これは、別のお話
部屋に着いたアナキンは、急に顔を顰めた。
「痛てっ……」
大げさに義手へと変わった腕を撫で、ソファーへと蹲る。
弟子が何を望んでいるのか分かっている師匠は、すぐさま、アナキンに近づき、腕を撫でてやった。
「大丈夫か? アナキン」
師匠の顔には苦笑が浮かんでいた。
弟子は、ぺろりと舌を出し、思い切り笑った。
「マスター。もっと心配そうな顔をしてください」
オビ=ワンは、弟子の頭を抱き込んで優しく撫でた。
「腕が付け変わったその日から、医者相手に退院させろと、文句を言っていたような奴に騙されるか」
アナキンは、師匠の肩に顔を埋め、とても幸せそうな声を出した。
「ああ、家に帰れてほっとした」
アナキンの腕が、師匠の背中を抱く。
オビ=ワンは、アナキンに注意を与えた。
「私の弟子は、腕が痛いんだろう?」
「マスターのこと抱きしめるのは、平気なんです」
アナキンは、師匠の背中を撫で、髪へとキスをした。
そして、情熱を持てあますように、師匠の髪に指を差し込み、ぐしゃぐしゃと柔らかな髪を乱した。
黒の手袋で覆われた義手が、オビ=ワンの髪を乱す。
「マスター。痛くないですか? 一応、元通りの動きが出来るまでリハビリしたんですけど」
「こんなことなら、出来なくても結構。ああ、髪が目に入る。邪魔くさいよ。アナキン」
顔を振って嫌がるオビ=ワンを捕まえ、アナキンは、師匠の前髪を払った。
かわいらしいホクロのある額に、チュッっと、キスをする。
「マスター。ねぇ、おかえりって言って下さい」
「お前の退院に付き合ったのは、誰だと」
「聖堂に復帰を報告させるために、マスターが俺の退院に付き添ったこと、気付いてないとでも思ってます?」
アナキンは、師匠の柔らかな頬へとキスをした。
「ねぇ、おかえりって言って。マスター」
腕が切り落とされた瞬間から、一度だって、こんな甘えた目をアナキンはしなかった。
オビ=ワンは、弟子の頭を撫でた。
「……わかった。……おかえり。アナキン」
弟子は、頭を撫でる師匠の手を取り、掌に口づけた。
「マスター。キスも」
そう師匠に求めながらも、アナキンのキスは、掌から始まり、次第に手首へ、腕へと上がっていった。
肘の折れ曲がる柔らかな皮膚に口づけたアナキンは、顔を上げた。
「俺は、マスターのどこにでもキスしたいくらいなんですが、マスターはそうじゃないですか?」
痛いように目を顰めていたオビ=ワンが、弟子の顔を捕らえた。
ぎゅっと抱きしめ、唇を重ね合わせる。
オビ=ワンは、アナキンの唇を何度も吸った。
「おかえり。アナキン。待っていたよ」
「やっぱり、待たれてましたか」
笑って、師匠にキスの続きを促したアナキンは、十分師匠が満足するまで、唇を明け渡し、それから、もう一度、大げさに腕をかばった。
「痛てててて……」
きつく弟子を抱きしめていた師匠は、さすがに心配した。
「大丈夫か? アナキン」
青い目が心配そうに弟子の様子を探る。
アナキンは、ソファーに向かって身体を倒すと、足下に膝をついている師匠を見下ろした。
表情にはもう、痛みの後などない。
「こんなに痛くては、俺、マスターのご希望に応えられそうにないです」
それでも腕をさするアナキンは、にやにやと笑った。
師匠は、怪訝そうな顔で、弟子を見上げた。
「なんだ? どうしたんだ? アナキン」
「マスター。ほんと、俺、役立たずで申し訳ないんですが、でも、マスターのご協力さえあれば、なんとかなると思うんです。なので、今日のところは、マスターの方から、お願いできれば……」
