耳と、キス。
「ニャァ」
背中越しに不思議な声が聞こえてきて、久々のオフタイムを大好きな機械弄りに費やしていたアナキンは恐るおそる振り返った。
すると、そこには。
「……何?……どうしたんです? オビ=ワン……」
アナキンの声は、ドアから覗く師匠の姿に、つい語尾が震えてしまった。
ケノービ将軍と崇められるオビ=ワンが、ジェダイの中でも堅物の部類に入るはずのオビ=ワンが猫耳のカチューシャをつけ、ドアの隙間から上目がちにアナキンを見ている。
それも、なにやら嬉しそうにだ。
一体何が起こったんだと、引きつりそうになる頬を意思の力で押し留め、とりあえずアナキンはなんとか無難な話題を選ぶ。
「えっと、マスター……、あなた、今日、人に会う約束でしたよね? もう、終わったんですか?」
オビ=ワンの返事も待たずに、アナキンは、空白になりそうな頭の中で師匠のスケジュールを攫った。
そうしなければ、意識が遠のきそうだった。
何をたくらんでいるのか、猫耳姿のオビ=ワンの目は、爛々と輝いている。
オビ=ワンは今日、局地的文化の研究者と会談を持つ予定だった。
どこの文化を研究している学者なのかをアナキンは忘れたが、あの猫耳は、もしかして、その学者がジェダイに敬意を示して持ってきた土産なのかもしれない。オビ=ワンはアレが気に入って貰って帰ってきた上、思わず着けてみたのだろうか? ……似合わないとは言わない。
しかし。
「もう、終わったんだにゃん。アニャキン」
アナキンは、手に持ったボルトでビスを留めるのも忘れたまま、言葉遣いまでおかしくなっている師匠に対し、どんな表情をしていいのか固まってしまった。
「だから、ここにいるんだにゃん」
「……はぁ。そうですか」
そんなアナキンの様子に、輝いていたオビ=ワンの目が段々と、伏せがちになる。
アナキンの気持ちは焦る。
だが、アナキンは、オビ=ワンに猫耳が似合っていると褒めるべきなのかどうか悩んでいた。
30をいくつも越えた師匠が、弟子に向かって猫耳姿で、「アニャキン」などと呼びかけるのに、どう答えるのが、元パダワン、現在パートナーとしての正解なのか。
「……ニャンだ。アニャキン。お前、こういうの嫌いニャのか?」
師匠の唇が尖った。
「……ええっと、マスター、俺、今、あなたのどこにどう突っ込めばいいのか、それすらわからなくなっているんですが……」
実際アナキンは、かなり混乱している。
「せっかく、お前のために、着けたにょに……」
オビ=ワンの爪が、カリカリと、アナキンの部屋の壁に立てられる。
カリカリ。カリカリ、カリカリ。オビ=ワンは前髪の間から、アナキンを睨みつけ、ニャァ、ニャァ、文句を言っている。
アナキンは思い切って、全身でオビ=ワンに向き直った。
「すみません。マスター。それは、ご自分の趣味じゃなく、やはり、俺のため、なんでしょうか……?」
「そうだにゃ。アナキン! じゃなかったら、誰がこんな恥ずかしい真似をするにゃん!」
オビ=ワンがプリプリと怒っている。
頬が赤いのは、当てが外れた恥ずかしさからか、それとも、やはり自分の年で猫耳はヤバイと気付いたせいなのか。
いや、未だ、ニャン、ニャン、言っているところをみると、弟子が猫耳を喜ばなかったことに腹が立って、怒っているからに違いない。
「……あの……それは、つまり、俺が猫耳好きだという情報がどこからか、マスターの耳に入ったということでしょうか?」
アナキンは、もしそうだとしたら、テンプルに流れる情報を、ライトセーバーにかけてでも正しい方向に変えなければならないと思った。
「そういうわけじゃないが……。今日会った先生が、「オタク文化」について研究していらっしゃって」
何故だか、とてもオビ=ワンは恥ずかしそうで、ローブの袖で口元を隠す。しかし、その隠し方は何やら意図的で、アナキンは、むずむずとした。
