心に飼う天使 10

 

浴室のドアが開き、冷たい風が吹き込んだ。

ドアに背を向けていたアナキンは、後ろを振り返った。

「どうしたんです? マスター。急ぎで出かける用事でもできました?」

てっきり声をかけるためドアから顔を覗かせているに違いないと思った師が、ヌードで自分の背後に立っていることにアナキンは驚く。

オビ=ワンは目を伏せるようにしてそこに立っていた。アナキンの視線が身体に張り付くと、余計に居心地悪そうにする。

これは、入浴中の弟子を押しのけてでも、外出の用意をしたいという師の態度ではない。

「どうしました?」

アナキンはシャワーを止め、手に持っていたスポンジを離すと、声に明るいからかいを含ませた。

「俺、邪魔ですか?」

意地の悪い質問をするその弟子に用事があってここを訪れたオビ=ワンは上目がちにアナキンを見上げ、睨むようにした。

しかし、額を覆う前髪の間から見上げられたオビ=ワンの視線など、アナキンにとってはかわいらしいというしかない。

「マスター。一緒に入りたかったんですか?」

返事をしないオビ=ワンにアナキンはにっこりと笑った。

オビ=ワンは、シャボンに濡れたアナキンの体を押した。弟子に背中を向けさせ、振り返るのを阻止する。

「洗ってやる」

ぼそりと呟いたオビ=ワンは背の高い弟子を背後からぎゅっと抱きしめ、どこも濡れていない暖かな体をぴったりと押し付けた。

弟子の身体についたシャボンを手のひらにつけると、その手でアナキンの体を撫で回す。

「マスター。……めずらしい……」

あまりのことに思わず呆然と声を漏らしたアナキン声が浴室のタイルに跳ね返った。

背中には滑らかな丸みのあるオビ=ワンの身体が温かく張り付いている。

「黙ってろ」

小さく呟いたオビ=ワンの手は、優しく弟子の身体をなでていく。

よく引き締まった腹筋を撫で、そのまま上へと手を伸ばし、鍛えられ盛り上がった大胸筋を手の中に納める。

あれほど熱心にライトセーバーの修練を怠らないくせに、オビ=ワンの手の平は、とても柔らかい。

弟子の身体を後ろから抱くようにして胸全体をシャボンでぬめらせオビ=ワンは、アナキンの腕を一本ずつ取り上げると、じゃぼんを塗り広げていった。オビ=ワンのやり方は、まるで弟子を労わるように優しい。

 