言葉ばかりは、殊勝だが、アナキンのブーツが、オビ=ワンの股間を撫でた。
オビ=ワンは真っ赤になった。
「……アナキン……お前……」
「マスター、期待してないとか、言わないでくださいよ。俺は、期待してるんです」
義手の方の手をわざと伸ばし、アナキンは、師匠の頭を自分の股間へと近づけた。
今までに比べれば、ずいぶんと硬い感触が、オビ=ワンの頭を引き寄せる。
「ほら、わかりますよね。マスターに抱っこしてもらったんで、即効です。すみません」
頬を押しつけられたオビ=ワンは、上目遣いに、じろりと弟子を睨み付けた。
「アナキン、お前……」
しかし、師匠は、急に身体の力を抜いた。
弟子の太腿にこつんと頭を載せた。
「……私もだよ。アナキン」
オビ=ワンの頬は、真っ赤になっていた。
弟子は、すまして師匠の股間に押し当てたままのブーツに力を込めた。
「知ってます」
だが、声ほどは自信なく、アナキンが、師匠の顔色をうかがった。
上からのぞき込んでくるアナキンを見上げたオビ=ワンは、弟子の表情の無防備さに、我が手に大事なパダワンが戻ったことを確信した。
オビ=ワンは、弟子の願いを叶えてやるため、わざといやらしく笑った。
「さて、じゃぁ、私のパダワンがどのくらい回復したのか調べさせて貰うとしようか」
オビ=ワンが、アナキンの上衣の裾をめくった。
「本当ですか? マスター」
信じられないと、嬉しそうな声を弟子が出す。
「じゃぁ、やめようか? アナキン」
オビ=ワンは、弟子の下衣を緩め、取り出したペニスに頬ずりした。
アナキンのペニスの窪みを濡らす透明な液体が、オビ=ワンの髭を濡らした。
「ちょっと、マスター。そういうの反則」
「ルールなんかあったのか? マイ・パダワン」
オビ=ワンは、大きく口を開いて、弟子のペニスを頬張った。
師匠は、弟子の太腿に手を掛け、大きく開かせると、自分の身体をその間に押し込んだ。
楽になった姿勢に、師匠は、本格的に弟子を攻めだす。
じゅぶじゅぶとペニスを吸い上げられ、アナキンは、オビ=ワンの髪を掴んだ。
だが、まだ、気遣いを忘れてはいけない義手は、アナキンが予想している以上に柔らかくオビ=ワンの髪を掴んでいる。
それが、師匠を温かい気持ちにさせた。
とりあえず、生意気な弟子をとっとと追い上げてやり、一度泣きをいれさせてやろうと思っていたオビ=ワンは、すっかりその気がなくなった。
精悍な顔を歪めている弟子が十分に楽しめるよう、ゆっくりと口内でペニスを舐る。
「……マスター」
急激な快感は苦しいほどで、弱点ばかりを攻めてきていた師匠を微かに恨んでいたアナキンは、オビ=ワンの態度にほっと息を付いた。
弟子は、にやりと笑いを浮かべ、口の周りを濡らしている師匠の頬に触れた。
「……おいしいでしょ? マスター」
弟子の目は興奮で濡れている。
師匠は、弟子のペニスに横からかぶりつきながら尋ねた。
「お前、そういう口の利き方をどこで覚えてくるんだ?」
師匠は、長く舌を伸ばして、弟子のペニスの付け根を舐めた。
アナキンは、堪えるように片目を瞑った。
「男なら、生まれたときから知ってるんです」
「へぇ……」
面白そうに笑ったオビ=ワンは、規格品なだけに、ありきたりだ、と、言った。
アナキンは、師匠の股の間に、足をねじ込んだ。
ブーツを師匠の股間に押しつけ、弟子は、口を開いた。
「じゃぁ……」
「これは、なんだって言うんです? マスター とでも言う気かアナキン? それで、私が辱められるとでも思ってるのか? 全く、芸がないな。お前、かわいらしい位に、ステロタイプだ」
オビ=ワンは、めったに人に見せない悪い顔で笑った。
