妄想企画(メイドなオビワン 3)

 

その日は、朝から、屋敷の中に活気が溢れていた。

長く、屋敷を空けていた主人が帰宅するのだ。執事であるメイスが直々に先頭にたって、屋敷内に主人を迎え入れるにふさわしい状態となるよう、忙しく使用人達は、立ち働いていた。

調度の磨きばかりをさせられてきたオビワンも、この日ばかりは、あちこちの部屋へと使いに出された。

オビワンの体内に押し込まれたローターが落ちることも、もうない。メイドは、いまだ、体内に居座る異物のせいで、目を潤ませ、頬を赤くしていたが、オビワンの腸内は、ローターを包み込み落とさないだけ、拡張され、主人を迎え入れる準備が整いつつあった。

 

「……先に火をいれておくようにと、言い付かってきました」

メイスに言いつけられ、朝食室のドアを開けたオビワンは、勇気を出して、中で働くフットマンたちに声をかけた。扉が開けるまでは、男達の声、聞こえていたというのに、オビワンが顔を出した途端に、部屋の中は、沈黙が重く降り積もる。部屋の中では、立ち働く男達の動きで、舞い上がった小さなほこりが、朝の光にきらきらと光っていた。

この屋敷は、その財力ぶりを見せつけ、暖炉を部屋どころか、ギャラリーとなっている廊下にまで持っていた。

春とは言え、まだ、少し寒さを感じる季節。勿論、柔らかな朝の日差しを十分に取り入れられるよう、朝食室は大きな窓を持っていたが、石炭の消費を抑えなければならない理由が、この屋敷には無いため、執事は男達に暖かな部屋を用意するようにと命じている。

オビワンは、それを伝えるために、ドアを開けたのだ。だが、誰も、その言葉に答えを返してはくれない。

しかし、誰からも返事は得られなかったが、燃えさしの炭をかきだし、新しいものを補充する男の背中に、オビワンは自分の声が、相手に聞こえていたのだとほっとした。

次いでオビワンは、香りよく主人達を迎え入れるための茶殻を、フットマンたちに差し出す。

茶殻を撒いた絨毯を掃くのだ。そうすると、絨毯の手入れをしながら、部屋の中にいい匂いをすることができる。

美しいメイドの差し出す茶殻に、フットマンたちがお互いに目配せをした。

だが、誰も、オビワンへと近づこうとしない。この屋敷独自のルールのためだ。

「申し訳ありませんが……」

オビワンは、髭に覆われた唇をきゅっと噛み締めながらうつむき、入れ物を差し出した。

オビワンは、このルールのため男達から、もうずっと無視されてきたのだ。

オビワンがここに雇われて以来、屋敷には、主人のための特別なメイドと男性従業員たちが親しくしてはならないというルールが新しく出来た。このルールは、執事によって厳しく監視されており、オビワンが屋敷にきてからの十日あまりの間に、十分男達に浸透した。なぜなら、ルールを破れば、解雇がちらつかされたからだ。初日に、口を利いたフットマンは、解雇もやむ無しと諦めていたが、今までの忠臣に救われ、温情だと給金の減額で許された。

メイドは、身を縮こまらせるようにして、茶殻を差し出ている。

「……執事さんから、渡すようにと言いつけられてきました」

無視し続けられているメイドの声は震えていた。

確かに、誰かが、茶殻をオビワンから受け取らなければ仕事は進まない。

しかし、男達は、主人のための特別なメイドと関わり合いになることにためらっていた。

それでも、執事の命ならば、と、一番扉の近くにいた男が茶殻へと手を伸ばす。

うつむいたまま差し出していた手が軽くなったことに、オビワンが、感謝の言葉を述べた。

「ありがとうございます……」

安堵に、オビワンの声が少し涙ぐんでいた。

自分の非でなくすべての男性従業員から無視されるメイドはかわいそうだ。しかし、男は、自分の職を守るため高価そうなロングスカートに身を包んでいるメイドと目を合わせなかった。

