「どういう風に?」

 

「好きなように」

と言われ、アナキンは、オビ=ワンのペニスをただ、べろべろと舐め回した。

オビ=ワンのいいところなど、十分にわかっているくせに、犬は、サービスを放棄し、飼い主にじゃれかかる。

甘ったれの大型犬をオビ=ワンは叱る。

「アナキンっ!」

しかし、犬は、少しも反省の色を見せない。

「何? マスター」

嬉しそうにペニスの先を舌でつついている犬を、真っ赤になったオビ=ワンが睨みつける。

「お前は……」

オビ=ワンは、自分の足の間に座り込んでいる犬の顔を両手で挟んだ。

恥ずかしさと苛立ちで、すっかり真っ赤になっている人は、犬の頬をぎゅううっとつねった。

オビ=ワンの目が吊り上がっていた。

「分かっているんだろう? アナキン。私は、それほど気の長い人間じゃない」

それからのオビ=ワンは、アナキンのやり方が意に染まなければ、鎖を引っ張りってアナキンを叱った。

 

アナキンは、鎖を持ったままの手を震わせて、テーブルにうっつぷしたていた人の姿を思い出し、口元が緩むのを感じた。オビ=ワンの指は、アナキンの頭を押さえつけ、その快楽を十分に感受していた。

鎖が頭に当るのは痛かったが、オビ=ワンの足が、自分の身体をぎゅっと挟んで離さなかったのは、とてもいい感じだった。

はぁはぁと、吐き出される息の音だけをテーブルの下で聞いているのも、ゾクゾクした。

「いい子だ。アナキン……」

アナキンはびくびくと震える射精後のペニスを丁寧に舐めていた。

それに満足する飼い主の気だるげな手が、アナキンの頭を撫でた。

飼い主は、身をかがめ、犬の髪へとご褒美のキスをする。

 

 

アナキンは、オビ=ワンに皿の中のモノを残らず食べるよう命じた。

「俺は、あなたほど酷い飼い主じゃないですから、ご飯はちゃんと食べさせてあげますよ」

 

アナキンは、オビ=ワンが、床に置かれた皿へと顔を近づけるのを見守ると、椅子から立ち上がった。

オビ=ワンの意識は、背後のアナキンの様子をしきりに気にしている。

アナキンに命じられたとおり、オビ=ワンは舌を伸ばして、皿の中のミルクを舐め、シリアルを口に運んではいるものの、その様子はすっかり気もそぞろだ。

「ほらほら。ちゃんと食べないと後でお腹がすきますよ」

アナキンは、オビ=ワンの背後に立つと、四足で這う加減でつんと突き出す格好になっている飼い犬の尻を撫でた。

オビ=ワンがびくんと身体を震わせる。

しかし、オビ=ワンはアナキンに言われたとおり、頭を下げ、ボウルの中のミルクに向かって舌を伸ばしている。

アナキンは、レギンスに覆われたオビ=ワンの丸い尻を手の中に納めた。

柔らかいそこを撫で擦る。

「ほんと、俺のペットは、かわいいお尻の持ち主で」

アナキンは、その手触りに満足だった。

オビ=ワンは、防御を第一としたソレスの名手だ。だが、その尻は、日々の訓練によって硬くなったり引き締まりすぎたりはしていない。

受け身を主体とする戦闘の型を好む師匠は、身体まで柔らかくアナキンを受け止めてくれる。

 

細い首輪に彩られたオビ=ワンの項が赤くなるまで、柔らかな尻を撫で回したアナキンは、きっちりと留められていたオビ=ワンのベルトを外し、レギンスを太腿の半ばまでずり下げた。

ベルトを外されている間から、落ち着きなくモジモジとしていたオビ=ワンは、ずるりとレギンスを下され、尻につめたい空気が触れると、はっと顔を上げた。

ミルク臭い匂いをさせて、振り返ったオビ=ワンは、アナキンを見つめている。

これからのことを心配する目付きのオビ=ワンに、アナキンは笑いかける。

手で飼い犬の頭に触れ、前を向かせる。

「マスター、マスターは、ご飯」

アナキンの指は、オビ=ワンの尻穴に埋まる。

 

「っ!」

親指で入り口をぐちゅぐちゅと弄られ、オビ=ワンは床についた腕の中に顔を埋めてしまった。

そんな飼い犬の様子にアナキンは目元を緩める。

「マスター。ご飯食べなきゃ」

背中を丸めた犬は、イヤイヤと、小さく首を横に振った。

アナキンは、引き抜いた親指の代わりに、くっぽりと開いた肛門へと中指を深くまで差し入れながら、剥き出しになったオビ=ワンの尻を撫でた。

「俺の犬って、いつ触っても尻の中、しっとり濡れてるし、ほんと、主人思いの名犬」

ぐっ、ぐっと、中指を抜き差ししながら、中の具合を確かめていたアナキンは、真っ赤になりながら尻を揺らし始めたオビ=ワンの様子に、口元を緩めた。

抜き差しの動きに前後に揺さぶられながら、オビ=ワンは目を閉じて、体内に湧き上がる快感を丹念に拾い集めている。薄く開いた唇からは、はぁはぁと、息が漏れている。

引き抜くアナキンの指を濡らすセックスジェルは、オビ=ワンの穴の周りをべったりと濡らす。

 

