過ち

 

クワイ=ガン・ジンの弟子は、他のジェダイマスター達が羨むほどのいい出来だった。

オビ=ワンは、我慢強く、修行が好きで、その上、気も利く。

彼は、全てのことに対し、先回り出来るほど頭がいいくせに、しかし、あえてそうしない気だての良さまで持っていた。

師は、ライトセイバーの鍛錬や、フォースを使う体術など、技術的な面でなら、師は、弟子に教えてやることが山とあった。

だが、フォースを操るために必要な清廉な人格形成についてなど、クワイ=ガン・ジンの方が若いパダワンにはっと教えられることの方が多かった。

弟子は、その若さだったら、烈火と怒り、我を忘れるような場面でも、師が言うことに異議を唱えず、もし、口にしてしまった時は、必要な時を待ち、「申し訳ありませんでした。出過ぎたことを申しました」と謝る。

オビ=ワンに、ずる賢さはなかった。

だが、クワイ=ガンの弟子は、必要なら交渉をすることを生まれながらに知っていた。

あえて、押し、そして、引くのも、その表れだ。

もう、ただでさえ、ふらふらと落ち着きがないと言われつづけたジェダイマスターに、パダワンに教えることなどありはしない。

 

そんな弟子だから、クワイ=ガン・ジンの身の回りのことを世話することは、彼の日常だった。

それも、その出来映えは、家事用ドロイドを遙かにしのぐ。

しかし、いくらきれい好きとは言え、ここの所、やたらと頻繁にシーツを洗っているオビ=ワンに、クワイ=ガン・ジンは、さすがに違和感を覚えた。

弟子が早起きなのは、いつものことだった。

だが、手早い彼は、わざわざ早起きして、洗濯をしなければならなくはなかった。

なのに、オビ=ワンは、朝食のサーブをする時には、もうすでに、すべての洗濯を干し終え、天気のいい日など、下手をしたら、乾いてすらいる。

「なぁ、オビ=ワン」

クワイ=ガン・ジンは、健やかな顔をした弟子が皿に載せた料理を前に、苦渋に満ちた顔をした。

朝日の中の彼の若いパダワンは、師の言葉を待ち、持っていたフォークすら置いた。

青い目が尊敬を含んで、クワイ=ガン・ジンを見つめた。

「なんでしょうか?マスター」

できすぎる弟子は、時にマスターを追いつめる。

自分が聞こうとしていることが、あまりにも的外れだった時のことを思い、クワイ=ガン・ジンは、出来ればオビ=ワンに質問したくなかった。

きっとこの弟子は、違っていたとしたら、笑顔で、「気になさらないで下さい」くらいは言うだろう。

自分の想像に、クワイ=ガン・ジンの顔がさらに渋くなった。

それでも、師は、弟子のことを思い、質問した。

これほど頻繁に、オビ=ワンがシーツを洗うには、理由があるはずなのだ。

「……すまん。パダワン。直裁に聞くぞ。……お前、身体の調子がおかしいのか? ……いや、もしかしてなのだが、おねしょをするのか? 昼間の修行がきつすぎるのか?」

質問を口にし、さすがに、その内容の情けなさに、クワイ=ガンの口の中が苦かった。

だが、オビ=ワンは、フォークを落とした。

決して、おねしょをしていたせいではなかった。

オビ=ワンは、自分の行動が師匠に不審を与えていたとは思ってもいなかった。

気付かれていたという衝撃に、オビ=ワンの顔色がなくなった。

しかし、弟子の様子に、やはりきつすぎる修行のため、夜尿症を発生していたのかと、慌てた師匠は、席を立って、オビ=ワンの肩を抱いた。

こわばった肩をなでさすり、ずっと優等生だった少年を落ち着かせようとした。

「平気だ。オビ=ワン。ジェダイの修行は、並じゃない。身体を壊す者だっている。精神のバランスが崩れることだって、いくらでもある。だから、……もし、そうなら、私は、お前のマスターとして、訓練のメニューを考える」