どうして、師匠は指先2センチだけをちょこんと見せているのか。
口を覆うだけだというのに、何故、目のすぐ下まで隠さなければならないのか。
いじましいほどの上目遣いは何なのか。
アナキンは、自分をオタクだと認めることに対して、特に抵抗はない。だがしかし、オビ=ワンの言うオタクは、アナキンのいるエリアとは、別のエリアの住人だ。オタク世界は、細分化されている。
しかし、全くオタク気質のない師匠には全てが一緒で分かっていない。
アナキンは、怒ってはいけないと自分に言い聞かせながら、ふかふかした耳を頭にのせている師匠に尋ねる。
「それでマスター、その先生が、俺のことについて何かおっしゃったのですか?」
「いや……実は、私から尋ねたんだ。……オタクな恋人が、近頃構ってくれなくなってきたんですが、どうしたらいいですか?って」
オビ=ワンの言い分に、アナキンは驚いた。
「えっ! だって、俺、ここんとこ、ずっと任務で家を空けてましたよね? その前は、下調べでテンプルに詰めてたし、そんなの、マスターだって、知ってることじゃないですか!」
師匠のコスプレが、自分のせいだと言われ、思わずアナキンは、手に持っていたビスを投出し、オビ=ワンに申し開きをした。
「でも、アナキン!お前、任務。任務で、ここんとこ、全然!……あっ、全然、私に構ってくれないにゃ、にゃいか!」
オビ=ワンだって、ニャァ、ニャァしゃべりなど慣れているわけではないから、気をつけてないと、すぐ忘れる。
しかし、今、オビ=ワンはこれを貫かなければならなかった。
じゃなければ、猫耳をつけた意味がない。
「そんな、あの任務を俺にと推薦してくれたのは、マスターだって、聞いてますよ!」
弟子の顔は真剣だ。
しかし、それ以上に、師匠だって真剣なのだ。
「たしかに、推薦したにょは、私にゃ。でも、それとこれとは別だにゃ!」
キッパリ言い切ると、オビ=ワンは、ぷいっと横を向いた。
オビ=ワンがしたいのは、アナキンとの議論ではなかった。
したいのは、別のことだ。
だから、師匠は、自分がアナキンに対して不満を持っているのだということが伝わりさえすればよかった。そして、不満を持っていてすら、アナキンの気持ちを得るため努力する余地があるのだという自分の気持ちが伝わりさえすればOKだった。オビ=ワンは横を向く。
このまま言い合えば、口論に発展する恐れがある。
師匠が思い切り臍を曲げていることを理解した弟子は、思わずがりがりと頭をかいた。
とりあえず、自分が床に座ったままでは、師匠の機嫌が良くなるとは思えず、立ち上がり、一歩、オビ=ワンに向かって足を進める。
「……。ええっと、……あ〜。ちょっと、頭の整理をさせて下さい。あの、マスター、その、俺との関係の頻度にご不満が?」
アナキンの足が、床に散らばった部品を踏む。
横を向いたままのオビ=ワンは、つい、いつもの癖がでるのか、ローブの袖の中で、腕を組んでいる。
その上、かわいらしい猫耳に似合わぬ、にやりとした笑いを口元に浮かべる。
弟子の察しの良さが、オビ=ワンは好きだ。
「ああ、そうだとも。それに、内容に対しても、ご不満だ」
猫耳にその堂々とした態度は変なのだが、しかし、アナキンにとって、先ほどの指先ちょこんのポーズよりはずっとよかった。
「……それは、こないだの、もう一回するといっておきながら、俺が寝たことを言ってます?」
アナキンは、普段ならば、決してベッドでのことを口にせぬオビ=ワンがあからさまにそれについて語る真意について考えていた。
オビ=ワンが好む以上に、この弟子は、察しがいいのだ。
アナキンは、近々の自分の行いを思い出す。
アナキンには疑問があるのだ。
オビ=ワンは、確かに目的のためになら柔軟な対応をする性質だが、しかし、この猫耳の目的は、本当にセックスでのサービスなのか?