「オビ=ワン。ちゃんと食べてください。俺は、皿のモノを残らず食べろ。と、言いましたよ」

アナキンの声に、快感に流されかけていたオビ=ワンの肩がびくりと竦められた。

長い睫を震わせて目を開いた毛並みのいい犬は、主人の機嫌を伺って、そっと後ろを振り返る。

アナキンはこれ見よがしに笑顔を見せた。

「俺のワンちゃんは、おりこうさんでしょう?」

アナキンの中指と、人差し指を尻の穴に突っ込まれたまま、オビ=ワンは、崩れ落ちそうな身体を支えながら、顔を皿に戻した。

赤い舌が、皿のミルクをぴちゃりと舐める。

その様子にアナキンは激しい興奮を覚える。

ぐっと、アナキンが突き上げてくるたびに、前のめりになりながらも、オビ=ワンは懸命に皿の中のミルクを啜る。

 

熱く滑った穴の中で、指を大きく開き、飼い犬にふうふうと辛そうな息を吐かせながらそこの様子を確かめていたアナキンは、とうとう、オビ=ワンの尻の後ろへとぴたりと立ち、自分のペニスをそこへとあてがった。

「あなたは、ちゃんとご飯を食べててくださいね」

 

あくまで、飼い犬に食事を続けるよう命じたアナキンは、ずぶりとペニスを柔らかい肉の間に埋めると、いきなり早いペースで動きだした。

「いや、だ。無理。無理だ。……アナキンっ」

勿論、そんなことをされて、オビ=ワンは食事を続けることなどできず、オビ=ワンの指が、ガリガリと床を掻いた。

しかしアナキンは、無理を言う。

ぐいっと奥までペニスを突き刺した状態でアナキンは、オビ=ワンの背中に覆いかぶさり、愛しげに飼い犬の首輪へと口付けした。

「ちゃんと食べなさい。オビ=ワン」

 

腰を掴かまれ、尻の間で力強くペニスを抜き差しされるオビ=ワンは、懸命に身体を支えていた。

震える腕は、すぐにでも崩れ落ちそうなのだが、オビ=ワンは健気に耐えている。

噛まれた唇が赤い。

きつく瞑られた目元には、はかない色気がある。

はぁ、はぁと、息を吐き出し、喘ぐ胸は、早鐘の音を立てている。

 

アナキンは、どうしてもボウルに顔を戻すことのできないオビ=ワンのために、ゆっくりと彼を揺すり始めた。

明らかにほっとした息が、細い首輪を着けたオビ=ワンから漏れる。

アナキンは、師匠の頭を撫でる。

「ほら、ゆっくりにしてあげるから、ちゃんと食べて」

 

振り返った前髪の間では、睫が濡れてしまっていた。

恨み言を言い出しそうなオビ=ワンの腰を掴んで、アナキンは、ゆっくりと、だが、確実にオビ=ワンが気持ちよがるところを狙って突き上げる。

「……んっぁ……っ……んっ!」

がくりとオビ=ワンの上体が落ち、アナキンは、オビ=ワンの腰を持ち上げてやらなければならなかった。

尻だけを突き出したオビ=ワンに腰を打ちつけながら、アナキンは、オビ=ワンの背中に囁く。

「食べて。オビ=ワン」

 

熱でもあるかのように頬を赤くし、目を潤ませているオビ=ワンが肘を床につき、おずおずと上体を起こした。

オビ=ワンの顔が床に置かれた皿に向かう。

アナキンに尻を犯されながら、オビ=ワンは、ボウルのミルクをぴちゃぴちゃと啜る。

「そう。かわいいですよ。……そうです。マスター。ちゃんと食べなきゃ、会議の最中に腹が減って倒れちゃいますよ」

オビ=ワンは、もぐもぐと口を動かす。

アナキンに最奥を突かれ、唇を震わせているというのに、舌を伸ばして、ミルクを舐める。

興奮に息を荒くしているアナキンは、オビ=ワンの粘膜がひっくり変えるほど強引にペニスを引き出した。

「あっ!あっ!ああっ!」

のけぞったオビ=ワンの目から、涙が伝う。

その顔は、ミルクで白く汚れている。

「っ、あ、……っ……んっ!」

「あ、あっ、っんは、……っあ、あ!」

「……んんんっ……っ……んっ!」

「大好き。マスター。俺の、マスター。ほんと、大好き。マスターだけ」

 

 

