*何かあった?

 

任地での現地集合となっていたジェダイ師弟だったが、オビ=ワンはエアポートで随分と待つことになった。

「おい、アナキン。そのスピードで飛んで、どうして今、着くんだ。約束の時間はとっくに過ぎているじゃないか。9時だ。9時と約束しただろう?」

時間通りに来て当然だと思っているオビ=ワンは、苛々とアナキンを叱った。

用件に間に合えばいいと思っている弟子は、平気だった。

「えっ? マスター。どうしてそんなに怒ってるんです?」

スターファイターから降り立ったアナキンは、にやにやと笑いながらオビ=ワンの顔を見た。

「時間通りに俺が来ないと、さみしいとでも言う気ですか?」

 

 

*質問しろって言ったじゃん。

 

小さなアニーは、マスターウィンドゥにあまりに沢山の小言を貰い、すこしばかり作戦を変更することにした。

「マスターウィンドゥ。ここの軸足、本当にこれでいいんですか?」

「マスターウィンドゥ。ねぇ、イクトッチって月があるんですよねぇ?」

「マスターウィンドゥ。通商連合のこの銀河における意味って」

「マスターウィンドゥ。マスターヨーダって、一体何歳?」

メイスは、すっかり迷惑していた。

「アナキン。そんなに質問ばかりするのはやめなさい。好奇心は猫をも殺すという古いことわざがあるのを知っているかね?」

メイスの額には深い皺が寄っていた。

「ああ、そうなんですか」

最後に言われた小言が、疑問を持つほど真面目にやれだった子供はかわいらしい笑顔を浮かべながら、こう言った。

「ねぇ。マスターウィンドゥ。最後に一つ。その猫は一体何を知りたかったのです?」

 

 

*それほど、酷い?

 

アニーは、返されたテスト用紙をパダワンたちと見比べていた。

「すげー。どうして、アニーは、そんなに点数がいいのさ」

「仕方ないよ。うちのマスター、点数が悪いと、途端に自分のこと責め出すんだもん」

アナキンは、満点に近い点数を得ていた。

周りが頷いた。

「ああ、そういえば、アニーのマスターは、若いもんな」

「叱られるより、辛いかも。それ」

「うん。まぁ、ね。だから、俺、頑張るしかないわけだけど。……でも、それより、お前、自分だけ見せないってのはどういう了見なわけ?」

褒められる照れくささに、アナキンは、人の点数ばかりを気にして、自分のテスト用紙を見せようとしないオートラント族のパダワンから、テスト用紙を奪い取った。

長い鼻を持つ青い肌のパダワンは、唇を噛んだ。

「……酷いだろ」

テスト用紙には、大きく零点の文字。

アナキンは、どこか褒めるところはないかと、テスト用紙をしげしげと眺めた。

「うん……。でも、ほら、教授に零点以下を付ける権限がなくてよかったよ。いいじゃん。マイナスはされてないんだし!」

 

 

*くそう! 負けた!

 

オビ=ワンは、弟子にせっつかれ、テンプルに、2週間の休暇を申し出た。

「で、なんで、貰えた休暇が、一週間なんですか? 俺たち、ここ一月、全く休みなしで、怪我をして抜けたジェダイの任務まで引き受け、休みどころか、まともに家にさえ帰れないような状況だったってのに、なんで、たった2週間の休暇が貰えないというんです!!」

テンプルの廊下で師匠を待ち受けていた弟子は、休暇の許可が貰えたと、微笑んでいた師匠に噛み付いた。

「いや、アナキン。メイスは、我々の仕事ぶりをすごく褒めてくれたんだ」

あれほど立派な交渉術を持つというのに、オビ=ワン・ケノービは、身内に対して警戒心が薄い。

「で、メイスは言ったんだ。我々師弟が任務に取り組むような勤勉さと集中力をもってすれば、人が二週間いる休暇だって、きっと一週間で切り上げられるに違いないって」

アナキンは、怒鳴った。

「はぁ? あり得ない。そんなのあり得ない!! 」

オビ=ワンには、たしかにメイスに言いくるめられそうな雰囲気があった。

しかし、アナキンは、このオビ=ワン・ケノービという人間が、特に身の内に入れた相手に対してはずるい程の交渉術を使うのを知っていた。

「マスター、あなた、一週間後に、どんな任務を押しつけられてきたんです!! せっかく、二人で休暇を楽しもうと思ってたのに!」

「……だめか? アナキン。イース・コスが、熱病にかかっているんだそうだ」

オビ=ワンは、困ったように目を潤ませ、弟子を見上げた。

 

 

*食べ過ぎです。

 

机の上には、最後の一個であるスイーツが残っていた。

アナキンは、それほど甘い物が好きではない。

そして、アナキンの師匠は、とても好きだ。

だが、師匠は、面子があるのか、それにずっと手を出さなかった。

弟子は、にっこりと笑って師匠に最後の一個を勧めた。

「俺のかわいらしいぷくぷくお腹のマスター。どうぞ、食べてください。俺、いりませんから」

最初に机に出されたスイーツの数が、5個だったのだ。