すぐに不安になる

 

クワイ=ガン・ジンの弟子は、人目のない時を狙い、師匠の手を握るようになった。

クワイ=ガン・ジンは、それを許す。

その時の弟子は、目を合わせない。

食事のテーブル。

テンプルの廊下。

弟子は、さりげなさを装い、師匠の手を握ると、必ず自分から手を放した。

だが、オビ=ワンの態度は、まだ、甘く、最後にちらりと師匠の顔色をうかがう。

その媚態を、クワイ=ガン・ジンは、受け止め、そして、突き放す。

 

クワイ=ガン・ジンは、弟子のベッドに横になっていた。

「なぁ、できたか? パダワン」

「もうちょっとだけ、待ってください。マスター」

データーパットに師が大雑把に入れた記述を、報告書の形へとパダワンは直している。

オビ=ワンは、端的過ぎる自分の言葉を、師が好まないことを知っているので、一生懸命に言葉を探していた。

クワイ=ガン・ジンは、弟子のベッドで、大きなあくびをする。

「適当でいいぞ? オビ=ワン。どうせ報告書だ」

「はい。マスター。急いで仕上げますので」

「私が書いたものより、ずっと評判がいいぞ。お前の報告書」

クワイ=ガン・ジンは、どうしてオビ=ワンがこの程度の報告書に時間を取られているのか、しっかりと気付いていた。

オビ=ワンは、振り返った。

「マスター。眠いですか? よかったら、後でお部屋まで届けます」

にこりと笑うオビ=ワンの夜着は、しっかりと首もとまで釦が止められている。

しかし、オビ=ワンは、膝上までしか丈のないパダワンの夜着を、動きにくいと、自分で更に大きくスリットを入れていた。

偶然を装い、椅子についていたオビ=ワンの手が、夜着の裾を掬い、太腿を大きく露出させる。

白い足が、夜着から零れ、クワイ=ガン・ジンの目に晒された。

弟子の顔は、無邪気そのものだ。

しかし、弟子の目は、師に質問の答えを求めるふりで、顔の上に自分の態度への評価を探していた。

自分が示すことの出来る最高の媚態の効果をクワイ=ガン・ジンの上に確かめようといるのだ。

クワイ=ガン・ジンは、困ったように額を掻いた。

「オビ=ワン」

「はい、マスター」

弟子は、自分が下肢を見せつけているのだということに気付かない振りを続けた。

ごく自然体を装い、幼い媚態で師に挑んでいる。

仕方なく、クワイ=ガン・ジンは、手で口元を覆い、わかりやすくオビ=ワンの足をじろじろと見た。

しかし、厚顔な弟子は、まだ、クワイ=ガンの視線に気付かない振りを続けている。

「遠慮なさらなくていいですよ。後でお届けします。マスター。別に、俺のベッドで寝てくださっても構いませんけど、俺、マスターのことお部屋までお連れすることはできませんし」

