ジェダイの育て方

 

オビ=ワンは、たった一人の楽しみに耽っていた。

それは、最初、ただの真似ごとから始まった。

最初は、本当に、ちょっとした憧れを体現しようと、オビ=ワンは、マスタークワイ=ガンのローブに袖を通したのだ。

それは、オビ=ワンには大きかった。

大きいことが嬉しくて、オビ=ワンは、クワイ=ガンの口真似をしてみた。

一人、クワイ=ガンがオビ=ワンを褒める時に口にする「私のパダワンは、本当に優秀だ」と、言う声を真似して、そうするうちに、頬が赤く染まった。

オビ=ワンは、自分は、なんて馬鹿なことをしているのかと、照れた。

だが、本当は、どうしてこうしたかったのか、必死に誤魔化そうとする自分がとても恥ずかしかった。

誰よりも一番誤魔化しにくいのが自分だ。

オビ=ワンは、鼻をうごめかせて自分のマスターの匂いを探している自分に気付いていた。

肌触りを確かめるように、何度もローブで肌を擦った。

まるでクワイ=ガン・ジンに抱きしめられているのだと誤解するために。

今は、ローブに口付けを繰り返している。

 

昼の光が差し込む、共有スペースのリビングの床でのたうつオビ=ワンの手がせわしなく動いていた。

右手は、しどけなく開かれた胸の這い、しきりに乳首をつまみ上げていた。

左手は、勃起したペニスを扱いている。

左の手が濡れていた。

ペニスは、くちゅくちゅと水音を立てている。

「……マスター……」

大きなローブにくるまって、クワイ=ガン・ジンのパダワンは、うっとりと目を閉じ、頬を赤く染めていた。

唇からは、しきりに息が吐き出されている。

少しでも楽しみを引き延ばしたいのか、オビ=ワンの手が、何度もきつくペニスを握りしめた。

「……っんっ、……マスター」

オビ=ワンのマスターは、夕方には帰ると、評議会の呼び出しを蹴り、逃げ出した。

捕まえられる可能性のある家に、帰って来る可能性は、今までのことを考えてもあり得なかった。

オビ=ワンのまっすぐな足には、下衣が中途半端に絡んでいた。

むき出しになった柔らかな肌を、オビ=ワンは、マスターのローブに擦りつける。

繰り返しマスターの名を呼ぶ、オビ=ワンの口からは、唾液が零れていた。

 

オビ=ワンは、焦がれる程、クワイ=ガンを求めていた。

クワイ=ガンは、オビ=ワンの前に示されたただ一つの道だ。

思慕に、肉欲が絡み始めたことに、オビ=ワンはとまどいを覚えたが、その感情を留めることは出来なかった。

ただ、自分が、クワイ=ガン・ジンには不足だと認めているオビ=ワンは、決してそれを打ち明けることができない。

 

クワイ=ガン・ジンは、戻ってみた家の共有スペースが決して立ち入ることのできない状態であることに、苦笑を浮かべた。

クワイ=ガン・ジンのかわいいパダワンは、夢中になって、ペニスを扱き立てていた。

丸まった若い肩が愛しかった。

ローブに何度も顔を擦りつけ、アレを続ければ終いには、頬がすれて赤くなってしまうことに、パダワンは気付いていないに違いなかった。

もっと見ていれば、オビ=ワンが始めることもクワイ=ガン・ジンは知っていた。

快感に、夢中になったオビ=ワンは、クワイ=ガン・ジンのローブを汚すことにためらいを忘れ始める。

直接ペニスをローブに擦り付け始め、自分で射精を我慢しているくせに、焦れると苛立たしげにローブを噛み、じたばたとローブと供に、床を転がり始める。

そのうち、居もしないマスターを相手にセックスの真似事を始め、一人ごとが口からあふれ出す。

 

「はい。マスター」

そう言って、オビ=ワンは、口を開いてキスを待つ。

多分、クワイ=ガン・ジンが、オビ=ワンに口を開いているように命じているのだ。

「……っんっ、ダメ、マスター」

オビ=ワンが、自分の足で、自分の腕を強く挟み込む。

クワイ=ガン・ジンの手がオビ=ワンのペニスに悪戯でもするのだろう。

途中、むなしくなるのか、クワイ=ガン・ジンのパダワンの行動は、もとの自慰に戻ったりする。

クワイ=ガン・ジンのローブを脱ぎ捨て、それを股で挟んで、必死になって擦りつける。

 