他の男達も、勿論だ。

ルールをオビワンも十分知っていたから、屋敷の中で、誰からも相手にして貰えないという状況を受け入れていた。

やはり、それでも、同じ従業員同士だというのに、仲間が口を利いてくれないのは辛い。

廊下ですれ違っても、誰もオビワンには挨拶一つしてくれない。

時に、オビワンは、自分がこの屋敷に不似合いなほど、みすぼらしいメイドだから、誰も相手にしてくれはしないのだ。と、そんな思いも抱いてしまう。

しかし、今は、目を合わせてはもらえなかったものの、男は、オビワンが自分の差し出した茶殻を受け取ってくれた。

たった、それだけのことで、オビワンは涙が出るほど嬉しかった。主人の命で縛られるオビワンは、それほど孤独だったのだ。

夜中に見回りに来るパドメや、昼間のオビワンを監視する執事を除けば、オビワンが、他人と触れ合うこと事態が久しぶりだ。

たとえ、目を合わせてもらえなくとも。

 

自分が、長くこの場に留まれば、男達に迷惑をかけるとわかっているから、オビワンは、小さな会釈をし、急ぎ部屋を後にした。

オビワンが部屋から姿を消すと、男達を包んでいた緊張が解ける。

男達のメイドに対する興味がなくなったわけではない。主人が特別に設えたと噂の彼のメイド服は、オビワンの体のラインを美しく際出せていたし、なんと言ってもあの顔だ。涙ぐんだように潤んだ瞳を重い睫の間から覗かせ、オビワンは白いうなじを見せ、うつむく。立ち振る舞いもタウンハウスのメイドだったと言うわりに実に躾が行き届いており、格式高い屋敷のフットマンたちを苛立たせることなど、一度もなかった。

しかし、誰も、オビワンとは口を利かない。

「……泣きそうだったな。……やっぱり、かわいそうだよな」

受け取った茶殻を絨毯の上に撒くフットマンは、締められたドアを見て、ため息をついた。

彼は、オビワンの指が震えていたのに気付いてしまった。

自分が、茶殻を受け取った瞬間、オビワンは、はっきりわかるほど、頬を真っ赤にさせた。ほんの少しだけ上げられた目は、感謝の気持ちで潤んでいた。主人のメイドが、人の好意に飢えていることなど、かわいそうなほど丸わかりだった。

テーブルにクロスをかけている男が、にやにやと笑った。

「お前、そんなこと言ってると、メイスさんに、辞めさせられるぞ」

「でも、あれは、やっぱり、かわいそうだろ。もう、ずっと誰も話したりしてないんだぞ?」

さすがに、間近に震えるメイドを見た男は、憐憫の情が湧いた。

「そりゃ、あんな美人、いくらでも話しかけたいけどよ」

皺一つなく、美しく広げられたクロスの上へと朝食のセッティングが始まった。屋敷の男達は、無駄口を叩きながらも手際よくそれをこなせるだけ、熟練している。

男は、職を失いたくないとメイドを無視する自分を口にすることに対して、さすがに恥を感じるのか、くしゃりと笑った顔で自分のメイドに対する気持ちを誤魔化すと、いつものメイドに関する噂話へと話題を滑らせた。