別れがたい恋人同士のように指を絡み合わせるようにして、アナキンの指先一本、一本まで泡まみれにしたオビ=ワンがしゃがみこんだ。

弟子の足元に膝を着いた師は、アナキンの足を洗い始める。

まだ足を洗っていなかったアナキンに、オビ=ワンは自分の手へとソープをたっぷり溢れさせた。

タイルの床へと膝をついたオビ=ワンの手が熱心にアナキンの足をなでていく。

弟子の太腿を抱くようにして洗うオビ=ワンの見上げた目に、アナキンはまるで痛いかのような片頬が引きつった笑いを浮かべた。

「マスター」

「……」

オビ=ワンは返事を返さなかった。アナキンの髪から滴った水滴で唇を濡らし、その口は薄く開いている。

一体どんなためらいがあるのか、普段はずけずけと意見するオビ=ワンの口が何も言わなかった。

だが自分の欲求を口にしないかわりにオビ=ワンの身体は秘密を内包して艶めき、圧倒的な色気を放ってアナキンに訴えかけていた。

アナキンはオビ=ワンが塗りつけたシャボンのついた手でオビ=ワンの頬をなでる。オビ=ワンの頬に泡がついた。

オビ=ワンはアナキンの手へと頬を摺り寄せる。

「マスター。俺もあなたのこと洗ってさしあげましょうか?」

アナキンの声は掠れてしまっていた。

弟子のペニスは、師の献身に煽られもうとっくに勃ちあがっているのだ。しかし、見上げるオビ=ワンのペニスも硬くなり勃ち上がっている。

「……いい」

アナキンの申し出をそっと退けたオビ=ワンは、弟子の足元へとついていた膝を上げた。

師は、するりとアナキンの背中へと隠れてしまう。

そうしてもう一度、暖かで柔らかい身体を弟子へと押し付けた師匠は、背中からアナキンを抱きしめ、優しくぬるつく手で、アナキンの下腹に触れてきた。

手は、アナキンの腹を撫で、そのまま下へと進んでいく。

足を洗っていた最中には何度も気にしながらもとうとう触れなかった部分へと師の手が触れる。

固いアナキンの陰毛をオビ=ワンの手が泡まみれにした。手は、股の奥へも進められ、柔らかな手がアナキンの睾丸を洗う。

オビ=ワンの唇がアナキンの肩へと押し付けられていた。

柔らかくアナキンの睾丸を揉んだオビ=ワンの手が、今度はペニスを掴む。

石鹸の泡にまみれた手がそこを優しくゆっくりと扱く。

アナキンは小さく笑った。

「すみません。マスター。そこ、もうぬるぬるでしょ?」

オビ=ワンは、アナキンの肩に何度か愛しげに口付けを繰り返すことで返事を返し、手は、優しくペニスの先をなでていく。

「なぁ……アナキン」

オビ=ワンの小さな声がアナキンの耳へと届いた。

アナキンはオビ=ワンの手へと自分の手を重ねた。

「ここで、いいんですか?」

尋ねたアナキンは、師の手の甲へと重ねた手に力を加えた。力強く勃っているものを、ぎゅっとオビ=ワンの手につかませ、アナキンは腰を前へと突き出す。

「落ち着かないから嫌だって、前に言ってませんでした?」

ソープでぬめる柔らかなオビ=ワンの手は、アナキンにため息をつかせるほど心地よかった。

アナキンは、自分を抱いているオビ=ワンのもう片方の手を義手で捕まえた。

オビ=ワンが逃げられないようしっかりと自分の身体を抱かせると、どれほど自分の用意が整っているのかを師に示ように腰を動かす。オビ=ワンの手は、アナキンのペニスを締め付ける形に握られたまま離れない。

アナキンの背中へと押し付けられるオビ=ワンの身体が熱い。

「マスター」

アナキンは、首をねじってオビ=ワンにキスを求めた。

アナキンの前髪から落ちた水滴で瞼の上を濡らしたオビ=ワンが唇を与える。

何度か押し付けられた師の唇は、熱く高ぶっていた。

目元を赤く染めたオビ=ワンが、アナキンの目を覗き込む。

「アナキン。先にベッドに入っててくれ。すぐ……行くから」

「やっぱり、ここは嫌なんですか? 俺、マスターのこと洗ってあげますよ?」

少しばかりいやらしく唇を曲げたアナキンは後ろへと手を回し、オビ=ワンの身体を捕まえた。

緩やかに肉のついた腰を撫で回す。オビ=ワンの身体はよく鍛えられているというのに、いつだって薄く脂肪がのっていた。それはオビ=ワンに優しげな印象を与える。

そして、触ればその肉は柔らかくとても気持ちがいい。

アナキンの手は、オビ=ワンから官能を引き出すため、せわしなく尻へと動いていく。

「アナキン……」

オビ=ワンの目がアナキンを拒んだ。

師の目は、身体を這い回るアナキンの手が嫌だと訴える。

「どうして?」

アナキンはくるりと振り返り、わけのわからない行動を取るオビ=ワンを抱きしめた。目元を染め上げ、俯こうとするオビ=ワンの顔を弟子は両手で捕まえる。アナキンは何度か頬へとキスをした。柔らかく繰り返されるキスをオビ=ワンは嫌がらない。

「きれいに洗ってあげますよ?」

キスを続けるアナキンがオビ=ワンから期待を引き出そうと尻の割れ目へと泡に濡れた手をそっと滑り込ませた。

「アナキン。悪い。そういうのではなく……」

師は腰を捩って逃げた。

十分に身体を高ぶらせているくせに拒むオビ=ワンの声は、弟子を焦らしてやろうなどというものとは全く違った。

師は、そういう駆け引きとは無縁の顔つきだ。

切羽詰まった様子の師は、自分の欲求を弟子に受け入れて貰う方法を考えているのか、もどかしそうな目をしていた。

濡れたオビ=ワンの目が迷うように言っている。

果たしてそれを、この若い弟子に突きつけたとして、彼は納得し、満足するのかどうか。

見上げるオビ=ワンの目をまっすぐ見つめたアナキンはオビ=ワンの思いを了承した。

ああ、なるほど。オビ=ワンがお求めなのはアレなわけだ。と、わかるものがアナキンにはある。

若い弟子は、苦笑した。

オビ=ワンが望むそれは、アナキンにかなりの忍耐力を要求する。

だが、オビ=ワンが自分の欲求を弟子に押し付ける努力をあきらめてしまう前に、アナキンは柔らかなキスでオビ=ワンの唇を塞いだ。

「じゃ、マスターが俺のためにきれいにして出てくるの、待たせてもらおうかな」

明らかにほっとした顔で、オビ=ワンがアナキンの身体を抱きしめる。

オビ=ワンの胸がアナキンの胸へと早い鼓動を伝える。

「マスター。でも、俺、長く待つのなんて嫌ですからね。さっさと来てくださいよ」

アナキンは、股間に欲望をはしたなく見せ付けるオビ=ワンに身体についた泡まで落として貰いながら、笑顔で師を追い詰めなかった。

 