「……はい。マスター」

震える唇から返事を返したオビ=ワンは、しかし、反射でいつもの言葉を発しただけだった。

動揺がヤングパダワンを襲っていた。

うつむき、じっとテーブルの上を見つめる少年の姿に、クワイ=ガンは、できるだけ優しい声を出した。

「大丈夫か? オビ=ワン」

「はい。マスター……」

あまりのショックに、若いパダワンは、顔が上げられない。

それを思い詰めていると誤解したジェダイマスターは、パダワンのことを抱きしめた。

「すまない。オビ=ワン。お前は、何も悪くないんだ。お前が優秀なのをいいことに、過度の加重を掛けすぎた私がいけない」

クワイ=ガン・ジンは、発達段階の細い身体を抱きしめ、自分の弟子が、まだ、若すぎるくらい若いのだということを改めて思い出した。

しっかりしているのを良いことに、下手をすると頼ってしまうなど、やはり、マスターとして正しい態度ではない。

クワイ=ガン・ジンは、短いオビ=ワンの髪を撫でた。

「大丈夫だ。オビ=ワン……」

クワイ=ガンの胸で、オビ=ワンが小さな声をだした。

ばれたというショックから少し立ち直ったオビ=ワンは、誤解を解きたかった。

オビ=ワンがシーツを洗っていたのは、決して、おねしょしていたからではない。

違うのだが、それを、マスターに対して、真実を打ち明けるのは、オビ=ワンにとって、羞恥でどうにかなりそうだった。

「いいえ、マスター……」

泣き出しそうなパダワンの声に、クワイ=ガン・ジンは、腕の力を強くした。

「なにが、違うだ。オビ=ワン。こういう時は、私を責めればいいのだ。お前は、過ぎるほどよくやっている。修行の習熟度だって、同じ年頃の子供の中では、群を抜いている。いや、すべて、やりすぎな程だ。修行の内容を容易くしたところで、お前が堕落するわけなんかない」

「いいえ、マスター……」

オビ=ワンは、否定を繰り返すしかできない。

ますます、クワイ=ガン・ジンの抱きしめる力が強くなる。

「黙るんだ。オビ=ワン。全ては、お前の様子に気付かなかった私が悪いのだ。……オビ=ワン、正直に言うんだぞ。いつからだ? 他に、どこか調子の悪いところがあるか? なぁ、血が混じったりしてないか?」