「しっかし、あんなけ色っぽいと、そこにいるだけで気になるよな。あの目、なんであんなにいつも濡れてるんだろう」

「廊下で、泣きそうにしてるの、見たことあるか?」

労働者にとって、無駄口は、息抜きの一つだ。客人の前でなければ、手の動きが止まらない限り、この屋敷は鷹揚にそれを受け止めてくれる。

「あるある。唇まで震わせて、そりゃ、すげー、色っぽいよな。あれ、一体なんでなんだ?体の調子でも良くないのか?」

「の、割には、あの頬の色。艶っぽくピンクに染まってて、たまらない色気があるよな」

親しくすることを禁じられている男達のオビワンに対する興味は、ますます増していた。

メイドが何故、いつも目を濡らし、頬を赤らめているのか、いつだって男達は知りたかった。

泣き出しそうにして廊下でうずくまるオビワンは、周りを見回し、そろそろと立ち上がると、真っ赤になりながらメイスのいる部屋へと駆け戻った。

男達は、オビワンの居ないところで、彼の話題に花を咲かす。

誰の目も、主人のために、身体を成熟させつつあるオビワンに絡み付いていた。しかし、誰もが、遠巻きにしか、オビワンに関わろうとしない。

しかし、男達の同情を他所に、オビワンは、自分の手から、物を受け取ってくれた人がいたことに、胸を弾ませながら、執事の待つ部屋へと急いでいた。

あまりに久しぶりの人との接触だったため、口元に自然と笑みが浮かんでしまう。

「オビワン。君も、出迎えに参加しなさい」

その上、抜かりなく主人を迎え入れるため、厳しく四方に目を配っているメイスに、アナキンの出迎えをするよう言いつけられ、オビワンは、緊張に震えながらも、熱く喜びをかみ締めた。

真夜中に訪れるパドメを失望させないためにも、眠り浅く、何度も何度も卵の状態を確かめるため、起きてしまっていた夜の辛さも、昼間、執事の前で、スカートをめくり上げることになる恥ずかしさも、下腹を襲う重苦しさも、主人を迎えさえすれば、やっと認められるのだ。もしかしたら、オビワンの努力を主人は褒めてくれるかもしれない。

 

あの短い丈の制服の恥ずかしさや、尻に施されてきた拡張が、どう主人を喜ばせることになるのか、といったことに関しては、未だオビワンには、上手く想像ができなかった。それを考えると、オビワンだって、怖かった。

しかし、とうとう、あの小さな男の子に会えるのかと思うと、オビワンは、幸せが胸に湧きあがるのを感じた。

路頭に迷いそうになっていた自分にわざわざ手紙を寄越してくれた人物。この世に誰一人頼る相手がいない自分へと手を差し伸べてくれた唯一の人。

尻に納めたローターを落とすことなく締めていられるようになったことも、メイドに自信を与えていた。主人の願いどおりローターを暖めておけるようになった自分は、それを望んで迎え入れてくれたアナキンにもしかしたら、喜んでもらえるかもしれない。

オビワンは、そんな希望にすがらなければならないほど、この屋敷で、本当に孤独だったのだ。

メイドは、玄関ホールで、フットマンたちに混じりアナキンの帰りを待った。

 

ドアが開けられた。

長身の若い男が、大勢の使用人に迎えられる。

「お帰りなさいませ。旦那様」

いっせいに声が上がり、下げられた頭を当然と受け止める若い主人の靴が床を踏んだ。

「ただいま」

誰に返したわけでもなさそうなアナキンの声は、さっそく側に近づいた執事によって受け止められた。

「予定より、少し早いお帰りでしたね」

荷物を受け取り、後ろに下がった執事に代わり、パドメがアナキンに近づいた。

アナキンは、迎えにたったパドメを抱きしめ、その頬に柔らかなキスをする。

「ただいま。パドメ。留守をありがとう」

「おかえりなさい。アニー」

アナキンの目が、パドメよりも、執事を見ていて、パドメは、屋敷にいてすらワーカーホリックである婚約者をくすりと笑った。

執事は、そんな主人の視線を受け止め、いつでも応えられるよう、パドメの気に障らぬ程度に側へと控えている。

「予定より、少し早いお帰りだったわね。なぜかしら? アニー」

「今日の髪型は、素敵だと思うよ。パドメ」

二人の会話がかみ合わぬのは、いつものことだ。

初めて会ったほんの小さな時ですら、アナキンはパドメのことを、天使のようにきれいだ。と、素直に褒め、しかし、その後は、大人達が経済の状況について話し合うのを興味深く聞き耳を立てているような、そんな子供だった。