ベッドでアナキンはオビ=ワンを待つ。

きっと師は、申し訳なさそうな顔で、シーツの中にもぐりこんでくる。

師のその気分のムラを、アナキンは理解しがたかったが、時々オビ=ワンは、アナキンが与えるセックスを味わおうとせず、アナキン自身を噛み締めるように抱きしめたがった。

裸で抱き合うことは同じ。アナキンのペニスをオビ=ワンに挿すことも同じ。二人とも射精だってする。

けれども、その行為はいつもとは決定的に違った。

アナキンは、師の望みをかなえるため、ぐっと欲望を堪え、オビ=ワンを激しく揺さぶらない。

オビ=ワンの口から高くかすれる声があふれ出すまで、濡れた粘膜を執拗にこね回したりしない。

師も、暴走する弟子を挑発するように笑わない。

自分から足を抱え上げて、もっとだ。なんてねだらない。

 

すっかり降りてしまった前髪から水滴を滴らせるオビ=ワンが、ドアを開けた。

「あの、アナキン……」

自分のしたいと望む行為が、どれほど弟子の自制心を必要とするのか知っている師は、どこか申し訳なさそうな顔で、そこで立ち止まった。

アナキンは、腕を広げる。

「おいで。オビ=ワン」

珍しく名を呼ばれたことに、オビ=ワンはちらりと目を上げたが、すごすごとアナキンの腕の中に納まった。

アナキンは、濡れたオビ=ワンの髪に口付ける。

「あのな……」

自分の望みをきちんと口にして伝えようと顔を上げたオビ=ワンの唇をアナキンは塞いだ。

その口付けの激しさに、オビ=ワンが目を見開く。嫌がる師は、アナキンの胸に手をついて体を離そうとした。

「分かってます。マスター。俺、何もしちゃだめなんですよね。でも、……マスター。ごめん。せめて、キスだけさせて」

アナキンがしたいむさぼるようなキスの激しい刺激を欲していないオビ=ワンは、眉の間に皺を寄せたまま、口の中を這い回る舌の獰猛さに耐えた。

だが、ただ抱き合いたいと望む師の欲求に応えるために、弟子はこれからもっと長い忍耐を味わうことになるのだ。

アナキンは、キスに耐えるオビ=ワンを逃がさぬよう強く抱きしめていた手から力を抜いた。

こつんと、額を重ねて、師に尋ねる。

「お尻の中、濡らしてきました?」

アナキンは、無造作にオビ=ワンの尻へと手を伸ばした。

オビ=ワンは恥ずかしそうにこくりと頷く。アナキンが触れたそこは、十分に潤っていた。

だが、まだ、少し固い。

弟子としては、もう少しほぐしてやり、そのついでとばかりに、オビ=ワンのいいところを弄りまわして、鳴かせてやりたいような気はするのだが、今日のところは濡れて心地よいそこからすぐさま手を引いた。

腕の中の身体をベッドへと寝かせ、早々とオビ=ワンの足を割る。

シーツの白に埋もれながら、不安げに見上げる師の額に一つキスを落とし、アナキンはペニスの先端を濡れた穴へとあてがう。

「マスター。お望みどおり、弄ったりもしませんから、ちゃんと力を抜いていてくださいよ」

アナキンは、オビ=ワンの表情を確かめながら、熱く濡れた尻の穴へとゆっくりとペニスを埋めていった。

「痛い?」

オビ=ワンの眉間には皺が寄っている。

「……大丈夫だ」

詰めてしまっていた息を吐き出したオビ=ワンは、するりと腕をアナキンの首へと回した。

オビ=ワンはアナキンの顔を引き寄せ、頬ずりする。

「もっと入れてくれ」

アナキンは、師が早く尻を穿たれる感覚に慣れることが出来るよう、小刻みな抜き差しを繰り返しながら、深くオビ=ワンを満たした。

小さな快感をオビ=ワンに与えるために、アナキンは奥深くで、ペニスを動かす。

「アナキン……」

アナキンの腰へと足を絡ませたオビ=ワンが横に首を振った。

「嫌なんですよね。分かってます。もう、しょうがないな……」

アナキンは、大きく足を開いているオビ=ワンを抱きしめ、何度も頬へと優しいキスを繰り返した。

二人は固く抱き合う。

アナキンは、オビ=ワンの耳に口付け、髪を撫で、そして、オビ=ワンも、アナキンの背を優しくなでる。

それが長く続くと、オビ=ワンの身体と、アナキンの身体の熱が同じ温度になり、二人の境目さえも不確かになり始めた。

 