しかし、不満をもたれても仕方ないほど、近頃アナキンが多忙なのも本当のことだった。
仕方がない。アナキンは、若いのだ。
そして、名だたるジェダイであるオビ=ワンが育てたたった一人の弟子なのだ。
「そうだ。お前はあの時、やると言っておきながら、寝た。あ、寝たにゃ。それから、お前、近頃、手抜きなんだにゃ」
オビ=ワンは、恨みがましくアナキンを睨んでいる。けれど、アナキンが知る限り、オビ=ワンがセックスマニアという事実はなかった。
師は、はっきり言って、淡白なほうだ。
いつだって、アナキンがお願いして、やっとやらせて貰うのだ。しかも、続けば断られる。
「それはすみませんマスター。でも、ナイト時代なんて、寝る暇もないほど、こき使われるのは、あなただって通ってきた道だ。ご存知でしょう? それに、俺には、オビ=ワン・ケノービっていう、すばらしい後押しがあるから、難しい任務に就くことが多い。勿論これも、あなたはご存知なはずだ」
アナキンの足は、今日一日で散らばった床のさまざまな部品を避けながら、オビ=ワンへと近づいていた。
つまりそれは、珍しく取れたオフのこの日、アナキンが一人で楽しく遊んでいたという証拠に他ならず。
たぶん、これが、師匠の奇行の原因だ。と、アナキンは見当をつけていた。
オビ=ワンは、アナキンが側にいることを好むのだ。それは、アナキンが小さな頃から、ずっとそうだったことで、それからオビ=ワンは、セックスそのものより、アナキンとさりげなく接触していることが好きだ。
ソファーにだらしなく寝転がって本を読む自分の伸ばした足の先が、アナキンの背中に触れているとかいうような。
けれど、今日、アナキンはオフの楽しみ方など幾通りでもあったはずなのに、自分本位な楽しみ方を選んでしまった。
目前まで近づいたオビ=ワンを、アナキンの手が、抱きしめる。
アナキンは、猫耳カチューシャが掛けられたオビ=ワンの耳へと唇を寄せる。
「ごめんなさい。マスター。俺、近頃、マスターとセックスしかしてませんよね?」
事実を言い当てた弟子の言葉に、オビ=ワンは悔しそうに顔を赤らめ腕の中で身じろぎして、自分を抱きしめる腕を嫌がった。
その動きの方が、アナキンにとっては、わざとらしい上目遣いより、ずっと、きた。
だから、アナキンは、師匠を抱く腕の輪を狭めて、動けなくすると、髪へのキスを続けた。
「しかも、あなたの言うとおり、とても少ない回数だ……オビ=ワン。……俺、こないだした時、ちゃんとあなたは、好きだって言いました?」
アナキンは、ふかふかの猫耳にもキスをしながら、オビ=ワンを見つめた。
「言うには、言ったかもしれないですよね。あの時、俺、したいばっかりだったし」
アナキンは、オビ=ワンの腰をすくいあげるようにして引き寄せ、長い指を、柔らかな盛り上がりをみせている尻の谷間へとつつっと、動かした。
「好きですよ。マスター。すごく好きです。あなたから誘ってくれるなんて。……俺も、すごくあなたとしたかったんです」
オビ=ワンがぎょっとした顔になる。
アナキンは、自分が恋人に不満を持たせてしまったことを反省していた。
だが、同時に、猫耳が通用するなどという、とんでもない誤解をしたまま自分を愛してくれている師匠に対し、臍を曲げてもいた。
機械への親和性の強いアナキンの日常を知りながら、師匠はどこを、どう誤解して、猫耳などという提案を受け入れる気になったのか。
アナキンには、たしかにオタク気質がある。しかし、だからこそ、アナキンは、自分の好きな世界とそうでない世界をきっちり線引きしていた。