精悍な顔に漂う若さからくる甘さを、表情の厳しさで引き締めるアナキンは、程よくパドメとの間に距離をとり、視線だけで執事を呼び寄せる。

「頼んでいた手紙は来たか?」

「はい」

「では、あの土地のことは?」

「はい、使いを出しました。返事は貰ってありますが」

「向こうの様子を聞きたい」

「では……」

早速打ち合わせをしながら歩き出したアナキンに、執事は、フットマンの名前を呼んだ。

さまざまな用を言いつけられ、それをこなしていた男達は、呼ばれるたびに順に、執事の後につく。

それは、オビワンの隣に立つ男も同じだ。

「生糸の状態は……」

視線で執事に呼び寄せられ、領地の見回りのため使いに出されていたオビワンの隣に立つフットマンは、列の最後についた。

しかし、新しいメイドのことは誰も口にはしなかった。

オビワンは、頭を下げ、アナキンが通り過ぎるのを待っている。

「朝食の用意が出来ておりますが……」

頭の回転のよさを見せ付けるように、いくつもの案件を同時に処理しようとしていたアナキンに、主人に必要な休息を用意していたメイスが声を挟んだ。

「ああ」

アナキンの足が止まった。それは、ちょうど、オビワンの前でだった。

オビワンは、かすかな期待に胸を震わせる。

しかし、同時に、パドメのための労働のみを請け負っている女主人のメイド達の視線が、ぶしつけにオビワンへと突き刺さった。

彼女達は、アナキンのための特別なメイドが、パドメの地位を脅かすかもしれない存在であることには気付いていた。今のところ、オビワンは、一度も袖を通していないが、ガーター留めが見える丈のスカートを、オビワンが主人からプレゼントされたことは、パドメの侍女から漏れている。

メイドたちは、オビワンを軽蔑している。

オビワンは、メイド達の視線に貫かれながらも、小さな希望に胸を焦がしてアナキンの前に立っていた。

立ち止まった主人は、ドアが開いて以来、一度だって、オビワンに視線をくれた様子はなかったが、もしかしたら、新しいメイドの存在に気付くかもしれない。

「悪い。パドメ。後少しだけ、待ってくれるかい?」

しかし、一度だけ会ったあの頃と同じ、意思の強そうな目をした若い主人は、少しばかり申し訳なさそうな顔で、美しい婚約者を振り返っただけだった。

「いいわよ。少しならね」

悪戯めいた顔で笑ったパドメは、もう一度アナキンの隣に歩み寄った。

ふわりとパドメのドレスの裾が広がる。

それは、オビワンの足をなでていく。

パドメが絡ませた腕をそのままにしたアナキンの足が前へと進んだ。

オビワンは、フットマンたちに混じって、頭を下げている。

やはり、主人は、オビワンの名は、呼ばれない。それどころか、視線一つアナキンは、オビワンにくれない。

こんなことは当たり前のことだ。と、分かっていながらも、俯くオビワンの視界は、涙で見え辛くなっていった。

オビワンは、アナキンに会えることで、心を弾ませていたのだ。

主人のための特別なメイドだと区別され、皆と同列に扱われぬどころか、口さえ利いてもらえなくとも、アナキンにさえ、一生懸命尽くすことが出来れば、オビワンは、いない者のように扱われる自分の存在を正当なものだと認めることができるような気がしていた。

路頭に迷ったオビワンに手を差し伸べ、その上、わざわざメイド服まで用意しておいてくれたという主人に、オビワンはつい過剰な期待を抱いていたのだ。

今日、屋敷の男達が、初めて自分から物を受け取ってくれたという幸せも、オビワンの心を浮き立たせていたのかもしれない。

執事から、玄関で出迎えるよう言いつけられた時、オビワンは、なぜか、アナキンが自分の出迎えを望んでくれているような気になっていた。

もしかしたら、「よく来てくれた」の一言。

さらには、「会えるのを楽しみにしていた」の一言を、かけてもらえるような気がしていたのだ。

しかし、一介のメイドに、何故、これほどの格式を持つ屋敷の主人が声をかけなければならないのか。

 