「オビ=ワン」

クワイ=ガン・ジンは、弟子の名前を呼んだ。

「はい、マスター」

無邪気を装って返事を返すパダワンは、自分では気付かず、肌を赤く染めている。

腿の間に挟んだ手に込められた力を、クワイ=ガンが気付かないとでも思っているのか、自然を装ったこわばった笑いを浮かべていた。

クワイ=ガン・ジンは、情けのないような顔で、何度か瞬きをし、ごろりとベッドにうつぶせになった。

師は、枕に向かってため息をつく。

「マイ・パダワン。私に叱ってもらいたいのかね?」

顔を上げたクワイ=ガンは、面倒くさそうにオビ=ワンを睨んだ。

「なぁ、パダワンよ。私が、手を握るのを黙認したと思って、調子に乗りすぎていやしないかね?」

「……マスター」

クワイ=ガン・ジンの弟子は、大きく目を見開き、真っ赤に身体を染めた。

震えた声を出し、必死になって、自分の足を隠す。

「それほど、自慢の足か?」

オビ=ワンは、転げるように椅子から立ちあがり、床に膝を着いた。

「申し訳ありません。マスター」

ヤングパダワンは、可哀相な程に身体を縮こまらせる。

だが、オビ=ワンの心にあったのは、マスターへの謝罪ではなかった。

羞恥が、針で刺すように、若いオビ=ワンを苦しめていた。

自分のやり方を、クワイ=ガン・ジンに否定されたということが、オビ=ワンを極限の羞恥に追いやっていた。

残念だが、若さでふくれあがっている自尊心は、オビ=ワンに状況を正しく理解させなかった。

この時点でオビ=ワンは、自分がすぐに師匠から許されると思っていた。

オビ=ワンの師匠は、時に気がないのではないかと思うほど弟子に優しい。

「本当に、……申し訳ありません。マスター」

オビ=ワンは、やり方のまずかった自分ばかりを責めながら、師からの軽い叱責を待ち受け、謝罪を口にした。

クワイ=ガンは、ベッドで横になったまま、弟子の頬を見下ろした。

「近頃、増長気味だな。パダワン」

しかし、クワイ=ガンの声はオビ=ワンの予想以上に冷たかった。

「オビ=ワン、聖堂で、お前が人気のあることは知っているよ。なぁ、パダワンよ。お前の視線ひとつで、おたつくマスター達を眺めるのは、そんなに楽しいかね?」

ヒューマノイドの容姿は、かなりの星系で好まれた。

オビ=ワンの肌から、赤みが抜けた。

クワイ=ガン・ジンは、決して声を荒げず、オビ=ワンに言った。

「彼らが、浮つくお前の気持ちに気付いていないと思っているとしたら、私は、かなり恥ずかしいのだがね」

クワイ=ガンは、容赦なく、パダワンの行状を暴き立てた。

「お前が、色気づく年ごとだとは分かっているよ。オビ=ワン」

「……申し訳ありません……マスター」

パダワンは、自分がしでかしていたことに気付いた。

オビ=ワンの行動は、決して、師の気を惹けていなかったのだ。

若いパダワンは、緊張にこわばり、顔は色をなくしてしまった。

オビ=ワンは、自分の行動が、師の気に障っていたことに気が付いた。

弟子は、身が凍った。

 

その弟子を十分に見下ろしていたクワイ=ガンは、弟子に手を伸ばした。

「オビ=ワン」

「マスター……」

弟子は、手を前に、師の顔を伺った。

その手に縋り付くことが許されるのかどうか。

必死に、弟子は、師の表情を探っている。

どこまでもこざかしいその目がかわいらしく、クワイ=ガン・ジンは、パダワンに向かってもう一度手を差し出した。

「マイ・パダワン」

弟子は、その手に飛び付く。

「申し訳ありませんでした。マスター。俺は、思い違いをしていました。もう決して致しません。マスター。もう、決して致しません……」

おしいだくように、師の手に縋り付いた弟子は、見捨てられまいと必死だった。

「大変、見苦しい真似を致しました。心根を正し、もう、二度と致しません。マスター。本当です。本当に、致しません」

子供らしかった身体の丸みが抜け、多少不格好に身体が作り上げられている今、クワイ=ガンの弟子を形作るのは、あやうい色気だ。

それを大人達は、特別なものとして楽しみ、眺めた。

そして、聡いオビ=ワンは、眺められている自分に気付いた。

師匠の目が、好ましく自分を見るのにも気付いた。

オビ=ワンは、自分が、クワイ=ガンに対して、通用するのだと思った。

「俺が思い上がっていました。……本当に、なんて、みっともない真似を……」

それが、弟子に大胆な行動を取らせた。

師は、弟子が手を握っても黙認した。

だが、それ以上、すこしも反応を返そうとしないことに、若い師匠は、オビ=ワンは酷く焦れた。

「本当に、申し訳ありません。……マスター。どうか、どうか、俺のことを見捨てないで……」

何故、師匠が、一歩を踏み出してこないのかと、弟子は、歯がゆい思いをしていたのだ。

                    