クワイ=ガンは、オビ=ワンを抱きしめたまま、じっと顔をのぞき込んだ。

師の心配そうな目に見つめられ、オビ=ワンの目は泳ぎ、次第に顔が赤くなった。

オビ=ワンの悩みは、師の思いとは全く別のところにあった。

だが、唇を噛みしめるようにして、顔を赤くするオビ=ワンに、クワイ=ガンは、そう言えば、この子が泣くのを見たことがなかったと思った。

「泣いてもいいぞ。オビ=ワン。不安だったろう? 私が悪かった……」

潔く謝ったクワイ=ガンの腕の中で、彼の若いパダワンは、とうとう真っ赤になった。

とりあえず、師の慈愛に満ちた視線を避け、テーブルへと視線を泳がせながら、ヤングパダワンは、ぼそり、ぼそりと口を開いた。

「あの……マスター。違うんです。……あの……その……」

普段なら、理路整然と申し立てるオビ=ワンが今日は、まったくしどろもどろだ。

しかし、師弟愛に目覚めたクワイ=ガンは、力強く頷きながら、オビ=ワンの言葉を待った。

「あの……マスター……あの……」

「いいぞ。なんでも言ってみろ。パダワン」

度量の広いのが、クワイ=ガンの売りだ。

熱く弟子の瞳を見つめるクワイ=ガンに、オビ=ワンは、指の先まで赤くなった。

「オビ=ワン、熱があるのか?」

自分が弟子の不調を見逃していたという自責の念に駆られているクワイ=ガンは、またもや見当違いの心配をした。

クワイ=ガンの手が、オビ=ワンの額に触れた。

オビ=ワンは、クワイ=ガンの手の上から、手のひらを重ね、強く目を瞑った。

「マスター……」

自分の至らない点を師の目に晒さなければならないことは、オビ=ワンにとって酷く羞恥を伴うことだった。

「……マスター。あの、俺、……どうしても上手くコントロールできなくて」

オビ=ワンは、シーツを洗う原因になっている事象について説明しようとした。

クワイ=ガンも、オビ=ワンがシーツを洗わなければならないことの理由について話しているつもりだった。

「大丈夫だ。オビ=ワン。身体の調子さえ良くなれば、必ず治るから」

「違うんです。マスター。その、俺、身体の調子は、悪くないんです。そうじゃなくて」

頬を真っ赤にし、潤んだ目をして見上げる弟子は、師匠の前で小さく首を振った。

「あの、マスター。俺、成長したら、精通があるということはちゃんと学びました。けれど……」

オビ=ワンの言葉が羞恥のためか途切れた。

クワイ=ガン・ジンは、思わず大きく頷いた。

「……なるほど……、そういうことか……」

自分の見当違いの心配に呆れながらも、安心したクワイ=ガンは、弟子の髪を乱暴に撫でた。

「そうか、なるほど、そういうことか」

クワイ=ガンは、笑い出した。

腕の中に囲い込んだ弟子をぎゅっと抱きしめ、大声で笑った。

あまりに恥ずかしいせいなのか、オビ=ワンの目に涙が盛り上がった。

「すまない。オビ=ワン。泣かなくていい。誰でも最初はそんなもんだ。何も気にすることはない」

「でも、マスター。俺、上手くできないんです」

頬の赤い、オビ=ワンの眉の間に皺が寄っていた。

「何がだ? かわいい弟子よ」

弟子が、ひとつ成長したのだと、機嫌のいいクワイ=ガンはきまじめ顔をしたオビ=ワンに笑いかけた。

「マスターはどうしてらっしゃるんですか? 俺、どう、精神統一してもダメなんです。マスターにもそういうことがありますか?」

弟子の質問は、クワイ=ガンが想定したものとまるで違った。

「は?」

「だって、マスターがシーツを汚していることなんてないじゃありませんか。あれは、コントロール出来るものなんでしょう? どうしたら上手くできますか? 俺、よくわからなかったけど、平常心を保てばいいのかと一生懸命そうしてるんですが」

自分の不出来を恥じているのか、オビ=ワンの目の淵が深紅に染まっていた。

クワイ=ガンは、弟子が何を言いだしたのかと、まじまじと顔を見つめた。

「マスター、俺が、もう少し成長したら、上手くできるようになるんですか? それとも、もしかして、普通なら出来ることなんですか? 俺、どこかおかしいですか?」

「何を言っているんだ? パダワン」

「何って……」

言葉を濁すオビ=ワンに、クワイ=ガンは、話題が、青少年の性から離れていないとわかった。

恥ずかしそうに、視線を逸らすパダワンは、クワイ=ガンの腕で出来上がったわっかのなかで、胸に手を付いたまま頬を染めている。

しかし、弟子の話は、どこかが、おかしい。

「オビ=ワン、お前、何か誤解してないか?」

「何をですか? マスター」

「いや……、その、オビ=ワン、お前、精神力で、夢精してしまうのをどうにかできると思ってないか?」

昔から、ふらふらと落ち着きなく大きくなったクワイ=ガンにとってそれはあり得ない発想だった。

だが、もしかしたら、このきまじめなパダワンなら、……万が一にもそんなことを考えるのかもしれないとジェダイマスターは聞いてみた。

確かに、ジェダイ聖堂は、身体の仕組みについては教えるが、性知識までは授けない。

「……できないのですか?」

弟子の目は、信じられないというように、大きく見開かれた。

めまぐるしく思考が過ぎる大きな青い目を見下ろしながら、クワイ=ガンは、途方に暮れた。

「オビ=ワン、それは無理だ」

「じゃぁ、どうして?」

オビ=ワンの目が、クワイ=ガンがシーツを汚さない、秘密の開示を求めた。

この弟子のマスターに対する欲求は、大したものだった。

いつも、学びたがっていた。

クワイ=ガンを丸ごとコピーするつもりなのか、というほど、オビ=ワンはいつでも吸収を求めていた。

しかし、コレについてまで、というのはどうなのだろう。

クワイ=ガンは、ジェダイ聖堂は、生理学のついでに、自慰の仕方まで、教えておいてくれたらよかったのに。と思った。

クワイ=ガン・ジン自身は、そんな知識をマスター達に求めたことはなかった。

何もしなくとも、耳に入り、知ってきた。

確かに、オビ=ワンは、優秀だったが故に、早くにクワイ=ガン・ジンのパダワンとなった。

……早すぎだったのかもしれない。

 