オビワンは、こみ上げる涙を止めようとした。

パドメに腕を明け渡すアナキンは、もうオビワンの前を通り過ぎた。

ただの従業員なのだという立場をわきまえもせず、思い上がっていた自分を戒めるメイドの唇は震えていた。

俯く睫は、自分に対する羞恥にしっとりと濡れてしまっている。

アナキンの態度は、この屋敷の主人として当然のものだ。

どうして、たかがメイドの就労を主人が心に留めないといけないのか。

涙が、曇り一つなく磨かれた床に落ちそうになり、オビワンは、自分に泣くことなど許されていないと、ぐっと奥歯を噛み締めた。

「……!」

オビワンは息を飲んだ。

力みに、メイドの腸内で暖められていたローターがじわりと動いたのだ。

ずいぶん奥へと押し込まれていたローターが、涙を堪えようと力を入れたことによってジェルですべり、オビワンの腸内を擦り上げた。

肛口をきつく締め上げることを覚えたメイドは、もうローターを落とすような粗相はしない。

しかし、ローターを産み落とすことを免れたメイドの濡れた肉壁の中では、ローターが前立腺を押した。

「……ぁっ」

思わず小さな声を上げたオビワンは、初めて感じた衝撃の甘さに、顔を真っ赤に染めた。

こんな甘い痺れをオビワンは感じたことがなかった。

かっと熱くなった腰は、メイドから落ち着きを奪い去った。

濡れた肉が噛むローターの刺激に、オビワンのペニスは、自然と頭をもたげてしまう。

スカートの下の小さな下着は、オビワンのペニスを大人しくさせておくことなどできなかった。

小さなレースを、濡れたペニスが押し上げる。

尻の中では、かくん。と、膝を折りたくなるような甘い熱がじわじわとオビワンを苛んだ。

滑るローターを落とさぬようにと、締めれば締めるほど、オビワンの腰は甘くしびれてしまう。

前に組んだ手に痛いほど力を込めたメイドは、震えながら、尻に入れている力を抜こうとした。

しかし、それをすれば、ローターは、ずるりと、尻穴から顔を出してしまうに違いない位置まで移動しており、それもオビワンにはできなかった。

ローターのコードは、ストッキングにきちんと留めてあった。確かに、メイドがローターを産み落としたとしても、それが床を打つことはない。

しかし、主人を出迎える玄関で、尻から産み落としたローターを股の間に吊り下げておけるほど、オビワンは恥知らずではなかった。

オビワンは、組んだ手でスカートの前を盛り上げるペニスを隠そうと落ち着きなく手を組み替えた。

今まで、ローターを飲み込んでいても、苦しいばかりだったオビワンは、自分の身に起こったことが信じられなかった。

肉壁を広げ、重苦しさばかりを与えていたローターが、信じられないような甘さをオビワンに与えている。

組んだ手の下では、小さな下着を押し上げ、ペニスがスカートの裏地に擦れている。

上等な生地だけに、その感触さえ甘い。

「……っ」

主人を出迎える玄関で味わうには、あまりにも淫たらな感覚を、息を吐き出しなんとか誤魔化そうとするメイドの頬を金の髪がくすぐっていた。

おどおどと揺れるオビワンの目はすっかり潤んでいた。

今、オビワンの睫を濡らすのは、先ほどまでの孤独からくるせつなさではない。

その後の思い上がった自分に対する恥ずかしさからでもない。

主人から与えられた教育玩具に、身体を熱くする自分に対して、身の置き所もないほどのはしたなさを感じ、メイドの目は濡れていた。

しかも場所は、主人を待つために立った朝の玄関ホールなのだ。

オビワンは、息を殺し、身のうちで湧き上がる激しい快感を押し殺そうとしていた。

だが、項まで真っ赤に染め、せつない息遣いをするメイドを、同じ列に並ぶ者たちが見逃さなかった。

特に、パドメのメイドたちが、じろじろとオビワンを見つめている。

 

従業員達の異変に最初に気付いたのは、やはり執事のメイスだった。

浮き足立ったフットマンたちをじろりと睨んだ執事は、彼らの視線の行く先に気付いた。

深く頭を垂れた主人のメイドが、震えている。ふらふらと腰に力の入っていない頼りない様子は、今にも倒れてしまいそうだ。

「オビワン」

特別なメイドに施されている教育を知るメイスであったが、従業員としてのたしなみも守れぬオビワンを執事は少しばかりきつい声で呼んだ。

大きな瞳をすっかり潤ませ頬を火照らせたオビワンがびくりと顔を上げる。

主人が覚えさせようとしていた快感に身を焼くオビワンの唇は、ぽってりと腫れていた。

「……はい」

震える唇が返事を返すと、アナキンが振り返った。

冷酷な印象を与えるほど、静謐に整った顔をした若い主人が始めてオビワンを見た。

だが、アナキンの目は、一枚の風景として、他の従業員達とオビワンを同列に見ていただけだった。

それでも、初めて主人に認められたその瞬間、オビワンは喜びを感じ、しかし、この初めての瞬間に、あまりにあさましい状態である自分の身体に悲しさがこみ上げて、泣きたくなった。だが、体内のローターは、甘く熱く、オビワンを追い詰める。