腫れてしまったオビ=ワンの目元に冷たいタオルを当て、冷やしているアナキンは、床に伸びてしまっているオビ=ワンを見下ろし、苦笑した。

「マスター、やっぱ、この遊び、朝にするのは、無理なのかもしれませんね」

アナキンはもっと長くオビ=ワンを揺さぶっていたかったのだが、顔の下半分を皿のミルクに浸したまま、床へと精液を撒き散らし、何もわからなくなって泣くばかりになったオビ=ワンに、終わりにせざるを得なかった。
主要国議員達との会議を控えている今日のジェネラルケノービのスケジュールを考慮すれば、オビ=ワン・ケノービというジェダイが清潔な人柄に信頼を集めている以上、弟子は気遣いという選択肢を選ばざるを得ない。
ずるりとペニスを引きずり出したアナキンは、それの処理について考えた。

ミルクに濡れる唇の前へと硬いそれを突き出せば、寂しくなった尻を嫌がり、身を捩っていたオビ=ワンは、なんのためらいもなく、口に含む。

ミルクに濡れていた舌は思っていたよりも冷たかった。

ぴちゃぴちゃと音をたてて、オビ=ワンはアナキンのペニスを吸い上げる。

「飲める? オビ=ワン?」

アナキンが聞けば、オビ=ワンは、慌しく、うん、うん。と、頷いた。

 

「じゃぁ、出しますよ。……っ!……っ、はぁ……」

深いため息を吐き出したアナキンは、オビ=ワンの皿がほぼ空なのに気付き、飼い犬の頭をたくさん撫でてやった。

 

「おりこう。オビ=ワン」

 

 

しかし、幸せな時間が終わりを告げると、二人は、穢れのないジェダイに戻らなければなかなかった。

無私無欲の存在として、共和国の平和に尽くすことを求められているのがジェダイだ。

アナキンは赤いオビ=ワンの目や、腫れたようになっている唇をそっと冷やしてやりながら、小さく笑う。

「後、30分はありますから、きっと元通りの顔になりますって。そんな情けない顔しないで。オビ=ワン」

 

オビ=ワンとアナキンは、ジェダイだから個人所有のものを何も持たない。

公正であるために、拘束力を持って人を愛することも禁じられている。

二人は、月に数回、性欲の解消のため、肉体を交わすが、その行為には、愛は入り込まない。

 

だが、極たまに、オビ=ワンか、アナキンが言い出すのだ。

「アナキン。お前、約束の時間に遅れたな。 わかってるだろうな。約束を守れないような奴には、それにふさわしい扱いがある」

「マスター。一人で勝手に作戦を変更するの、コレで何度目ですか。俺の苦労、わかってます? そういうことする人には、それなりのことをしてもらわないと」

言いがかりに近いそれに、「すみませんでした」や、「……わかった」という返事が返されれば、二人は、自分のペットを手にいれる。

そして、二人は、普段、交わすセックスと似てはいるが、しかし、もっと切実なもののある行為をする。

 

ジェダイは、所有を許さないのだ。

そして、二人は、まぎれもなく、その決まりを守らなければならないジェダイだった。

しかし、二人は、どうしても手に入れたいものがあった。

だが、その罪を犯かし、しかもその対象が清らかさを象徴するジェダイだということは、長くオーダーに身を置いたオビ=ワンは勿論のこと、若いアナキンにも恐れ多くてできることではなかった。

 

だから、二人は、まるでゲームを楽しむように、自ら相手の飼い犬へ成り下がり、または、ペットを所有しているという小さな罪を持つジェダイになる。

本当は、ペットだって、ジェダイは飼うことなど許されていない。

しかし、二人は、テンプルに背いてもっとも愛する者を飼う。

首輪を嵌めてもらい、やっとオビ=ワンは、愛情のままにアナキンを見つめる。

首輪を嵌めた相手に、やっとアナキンは愛の言葉を伝えることが出来る。

 

 

「夜は、……嫌なんだ」

充血した目元が痒いのか、ごしごしと手で目元を触ったオビ=ワンは、アナキンの手からタオルを取り上げ、自分の目の上に載せた。

「夜は、闇のせいで、このままずっといられるんじゃないかと、つい誤解してしまう」

 

アナキンは、オビ=ワンの髪を梳きながら、小さく笑いかける。

「俺も、朝の方が好きですよ。少なくとも、今日一日は、俺のペットの匂いに包まれたまま、過ごすことができますからね」

 

時間が近くなれば、オビ=ワンは、きちんと衣服を整え、穏やかな顔をしながらもなかなか隙をみせないジェネラルとしてドアから出て行く。

アナキンは、床に置かれたボウルを拾い、流しに片付ける。

 

細い首輪と、鎖のついた太い首輪は、そっと棚の奥深くへとしまわれる。

 

「……アナキン」

「いってらっしゃい。オビ=ワン。後で会いましょう」

 

 

 

もう、空気の中に、早朝の気配はない。

 

End