弟子は、口元を覆って、ため息をついた。
「ステロタイプで、結構です。俺だって、どこか、人と同じでなければいけません」
「また、そういう傲慢な口を利く」
オビ=ワンは、弟子のブーツを退かせ、自分で下衣を緩めた。
ためらいのない動作に見えるが、うなじが赤い。
師匠は、髪で隠れているとでも思っているのだろうが、見下ろしているアナキンには、ばっちり見えた。
アナキンの師匠は、恥ずかしさを堪えるために、憎まれ口を利いている。
アナキンは、性急に自分を求めてくれる師匠の存在に、叫びだしたいほどの愛情がこみ上げた。
付け替えられた義手を思うように扱えるようになるまでの、一週間。
ジェダイという特別に作り込んできた身体を持つ故に、アナキンの回復は、早かった。
だが、その回復のメカニズムを医者に提供することも求められた。
勿論、公務に忙しい師匠は、病室に顔を出しても、そこに留まることはない。
たまに顔を見せても、全てのデーターを取られ、モニターでも監視されている状態では、オビ=ワンはもとより、アナキンだって、師匠の名誉のために、正しい師弟の距離を取り続けた。
それに焦れていたのが自分だけではないというのが、若いアナキンにとっては、たまらなく嬉しい。
まだ、足に下衣を絡めたまま、下半身をむき出しにしたオビ=ワンは、顔も上げずに、弟子の足を抱いた。
高ぶったペニスが、アナキンの足に当たった。
アナキンは、身をかがめて、オビ=ワンの背を抱いた。
髪の隙間から見える師匠のうなじは真っ赤だ。
「マスター。愛してます。大好きです」
「私も……お前が好きだ。アナキン」
愛の言葉を囁く時、オビ=ワンは、とてつもなく、恥ずかしそうな顔をした。
もっと幾らでも恥ずかしがる場面はあるだろうと思うのに、師匠は、抱き合っている最中に、気持ちを打ち明けることに対して、おかしな程の不器用さを見せる。
だが、そういう師匠も、アナキンは好きだった。
滅多に聞かせてくれない言葉なだけに、その言葉が与えられると、アナキンは、師匠に骨抜きにされてしまう。
だが、ナイトへの昇進も近い弟子は、にやけそうになる顔を一生懸命引き締めた。
「マスター。真っ赤ですよ。恥ずかしいんですか? それは、盛っちゃって俺の足にペニスを擦りつけてるそのポーズがですか? それよりも恥ずかしいことなんてあるのかな?」
アナキンのからかいに、オビ=ワンは、顔を上げた。
目が、きっとアナキンを睨み付けた。
師匠は、覆い被さるようにしていた弟子を押し上げ、その背をソファーに着かせた。
片足だけを下衣から抜いた師匠が、アナキンの膝の上に乗り上げる。
アナキンの生身の方の手を取った師匠は、その指を舌でぺろりと舐めた。
とんでもなく色気のある顔だ。
アナキンは、舐められているのが、指だというのに、ペニスを舐め上げられているかのように感じた。
「……マスター」
弟子の頬が上気する。
オビ=ワンは、弟子の指を自分の尻へと誘導すると、窄まっているそこに押しつけた。
「そっと入れてくれ。アナキン」
口付けは、オビ=ワンから与えられた。
弟子の首へと腕を回してしがみついた師匠は、ブレイドのある耳の後ろにしきりにキスを繰り返した。
もしかしたら、ブレイド自身にキスをしているのかもしれない。
アナキンは、硬く締まった師匠の窪みに指を埋めていった。
耳元で押し殺した甘い呻きが聞こえ、急ぎたくなる気持ちを、必死に弟子は押し殺す。
「……んんっ……ん……っぅん……」
アナキンは、埋まった指をゆっくりと回した。
「ああっ!」
オビ=ワンは、びくりと背中を仰け反った。