クワイ=ガン・ジンは、涙が、自分の手を伝う感触を好ましく味わった。

クワイ=ガンは、弟子が自分を愛している状況を肯定的に受け止めている。

しかし、彼は、簡単に弟子を受け入れようとはしなかった。

弟子は、もっと価値高く育てることの出来る逸材だ。

ジェダイとしてもそうだが、オビ=ワンは、手さえ掛けてやれば、クワイ=ガンの恋人としてそうとうのものになる。

師は、子供の我が儘に、そう易々と掴まるわけにはいかなかった。

「オビ=ワン」

彼の弟子は、小さく身体を縮こまらせ、必死に師に取りすがっている。

クワイ=ガンは、オビ=ワンに聞いた。

「なるほど、私のかわいらしいパダワンとして振る舞うことを忘れないというわけか?」

「はい、忘れません。マスター。もう、決して。決して!」

オビ=ワンは、必死になって答える。

クワイ=ガン・ジンは、どうでもいいのだが、という雰囲気のままに尋ねた。

「他のマスター達に、色目を使ったりもしないのか?」

弟子は、餌に食らいつくように、即答した。

「勿論!」

そこで、クワイ=ガン・ジンは、わざとオビ=ワンの羞恥を煽るように、ゆっくりとした調子で尋ねた。

「では、オビ=ワン、お前は、私の手も握らず、夜着の裾をわざとめくることもせず、慎ましく、清く生きていくと?」

うなじまで赤くなった弟子は、唇を噛みしめながら、小さな声で返答を返した。

「……ええ、マスター……」

オビ=ワンが、師への謝罪よりも先に、自分のやり方の幼稚さに気付き、自己嫌悪に陥っていたことなど、師匠にはお見通しだった。

そして、クワイ=ガンは、今、オビ=ワンが、嫌と言うほど、反省をしていること、しかし、この反省が長く続かないことも知っていた。

オビ=ワンというパダワンは、とても、ジェダイに向いていたが、同時に、とても向いていなかった。

かわいらしいこの子は、世界全てを愛することが出来る。

その大きな愛情は、すばらしいジェダイの特性だ。

だが、同時に、オビ=ワンは、誰かのいる世界しか、愛せなかった。

誰か、愛する者がいて、初めて、オビ=ワンは世界を認識する。

今、オビ=ワンの世界の中心に立つのは、偉大な導き手であるクワイ=ガンだ。

クワイ=ガンへの愛なにし、オビ=ワンは、世界が理解できない。

クワイ=ガンが、いなければ、オビ=ワンにとって、世界は愛するに値しない。

この愛の有り様が、オビ=ワンを不安定にさせた。

つまり、逆に言えば。

オビ=ワンは、クワイ=ガンに愛されていなければ、自分が世界の一員であるということすら、認識できない。

脆くも、愛情深いオビ=ワンのフォース。

 

クワイ=ガン・ジンは、笑った。

「嘘が上手いな。私のパダワンは」

クワイ=ガン・ジンの手が、オビ=ワンの濡れた頬をぬぐった。

オビ=ワンは、信じて欲しいと、顔を上げた。

「マスター……」

オビ=ワンの目尻の涙は盛り上がったままぷっくらと膨れた固まりになっている。

クワイ=ガンは、涙に触れた。

涙は、なめらかな頬をこぼれ落ちていく。

「マイ・パダワン」

ベッドから身を起こしたクワイ=ガン・ジンは、弟子の顎を持ち上げた。

開き気味の唇に、唇を重ね合わせる。

艶やかで、体温の高い弟子の唇は、クワイ=ガン・ジンの笑みを更に深くした。

クワイ=ガン・ジンの弟子は、ぽかんと口を開いたままだ。

「私の弟子は、本当に、私とのキスをなしに、一生を過ごすことが出来ると信じているんだろうか?」

「マスター……」

オビ=ワンの目から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。

弟子は、頬に無様な笑顔を浮かべる。

「……怒っていらっしゃるのだとばかり」

「怒っているとも。私は、自分のパダワンだけを、好み通りに育て上げるのが趣味だからね。近頃のお前の態度は、全く頂けない。恥がない」

クワイ=ガンの言葉に、弟子は、うなだれる。

「はい……」

「オビ=ワン、お前が、自分の価値を認めていくのは、すばらしいことだ。しかし、その価値を安売りしようとすることは、好ましくない」

「はい……」

弟子の声は小さくなった。

クワイ=ガンは、座った自分の膝を叩いた。

「オビ=ワン、おいで」

弟子は、涙で濡れた目を丸くした。

「……あの……マスター。さすがに、それは……」

真っ赤になってためらう弟子の存在に、クワイ=ガン・ジンは、内心にやにやと笑った。

好きな相手が、膝においでと言っているのに、座れないようでは、オビ=ワンはまだ、まだだ。

ただ、ためらう程度には、成長した弟子がクワイ=ガンにとって、かわいらしい。

「誰が、膝に座れと言った? 悪い子にお仕置きしてやろうと思ってね」

クワイ=ガン・ジンは、オビ=ワンの腕を引いて、自分の膝の上にうつぶせにした。

オビ=ワンは、小さな子供が、お尻を叩かれるのを待つように、尻を付きだし、待っている姿勢だ。

「えっ! マスター。ちょっと!」

慌ててる弟子の頭を撫でて、力づくで、下を向かせると、クワイ=ガン・ジンは、大きく裾の割れたオビ=ワンの夜着をめくり上げた。

「マスター!!」

オビ=ワンが裏返った声で叫んだ。

弟子は、自分で裾をめくり上げるのは、平気でも、人にめくられるのは、耐え難いらしい。

これで、一体何をクワイ=ガン・ジンに望み、何をするつもりだったのか。

師匠は弟子の想定するセックスというものが知りたかった。

真っ白な下着が、弟子の張りつめた尻に食い込んでいる。

「なぁ、パダワン。もうワンサイズ大きいのにした方がいいんじゃないか?」

クワイ=ガンは、尻の盛り上がりをぴったりと教える白い布地を撫で、オビ=ワンの身体をぶるりと震えさせた。

かわいらしくも年頃の弟子は、たったそれだけの刺激で、ぴくりとペニスを勃ちあがらせている。

恥ずかしさのあまり唇を噛む、弟子は、本当に愛らしかった。

クワイ=ガンは、弟子の背中をあやすように撫で、それから、大きく手を振り上げた。

パシンっ!