メカオタだといわれるのは、アナキンにとって名誉なことだ。しかし、それ以外だと誤解されるのは、自分の世界の価値を認められていないようで、とても気分が悪いのだ。
アナキンは、オビ=ワンの尻を揉みなら、脅え、引きつった顔をした人のかわいらしい耳にささやく。
「ねぇ、マスター、耳が黒色ってことは、中の下着も黒? もしかして、かわいらしい尻尾が生えてたりしますか?」
その上、アナキンがへとへとになるまで働くことになったこの間の任務は、オビ=ワンが強くアナキンを推薦し、アナキンへと割り当てられたのだ。セックスする気が起きないほど、疲れ果てたのは、アナキンばかりのせいではない。この数週間、アナキンは、師匠の名を守るために尽力した。しかし、そのことに対しての評価はなく、師匠はいたくご不満な様子だ。
力強く抱きしめてくるアナキンの腕の中で、オビ=ワンはのけぞるようにしている。
「しっぽなんて、生えてるわけ……ない!」
アナキンは、それでもまだ、師匠を追い詰める。
「ないニャじゃ、ないの? マスター」
「そう……。ないにゃ! 私は、今、アニャキンとセックスする気もないのにゃ!」
「あれ? どうして? マスター、やりたいって言ってましたよね?」
師匠はそんなこと言ってない。しかし、オビ=ワンも、確かに、アナキンとしたい気持ちはあった。もう随分長くしていない。
だが、慎み深い師匠は、できればそういうことは、夜にしたかった。こんな明るい部屋なんかではいやなのだ。
明るい今、師匠は別のことがしたい。
オビ=ワンは一人部屋で遊んでいるアナキンに思い立って猫耳をつけ、この部屋を訪れたのだが、学者の助言どおりアナキンが自分の猫耳姿にメロメロになると思っていたので、やらせてくださいと低姿勢でお願いする弟子にNOと、突っぱねてやるつもりだったのだ。明るいのなんて嫌だと、かわいく焦らして、夢中にさせるのだ。
おたくには、そういう駆け引きが効果的だと、あの学者も言っていた。
だが、どうやらアナキンは、猫耳好きではないらしい。
だから、アナキンの行動は、オビ=ワンの思い通りではない。
オビ=ワンは、学者が提案してくれた案にあったメイド服を恥ずかしいという理由から選択しなかった自分を悔いていた。
あっちだったら、アナキンがメロメロになって思い通りにできたかもしれなかった。
これから、夕食の時間まで、アナキンの背中にもたれて、本を読むことができたかもしれなかったのに。
メイド服であったとしても、ロリ属性のないアナキン相手では、きっとそれは無理だったろうが、オタクに対して誤解の多いオビ=ワンは、懸命この状況を打破する方法を模索していた。
アナキンの手が、怪しくオビ=ワンの尻を撫でている。
気持ちがいいと、つい流されそうだが、いっそ流されてしまおうかと、ちらりとオビ=ワンも考えるのだが、こんな昼間からなんて師匠はやはり恥ずかしい。
しかし、アナキンは、オビ=ワンを抱き上げると、足で床に散らばるさまざまなものを大雑把にどけ、そこへと師匠を下ろした。それも、四つん這いに這わせて。
「マスター。にゃんこちゃんには、それにふさわしいセックスのやり方でしましょうね」
「にゃにお!!」
今更、にゃぁ、にゃぁ、わめくのは、もう必要のないことのような気がするのだが、師匠は、やっとこの言葉が馴染んだところだった。と、いうか、今、ちょっと癖づいている。その気がなくても、にゃぁ。にゃぁ、わめいてしまう。