オビ=ワンは、きつく指で乳首を引っ張った。

平ぺったい胸がつまみ上げることで、小さな乳房のようになった。

クワイ=ガン・ジンのパダワンは、痛みに顔を顰め、小さな舌打ちをした。

自分で胸を撫で、しきりに腰をひねった。

股の間に挟んだマスターのローブに濡れた亀頭を擦りつける。

「……ああっん。マスター……」

一人しかいないと思って、オビ=ワンの口から出る声には遠慮がない。

 

クワイ=ガン・ジンの弟子は、その人が前にいる時には、全くもって清潔な顔をしていた。

性欲などというものを生まれてから一度も感じたことがないと言いたげな生真面目な顔をして、クワイ=ガン・ジンの前に立った。

オビ=ワンは、決してマスターにその気持ちを悟らせなかった。

と、本人は、きっとそう思っていることだろう。

クワイ=ガン・ジンは、かわいい弟子が切ない目をして自分を見つめていること十分承知していた。

ジェダイマスターが、オビ=ワンの一人遊びに気付いたのは、弟子には可哀相だが、最初の一回からだ。

自分のローブに袖を通し、かわいらしい、なりきり遊びを始めたかと思うと、パダワンは、身体を丸めて股間に手を伸ばした。

唇を噛みしめるようにして、ペニスをしごき始めたかと思ったら、射精した後に、泣き始めた。

 

オビ=ワンは、両手でローブを抱きしめると、しきりにキスを繰り返した。

目の端に涙を浮かべ、ローブの匂いを嗅ぎながら、腰を動かしている。

オビ=ワンの手が、自分の編んだ髪を引っ張った。

弱い力だが、何度も繰り返し、引っ張る。

 

クワイ=ガン・ジンは、自分の癖が、弟子によって繰り返されるのに、また、小さな苦笑を浮かべた。

ちょうどいい紐だと、クワイ=ガン・ジンがオビ=ワンの髪を引っ張ると、弟子は、むっとした顔をする。

それなのに、どうだ。

一人遊びでは、それが活用されている。

 

「……んんっ、マスター。いきたい。……いきたい」

オビ=ワンの手がローブの上から自分のペニスを握った。

強く押さえ込み、射精に向かって、きつく目を瞑っている。

腰がしきりに動いていた。

唇が、何度も開かれ、クワイ=ガンの名を呼んだ。

 

 