「ヒッ!」

弾力のある若い尻が打たれ、オビ=ワンの口からは、小さな悲鳴が上がった。

オビ=ワンは、まさか、本当に叩かれるなどとは考えていなかった。

続いて、クワイ=ガンは、もう一発、オビ=ワンの尻を叩く。

パンッ!

オビ=ワンは、身体を竦め、強く師の膝にしがみついた。

クワイ=ガンは、赤くなった尻を優しく撫でる。

「オビ=ワン。痛いだろう?」

「……痛いです。マスター……」

オビ=ワンの目に涙がにじんだ。

オビ=ワンは、夜着の裾をまくられ、それから行われるのが、本当にお仕置きだとは夢にも思わなかった。

尻をなで上げられた時、快感の予感だけで、オビ=ワンがぞくりと身を震えさせたというのに、師匠は、悲鳴を堪えるのが必死という程、強く叩く。

パンっ!

とうとう三発目が、尻にヒットし、オビ=ワンは、潤んだ目で師匠を睨んだ。

「本当に痛いです。マスター!」

「オビ=ワン。これで、痛みを思い出せる間は、私に愛されていると自覚できるな」

クワイ=ガンは、笑った。

オビ=ワンは、嫌そうに顔を顰めた。

曲がった弟子の口を師匠はついばむ。

かさついた師匠の唇が、柔らかな弟子の口を吸った。

甘いキスを何度かされて、オビ=ワンの身体からは、力が抜けた。

「……マスター……」

「オビ=ワン、私の可愛い子。知っているのかい?」

師匠は、すっかり力を抜いている白い尻の下着へと指を滑り込ませた。

「私に愛して欲しかったら……」

盛り上がった尻の間に指を忍び込ませ、やっと生え揃った陰毛に隠された小さな尻孔を指で撫でる。

「ここに、私のものをいれることになるんだ。分かっているのかい?」

「……マスター!」

オビ=ワンは、ぎゅっと尻に力を入れた。

まだ、指一本入ってもいないというのに、尻の穴は、きゅうきゅうと締められている。

オビ=ワンの眉が泣きそうに寄せられている。

クワイ=ガンは、ぎゅっと皺の寄ったそこを撫で、次に、こんな状態だというのに、立ちあがっているオビ=ワンのペニスを袋ごと掴んだ。

「マスターっ!!」

「こっちは、私に舐め回される。そして、お前の口は、私のペニスを舐めることになるだろう。さて、口にはいるかな?」

クワイ=ガンは、ぎゅっと握られているオビ=ワンの手を取り、自分の股間に押しつけた。

「これだよ。舐められるかい?」

「……マスター……」

オビ=ワンは、真っ赤になった顔のまま、ぎゅっと目を瞑り、大きく口を開いた。

舌を口の外へと押し出す。

弟子は、出来ると言いたいのだろう。

怖がってぴくぴくと震えている瞼が愛らしく、クワイ=ガンは、突き出された舌にぺろりと舌で触れた。

「ひっ!」

「可愛い子だ。だが、今日のところは、これでおしまいにしよう」

「えっ……マスター」

オビ=ワンの顔は、見放されたのかという不安で一杯だ。

「もう一発叩かれないとわからない? パダワン」

クワイ=ガンは、盛り上がった尻を軽く叩いた。

痛みの予感に、オビ=ワンが身体を竦ます。

「何を不安になる? パダワン。私がお前を愛情深く育てていると教えたはずだよ」

「……はい。マスター」

不承不承パダワンは頷く。

「じゃぁ、オビ=ワン。報告書の続きをまとめて」

クワイ=ガンは、オビ=ワンの夜着を引き下ろし、膝の上から立たせた。

興奮しているオビ=ワンのペニスが、勃ち上がり、夜着の前を押し上げているが、師匠は、ごろりとベッドに横になる。

「早く書き上げなさい。パダワン。久し振りに、一生に寝よう」

弟子のペニスは、硬く勃ち上がっていた。

だが、師の指示に、弟子は、すごすごと、机に向かう。

しかし、弟子には、師匠と一緒に眠り、彼の機嫌を損ねずに居られる自信がなかった。

弟子は、師匠の胸に顔を押し当てたい。

そして、腰を擦りつけたい。

師匠の手で、自分をなで回して欲しい。

オビ=ワンは、ほぼ、終了している報告書の文を弄り回す。

「早くおいで。マイ・オビ=ワン」

 しかし、これは、お仕置きでなく、綺麗な顔をして泣くようになったご褒美だと、師匠は、言った。 

 

END

 

あっ、お尻叩くのを仕込んるねvv

こういう不格好な年頃のオビってかわいいv