アナキンの手が、強引にレギンスを下ろす。
「ふぎゃぁっ!」
オビ=ワンは、逃げ惑う猫のような声を上げた。
「あれ? 尻尾がないですね。でも、下着は黒だ。全く……この黒猫ちゃんは、どこで、こんな誘惑の仕方を覚えてきたのか」
やれやれと苦笑をもらすアナキンは、優しいいつもの顔だった。
だが、きっちりオビ=ワンを押さえ込んで動きを封じていた。その上、アナキンの手は、すばやくオビ=ワンの下着の中へと潜り込む。
指は、尻の谷間に入り込み、ここ暫く触れられることのなかった窄まりの上で、止まる。
くすぐるように指を動かされ、オビ=ワンは、黒い下着の尻を思わず振ってしまう。
「やにゃっ! アナキン」
「やらしいなぁ。この猫ちゃんは」
アナキンは、自分の腰をオビ=ワンの尻へと押し付けると、背中に圧し掛かり、猫耳を噛んだ。
固くなり、尻に当っているアナキンのものに、オビ=ワンの体がこわばる。
アナキンは、小さく笑う。
「マースタ。俺、別に、普通のマスターで、十分好きですし、その気になれますよ。マスターが許してくださるんだったら、今からでもそれを証明できる準備があるんですが、……どうしましょう?」
アナキンは、なにもマニアックなプレイを師匠に無理強いするつもりはなかった。
こんな方法を取ると、酷い目にあうのだと、わかってもらえればよかった。
アナキンは、師匠を普通のセックスに誘ったつもりだった。いや、それどころか、今は嫌だといわれれば、譲歩する準備もあった。
まっ、もし、やらせてもらえるのであれば、ここで我慢を強いられるより、それは、それでありがたかったが。
だが、譲歩されたオビ=ワンの方といえば、思っていた以上に自分がアナキンに飢えていたことに気付いて驚いていた。
押し付けられた硬いものに、じんっと、体が震えたのだ。
アナキンが自分に欲情していることをダイレクトに教えられ、それは、オビ=ワンの欲望に火をつけた。
それは、理屈や、建前では、どうにもならない強さで、オビ=ワンを支配した。
師匠は、項まで真っ赤にして、叫んでいた。
「する。アニャキン。する。お前としたいにゃん!」
師匠は、こんなことを言い出す自分が恥ずかしすぎて、とてもまともな話し方などできない。
金属部品の散らかった床を見つめる目は、恥ずかしさのあまり涙で潤み、しかし、オビ=ワンは自分の背中に圧し掛かる体温をなくしたくなかった。
「アニャキン、しろっ!」
だから、アナキンは、似合わぬオビ=ワンのニャンニャンというしゃべり方が苦手だった。その言葉を聞くと、痒くて落ち着かないのだ。それでも、アナキンは、したいと言い出したオビ=ワンのために苦手を克服する努力を惜しむ気はなかった。
俯くオビ=ワンは、顔どころか項まで赤くして、小さく震えている。
普段禁欲的なだけに、師匠に取り付いた欲望は、このかわいらしい人を激しく支配しているらしく、唇からは、ふうふうと落ち着かない息の音が漏れていた。
アナキンが押し付けているペニスへと触る師匠の柔らかい尻は、いつまでたっても逃げることをしない。
それどころか、わずかにではあるが、オビ=ワンの方から肉付きのいい尻を押し付けてきている。
アナキンは、師匠から衣服を脱がしてやったが、しかし、今日の師匠のお気に入りだからと、猫耳は外さず、四つん這いのポーズもそのままにさせた。
四足で床に這っているオビ=ワンの滑らかな背中や、項、そしてむっちりと肉のついた太腿を、アナキンの舌が舐めていく。