クワイ=ガン・ジンは、腕の中の弟子の頭を一つ撫で、小さなため息を落とした。

「オビ=ワン」

「はい、マスター」

素直にオビ=ワンがクワイ=ガンに視線を合わせた。

「私のかわいい弟子よ。本当に、何も知らないのか?」

クワイ=ガンは、まだ微かに疑っていた。

知識としてしらなくとも、身体で覚えるということもある。

オビ=ワンが自信なさげに首を傾げた。

「え? 何を? マスター。……ええ、多分……」

ためらいがち態度がかえって、クワイ=ガン・ジンに弟子の無知さを伝えた。

オビ=ワンは、クワイ=ガンが口を開くのを待っている。

クワイ=ガンは、朝日の差し込む食事の席で、いかにも背徳的なことだと思いながらも、弟子の下腹に手を滑らせた。

腰を引いたオビ=ワンの細腰を引き寄せ、服の上から、オビ=ワンのペニスを掴んだ。

「お前、これを触るか? オビ=ワン」

細いパダワンがみせた微かな抵抗を簡単にねじ伏せ、ジェダイマスターは聞いた。

オビ=ワンは、困ったように眉を寄せた。

「……嫌です。マスター」

細い腰が、しきりに左右に振られた。

しかし、クワイ=ガンの手は、そんな抵抗などものともしない。

「質問に答えて。パダワン」

クワイ=ガンは、質問する声に少し力を込めた。

こんな質問をするために、と考えると、馬鹿らしかったが、クワイ=ガンは、威厳を込めて、オビ=ワンに聞いた。

「さぁ、答えなさい。オビ=ワン・ケノービ」

オビ=ワンがおずおずと口を開いた。

「……いいえ、マスター、触りません。……痛いので、嫌なんです」

だが、クワイ=ガンが触れているだけだというのに、オビ=ワンのものが微かに硬くなった。

クワイ=ガンは生真面目なこの子でも、何にでも立つとう年齢なのだと、苦笑した。

クワイ=ガンは、顔に貼り付けた威厳を保ったまま、オビ=ワンにうなずいた。

「痛い? ああ、なるほど」

クワイ=ガンは、潔癖なこの子には、可哀相なことになるかもしれないと思いながらも、オビ=ワンに、下衣を脱ぐように言った。

「ここで、ですか? マスター」

朝食の席だった。

オビ=ワンにとっては、全く想定外のことだった。

「部屋を変えても構わないが、どこでも、一緒だろう? どうせ、どこに行こうが我々二人しかいないんだ」

せきたてるクワイ=ガンに、しぶしぶ、オビ=ワンは下衣の紐を解いた。

まだ、ためらうオビ=ワンに、焦れたクワイ=ガンは、ずるりとオビ=ワンの股間をむき出しにした。

「マスター!!」

「どうせ、一緒のものだ。特別に恥ずかしがらないでくれ」

クワイ=ガンは、弟子の出した大きな声に顔を顰めた。

「……すみません」

オビ=ワンは、クワイ=ガンに言われ、自分から上衣の裾をめくり上げた。

しばらく師匠の視線に晒される羞恥に耐えていたが、とうとう顔を伏せた。

そのまま、足下へと膝をついたクワイ=ガンの背中に覆い被さる。

オビ=ワンの全身が真っ赤に染まっていた。

「マスター……、俺、どこか……おかしいですか?」

オビ=ワンは、小さく聞いた。

オビ=ワンは、クワイ=ガンが、自分のやり方に対し、否定的だということが分かっていた。

多分、オビ=ワンは、何かが間違っているのだ。

それとも、どこか、人と違っている。

「おかしくなんかないぞ。まぁ、こんなもんだ」

クワイ=ガンは、オビ=ワンのペニスの余っている皮を引っ張り、弟子に悲鳴を上げさせた。

「痛い!!」

「痛いです! マスター!!」

包皮が、癒着をしていた。

年若いオビ=ワンのペニスは、包茎という状態だ。

だが、珍しくはない。

「少しだけ、辛抱しろ」

クワイ=ガンは、師匠の背中に爪を立てるオビ=ワンに声を掛けると、もう少し、皮を引っ張った。

「……ひっ!!」

修行中はうめき声すらこらえてみせる弟子が、頼りないほど簡単に悲鳴を上げた。

足が、がくがくと震えている。

しかし、師匠は、年若い弟子のペニスの状態を確かめ、口元に笑いを浮かべた。

オビ=ワンが、痛くて触れないと言うから、もっと重傷だと思っていたが、この年齢でこれなら、全く悪くない。

クワイ=ガンは、弟子のペニスを手に持ったまま、涙ぐんだオビ=ワンを見上げた。

「パダワン。いい子だから、ちゃんと聞いてくれ。大人が、夢精しないのは、ちゃんとこれをかわいがってやって、精液を溜めないからなんだ。この言葉は知ってるか? オビ=ワン。自慰。まぁ、方法はそればっかりってわけじゃないが、お前の歳なら、それがシーツを汚さずにすむ、一番いい解決法だ」