クワイ=ガン・ジンは、共有スペースに足を踏み入れた。

オビ=ワンがオナニーに夢中になっていたこともあったが、このジェダイマスターは気配を消すのが上手かった。

床に頬を押しつけて喘いでいる弟子の顔のすぐ脇へとクワイ=ガン・ジンは足を付いた。

はっとしたオビ=ワンが目を開けた。

瞬間、オビ=ワンの身体が固まり、信じられないものでも見るように、そろそろと視線が上がっていった。

「……マスター……」

声が震えていた。

あれほど赤かった身体が、真っ白だ。

クワイ=ガン・ジンは、唇の端を引き上げた。

「なんだね? マイ・パダワン」

見下ろす先の愛しい生き物の頭を撫でてやりたかった。

しかし、クワイ=ガンはそうしなかった。

オビ=ワンは、泣きそうな目をして、身を起こした。

はだけられた上衣は、オビ=ワンの身体を隠す役割をしなかった。

クワイ=ガンのローブも半端に絡んでいるだけだ。

オビ=ワンの肌は、泡立っていた。

それでも、クワイ=ガンのパダワンは、顔を伏せたまま、小さく口を開いた。

「おかえりになっていると気付かず、大変失礼なところを……」

クワイ=ガンお気に入りのオビ=ワンの気の強さが、現れていた。

弟子が顔を上げられずにいることを良いことにクワイ=ガンはにやりと笑った。

「ああ、そうなんだよ。私はお帰りになっていたのだ。私のパダワンよ」

節を付けたように言ったクワイ=ガンの言葉を、オビ=ワンは、酷い叱責だと受け取ったようだ。

きつく肩を竦め、更に身体を小さく丸めた。

「申し訳……」

クワイ=ガンは、オビ=ワンの言葉を受け入れず、更に追いつめた。

「パダワン。手に持っているものは何だね?」

「……これは……」

オビ=ワンは申し開きが出来なかった。

がたがたと震え出しそうなくせに、だが、オビ=ワンは下手な言い訳をいっさいしなかった。

クワイ=ガンは、本当にこの子はかわいらしいと思った。

「持って出るのを忘れたから、取りに来たんだが」

追いつめるクワイ=ガンの視線の下で、オビ=ワンが、すがるような目で師匠を見上げた。

「……申し訳ありません。……今、新しいのを取ってきます」

しかし、そう言ったオビ=ワンは立ちあがることが出来なかった。

師匠の目が、オビ=ワンを監視していた。

見下ろす目は、平然とオビ=ワンの痴態を確かめていた。

オビ=ワンのペニスは、クライマックスの緊張感はなくなったものの、まだ勃起したままだった。

わざとらしく服を直すことも出来なかったし、だからと言って、クワイ=ガン・ジンのローブを借りて隠したままにしておくことも出来なかった。

いや、隠しきれていない。

股の間に挟んだローブは、片方の睾丸を潰していた。

だが、もう片方は、零れ出ている。

 

クワイ=ガン・ジンは、身を竦ませているオビ=ワンに命じた。

「パワダン。私のローブを離しなさい」

クワイ=ガンの声は強かった。

それを離せば、オビ=ワンのペニスは丸見えになった。

だが、オビ=ワンにとって、マスターの言うことに否を唱えることなどできなかった。

オビ=ワンは、唇を噛んだまま、「はい。マスター」と答えた。

震える手で、べっとりと自分の先走りに濡れたマスターのローブをめくった。

ローブの中に篭もっていた精液の匂いが部屋の中に広がった。

オビ=ワンは、うなじまで真っ赤になった。

足を引き寄せ、少しでもペニスを隠そうとしたオビ=ワンに向かって、マスターが新しい命令を下した。

「続きはしないのか? オビ=ワン」

「えっ?」

オビ=ワンの目は、憐れみを誘うほどまっすぐにクワイ=ガンを見上げた。

クワイ=ガンは、弟子に向かって笑って見せた。

「そこまでしておいてやめるのか? パダワン」

クワイ=ガンの視線の中で、オビ=ワンの顔が泣き出しそうに歪んだ。

「……いえ、いえ……あの、マスターには、本当に、申し訳なく……」

オビ=ワンの声に涙が混じった。

 

身の置き所もないと、後悔にさいなまれる弟子の様子は、クワイ=ガンを満足させた。

クワイ=ガンは、近頃のオビ=ワンの様子が気に入らなかった。

オビ=ワンは、師に気付かれていないと自信を持ち、一人遊びに慎みをなくしていた。

師は、この弟子を愛しく思っていた。

いつかは、この子の望みを叶えてやるつもりもある。

だが、そのいつかは、この年若いパダワンが自分の気持ちの危うさをもっと自覚できてからだ。

 

オビ=ワンは、自分がしでかした不始末に、死んでしまいたいほどだった。

クワイ=ガンは、オビ=ワンを怒っていた。

怒られて当然だった。

自分が何を望み、何をしていたのか、敬愛するマスターに知られた羞恥に、オビ=ワンは、何もかも投げ打ってここから逃げ出したい気持ちだった。

だが、そうしたら、二度とクワイ=ガンと会えなくなる。

オビ=ワンの手が、そろそろとペニスに伸びた。

オビ=ワンは、死にたい程の羞恥の中にあっても罰を受け、クワイ=ガン・ジンに許して貰うことを選んだ。

 

クワイ=ガンは、弟子が、全身を真っ赤に染めて、ペニスを握るのに、柔らかな体を抱きしめてやりたかった。

ぐすぐすと鼻を鳴らし、オビ=ワンが、中途半端に勃起したままのペニスを扱く。

時折クワイ=ガンを見つめ、すぐそらされる目が、必死にクワイ=ガンの許しを求めていた。

「オビ=ワン。続けなさい」

「……はい。マスター」

 オビ=ワンの頬に涙が伝う。

 