丸い尻には、特に念入りに舌を這わせてやり、師匠自らが開いて付いた股の間にも鼻を突っ込んで、舐めてやった。
バックからだけのもどかしい舌の接触に、オビ=ワンは、腰をくねらせて催促していた。
しかし、アナキンは、柔らかい二つの玉にも、硬くなって先端を濡らしているペニスにも、赤く色づいた尻に顔を埋めながらしか舐めてやらなかった。
それでも、オビ=ワンのペニスからは、たらたらと透明な液体が垂れ落ち始めている。
自分でペニスを扱こうとした師匠の手を掴んだアナキンは、オビ=ワンの指を丸めさせ、床に付かせた。
「爪で傷つけるからダメです」
「……そんなことしない」
「でも、ダメ。マスター、猫ちゃんは、普通そんなことしないでしょ?」
アナキンは、オビ=ワンの顔を舌で舐めながら言った。
悔しそうに師匠の赤い顔が歪む。
「……アニャキン……」
「かわいく言っても、ダメ」
すると、なんとオビ=ワンは、おずおずと白い尻を持ち上げ、背後に立つアナキンへと擦りつけ始めた。
たくましいアナキンの太腿に、オビ=ワンの硬いペニスが触れ、先走りは、アナキンのレギンスを汚す。
「は……んっ、んっ」
アナキンが舐めたため濡れてしまっている頬を赤く染めている師匠は、弟子に手を押さえつけられたまま、固く目を瞑り、けものじみたやり方で快楽を追求し始めた。
裸の股を背後のアナキンに擦りつけ、オビ=ワンは、自慰にふける。
思いがけぬ師匠の姿に、アナキンは驚いた。
だが、そこまで素直に求める姿を見せられてしまっては、アナキンも落ち着いてなどいられない。
アナキンは、動きまわる尻を追いかけ、その入り口をほぐしていった。
突発的に始まったセックスだから、近くにこのいやらしい人の穴を濡らしてやるような手ごろなものがない。しかし、オビ=ワンとの間に経験が少ないわけでもないから、多少の無理をアナキンは選んだ。
唾液を手のひらに吐き、それを汗で濡れ始めている尻へと擦りつける。
滑りの少ない液体の助けを借りて、熱い肉壁を開いていく。
「あっ……あ」
オビ=ワンは、アナキンの長い指を噛んだまま、尻を振っていた。
頭につけた猫耳のカチューシャは、あまりにオビ=ワンが動き回るため、前へとずれてしまっている。
押さえつけられた前髪が、オビ=ワンの目に入りそうだ。
アナキンは、オビ=ワンの尻を掴んで大きく開かせると、谷間で上品に口を噤もうとしている窄まりの上へとペニスの先をあてがった。
「……んっ」
オビ=ワンが息を飲む。
その瞬間に向け、息を吐き出し、体の力を抜こうとしている。
待っているのがよく分かる。
アナキンは、長くオビ=ワンを焦らしてやりたかったが、我慢が利かず、ずぶりとペニスを埋めていった。
普段よりも無理の多い挿入だが、バックから繋がっているため、硬いペニスはずぶずぶとオビ=ワンの中へと埋もれてしまう。
きつい肉輪がアナキンのペニスの根元を噛んだところで、アナキンは、オビ=ワンの腰を掴んだ。
オビ=ワンよりもアナキンの体が大きいため、上から叩きつけるような形でアナキンの腰がオビ=ワンの白い尻を打つ。
激しく突き上げるアナキンの動きに、とうとうオビ=ワンのカチューシャは、顔の前へと垂れ下がってしまった。
それを鬱陶しがって、オビ=ワンが払いのける。
セックスに夢中の師匠が可愛くて、アナキンは、オビ=ワンに硬いペニスを刺したまま、ぎゅうっと体を抱きしめた。
アナキンが白い背中に顔を埋め、幸せを噛み締めている間にも、刺激を欲しがり、はしたなくオビ=ワンが体を動かす。
