*子羊の正体
小さなアナキン・スカイウォーカーは、ホログラムに映る女性が必死に助けを呼ぶのに気付いた。
「何やってるの、オビ=ワン! この人、死んじゃうって、必死に助けを求めてるじゃん!!」
アナキンは、ホログラムを録画から、受信に切り替えた。
女性は、更に声を大きくして、来てくれなければ、死んでしまう!と、叫んだ。
「そんなに苦しいなら、ヒーラーを呼んだ方が……」
アナキンは、女性に助言しようとした。
オビ=ワンは、冷酷な顔で切断スイッチに触れた。
ヒステリックに叫ぶ女性のホログラムが消える。
「何するの! オビ=ワン!!」
アナキンは、冷たいジェダイの態度に声を上げた。
「かまわない。その通信は、マスター宛だ。彼女は、マスターのごく親しい友達の一人なんだ」
オビ=ワンが、低く毒づいた。
「……畜生っ! あのろくでなし!」
*かわいい子
マスターウインドゥは、マスターオビ=ワンの新しい弟子に、小言を言っていた。
「どうして、そうお前は感情的なのだ。ジェダイは感情に囚われてはならないと、いつも言っているだろう。それを改めぬ限り、フォースの導きはないぞ」
アナキンは、けろりとマスターウインドゥに言葉を返した。
「構いません。マスターウインドゥ。僕、フォースに導かれても困りますので」
マスターウインドゥは、眉をしかめた。
「何故だ。アナキン。お前は、ジェダイの騎士を目指すのだろう?」
「ええ、ジェダイの騎士は目指します。でも、僕、まっすぐ帰れと、マスターオビ=ワンに言われてるんで、フォースに導かれてもどこにも寄り道出来ないんです」
にやにやと笑ったアナキンは大きな手に寄って耳を掴まれ釣り上げられた。
「……本当にかわいらしい子だ。オビ=ワンの教育がよく行き届いている」
マスターウインドゥのコムリングが、アナキンの師匠を激しく呼び立てた。
*キス
先ほどから、赤くなったり、もじもじとしたりを繰り返していたアナキンが、意を決したように、師匠に言った。
「マスター、もし、俺があなたにキスをしたら、あなた、助けを呼びますか?」
オビ=ワンは、やっと自分だけの髪で、ブレイドを編めるようになった弟子に尋ねた。
「なんでだ? アナキン」
オビ=ワンの顔は、楽しげに笑っていた。
「お前、助けが必要なのか?」
*ケノービ将軍万歳
任務で赴いた戦地において、オビ=ワン・ケノービ将軍は、現地の将校に行き過ぎた好意を持たれた。
「マスターオビ=ワン。あなたは、本当にすばらしい。私は、あなたに認めていただけるのなら、この戦乱の中で、一番の恐怖にうち勝つ勇気を持っています。どうか、私にその栄誉をお与え下さい」
容姿、家柄ともに自信のある男は、多少のナルシズムに酔いしれていた。
オビ=ワンの命を受け、死地を決する自分のすばらしさ。
オビ=ワンは、今日の作戦を決定するため、広げていた地図の上にペンを投げ出した。
小さなため息をつく。
「アナキン。出てきなさい」
指令地を覆う帆布をくぐった年若いジェダイナイトは、憮然とした顔をしていた。
「少佐。心配しなくてもいい。私の弟子が、君の話を聞いていたようだ。君は、今日、彼のスピーダーの横に座ることになるだろう。そこが、一番、この戦地で恐怖を味わえる場所だ」
*役割分担
マスタークワイ=ガン・ジンと、マスターウインドゥは、聖堂に集められた新しいパダワン見習いたちの前に立っていた。
子供達は、ヨーダから語られるジェダイの未来に目を輝かせながら、聞き入っていた。
「あの子供たちに、正しいことと、悪いことの区別を教えなければならない。絶対に暗黒面に堕ちぬように」
マスターウインドゥは、決意を込めて隣に立つ、クワイ=ガンに言った。
「よしわかった。じゃぁ、お前、お前が正しい方を受け持ってくれ」
クワイ=ガン・ジンは、にやりと笑った。