「……自慰?」

すっかり潤んだ目のオビ=ワンが、クワイ=ガンを見下ろした。

「そう。自慰。やり方を教えてやるから」

クワイ=ガンが、オビ=ワンのペニスを扱こうとすると、弟子は、必死になって師匠を止めた。

「やめてください! お願いです。お願い。マスター。……本当に、痛いんです……」

オビ=ワンの目から、ぽたぽたと大粒の涙がとうとう零れ、クワイ=ガンは、困り切って、弟子の足下にあぐらをかいた。

「困ったな。オビ=ワン、お前、いつももっと辛抱強いじゃないか」

細い足を露出させたままの弟子は、重く湿った睫のまま、何度か瞬きした。

「……痛いのは、怖いです」

クワイ=ガンは、オビ=ワンの言うのを嘘だと思った。

この程度の痛みなら、修行中、もっと酷い目に合うことに慣れているオビ=ワンはものともしないはずだった。

性器の包茎の度合いも軽く、ほんの一瞬、歯を食いしばれば、剥けてしまう。

クワイ=ガンは、オビ=ワンを本当に怯えさせているものを思い、髪をかき上げた。

「性衝動が身のうちに湧くことは、悪じゃないよ。オビ=ワン」

 はっとしたように、オビ=ワンが目を見開いた。

「とても、自然なことだ。誰でもそうだし、お前にもそういう歳になったというだけだ」

返事を返さない弟子に、クワイ=ガンは笑いかけた。

「否定する必要なんてない」

「……マスター。何故、これは、コントロールできないのですか?」

「オビ=ワン、ジェダイであれば、なんでも意志の配下におけるなどと考えるのは、奢りだ」

師匠は、優しく笑い、目の前で頼りなく晒されている性器を指に挟んだ。

「オビ=ワン。私のかわいい子」

クワイ=ガンは、おいで。と、弟子を招き寄せた。

そして、あろう事か、おずおずと近づいた弟子の清潔なペニスを、ジェダイマスターは、いきなりぱくんと口の中にほうばった。

「マ・マスター!!」

チュウっと性器を吸い上げられ、オビ=ワンの腰が強くこわばった。

「痛いんです! 痛い! マスター!!」

確かに、ほぼすっぽりと性器の先端を覆う包皮に包まれたままでは、勃起させられるのは辛い。

普段の礼儀正しさをかなぐり捨て、オビ=ワンの手が、マスターの髪を掴んだ。

「やめてください! マスター!」

それでも弟子の両手は、手加減をしていた。

師匠の髪が抜けたのなんて、ほんの十本というところだ。

「オビ=ワン。痛いのは、一瞬だ。そっとしてあげるよ。お前がかわいいからね。こんなサービスは滅多にしないんだ」

唾液で十分にペニスの先を湿らせて。

少しでも痛みを和らげ、一気に剥いてしまう。

そこの味が、まったく嫌なものでないことに、師匠は、この若い弟子がどれほど、ペニスのことを気にしているのかに苦笑しつつ、オビ=ワンのペニスが完全に勃起しきらないうちにペニスを覆っている包皮をひっぱった。

「痛っ!!」

さすがに、その一瞬、オビ=ワンの両手には本気の力が入り、師匠の髪が何十本か臨終を迎えた。

抜かれた髪の痛みに、こちらこそ、痛いと叫びそうだった師匠は、頭をさすりながら、オビ=ワンを見上げた。

「やっぱりな。包茎口も緩い感じだったし、オビ=ワン。もう平気だぞ。あと、しばらくは、また被ってくることもあるだろうが、もう痛みはないはずだから、自分で何回か引っ張ってやれば、完全に露出する」