アナキンは、ペニスの位置をきつくなる奥深くまで進めると、抱いている胸に尖る乳首を掴んだ。
小さなそれを指先で潰す。
「あっ……あっ!」
オビ=ワンの喉から高い音が出た。
オビ=ワンのこんな声は、アナキンのほかには誰も聞いたことがないはずだ。
アナキンは、小さなオビ=ワンの乳首を摘まんだまま、腰を動かす。
後ろに体を引けば、自然と指先が乳首を引っ張り、オビ=ワンはまた、高い声を上げた。
「やっ、……あっ、アナキンっ」
「もっと、して。でしょ? マスター?」
からかうように言うアナキンの顔も、実は、それほど余裕があるわけではなかった。
アナキンのペニスは、オビ=ワンの柔らかく濡れた肉に包まれ、やわやわと締め付けられているのだ。
ずるりと引き抜けば、赤い肉の色を晒してアナキンに纏わりつこうとするそこは、ペニスを押し進めると、入り口をへこませ、一心になってアナキンを受け入れる。
施した滑りの少なさもあって、今日のオビ=ワンのそこは、凶悪なほどきつきつだった。
それでも、アナキンのペニスから漏れ出しているカウパー液が最低限の潤滑剤となり、オビ=ワンの腰を熱くさせ、目じりに涙を溜めさせるための十分な動きがとれないわけでない。
オビ=ワンはアナキンに突き上げられるたび、何度も頭を振る。
がくがくと、落ちる頭は、金色の髪で隠されてしまって、アナキンからは表情が見えなかった。
アナキンは、ぴくんと飛び出した乳首を胸に埋め戻すように押しつぶしながら、オビ=ワンの赤い項を噛んだ。
「やっ、やっ、……んんっ……ん」
「マスター。してって、言わないの?」
「や…だ。やっ、……もっ、やっ」
「それは、もう我慢できないから、いきたいってこと?」
オビ=ワンは、小さな乳首ごと胸を揉みしだかれたまま突き上げられ、とうとうアナキンの手で扱かれることもなしに射精してしまった。
がくがくとオビ=ワンの体が震える。
急激に締まった穴に、アナキンは、ぐっと奥歯を噛み締め耐えると、はぁはぁとせわしなく息をする人の腰を抱き直した。
「マースタ。もうちょっと付き合ってください。……いいですよね?」
ぐっしょりと濡れた睫を拭う暇もなく、オビ=ワンは、また、揺さぶられる。
いくら二人しかない家の中だとはいえ、ジェダイの模範ともいえるオビ=ワンが猫耳カチューシャでうろうろとリビングに現れた。
あれだけ盛り上がってセックスしたくせに、事が終わるとオビ=ワンは、何度もしようとしたアナキンがいかに自分勝手であるかという理論を展開し、つまり、それは殆ど説教であり、以来、猫耳カチューシャは、師匠が弟子を平伏させる印籠代わりとなった。
オビ=ワンが猫耳をつけて現れたならば、アナキンはオビ=ワンが想像するオタらしく振舞わなければならず、子猫ちゃんの言いなりにならなければならない。
強烈な上目遣いなどというわざとらしいポーズは、さすがにもう取ることはしなくなったが、オビ=ワンは、ふかふかの猫耳をご機嫌よくつけ、資料を手に、アナキンの隣へと腰掛ける。
そのうちには、師匠の姿はだんだんとだらしなくなり、足はソファーの上に上がり、アナキンの肩に背中でもたれるようになる。
打ち込み途中のアナキンには、少し迷惑だ。
「にゃぁ」
師匠が、この遊びを大層気に入っているので、アナキンは猫語にもすっかりなれた。
「マスター。お茶ですか? それとも、何か足りない資料が?」
しかし、今日のご注文は、キスだったようで。
オビ=ワンの鼻がアナキンに擦り寄せられた。
END