結局、クワイ=ガンは、オビ=ワンが射精し終わるまで、弟子に許しを与えなかった。

立ったままの上から、オビ=ワンを見下ろし、弟子の手が緊張のあまりいけなくなっているペニスを扱くのを最後まで見つめた。

肩で息をするオビ=ワンの身体に師匠は触れた。

弟子は、びくりと身体を竦ませた。

クワイ=ガン・ジンは、罰を受けたオビ=ワンに優しい声を出した。

「マイ・オビ=ワン」

オビ=ワンは、大きな目からぼとぼとと涙を零した。

必死の面もちで、師の手に縋り付く。

「……許してください。……マスター」

オビ=ワンは、クワイ=ガン・ジンの足に頭を擦りつけた。

「……もうしません……本当です。……もう、絶対にしません。……すみません……マスター」

クワイ=ガン・ジンは笑った。

膝をついたクワイ=ガンは今までの雰囲気を払拭していた。

いつも砕けた様子だ。

「オビ=ワン。一緒に手を洗いに行くか? お前のおかげで、私まで汚れた」

「えっ?……ごめんなさい。……ごめんなさい」

オビ=ワンは、わけも分からず謝った。

オビ=ワンは必死になるあまり、精液で汚れた手のまま、クワイ=ガンの手を握っていた。

それは確かなのだが、クワイ=ガンの様子が違いすぎた。

クワイ=ガンの目が優しくオビ=ワンを見つめる。

「なんだったら、身体も洗ってやろうか? 久し振りだろう? 大きくなったからと遠慮していたが、反対にここまで大きくなったのなら、問題なくなったな」

オビ=ワンの身体を眺め、にやりと笑ったクワイ=ガンに、弟子は頬を朱に染めた。

クワイ=ガンは、汚れた手のまま、オビ=ワンの涙で濡れた頬に触れた。

「オビ=ワン、私に、虐められたと思ったろ」

「……マスター?」

「しかしな。いくら私が留守にしていると言っても、この場所は、いくらなんでも大胆過ぎた。ジェダイだからとか、いう前に、普通の常識としてもだな」

ごほんと偉ぶった咳払いをしたクワイ=ガンは、オビ=ワンの手を取って立たせた。

クワイ=ガンは、自分がオビ=ワンの自慰の対象となっていたことを気付いていない振りをした。

「……マスター?」

オビ=ワンの目は、クワイ=ガンを疑っていた。

だが、言葉通りに、クワイ=ガンの言葉を受け取ってしまいたい誘惑が、オビ=ワンの中に渦巻いているのが、クワイ=ガンには手に取るようにわかった。

「人のローブを使うのもやめてくれ。確かにそれは肌触りがいいがな。お前の毛布でも使え。まず、第一のルールだ。自室でやること。人のものを勝手に使わないこと。これだから、聖堂育ちは……」

「……マスターも聖堂育ちです!」

オビ=ワンの顔に希望の光が差した。

オビ=ワンは、誘惑に負けたのだ。

「泣いていたくせに」

「泣きたくもなります!」

 

 

マスタークワイ=ガンは、オビ=ワン・ケノービに、一度謝罪の言葉を言わせ、それで許した。

身をもって気持ちを知られる恐怖を体験したクワイ=ガンの弟子は、ぎりぎりと自分の感情を締め上げるようになった。

クワイ=ガンの優秀な弟子は、師匠の望み通り、瞳の奥に、微かに恋情を覗かせるだけだ。

それは、敬愛の目によく似ている。

羞恥を枷に、クワイ=ガンに不足なく育っていく弟子の有り様が、師匠には愛しかった。

「オビ=ワン。取り込み中ではないかね? 部屋に入ってもいいかね?」

わざとらしくクワイ=ガンは、オビ=ワンの部屋のドアを叩く。

「どうぞ、マスター。お入り下さい」

クワイ=ガンの弟子が、つんと澄ました顔で、ドアを開ける。

クワイ=ガンは、一つ、オビ=ワンに新しい楽しみを与えた。

オビ=ワンは、師匠の視線に晒され、上り詰める快感を知った。

 

 

END

 

 

こっちの師弟もおいしい……。