オビ=ワンの目が愛しげにアナキンを見つめていた。

緩く開かれたオビ=ワンの唇にアナキンはキスをする。

ただし、舌を滑り込ませるような真似はしない。

緩く食むようなキスを二人は繰り返す。

オビ=ワンの柔肉は、アナキンを熱く締め付けている。

若い弟子としては、ヌルつくそこを激しく突き上げたい。

しかし、その刺激を望まぬ師のために、弟子は誘惑にぐっと耐える。

 

「オビ=ワン。あなたかわいいですね」

アナキンは、興奮で顔を赤くし始めたオビ=ワンの額から髪を払った。

体内から緩やかに沸きあがってくる興奮に上気し始めた肌は、汗で湿っている。

アナキンは、師の額にキスをする。

「ほんと、なんてかわいらしいんだろう」

普段であれば、こんな暴言を許すはずのないオビ=ワンが全身でアナキンを抱きしめ、嬉しそうに微笑った。

師はアナキンの肩へと顔を埋めた。

鍛えられ盛り上がったアナキンの肩をついばむ師の唇が、愛を伝える。

跡も残さぬ柔らかいキスが、アナキンに山ほど与えられる。

オビ=ワンの腕が精一杯アナキンを抱きしめている。

「マスター。……大好き」

普段はとても言えない甘ったるさで囁いたアナキンは照れくさそうな笑みを浮かべた。

オビ=ワンの目元が緩む。

「私も、お前が大好きだ。アナキン」

 

こうやってたまにオビ=ワンは、交接しながらもアナキンにセックスでないものを求めた。

アナキンだって、愛しい人を長く抱きしめるこの行為が特別嫌いだというわけではない。

ただし、若い弟子にとっては、師の体が発する色気に抗うのは苦痛だった。

抱きしめる身体は柔らかで、オビ=ワンの尻穴は、アナキンのペニスを暖かく包み込み、弟子に快感を与え続けているのだ。

その上、照れくさげに愛を囁く言葉が底をつく頃には、キスするために、ほんのわずかに動くアナキンの動作にすら、オビ=ワンは甘い声を上げる。

「あっ、ん、アナキン……」

激しくオビ=ワンを揺さぶってやりたい衝動を押し殺しながら、アナキンは、ほんのわずかに腰を動かした。

オビ=ワンが悩ましげに腰を捩る。

「あっ……っん」

きっと正気では聞けない甘えた声を出すオビ=ワンが、アナキンにしがみつく。

「アナキン、アナキン」

泣き出しそうに潤んだ目をしたオビ=ワンは、刺激ではなく、アナキンを求めて、抱きついていた。

アナキンも腕に抱きしめる人がたまらなく愛しい。

いくらでも優しくしてやりたくなる。

望むのならば、いつまでだってこうして抱きしめていてやりたい。

今、オビ=ワンは、アナキンのセックスではなく、アナキン自身を求めてくれているのだ。

……アナキン自身を求めてくれているのだ。

 