「マ・マスター……」

膝の力が抜けたように、へたへたと座り込んだオビ=ワンは、涙で一杯の目をして師匠を見上げた。

「マスター、すごく痛い……」

オビ=ワンは、きれいに先端が剥き出しになったペニスを握りしめていた。

「そりゃぁ、剥いたばかりからな。痛いだろうさ。でも、これで、いつでもできる」

「……やりたくないです」

真剣な顔で、拒否をするオビ=ワンの頑なさは、かわいかった。

師匠は、自分の大きな体の上に、オビ=ワンを無理矢理抱き込んだ。

剥けて露出したばかりの性器は、まだ、クワイ=ガンの唾液で濡れていた。

「そんなこと言ってられるのも、今のうちだけだ。マイ・パダワン。きっとお前でも、やみつきなるに決まっている」

師匠の手が、太腿をすりあわせ、逃げようとする弟子のペニスを優しく扱いた。

「嫌です! マスター! 嫌! 痛い!」

「私のパダワンは、うそつきだったのだな」

師匠は、快楽という名の堕落へと、弟子を誘惑しようとした。

この弟子は、潔癖過ぎた。

「痛いだけか? 気持ちいいだろう?」

痛みも確かにあるだろうが、一足飛びに他人によって愛撫されることを覚えた若いパダワンは性器を勃起させていた。

「オビ=ワン、よく覚えなさい。こうやって、やるんだよ。お前は、いつまでもシーツを洗い続けるつもりかい?」

赤くなった弟子の耳へと必要のないキスを繰り返しながら、クワイ=ガンは、日頃は憎らしいほど冷静な顔をした弟子が身も世もなく快感に身体をくねらせるのに、優しい顔をして笑った。

「簡単なことだろう? こうやって、精液を出してしまえば、いいんだ」

「嫌、嫌です。マスター」

嫌だと言いながら、パダワンのペニスは、クワイ=ガンの手を求めていた。

しかし、オビ=ワンは、いくらクワイ=ガンがオビ=ワンの手にペニスを握らせようとしても、首を振って嫌がった。

未だ、自分の性衝動を認められない若い弟子は、師匠に無理矢理されているという状態は許せても、自分から求めてその衝動に身を任すことはできないらしい。

「嫌なことなんてありはしないよ。オビ=ワン」

「嫌です。ダメです。マスター」

しかし、刺激に慣れていないオビ=ワンのペニスは、もう、終わりの時を迎えていた。

若い弟子は、歯を食いしばっていた。

「怖くない」

弟子のおびえを感じとったクワイ=ガンは、殊更優しくオビ=ワンを包み込んだ。

オビ=ワンが、すがるような目を見せた。

興奮に顔を赤くし、しかし、またもや泣き出しそうに濡れた大きな瞳が、身体をひねり、師匠の首を抱いた。

「……怖いです。マスター」

弟子の態度は、まるで、一緒に堕ちろと、クワイ=ガンを誘惑しようとしているようだった。

しかし、手練れのクワイ=ガンは、そんな幼い媚態など、優しいキスで簡単に丸め込んだ。

「私が一緒だ。怖くない」

クワイ=ガンは、弟子の短い髪に口付けを与え、動かす手の速度を速めた。

首を抱く弟子が激しくあえぐ。

「……っあっ……あ、や……マスター……」

首筋に掛かる湿った息が、一瞬止まった。

「ああっ! ……っあっ!」

クワイ=ガンの手が濡れた。

重くなった弟子の身体を受け止めて、クワイ=ガンはまた、パダワンの髪へとキスを与えた。

「パダワン。これで、終わりだ。ちっとも怖くなんかなかっただろう?」

クワイ=ガンの質問に、オビ=ワンは、答えなかった。

師匠の肩へと埋めた顔のまま、荒い息を整えていた。

手が、師匠の上衣を強く握っていた。

「もう、一人で、できるな。オビ=ワン」

クワイ=ガン・ジンの優秀な弟子は、緩く横に首を振った。

クワイ=ガンは、苦笑した。

オビ=ワンの潔癖なことにも、程があった。

「私のパダワンは、いい子なのに、これだけは、苦手なのか? ……仕方がない。出来るようになるまで、付き合ってあげよう」

オビ=ワン・ケノービは、いいとも、嫌とも言わなかった。

 

END

 

 

 

 

こうやって、オビは最初を迎えたもんだから、アナの時に失敗したんだな。と、一人納得(笑)

(書かないとわかんないらしい。苦笑)