アナキンの視線の中に納まるオビワンのペニスから、知らずまたじわりと湧き上がるものがあった。

メイドの股間に食い込むレースは、それですっかり濡れてしまっている。

オビワンは、この場から逃げ出し、泣いてしまいたかった。

しかし、たかがメイドが、主人の前でそんな醜態を晒すわけにはいかない。

泣きたいばかりの快感に身を震わせるオビワンは必死になって顔を上げ立っていた。

腕を絡ませたままのパドメが、アナキンを見上げる。

「ほら、あれが、あなたの大事なメイドよ」

せっかくパドメがオビワンへとアナキンの意識を引き寄せてくれたというのに、しかし、アナキンは、まるで興味のないように、オビワンに視線を留めようとしなかった。

「……ぁ」

つきんとオビワンの心が痛んだ。

身の竦むような羞恥の中で、それでも必死に顔を上げていたオビワンは、まだアナキンに対して、特別に扱われることを期待していたのだ。

主人から興味なく目をそらされた瞬間、オビワンの心は、切なさのあまり縮こまった。

しかし、震えた身体の中では、アナキンが与えたローターがべっとりと濡れ、オビワンの快感を刺激していた。

じわじわとペニスの先から漏れ出すもので、スカートの裏地が濡れている。

パドメは、せつなく潤んだオビワンの目を見つめながら、唇を美しくとても上品に引き上げた。

「声をかけてあげなさいよ。 オビワンは、あなたのためにとっても頑張ってくれてたのよ?」

美しい上流の女性の口から、毎夜の自分の状況を報告されることが、オビワンにとってたまらなく辛かった。

しかし、パドメの言葉に、アナキンが、オビワンに視線を戻す。

「オビワン。後で、私の部屋に手紙を持ってきなさい」

平坦な声ではあったが、オビワンは主人の口から、自分の名が呼ばれたことに淡い幸福を感じた。

はしたなくも濡れたペニスがぴくりと震えてしまう。

オビワンは、はっと気を引き締め、だが、そのせいで尻がローターを甘く締め付けた。

しかし、主人から用を言い付かったメイドへとメイスが、ついと目配せをする。

この家の流儀にはなかったが、パドメのメイドを真似て、主人がはじめて雇ったメイドはスカートの裾を掴むと、片足を一歩引いて、頭を下げようとした。

アナキンは、感情の篭らぬ無機質な視線で、じっとメイドの動きを見つめている。

「はい。旦那様」

オビワンは、アナキンの視線に見つめられているというただそれだけで、甘く切なく腰がしびれた。

しかし、その幸福感を味わう間もなくオビワンは息を飲んだ。

「……っ!!!」

足を引き、わずかに屈むというその動きに、ローターが擦り上げた内壁の衝撃はすざまじかった。

ただでさえ、最早ローターの存在は、オビワンに持て余すような淫たらな甘さを与えていたのだ。

我慢も出来ず、オビワンは、薄いレースの生地と、スカートの裏地を汚していた。

「……っん!」

むせかえるような色気で身体を震わせているメイドを主人の目が見つめていた。

今までの冷たさが嘘だったかのように、楽しげにアナキンが、くすりと笑いかける。

「手紙を持ってきてくれるのを待ってるよ、オビワン。あなた、あの頃と全然かわらない。いや、今の方がずっといい」

主人が、オビワンを特別に扱った。

主人の目が、自分の状態を取り繕うことも出来ず、下着をべっとりと濡らしたまま喘ぐメイドを見下ろしていた。

 

 

 

つづく。