甘い声だった。
「入れたい。入れたい。マスター!」
アナキンは、息も荒く、オビ=ワンにキスを求めた。
逃げようとする師匠を追い、繰り返されるキスは、無理矢理押しつける唇に、鼻が潰れ、アナキンの精悍な顔は、情けないものになった。
義手が、しっかりと師匠の顔を捕らえていた。
とうとう、師匠は、緩やかにアナキンに掴まった。
舌を絡めるねちゃりという音が、二人の耳を占拠した。
「……アナキン」
師匠は、弟子の頬に軽いキスを繰り返し、形のいい耳に唇を寄せた。
「アナキン」
アナキンは、師匠に、名前を呼ばれるのが好きだ。
だが、今はもっと切実に求めていることがあった。
弟子は、師匠の手を握り、自分の高ぶったペニスを握らせた。
「マスター。いれさせて下さい。ほら、わかるでしょ? 俺、もう、我慢が出来ない」
アナキンは、師匠に入れている指を抜き差しした。
しかし、僅かな唾液のみで、挿入された指は、師匠の肉を引きつれさせた。
「……っっぅ……」
オビ=ワンは、痛みを口の中でかみ殺した。
弟子の指が動きを緩めた。
しかし、それでも、まだ、痛む。
どう考えても、今のままでの挿入は無理だった。
そして、この後、アナキンは休養だが、オビ=ワンにはもう一度の外出予定があった。
ここまで流されてしまうつもりは、当初のオビ=ワンにはなかったのだ。
「ねぇ、マスター……」
「……アナキン」
だが、オビ=ワンは、家のソファーに座る弟子の顔を見たら、押さえがきかなくなったのだ。
オビ=ワンは、若い弟子に、尻の位置をずらすように囁き、彼が、自分を膝に乗せたまま、浅めにソファーに腰掛けると、ぴったりと抱きついた。
二人のペニスが、擦れ合うのに興奮した。
オビ=ワンは、弟子の指が刺さったままの尻を動かし、アナキンを煽った。
二人とも、ペニスは、すっかり濡れだしている。
「マスター。……今はダメなんですか?」
その刺激にだって、十分に感じ、膝の上のオビ=ワンを揺すり立てているのに、アナキンが情けない声で聞いた。
師匠を痛みで呻かせたことを気にして、指の動きは、実に優しい。
指は、ただ、後ほど充足感をもって埋められるに違いない場所に、その予感だけを与えていた。
オビ=ワンは、弟子の義手に、二人のペニスを握らせ、その上から、自分の手を重ねた。
「擦って。アナキン」
二人の間で、発せられる命令形の言葉は、反復された習慣をすぐさま導く。
アナキンは、まだ、未練がましい顔をしながらも、師匠の動きに合わせ、ペニスを扱いた。
くちゅり、くちゅりと後ろに埋めた指も動かす。
オビ=ワンの頬がピンクに染まった。
「……あっ、……アナキン……後で、また……」
オビ=ワンは、約束を弟子に与えた。
そして、降るほどにキスも与える。
重い程の睫を閉じて、一心にキスを求める師匠は、アナキンにとって、最愛のものだった。
苦しくなる息を詰めて、キスを繰り返す。
師匠の息が止まった。
中に入れたアナキンの指が痛むほど、身体を硬くし、放出の呻き声を上げる。
「……んんんっっ、ああっ……ん!」
それを感じると、アナキンも息苦しいほどの快感がこみ上げた。
僅かに後れて、弟子も、低い呻きを漏らす。
どちらも、しばらくは自分が息をすることだけに夢中になり、その後、顔を見合わせ、ゆっくりと目を瞑った。
甘いキスを交わす。
しかし、師匠は顔を顰めた。
少し、頬を染めたまま、憮然と命令を下した。
「アナキン。指を抜きなさい」
「イエス。マスター」
こんな場合にですら、とっさに命令に従う自分に、アナキンは、顔を歪めた。
END
優しい、優しいお話。