はっと、それに気付いたアナキンは、思わずオビ=ワンの顔を覗きこんだ。

今の今まで、強い忍耐ばかりを強いられるこの行為の意味を、アナキンは深く考えたことがなかったのだ。

火照った顔をした師は、不思議そうにアナキンのこわばった顔を見上げている。

「マスター。俺があなたのものだってこと、知ってたんじゃないですか?」

アナキンは真顔でオビ=ワンを質した。

緩やかに高められてきた興奮に瞳を濡らしながらもオビ=ワンは、いつもの顔に近く、にやりと意地の悪い笑みを唇に浮かべた。

「……知ってるよ。だけどな。私の弟子は、どうやら私の身体だけがお前のものだと思っていたようだな」

そう言う割りに、オビ=ワンの腕は、中に囲い込んだものの存在を確かめるようにいくらでもアナキンを撫でていた。

離したくないと、緩やかな拘束は解かれることがない。

そうなのだ。二人はなかなか、自分の心を曝け出そうとしない。

それなのに、オビ=ワンの腕は、唯一無にのもののように、アナキンを抱きしめている。

「負けた。……マスター、愛してます」

誓うようなキスをした弟子の動きに、オビ=ワンの身体が跳ねた。

「あっ、アナキン、アナキン!」

長く繋がっていた身体は、もうほんのわずかな刺激で感じてしまう。

アナキンの先走りも、オビ=ワンの中を濡らしていたジェルも、僅かづつではあるものの、蕩けだし、穴の外へとあふれ出している。

「マスター……」

思い返してみれば、アナキンが長く一人で任務に就かなければならない前に、オビ=ワンはこの行為を求めるのだった。

自己を押さえる試験ででもあるかのように、行為を受け止め、挑んでいたアナキンは、自分が恥ずかしくなった。

 

アナキンは、オビ=ワンの中へと射精したい気持ちを抑えることが出来なくなった。

「動いて、いい? マスター」

情けなく掠れたアナキンの声に、オビ=ワンはキスで応えた。

オビ=ワンの方から情熱的に舌を絡ませてくる。

アナキンは追ってくる師の舌に応えながらも、自分の体を抱く太ももを外させ、抱き上げた。

オビ=ワンの身体からは汗の匂いが立ち上る。

「すぐ、いっちゃうと思います……」

長く緩やかな興奮に晒されていたアナキンにとっては、それだけのきっかけですら、歯を食いしばり、気を逸らす必要があった。

アナキンは、汗を吹く自分の額に張り付いた髪をかき上げる。

しかし、それはオビ=ワンも同じだったようで、師はヌルつく自分のペニスからあふれ出しそうなものをせき止めるようにきつくそれを握っていた。

アナキンに足を預けたまま、シーツに横たわるオビ=ワンが愛しげにアナキンを見上げる。

「アナキン。私もだ」

まるで恥らうかのように笑ったオビ=ワンの手が伸ばされ、自分とアナキンが繋がる部分に触れた。

師は、石のように硬い弟子のペニスに、正直にもうっとりと目を潤ませる。

「今日は、ゆっくりがいいんだ。ゆっくりしてくれ、アナキン」

「……また、そんな無茶を言う」

しかし、アナキンは、湧き上がる衝動を押さえ込み、愛しい人の望みどおりに緩やかな突き上げを開始した。

穏やかで緩やかな、そう、普段であれば、何をサボっているのだ。と、睨みつけられそうなやり方だというのに、オビ=ワンは、酷く感じているらしく、口からは、ひっきりなしに声が上がる。

「あっ、いいっ、……あっ、あ、アナキン!」

シーツの上を跳ねる身体が、アナキンを求め、腕を伸ばす。

「……あっ、あ、んっ。アナキン、アナキン」

すすり泣くような声でアナキンを呼ぶオビ=ワンは、10を数える間もなく、胸を突き出すような格好に反り返ったまま、精液を溢れさせた。

とろりと弛緩した身体のオビ=ワンが、甘えるようにアナキンのキスを欲しがる。

「んっ、アナキン。……アナキン」

柔らかく舌を絡ませながら、アナキンは息を詰めた。

オビ=ワンの唇の柔らかさがたまらないのだ。

腕に抱きしめた身体の持ち主が愛しいのだ。

最後は、やはり、師が求めるほどには、弟子の忍耐は保たなかった。

オビ=ワンをきつく抱きしめたアナキンが激しく腰を打ち付ける。

白い尻がひしゃげて音を立てた。

「いや……だっ、いや、アナキンっ!」

もう十分満足したオビ=ワンにとって、その刺激は余分でしかない。

オビ=ワンはアナキンの腕の中でもがく。

「ごめんなさい。少しだけ、少しだけ……我慢して。オビ=ワン……」

アナキンは、オビ=ワンの唇を覆ってしまった。

アナキンの身体が固くこわばり、堪えていた息が、オビ=ワンの口の中へと吐き出された。

アナキンは、オビ=ワンの身体の上へと倒れこむ。

「……すみませんでした。マスター……」

呟いたアナキンの頭をオビ=ワンが抱いた。

「いいよ。……無理なことを言って悪かった。アナキン……」


時計の音さえしない穏やかで満ち足りた部屋の中で、オビ=ワンが、緩やかにアナキンを抱いていた。

アナキンも、しっかりとオビ=ワンを抱きしめている。

 

End